さて、何をすればいいのか
概念はわかった。用語も整理できた。
でも、明日出社したら、上司に「で、どうするの?」と聞かれる。何か具体的なアクションが必要だ。
この記事では、技術的な専門知識がなくても、今日から始められるAIO/LLMO施策を解説する。
ステップ0:現状を知る
まず、自社のWebサイトが「AIにどう見えているか」を確認しよう。
やってみよう:AI検索チェック
- ChatGPTを開く(無料版でOK)
- 自社のサービス名や業界名で質問してみる
- 「おすすめの〇〇ツールは?」
- 「〇〇業界の大手企業は?」
- 「〇〇を解決する方法は?」
- 回答を見る
- 自社名が出てくるか?
- 競合は出てくるか?
- 情報は正確か?
これを、PerplexityやGoogle AI Overview(Google検索結果の上部)でも試してみる。
結果を記録しておこう。Excelで十分。「どのAIで」「どんな質問をしたら」「どう答えられたか」を残す。
これが、あなたの現在地。
ステップ1:AIが理解しやすいコンテンツを作る
技術的な話は後回し。まずはコンテンツの「中身」から。
ルール1:Q&A形式で書く
AIは「質問」と「答え」のペアが大好き。
ダメな例:
当社のサービスは、クラウドベースのプロジェクト管理ツールです。
直感的なUIと豊富な機能を備えています。
良い例:
Q: このツールは何ができますか?
A: プロジェクトのタスク管理、チーム間のコミュニケーション、
進捗の可視化ができます。
Q: どんな企業に向いていますか?
A: 10〜100名規模の企業で、複数プロジェクトを並行して
進めるチームに最適です。
なぜこれが良いのか?
AIはユーザーの質問に答えるとき、「答え」を探している。Q&A形式で書かれていれば、AIはそのまま引用しやすい。
ルール2:具体的な数字と事実を入れる
ダメな例:
多くのお客様にご利用いただいています。
良い例:
2025年10月時点で、3,000社以上の企業に導入されています。
AIは曖昧な表現より、具体的な数字を好む。嘘はダメだけど、測定可能な事実はどんどん入れよう。
ルール3:結論を先に書く
ダメな例:
当社は2010年に設立され、長年にわたり研究開発を続け、
多くの試行錯誤を経て、ようやく画期的な製品が完成しました。
それが〇〇です。
良い例:
〇〇は、△△を実現する製品です。
2010年から15年間の研究開発を経て完成しました。
結論を先に。背景は後で。これはビジネス文書の基本だけど、AI対策でも同じ。
ステップ2:「会社概要」を見直す
意外と盲点なのが、会社概要ページ。
多くの企業サイトで、会社概要は「住所、代表者名、資本金...」みたいな事務的情報だけ。でも、AIはここを読む。
AIに教えるべき情報
会社概要ページに、以下を追加しよう:
- 何をしている会社か(一文で明確に)
- どんな問題を解決しているか
- 主な製品・サービスは何か
- どんな実績があるか(導入社数、受賞歴など)
- 業界での位置づけ(「〇〇業界で国内シェア3位」など)
例:
【会社概要】
株式会社〇〇は、中小企業向けクラウド会計ソフトを開発・提供しています。
「経理業務を10分の1に」をミッションに、2015年の創業以来、
5,000社以上の企業に導入されています。
2024年には「ベスト会計ソフト賞」を受賞しました。
これだけで、AIがあなたの会社を理解しやすくなる。
ステップ3:FAQページを充実させる
もしFAQ(よくある質問)ページがないなら、今すぐ作ろう。あるなら、今すぐ充実させよう。
なぜFAQが重要か
AIは「質問に答える」のが仕事。だから、「よくある質問」とその「答え」が整理されていると、そのまま引用しやすい。
良いFAQの作り方
顧客からよく聞かれる質問を10個リストアップする。
各質問に対して、簡潔で明確な答えを書く。
ダメな例:
Q: 料金はいくらですか?
A: 詳しくはお問い合わせください。
良い例:
Q: 料金はいくらですか?
A: 基本プランは月額5,000円(税込)です。
ユーザー数10名まで利用可能で、追加1名ごとに500円です。
年間契約の場合は10%割引が適用されます。
AIは「詳しくはお問い合わせください」が大嫌い。答えを書こう。
ステップ4:ブログ記事の書き方を変える
もしブログやコラムを運営しているなら、書き方を少し変えるだけで効果が出る。
タイトルを質問形式にする
従来のタイトル:
マーケティングオートメーションの導入事例
AI対応タイトル:
マーケティングオートメーションとは?導入前に知るべき5つのポイント
Googleで検索する人も、AIに質問する人も、「〇〇とは?」「どうやって〇〇するか?」という疑問を持っている。タイトルを質問形式にするだけで、AIに引用されやすくなる。
記事の構造を統一する
以下の構造で書くと、AIが理解しやすい:
- **結論(答え)**を先に書く
- 理由や背景を説明する
- 具体例を示す
- まとめで結論を繰り返す
この構造、ビジネス文書でも推奨されているよね。AI対策も同じ。
ステップ5:情報の出典を明記する
もし記事の中で統計データや調査結果を引用しているなら、出典を明記しよう。
ダメな例:
最近の調査によると、70%の企業がAI導入を検討しているそうです。
良い例:
〇〇社の2025年調査によると、70%の企業がAI導入を検討しています
(出典:〇〇社「AI導入実態調査2025」)。
AIは「信頼できる情報か」を重視する。出典が明記されていると、AIはその情報を引用しやすくなる。
ステップ6:専門性をアピールする
AIは「権威性」を評価する。
「誰が書いたか」を明記する
記事の著者情報を追加しよう。
【著者プロフィール】
田中太郎
株式会社〇〇 マーケティング部長。マーケティング歴15年。
過去に〇〇社、△△社でマーケティング戦略を担当。
「誰が書いたかわからない記事」より、「専門家が書いた記事」の方が、AIは引用しやすい。
実績や資格を記載する
- 「〇〇の専門家として、〇〇メディアに寄稿」
- 「〇〇資格保有」
- 「〇〇で講演実績あり」
こうした情報があれば、遠慮なく書こう。
ステップ7:競合を調べる
ここまでで、自社サイトの改善はできた。次は、競合との比較。
競合チェックの方法
- 競合企業のサイトを見る
- ChatGPTで「〇〇業界のおすすめ企業は?」と質問する
- 競合が引用されているか確認する
- 引用されている場合、競合サイトの「どのページ」が引用されているかを見る
競合が引用されているページを見て、「何が良いのか」を分析しよう。
- Q&A形式で書いている?
- 具体的な数字がある?
- 情報が整理されている?
良いところは、遠慮なく参考にする。パクるんじゃなくて、「学ぶ」。
ステップ8:社内の協力者を増やす
一人でできることには限界がある。
誰に協力を求めるべきか
- マーケティング担当者:コンテンツ制作を一緒に進める
- Web担当者:サイトの更新作業を依頼する
- 営業担当者:顧客からよく聞かれる質問を集める
- カスタマーサポート:FAQに載せるべき質問を教えてもらう
そして、経営層には定期的に報告を。
「今月、ChatGPTで〇回自社名が言及されました」みたいな数字を出すと、理解が得やすい。
ステップ9:効果を測定する
改善したら、効果を測る。
測定方法
月に1回、同じ質問をAIにしてみる。
「〇〇のおすすめツールは?」
「〇〇業界の主要企業は?」
- 自社名が出る頻度が増えたか?
- 引用される内容は正確か?
- 競合と比べてどうか?
これを記録していく。劇的な変化はすぐには起きないけど、3ヶ月、6ヶ月と続けると、変化が見えてくる。
ステップ10:長期戦を覚悟する
ここが一番大事かもしれない。
LLMO対策は、SEO対策と同じで、すぐに結果が出るものじゃない。
半年、1年かけて、地道にコンテンツを改善していく。それでようやく、AIに認識されるようになる。
焦らないこと。
「今月やって来月結果が出る」みたいな施策じゃない。でも、やらなければ、永遠にAIに無視され続ける。
エンジニア不要でできることは意外と多い
ここまで読んで気づいたと思う。
技術的な話、ほとんど出てこなかったよね。
「構造化データ」とか「Schema.org」とか、そういう話は確かにある。でも、それは後回しでいい。
まずは、人間が読んでわかりやすいコンテンツを作ること。
これが基本。これができていないと、どんな技術的な対策をしても効果は薄い。
最後に:あなたは間違った人選じゃない
「なんで私が...」と思ったかもしれない。
でも、実はあなたは適任だった。
なぜなら、AIO/LLMO対策は、エンジニアの仕事じゃないから。
必要なのは:
- ユーザーが何を知りたいかを理解する力
- わかりやすく情報を整理する力
- 社内の関係者を巻き込む力
- 地道に改善を続ける根気
これ、全部、エンジニアじゃなくてもできること。むしろ、マーケティングや広報の経験がある人の方が向いている。
深呼吸しよう。
一歩ずつ進んでいけば、必ず道は開ける。