SES常駐SEとして「現場でしか経験できないこと」をまとめてみた
SESで現場常駐していると、
- 自社メンバーとは働き方が違う
- 受託開発とも全然違う
- 転職サイトの説明とも違う
みたいな、「やってみないと分からない世界」が結構あります。
この記事では、SESの現場SEだからこそ経験できることを、できるだけポジ・ネガ両面からまとめます。
本記事は、特定の企業や現場を批判する意図はありません。
筆者が経験した「あるあるネタ」をベースにしており、
これからSESを検討する方・すでに携わっている方の参考になれば幸いです。
また、企業や現場によって文化や活動、運用ルールは大きく異なります。
ここに記載している内容はあくまで一例であり、すべてのSES現場に
当てはまるものではない点をご承知ください。
1. 仕様書より「現場ルール」で動く世界
SESで常駐すると、まずぶつかるのがこれです。
- 仕様書はあるけど、現実と合っていない
- 最新の仕様は議事録やメール、そして口頭だけ
- 「これ、どこに書いてありますか?」への答えが
→「○○さんに聞いて」「あのフォルダにあるはず」
現場あるある
-
口頭仕様が正義
-「このボタン、押しちゃダメです。理由は…昔いろいろあって…」 - Excelの”運用マニュアル”がバージョン26くらいまである
- 暗黙ルールが多すぎて、1ヶ月たっても新しいルールが出てくる
ここで身につくスキル
- 情報がバラバラでもパズルのように組み立てる力
- ドキュメントがなくても、実画面・ログ・履歴から仕様を逆算する力
- 「とりあえず聞くべき人」を素早く見つける探索能力
2. 多重請負ならではの「立ち位置ゲーム」
SES現場は、だいたいこんな構造になりがちです。
エンドユーザー → 元請け → 一次請け → … → 自社 → 自分
この中で自分のポジションを見誤ると、めちゃくちゃ疲れます。
ありがちなシーン
- 立場的には作業者扱いだが、実質リーダー役になっている
- 「仕様決めには参加できないけど、決まった仕様の矛盾は自分に跳ねてくる」
- 他社メンバーと一緒に作業しているが、
それぞれの契約範囲が違うので、どこまでやるかの線引きが難しい
ここで身につくスキル
- 「自分の守備範囲」を柔軟に変えるバッファ力
- 立場が違う相手と話すための言葉の選び方
- 「それは契約的に難しいですが、代わりに○○ならできます」という
落としどころの提案力
3. 現場ごとに違う「文化」に適応する力
SESの特徴は、現場を変えるたびに文化もガラッと変わることです。
- ドキュメント命の現場
- Slackで雑に決まっていく現場
- メール+Excel文化で10年以上続いている現場
- そもそも開発よりも保守・運用が主役の現場
最初の数週間でやること
- 「この現場は何が最優先か」を観察する
- 品質?スピード?コスト?政治力?(←意外と重要)
- 評価されるのは技術力なのか、報連相なのか、残業時間なのか
- 発言に一番重みを持つのは
-立場なのか
-年次なのか
-スキルなのか
ここで身につくスキル
- 短期間で現場の暗黙の価値観を読み取る力
- 「この人の一言が現場を動かす」というキーパーソン察知力
- 自分のスタイルを現場に合わせてチューニングする柔軟性
4. エンドユーザーに近いからこその「泥臭い調整」
SESの現場SEは、ユーザーと距離が近いポジションに入るケースも多いです。
- ユーザー部門からの「ちょっとしたお願い」が直接飛んでくる
- 「これ、すぐ直せる?」が意外と全然すぐじゃない
- 逆に、ちょっとしたSQLやバッチ修正で喜んでもらえることも多い
よくあるやりとり(イメージ)
ユーザー: 「この項目、1つ増やせない?」
自分: 「画面項目だけなら簡単そうですが、
マスタ・帳票・インタフェースも影響しそうなので確認させてください」
ユーザーは画面の見た目だけをイメージしていますが、
実際は裏側の影響範囲が広く、それを説明して納得してもらうのが現場SEの腕の見せ所です。
ここで身につくスキル
- 技術用語を使わずに影響範囲を説明する翻訳力
- 「すぐできそう」と言われたときに、
一度飲み込んで冷静に工数を見積もるブレーキ力 - ユーザーと開発側の間で、期待値を調整する交渉力
5. 突発障害と「誰も知らないシステム」との戦い
保守・運用メインの現場だと、突発障害対応は日常です。
- 「○○のシステムが動かない!」の第一報が自分に来る
- 作った人も設計者もすでにいない
- ドキュメントは古く、ログだけが真実を語っている
障害対応のリアル
- 夜間・早朝の電話:「○○が動いてないです!」
- ログを必死に追いながら、
「ユーザーへの影響範囲」「応急措置」「恒久対応」を整理 - 報告書では、原因と対策を分かりやすく文章化しないといけない
ここで身につくスキル
- 「原因特定80%、応急対応20%」みたいな優先度の切り替え
- ログからシステムの構造を逆算するリバースエンジニアリング力
- 障害時にパニックになっている周囲に対して、
一旦状況を整理して伝えるファシリテーション力
6. 自社と現場の間で揺れる「帰属意識」とキャリア観
SES常駐SEならではの悩みもあります。
- 毎日一緒にいるのは常駐先のメンバー → 自社の人とは疎遠になりがち
- 実績や評価は現場で出している → でも評価するのは自社
- スキルアップの方向性も、現場の要望に引っ張られる
よくあるモヤモヤ
- 「自分のキャリアは、この現場の延長線上でいいのか?」
- 「現場では重宝されているけど、市場価値としてどうなんだろう?」
- 「最新技術より、レガシー運用のスキルばかり上がっていく…」
ここで考えるようになること
- 自分の中で
-「現場で求められるスキル」 と
-「自分が伸ばしたいスキル」
を分けて考える - 現場での経験を「ただの作業」ではなく、
「転職で語れる実績」 に翻訳してストックしておく
7. SES現場SEとして生き残るためのマインドセット
最後に、現場SEとして役に立つマインドをいくつか。
① 技術だけじゃなく「現場理解」もスキルとしてカウントする
- ドメイン知識(業務知識)
- 現場文化の理解
- 関係者との信頼関係
これらは転職時にも十分アピール材料になります。
② 1つの現場で完結させず、経験を「汎用化」する
- 「この現場では○○だった」を
「どの現場でも通用する○○のやり方」に抽象化しておく - 例:
-障害対応 → 「ログを読み解くフロー」「切り分けのコツ」
-ユーザー調整 → 「要望を仕様に落とすヒアリングの型」
③ 現場に合わせつつ、自分の軸も持つ
- 「現場のやり方」に合わせるのは大事
でも、自分の中の
-コード品質
-ドキュメントの残し方
-コミュニケーションスタイル
などの最低ラインは決めておく
おわりに
SESの現場SEは、華やかな最新技術よりも、泥臭い現場対応が多いポジションです。
ただ、その中で身につく
- ドメイン知識
- 調整力
- 障害対応力
- 立ち位置を見極める力
は、どんな環境に行っても活きる「現場力」だと思います。
もしあなたもSESの現場SEとして働いているなら、
「ただの作業」ではなく、自分の武器がどこにあるかを意識してみると、
少し見える景色が変わるかもしれません。
以上、SESの現場SEならではの「現場でしか経験できないこと」のまとめでした。
「こんなのもあるよ!」というのがあれば、コメントで教えてもらえるとうれしいです。