こんにちは。会議のプロセス改善ツールにする「minmeeting」を開発している伊勢川です。
新型コロナウィルスの対策で、リモートワークに関する記事がにわかに流行してきています。その多くの記事が、リモートワークをこれから導入したい人たちに向けたものですが、本稿では、実際にやり始めた人たちが、個人のパフォーマンスを高めるために必要な工夫を詳細にまとめました。
リモートワークのトピックと本稿のテーマ
以下がリモートワーク・テレワークでよく出てくるテーマで、今回は、6のテーマを扱います。
- リモートワークのメリット・デメリット → ググるといっぱい出てくる。
- リモートワークをどうやって導入すればいいの → 人事・労務系の人が書いたnoteがおすすめ。
- リモートワーク事例 → qiitaではこの記事とこの記事が人気そう
- リモートワークに必要なツール → エンジニアならgithubとslack or teamsでほぼ十分
- 副業や個人事業における在宅ワーク → 週末在宅ワークの生産性を上げる5つの視点と32の工夫がおすすめ
- リモートで個人のパフォーマンスを高める方法(プレイヤー視点) → 今回のテーマ
- リモートでチームワークをうまく機能させる方法(マネジメント視点) → 次回のテーマ?
- リモートワークの会議術 → 次次回のテーマ?
環境を整える
1. 仕事部屋をつくる、仕事の場所を決める
- 気持ちを切り替えるために、仕事部屋をつくるのがよい
- Web会議ができる静かな環境が望ましい
- Web会議のカメラで写しても問題のないきれいな部屋を準備する
- 猫や子供に邪魔されない環境をつくる
2. 早いネット回線を引く
- ネットが遅いとリモートワークには致命的になることもある
- 有線の大容量回線を引く
- メインの回線が遅いときのために、テザリングができるsimとポケットWi-Fiを準備しておく
3. 広い机を準備する
- 机が広い方が、手書きでメモをしたり、参考書籍を置いたりできて、作業がしやすい
- 机が広いと単純に気分がよい
4. スタンディングデスクやソファーデスクを揃える
- 座りすぎは健康によくないため1、スタンディングデスクを用いて、たまには立って仕事をするとよい
- 長時間同じ姿勢で居ると疲れるため、ソファーデスクを使って仕事をするのもよい
- 1時間に1回くらい場所を変えるとよい
5. いい椅子を買う
- 同じ時間仕事をしていても、椅子によってだいぶ疲れが異なる
- 自分に合ったよい椅子を選べるのも在宅ワークのメリットの一つなので、今後も在宅ワークを続ける見込みがあるなら思い切って投資をするのもあり
6. 大きめのディスプレイを買う
- ディスプレイが大きいと作業効率が上がる
- 他方でサブディスプレイが多すぎると作業効率が下がるとの報告もある2
- 大きめのサブディスプレイを一つ準備するのが理想
7. 仕事中はテレビ・動画・ゲーム・ベッドを封印する
- 誘惑を断ち切って、仕事モードに突入するためには、テレビ・動画・ゲームなどは一旦封印する
- ベッドがある部屋で仕事をすると、すぐにベッドにダイブしたくなるので、布団を畳むなどして、容易にダイブできないようにしておく
8. 音楽をかける
- テレビや動画などの目を奪うメディアは集中力を奪うが、聞き慣れた音楽は集中を阻害しない
- 周囲の生活騒音等で集中を途切らせないようにするため、音楽を活用するのがおすすめ
- ノイズキャンセリングヘッドホンは騒音対策に効果的
9. 空調の温度を自分のベストに保つ
- 寒い部屋で仕事をしていると、すぐにこたつや布団に入りたくなってしまうし、暑い部屋に居るとぼーっとしたり、アイスを食べたくなったりする
- 部屋を快適な温度に保ち、余計な雑念が入らない環境を作っておくのがよい
10. 定期的に部屋を換気する
- 狭い部屋にずっと閉じこもっていると、息苦しく感じたり、不健康な気分になる3
- 二酸化炭素濃度が1000ppmを超えると眠気が増すという34
- 大人二人が居る部屋だと1時間程度で1000ppmを超える34
- 石油ストーブなどを使っているとさらに二酸化炭素濃度が上昇するのが早いため、定期的に換気をするのが望ましい
11. 照明は午前明るめ、夜暗め
- 仕事部屋の照明は常に明るければよいという訳ではない
- 自然光のように日中明るく、夕方から夜にかけて暗くなる環境の方が疲れにくく、働きやすいという調査結果がある5
12. 家事を自動化する
- 宿題をしようと思って机に向かったのに、机が汚くて、いつの間にか掃除を始めていたという経験がないだろうか
- 仕事部屋が汚いと掃除などに時間や集中力を奪われてしまうため、なるべく自動化しておくとよい
- 時短の効果が大きいのは、ロボット掃除機、全自動の乾燥機付き洗濯機、食洗機、電子レンジ
- 在宅ワークは家族にもストレスを与えるため、家事など揉め事の火種を予め消しておくという意味もある
13. たまに場所を変える
- いつも家の中で仕事をしていると、飽きるし孤独感を感じることもある
- そんな時は出かけて仕事の場所を変えてみるのも1つの手だ
- コワーキングスペースで仕事をしたり、クッションテーブルを車に積んで、景色の良いところにドライブに行って仕事をするのも気分転換になる(テレビ会議で商談するときに会話のネタになる)
- ただし、感染症対策でリモートワークをしている場合は、不要な外出は避けたほうがよい
生活習慣を整える
14. 生活リズムを一定にする、可視化する、無駄を削ぎ落とす
- 生活リズムを一定にすると、最初は大変だが、慣れることによって大変なことでも自然とできるようになる
- 生活リズムを一定にすることで、生活サイクルが可視化され、やり方を工夫したり、無駄を削減したりできるようになる
15. 仕事を始める前に服を着替える
- これからは仕事の時間だと気持ちを切り替えるためのルーティンを行った方がよい
- ルーティンの例としては、朝顔を洗って服を着替える、化粧をするなどだ
- これをやっておくと、突然のWeb会議でカメラに映ることになっても慌てなくて済むし、休憩時間に少し外出するなど、部屋着やパジャマよりもアクティブになりやすい
- そのため、カメラに映る上だけ着替えるとかはやめた方がよい
16. 集中とリラックスの時間をつくり、交互に繰り返す
- ある研究によると、困難な問題に本腰を入れてしばらく取り組み、生産性の低下やストレスの低下を感じ始めた後に、切り替えて休憩をしてリラックスをすると、創造的なアイディアや問題解決の方法がひらめく「ブレークアウト」(ゾーン)の状態になる6
- 集中とリラックスの時間を仕事のサイクルの中に組み込み、ゾーンに入りやすい状態をつくるとよい7
17. 前半に集中力が必要な仕事を終え、ミーティング等は14時以降に入れる
- 『時間の使い方を科学する』8によると、思考力は10時〜14時に高まるという
- 開発などの集中力を要することは前半に行い、メールのチェック、タスクの管理、ミーティングなどは後半に回すとよい
18. 記憶力が必要なタスクは夕方に空腹状態で
体調管理をする
19. 朝は散歩などの軽い運動をする
- 通勤がなくなる分、運動不足になりがちのため、生活サイクルの中に運動の時間を組み込む
- 散歩などの軽い運動をすることで、日光を浴びて目が覚めるといった効果もある
- ジョギングでもよいが、1週間に30〜40km以上を時速12km以上で走ることは、健康を害し寿命を縮めて、心筋梗塞のリスクを高めるとの研究結果もあるためやりすぎには注意が必要11
20. 多くの人が集まる閉鎖空間を避ける(感染症対策)
- 新型コロナウィルスについては、まだ正解が分かっていない部分もあるため、公の見解12には従いつつも、より悪いシナリオも想定して行動しておいた方がよいだろう(過剰反応と言われようとも、できることはやっておいた方がよい)
- 多くの人が集まる閉鎖空間(満員電車等)は当面避けたほうがよいだろう
- 接触感染の可能性もあるため、たくさんの人が触れるドアノブやつり革やエレベーターのボタンやお金等に触れた場合も手洗いを念の為する
21. 免疫を高める食事をとる
- 免疫力を高めるとされる食品が、感染症対策としてどれだけ効果があるかは分からないが、普段から心がけておいて損はないだろう
- よく紹介されているのが、ヨーグルト・納豆・みそなどの発酵食品、緑黄色野菜、海藻や小魚、緑茶、ねぎ、にんにく、生姜、りんご、豆、ごま、カレーなどなど131415
22. 定期的に立ち上がる、体を動かす
- 在宅勤務の場合は、同僚のところに相談に行くなど、立ち上がる機会も少なくなる
- オーストラリアの研究機関が座位時間と総死亡リスクについて調査したところ、1日の総座位時間が4時間未満の成人に比べて、8~11時間の人だと15%増、11時間以上だと40%増という1
- 1時間に1回(5分)は立ち上がって、体を動かす時間をつくるとよい
- また、前述のスタンディングデスクもおすすめ
23. 昼食後の眠気のピークに20分以下の仮眠を取る
- 適切な仮眠は生産性を高める
- 仮眠は眠気のピークに20分以下がよいとされている16
- ただし、遅い時間帯の仮眠は、夜の睡眠を阻害するため、14時以降の仮眠は避ける
- ベッドで寝ると永眠してしまうため、椅子のままネックピローなどを利用するのがよい
- 眠気のピークに目覚ましをセットするのが面倒な場合は、スマートスピーカーのタイマーが便利
24. コーヒーは14時以前に飲む
- コーヒータイムはリラックスにもよいし、カフェインは眠気に対抗するのにも有効
- ただし、カフェインは8時間以上体内に残るため、夜の睡眠の質を下げないよう14時以前に飲むのがよい17
25. 就寝の3時間以上前に仕事を終える
- 食べてすぐに寝ると健康によくない18
- メールチェックやWeb会議など、人とコミュニケーションをとるような仕事を寝る直前にやると、寝付きが悪くなることがある
- よって、寝る3時間以上前に、メール・チャット・Web会議などはやめて、食事を済ませるとよい
(他方で、寝る前に設計や実装方針で頭を悩ませていても、翌朝シンプルな解法が思い浮かぶこともある。本当に根詰めて開発をしたい時期であれば、個人であればやってもよいと思う。しかし、従業員として働いている場合は、労務上問題が発生する可能性があるため、会社の方針に従うべきだろう)
26. 7時間程度の睡眠時間を確保する
- 最新の研究では、「一晩に6時間半から7時間半の睡眠を取る人が、もっとも長生きで幸福度も高く、最大の生産性を発揮している」ことが判明。また、8時間以上の睡眠は健康に悪いという19
- プロとして質の高い仕事をしたいなら、睡眠時間は削らず7時間程度は確保する20
モチベーションをコントロールする
27. 自分のモチベーションの鉱脈を見つける
- 自分のモチベーションを自分でコントロールできると、いかなる状況にも対応しやすい
- 自分が何に対して興味がありやりがいを感じるか、何のためなら頑張れるのかを正確に把握し、それを仕事と結びつけると、モチベーションをコントロールしやすくなる
28. 目標を立てる
- 自分のモチベーションをコントロールする手段の一つが目標を明確にすること
- いつまでに何を達成するかを定めることで、今やるべきことに集中できる
- 金銭的な報酬などの外発的動機づけや罰則は、創造的な仕事にはマイナスに作用することがある20ため、お金は目標にしない方がよい
28. 自発的に取り組む
- 同じことをやるにしても、人から言われてやるよりは、自発的にやった方が気分がよい
- 内発的動機づけは、持続しやすいとの研究結果もある20
- 人に言われる前に自発的に取り組むのがよい
29. 新しいことにチャレンジする
- 人間には新しいことややりがいを求める傾向や、自分の能力を広げ、発揮し、探求し、学ぶという傾向が本来備わっている
- 新しいことにチャレンジしているときはやる気も出るため、普段の仕事をやる際にも、新しい要素を取り入れてみるとよい
30. 適時フィードバックを得る
- 心理療法士、大学入学審査員、企業の人事担当者、臨床心理士など、自分の仕事の結果がすぐには分からず、フィードバックが得られない職種では、10年以上の経験を積んでも、その判断能力は業務経験のない学生とほぼ同じという21
- 闇夜でゴルフの練習をしても、ボールがどこに行ったのか分からないため、上達もしないのと同じ構造
- 自分の仕事のフィードバックを適時得ることが、仕事の上達を促し、やる気も持続させる
31. チームメンバーや社外に自分の仕事や工夫をシェアする
- 自分の仕事に対して、フィードバックを得るには、その成果を常に情報発信しておくとよい
- 顧客に自分が作ったプロダクトを見せに行くのも有効なフィードバックが得られるよい機会となる
32. 自分のパフォーマンスハックを楽しむ
- 自分のパフォーマンスハックをするためには、常に新しいことにチャレンジしなければならないし、正しいデータを集めて改善に結びつけるためにもフィードバックを得ようとする
- パフォーマンスハック自体をモチベーションを高める手段として使うこともできる
33. 家族とコミュニケーションをとる時間を確保する
- 在宅ワークだと、家庭の問題が仕事に直接的な影響をもたらす
- 家族関係をよく保つことも、在宅での仕事のパフォーマンスを維持するために必要
34. 猫や子供に、たまにかまってあげる
- ネコや人間の赤子などかわいいものを見ると集中力が高まり、生産性が最大で44%高まることもあるという22
- また、ネコや子どもは、たまには構わないと機嫌を損ねて仕事の邪魔をしてくる恐れがある23
- そのため、たまにはネコや子どもと過ごす時間を挟むとよい
スライド
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参考文献
-
ハーバート・ベンソン、『ストレスの効果を最大限に生かす ブレークアウト原則の科学』、2006年12月、Diamond Harvard Business Review。 ↩
-
一川誠、『時間の使い方を科学する 思考は10時から14時、記憶は16時から20時』、2016年7月、PHP新書。 ↩ ↩2
-
池谷裕二、『記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス) 新書』、2001年1月、講談社。 ↩
-
堀忠雄、『快適睡眠のすすめ』、岩波新書、2000年7月。 ↩
-
ダニエル・ピンク、『モチベーション3.0 持続する「やる気」をいかに引き出すか』、講談社+α文庫、2015年11月。 ↩ ↩2 ↩3
-
マシュー・サイド、『失敗の科学 失敗から学習組織、学習できない組織』、ディスカバー・トゥエンティワン、2016年12月。 ↩
-
テレワーク最大の課題『キーボード上で絶対に動かないと決めた猫さん』各地でニャンサムウェアが猛威を奮う「デスクボードも占領」 ↩