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ロードマップ、タイムトラッキング、マイルストーン、バーンアップ、バーンダウンチャート

Last updated at Posted at 2025-11-20

ロードマップ、タイムトラッキング、マイルストーン、バーンアップ、バーンダウンチャート

(トップページはこちら) - (作業の計画を始める)

「今のマイルストーン、間に合うのか?」「見積もりと実績の乖離はどれくらいか?」「次の四半期のリソース配分はどうするべきか?」

こうした問いに、データで答えられるチームは強い。GitLabには、プロジェクトの計画から実行、振り返りまでを一貫して可視化する3つの機能があります。ロードマップ、時間追跡、バーンダウン・バーンアップチャートです。

本記事では、これらの機能を組み合わせて、チーム全体でプロジェクトの状態を共有し、データに基づいた意思決定を行う方法を解説します。

1. 3つの機能が提供する視点

GitLabのプロジェクト管理機能は、それぞれ異なる時間軸と粒度でプロジェクトを可視化します。

1.1 ロードマップ:戦略的な視点(数ヶ月〜数年)

ロードマップは、エピックとマイルストーンをタイムライン形式(ガントチャート)で表示します。Premium以上のティアで利用できます。

何が見えるか

  • グループ、サブグループ、プロジェクト内のエピックとマイルストーンの配置
  • エピックバーには、タイトル、進捗状況、完了した重みのパーセンテージ
  • 子エピックの階層構造(展開・折りたたみ可能)
  • ブロックされたエピック(Ultimate版)

どう使うか

ロードマップは、以下の項目でソートとフィルタリングができます。

ソート項目:

  • 開始日、期限、タイトル、作成日、最終更新日

フィルタ項目:

  • 作成者、ラベル、マイルストーン、機密性、エピック、リアクション、グループ

特にラベルによるフィルタリングは、パフォーマンスの大幅な改善につながります。フィルタを設定したURLをブックマークしておくと、次回から素早く目的のビューを表示できます。

タイムライン表示は、3つの日付範囲プリセットから選択できます。

  • 今四半期: 現在の四半期の週を表示
  • 今年: 現在の年の週または月を表示
  • 3年以内: 過去18ヶ月と今後18ヶ月(合計3年)の週、月、または四半期を表示

レイアウトは、週、月、四半期から選択できます(日付範囲によって利用可能なレイアウトが異なります)。

1.2 時間追跡:実行の視点(日〜週)

時間追跡は、イシュー、マージリクエスト、エピック、タスクに費やした時間を記録します。Free版から利用できます。

何が見えるか

  • 各アイテムの見積もり時間と実際に費やした時間
  • 残りの見積もり時間
  • 時間エントリの詳細(いつ、誰が、何に、どれだけ)
  • グローバル時間追跡レポート(GitLab全体の集計)

どう使うか

見積もりの設定:

/estimate 1mo 2w 3d 4h 5m

時間の記録(3つの方法):

  1. UI: サイドバーの「時間エントリを追加」から、時間、日付、概要を入力
  2. クイックアクション: コメントに/spend 1h 2021-01-31と入力
  3. コミットメッセージ(GitLab 18.3以降、フラグで制御): ログインフォームのバグを修正 #123 @1h30m

利用可能な時間単位:

時間単位 入力方法 換算率
momonthmonths 4週(160時間)
wweekweeks 5日(40時間)
ddaydays 8時間
時間 hhourhours 60分
mminuteminutes -

1.3 バーンダウン・バーンアップチャート:進捗の視点(週〜月)

バーンダウンチャートとバーンアップチャートは、マイルストーンの進捗を可視化します。Premium以上のティアで利用できます。

何が見えるか

バーンダウンチャート:

  • マイルストーン期間中の残りイシュー数の推移
  • 理想的な進捗線と実際の進捗線の比較

バーンアップチャート:

  • 総イシュー数(青線)と完了イシュー数(オレンジ線)の推移
  • スコープの変更(総線の上下)と完了の進捗(完了線の上昇)を区別

どう使うか

マイルストーンに開始日期限を設定すると、自動的にチャートが生成されます。

チャートの上部で「イシュー」または「イシューの重み」を切り替えることで、表示方法を変更できます。重みで表示する場合は、すべてのイシューに重みを割り当てる必要があります。

バーンダウンとバーンアップの使い分け

  • バーンダウン: 残りの作業に焦点を当てたいとき
  • バーンアップ: スコープの変更を監視したいとき(総線の急増がスコープクリープを示す)

2. 3つの機能を連携させる実践シナリオ

架空のプロジェクト「新しい認証システムの開発」を例に、3つの機能をどう組み合わせるかを見ていきます。

2.1 計画フェーズ:ロードマップで全体像を描く

やること

  1. エピック「認証システムリニューアル」を作成し、開始日と期限を設定
  2. 子エピック「OAuth2.0対応」「多要素認証」「パスワードポリシー強化」を作成
  3. 各エピックにマイルストーン「Q1スプリント1」「Q1スプリント2」などを割り当て
  4. ロードマップで依存関係を確認(例:「多要素認証」は「OAuth2.0対応」の後)

見積もりを設定

各イシューに見積もりを設定します。

# イシュー #123「OAuth2.0プロバイダー実装」
/estimate 2w
# イシュー #124「多要素認証UI実装」
/estimate 1w 3d

この時点で見えること

  • ロードマップ上で、各エピックの期間と重なりが視覚的に確認できる
  • ブロックされたエピックがあれば、アイコンで警告される
  • フィルタで「今四半期」に絞ると、直近の作業に集中できる

2.2 実行フェーズ:時間追跡で実績を記録し、チャートで進捗を確認

やること

  1. 作業を開始したら、時間を記録する
  2. 毎日または毎週、バーンダウン・バーンアップチャートを確認する
  3. スコープの変更があれば、バーンアップチャートの総線で検知する

時間の記録例

田中さんがOAuth2.0プロバイダーの実装を開始しました。

UIから記録:

  • サイドバーの「時間エントリを追加」を選択
  • 「3時間」「2025-01-15」「プロバイダー基本実装」と入力

クイックアクションで記録:

プロバイダーのテストケースを追加

/spend 2h

コミットメッセージで記録:

OAuth2.0プロバイダーの認可エンドポイントを実装 #123 @4h

バーンダウン・バーンアップチャートの確認

スプリント開始から1週間後、マイルストーン「Q1スプリント1」のチャートを確認します。

バーンダウンチャート:

  • 残りイシュー数が理想線より上にある → 遅れている可能性
  • 残りイシュー数が理想線より下にある → 順調

バーンアップチャート:

  • 総線が急に上がった → スコープが増えた(新しいイシューが追加された)
  • 完了線が上がっていない → 作業が進んでいない

この時点で見えること

  • 見積もりと実績の差異(イシュー #123は見積もり2週間、実績1週間で9時間)
  • マイルストーンの進捗状況(残り何イシュー、何時間)
  • スコープクリープの兆候(バーンアップチャートの総線の急増)

2.3 振り返りフェーズ:データから学ぶ

やること

  1. 時間追跡レポートで、見積もりと実績を比較
  2. バーンダウン・バーンアップチャートのパターンを分析
  3. 次のマイルストーンに反映

時間追跡レポートの分析

マイルストーン「Q1スプリント1」が完了しました。時間追跡レポートを確認します。

イシュー 見積もり 実績 差異
#123 OAuth2.0プロバイダー実装 2週間(80時間) 1週間(45時間) -35時間
#124 多要素認証UI実装 1週間3日(56時間) 2週間(80時間) +24時間
#125 パスワードポリシー強化 3日(24時間) 3日(24時間) 0時間

わかったこと

  • OAuth2.0の実装は、既存のライブラリを活用できたため、見積もりより早く完了した
  • 多要素認証UIは、デザインの調整に時間がかかり、見積もりをオーバーした
  • パスワードポリシーは、見積もり通りに完了した

バーンダウン・バーンアップチャートの分析

バーンアップチャートを見ると、スプリント中盤で総線が急増しています。これは、セキュリティレビューで新しいイシューが追加されたためです。

次のマイルストーンへの反映

  • UI実装の見積もりは、デザインレビューの時間を含めて1.5倍で計算する
  • セキュリティレビューは、スプリント開始前に実施し、スコープを固定する
  • ライブラリ活用の可能性を事前に調査し、見積もりに反映する

3. 実践のポイント

3.1 小さく始める

最初から完璧を目指す必要はありません。

  1. 1つのマイルストーンから: まずは1つのマイルストーンで時間追跡とチャートを試す
  2. 見積もりは大まかに: 最初は「小(1日)」「中(3日)」「大(1週間)」程度の粒度で十分
  3. 記録方法を統一: チームで記録方法を決める(UIかクイックアクションか)

3.2 定期的に確認する

データは見なければ意味がありません。

  • デイリースタンドアップ: バーンダウンチャートを画面共有して確認
  • 週次レビュー: バーンアップチャートでスコープの変更を確認
  • スプリント振り返り: 時間追跡レポートで見積もり精度を確認

3.3 データを意思決定に使う

可視化は手段であり、目的ではありません。

  • バーンダウンチャートが理想線より上 → リソース追加を検討
  • バーンアップチャートの総線が急増 → 優先順位を再検討
  • 時間追跡レポートで見積もりと実績の乖離が大きい → 見積もり方法を見直す

3.4 ロードマップでフィルタを活用する

多数のエピックがある場合、フィルタを使うことでパフォーマンスが改善します。

  • ラベルでフィルタリング(例:「優先度:高」)
  • グループでフィルタリング(例:「フロントエンドチーム」)
  • フィルタ済みのURLをブックマーク

3.5 権限を理解する

時間追跡機能は、役割に応じて利用できる機能が異なります。

  • 見積もりの追加、編集、削除: イシューとタスクではPlanner役割以上、マージリクエストではDeveloper役割以上
  • 費やした時間の追加と編集: プロジェクトのPlanner役割以上
  • 時間エントリの削除: 作成者本人、またはMaintainer役割以上

4. よくある課題と対処法

4.1 時間追跡が習慣化しない

対処法

  • コミットメッセージでの時間追跡を有効にする(GitLab 18.3以降)
  • デイリースタンドアップで「昨日何時間使ったか」を共有する
  • 時間追跡レポートを定期的にレビューし、記録漏れを確認する

4.2 見積もりと実績の乖離が大きい

対処法

  • 見積もりの粒度を細かくする(大きなイシューを分割する)
  • 過去の実績データを参考にする
  • バッファを含めた見積もりにする(例:実作業時間の1.5倍)

4.3 バーンダウンチャートが不正確

原因

バーンダウンチャートとバーンアップチャートは、日がUTCタイムゾーンであるという制限があります。他のタイムゾーンでは、イシューのクローズ時刻が翌日にずれる可能性があります。

対処法

  • チームのタイムゾーンを統一する
  • 日付のずれを考慮して、チャートを解釈する

4.4 コミットメッセージでの時間追跡の重複

原因

コミットのSHAが変更された場合(リベースや修正後など)、GitLabはそれを新しいコミットとして扱い、重複した時間エントリが作成される可能性があります。

対処法

  • ブランチの履歴が確定してから、コミットメッセージで時間を追加する
  • マージ前に時間追跡レポートを確認し、重複を削除する
  • UIまたはクイックアクションで時間を追加する

5. まとめ:データがチームを強くする

GitLabのロードマップ、時間追跡、バーンダウン・バーンアップチャートは、プロジェクトを3つの視点から可視化します。

  • ロードマップ: 戦略的な視点で、長期的な計画を俯瞰する
  • 時間追跡: 実行の視点で、見積もりと実績を記録する
  • バーンダウン・バーンアップチャート: 進捗の視点で、マイルストーンの状態をリアルタイムで把握する

これらを組み合わせることで、以下のサイクルが回り始めます。

  1. 計画: ロードマップで全体像を描き、見積もりを設定する
  2. 実行: 時間を記録し、チャートで進捗を確認する
  3. 振り返り: データを分析し、次の計画に反映する

データに基づいた意思決定ができるチームは、「なんとなく遅れている気がする」ではなく、「残り15イシュー、見積もり40時間、現在のペースだと3日遅れる」と語れます。この違いが、プロジェクトの成功確率を大きく変えます。

まずは次のマイルストーンで、時間追跡とバーンダウンチャートを試してみてください。1ヶ月後、チームの会話が変わっていることに気づくはずです。

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