こんにちは。10分で生産的なミーティングができるWeb会議ツール「minmeeting」を開発している伊勢川です。
minmeetingはすべて在宅ワークで開発を進めてきました。その開発の中で、いろいろ試行錯誤をしながら、在宅でもそれなりの生産性が維持できるようになってきました。
そこで、今回はITエンジニアが週末在宅ワークをする際に、生産性を上げるための工夫を、5つの観点から整理してそれぞれ紹介していきます。
時間の使い方をコントロールする
週末在宅ワークの鍵となるのが、いかに時間を確保するのかということです。ここでは、その時間の確保のための工夫を紹介します。
週に20時間以上を確保する
少し古いITエンジニアの勉強時間の時間の調査1によると、大半が週に3時間未満というデータがありますが、プログラミング能力を競うサイトの調査2では、11%の人が週20時間以上勉強や個人の開発に費やしているようです。
個人的な経験からしても、週に20時間というのは程よい時間で、少し頑張れば確保できるレベルです。平日は2時間、土曜に10時間を確保すれば、日曜は空けることができます。
まずは、週20時間の確保を目指しましょう。
無駄な時間をリストアップして、ひとつずつなくしていく
時間確保のためには、他のことをしていた時間を削らなければなりません。自分の生活の中で、無駄なもの、なくしてもよいものをリストアップして、ひとつずつなくしていきましょう。
NHKの国民生活時間調査3によると、20代〜30代の人は平日2時間以上テレビと趣味・娯楽のためのインターネット(SNS・ゲームなど)に費やしており、それをやめるだけで、平日2時間は確保できるようです。また、40代以上の人は平日2時間以上をテレビに費やしているため、テレビを捨てるだけで平日の時間は確保できるようです。その他、通勤・通学時間の平均は往復で1時間19分で、会社の近所に引っ越せば、さらに1時間くらい確保できます。
土日はテレビ・趣味・娯楽のためのインターネットの平均時間は4時間半くらいのため、土日両方のテレビ・インターネットの時間を削れば、9時間確保できます。また、雑誌・新聞・漫画・趣味の読書の時間が平均38分くらい、家事の時間が3時間くらいのため、それらを土日合わせて7分の1だけ短縮すれば目標の10時間に到達できます。
上記はあくまで一般的な平均で考えた場合ですが、自分の生活を見直して、削れるものを削っていけば、十分週に20時間は確保できるでしょう。
過剰なものを減らす
次に無駄ではないけれども過剰なものを削ります。
例えば、ブログの記事などを書いている際に、統計などを調べ始めると徹底的に調べたくなりますが、結局は最終的な記事に関係ないことが多いため、一定のレベルでさっさと切り上げたほうがよいでしょう。
また、勉強会や飲み会などで、人脈を広げる活動は大事ですが、特にITエンジニアの週末在宅ワークの場合、成果を出してなんぼであり、いくら人脈を広げても、成果がだせなければ意味がありません。人脈づくりに時間を費やすのも程々にして、成果を出す活動に時間を使いましょう。
スキマ時間のための考え事リスト、作業中断と再開を早くするToDoリストを書き出しておく
在宅ワークで時間を確保するためには、細切れのすきま時間も無駄にはできません。すきま時間に成果を出すためには、その時間でできることをすぐに思い出す必要があります。考える作業であれば、電車やエレベータの待ち時間のようなわずかな間でも十分に成果を出すことができるので、考え事リストをメモする習慣をつけておくとよいでしょう。
また、平日2時間しか確保できないとすると、作業の途中で中断をしなればならないことも多々あります。そのような場合は、ToDoを常に書き出しておくと、次に作業を再開するのが容易になります。
考え事リスト、ToDoリストによって、細切れの時間を無駄にしないようにしましょう。
1週間のライフサイクルを定義し、改善する
平日普通に働いていると、週20時間を確保するだけでも、最初のうちは結構たいへんです。これを継続するためには、生活習慣の中に在宅ワークの時間を組み込むのが重要です。朝方の人は、平日朝2時間と土曜に10時間、夜型の人は平日夕食後に2時間と土曜に10時間といった感じで、ライフサイクルを決めてしまいます。
このように、サイクルを決めると最初は大変ですが、しばらく続けていると慣れてきます。慣れてくると、もっとやり方を工夫して効率を上げようとか、新しいことにチャレンジしてみようとか、思いついてきます。
つまり、生活のサイクルを定義することには、①慣れることによって、大変なことでもできるようになる、②自分の生活サイクルを見えるようにすることによって、無駄を削減したり、やり方を工夫できるようになるという効果があります。
週に1日は休む
上記のように無駄を徹底的に排除した生活をしていると、遊びと刺激が少なくなりがちで、マンネリ化してしまいます。そうなると、発想力も下がってしまうため、週に1日は自由に使って、普段とは違うことをしたほうがよいです。
また、週に1日空けておくと、その一週間で予定通りに仕事が進まなかった場合のバッファーになります。そのバッファーを使えば、遅れを翌週に持ち越さなくてすみます。
週に1日くらいの余裕が作り出せるよう、計画的に仕事を進めましょう。
やる気をコントロールする
家で開発をやっていると、モチベーションの維持が大きな課題となります。ここでは、自分の意識をコントロールして、正しい方向にモチベーションを維持する工夫を紹介します。
モチベーションの方向性の集中
週末に在宅ワークをやるような人は、元々やる気に溢れており、モチベーションの維持とは無縁と思われるかもしれません。しかし、闇雲にやる気を出せばいい訳ではありません。あれもやりたい、これもやりたいといってやる気を発散させて、いろいろなものに着手すると、逆に何もできなくなります。
まずは一番何をやりたいかを明確にして、そこにやる気とエネルギーを集中させることで、一つ一つ成果を上げることができます。
目標設定
やる気を集中させるために重要なのは、目標設定です。いつごろまでに何を達成するかを定めれば、目標達成に必要なものにエネルギーを集中せざるをえません。
目標は年単位の大雑把なものが3年分くらいと、今年のクオーター単位の目標と、今週の目標があれば十分でしょう。細かく目標とスケジュールを定めることに、あまり時間を使うべきではありません。普段チームで仕事をしている人であれば、個人プロジェクトの管理くらいはほとんど手間をかけずにできるはずです。
目標を立てる際に注意が必要なのが、お金を目標にしないということです。お金は何かするための手段にすぎないので、それを目標にしてもやることの方向性が定まりません。
また、お金(利益)を中心に設計されたサービスは、提供者中心の発想に陥りがちで、顧客から見て魅力的に映りません。黎明期のサービスは、提供価値と比べてコストの方が高い傾向があり、そのコストを単純に按分して顧客に転嫁すると、高くて悪いサービスに仕上がってしまいます。その結果、成功確率を下げることになるでしょう。
とはいえ、慈善活動ではないので、いつどうやって投下したコストを回収するかの戦略は必須です。それがなければ事業継続は不可能であり、あたり前のことなので目標ではありません。
体をコントロールする
在宅ワークでは自分一人が主力のため、体調をコントロールして最高のパフォーマンスを発揮できるようにするのも大事なことです。ここではそのための工夫を紹介します。
睡眠は7時間くらいとる
毎日充実した生活を送るためには、毎日適切な睡眠時間をとることが重要です。寝不足で眠いとやる気が出ないし、作業効率もよくない。逆に眠りすぎると、今度はやるべきことに割く時間が少なくなってしまいます。
睡眠に関する研究4によると、適切な睡眠時間は7時間だそうです。3時間未満でも大丈夫な人は多いですが、ストレスが多い職種の人にとっては危険なのでやめた方がよいでしょう。逆に、9時間以上寝ても、眠りつかれるだけなので、時間の無駄です。
かつて3時間睡眠の生活に挑戦したことがあります。1週間のうち6日間は3時間睡眠で、日曜だけは好きなだけ寝るという生活です。1か月くらい続けましたが、当時は今ほど忙しくなかったため、1日に21時間も活動時間があると時間に余裕ができすぎて、結局ダラダラ過ごしてしまうので、やめてしまいました。やはり、普通に生活するのが一番のようです。
コーヒーは14時以前に飲む
コーヒータイムは気分をリフレッシュさせるのにちょうどよく、カフェインは眠気を飛ばす道具としても使うことができます。しかし、カフェインが体内にあると睡眠が阻害されるそうなので、コーヒーなどのカフェインがつよいものを飲むなら14時以前がよいようです5。
一番集中力を要するものは午前中にもってくる
『時間の使い方を科学する』6によると、思考力は10時〜14時に高まるということなので、開発などの集中力を要することは午前中に行い、メールのチェックやタスク整理やブログの更新などは午後に回すとよいでしょう。
記憶力が必要な勉強の際は、昼食を抜いて午後にやる
個人で仕事をしていると、必要なことはすべて自分で勉強しなければなりません。ネットをちょっと調べてわかるようなレベルのことばかりではなく、何週間も本腰を入れて勉強をしなければならないこともよくあります。
その際にオススメなのが、丸一日は勉強しないことです。成果を出すための勉強なので、ずっと勉強ばかりしていては意味がありません。
また、午前より午後の方が記憶力が高まる6とか、適度な空腹時には記憶力が高まる78とかいう研究結果もあるので、午前はいつもどおりアウトプットの仕事に費やし、午後は空腹の状態で勉強をすれば多少効果的になるのではないでしょうか。現代人はカロリー過多の傾向にあるので、時間がなければ昼食は抜いても支障はありません。
定期的に体を動かす
ずっと座っていると体に悪く9、眠くなってしまうため、30分〜60分に1回くらいは立ち上がって体を動かすとよいです。筋トレでもよいですが、あまりやりすぎると肩が凝ってしまうので、軽い体操程度に留めるのがよいでしょう。
アイディア出しの際は、集中とリラックスを繰り返す
ある研究によると、困難な問題に本腰を入れてしばらく取り組み、生産性の低下やストレスの低下を感じ始めた後に、切り替えて休憩をしてリラックスをすると、創造的なアイディアや問題解決の方法がひらめく「ブレークアウト」(ゾーン)の状態になる10そうです。
たしかに、いいアイディアが思い浮かぶのは、会議室の中や机の前ではなくて、別の何かをやっているときのことが多いような気がします。上記の理論に従うと、会議室や机の前で一生懸命考えている時間は無駄ではなかったということになります。
これを応用すると、「アイディア出し(集中)→運動(リラックス)→アイディア出し(集中)→シャワー(リラックス)」のように、一日のサイクルを集中とリラックスの組み合わせで構成するのがよいということになります。もちろん、アイディア出しの部分は開発に置き換えてもよいでしょう。
環境をコントロールする
会社と違って、家では仕事の環境は自分で作らなければなりません。ここでは、自分の仕事のパフォーマンスを上げるための環境づくりの工夫を紹介します。
机・場所を変える
いつも同じ机と椅子で、同じような姿勢で仕事をしていると、あまり長時間持続できないことがよくあります。会社の労働時間と週20時間を合わせると、かなりの長時間労働になってしまうため、会社と同じように座って仕事をするのは健康によくなく、効率も上がりません。
そのため、家では立って仕事ができるスタンディングデスクや、ソファーで脚を伸ばして仕事ができるクッションテーブルなどを準備しておくとよいです。立つのに疲れたら、普通の机に戻ったり、ソファーでリラックスして仕事をしたりと、30分おきくらいに机を変えることで、無理なく仕事を続けることができます。
写真:スタンディングデスク 写真:クッションテーブルまた、いつも家の中で開発を続けていると飽きてしまうので、たまにはコ・ワーキングスペースなどに出かけたり、クッションテーブルを車に積んで、景色のよいところで開発をするのもよいでしょう。
写真:大手町のワーキングスペース 写真:宮島の山頂での開発普段大きなサブディスプレイにつないで仕事をするのに慣れていると、機動性に欠けるため、サブディスプレイに頼らなくてもノートPCだけで仕事が進められるようなテクニックを身に着けておくとよいでしょう。なお、開発やデザインの際は大きなディスプレイがあった方が便利なことが多いですが、モニターを増やしすぎると集中力が削がれるという記事もあります11。いずれにしろ道具に振り回されない程度の慣れは必要でしょう。
午前は照明を明るめに設定し、夜は少し下げる
昔から明窓浄机という言葉があるように、明るい環境では目が冷めて仕事がやりやすいと思う人が多いのではないでしょうか。照明計画と知的生産性に関する研究12によると、オフィスの照明の色や明るさとその変化によって、ストレスや知的生産性に影響があるそうです。一様に明るければよい訳ではなく、朝2時間昼光照明環境に居ると、知的作業においてはプラスだったとのことです。
一般に家の照明だけでは調整が難しいので、電気スタンドや間接照明などで、明かりをコントロールするとよいでしょう。
写真:間接照明に使いやすいライト 写真:間接照明を点灯するとまた、夜にあまり明るい環境に居ると睡眠を阻害することがあるため、夜は少し照明を落として、リラックスしながら仕事をするとよいでしょう。
定期的に換気をして、空調で温度をコントロールする
同じ部屋にずっとこもっていると、息苦しく感じることがあると思いますので、定期的に換気をしましょう。また、暑かったり寒かったりすると、集中力を持続させにくくなるため、よけいな気がちらないように、自分にとって快適な空調設定を編み出しておきましょう。
テレビを捨てる
時間のコントロールのところでも書きましたが、平均するとテレビを見る時間は週の自由時間のうちのかなりの割合を占めています。若い世代ではテレビをあまり見ない人が増えてきましたが、それでも平均すると週に14.5時間くらいを消費しているという調査結果になっています3。
テレビがあるとつけてしまうとか、テレビはつけてるけどあまり見てないという人が結構いますが、集中して仕事をするためには邪魔なものなので、いっそのこと捨ててしまえばよいでしょう。(少なくとも仕事部屋からは追い出しましょう。)
音楽を使う
家で仕事をしていると、さまざまな生活騒音などがあったりして、集中の邪魔になることがたまにあります。テレビを捨てて音がない部屋では、生活騒音なども比較的目立ってしまいます。そういう事態を防いで、集中力を維持するために、音楽を使うとよいでしょう。
同じ音楽を聞いても人の感じ方は異なるため、自分が集中しやすい音楽を探すとよいでしょう。ただ、何度も聞いて慣れてくると、別にどの曲でも大差がなくなるので、周囲の騒音をかき消して、集中させてくれるものならなんでもよいかもしれません。
単に音を流しておくだけなら、Google HomeやAmazonのAlexaのようなAIスピーカーで十分でしょう。そして、聴き放題などのサービスに契約しておくと、音楽を買い集める手間が省けます。
家事を自動化する
勉強を始める前に、机の掃除を始めてしまい、調子にのって部屋の掃除まで始めてしまうといった経験は、多くの人があるのではないでしょうか。
そのように横道に逸れてしまうのを避けるため、家事はできる限り自動化して、余計な時間を使わないようにしておきましょう。
自動化や時短の効果が大きいのは、ロボット掃除機、全自動洗濯乾燥機、電子レンジ、食洗機などです。家事の手間と時間を大幅に減らしてくれて、やるべきことに集中することができます。
アウトプットをコントロールする
最後に、そして、最も重要なのが、何を作るのかということです。売れないもの、誰にも使われないものを作っても、生産性はゼロです。生産性を上げるためには、作るところの効率だけではなく、どのようにしてユーザに届けるかという点についても工夫をこらす必要があります。ここでは、その工夫を紹介します。
1週間に20個以上のアイディアを出し、それを書き留める
製品を世に出すまでには、幾多の困難を乗り越える必要があり、その際に問題を解決するための数多くのアイディアが必要になります。そして、よく売れている製品を注意深く見ると、ほぼ例外なく数多くのアイディアが含まれていることに気づくでしょう。このように、一つの製品を実現して、それが売れるようにするためには、膨大な数のアイディアが必要となります。
そのため、日頃からアイディアを出す癖をつけておきましょう。目安としては1週間に20個くらい(年間1000個)です。そして、せっかく出したアイディアは記録しておきましょう。それらのアイディアのストックは、困難にぶち当たった時や、新たな転換をしたいときにも役立ちますし、製品の特徴をより尖らせるためにも使うことができるでしょう。
何を作るのか、短くわかりやすい言葉でまとめる
週末にプライベートな時間を使ってわざわざ在宅ワークをしているということは、おおよそ何か作りたいものがあるはずです。もし、まだ具体的に作りたいものが決まっていない場合は、もう少しアイディア出しと思考実験を続けた方がよいでしょう。
作りたいものが決まっている場合は、それがどういったものなのか、短い言葉で説明ができるようにしましょう。例えば、Qiitaの場合は、「プログラマの技術情報共有サービス」となっており、誰が何をするためのものかが簡潔に示されています。
使う人を明確にし、よく観察する(フィールドワークを取り入れる)
製品を誰に使ってもらうのかを具体的にイメージし、そのイメージに合致する人を探して現場に行ってよく観察します。
フィールドワークのポイントとしては、まずは自分の作ろうとしている製品とは関係なく、あまり予断を持たずになぜユーザがそのような行動を取るのかを観察したり、質問したりします。
そして、ある程度製品のイメージが固まってきた時点で再び現場に行き、自分が作ろうとしている製品・サービスがあったらどのように使われて、何が良くなるだろうかということを、観察しながら何度も思考実験を繰り返します。
自分が欲しいもの、または身近な人が欲しいものを作る
儲かりそうだから、流行りそうだからという理由で、自分が欲しくもないものを作るのは賢くない選択かもしれません。週末在宅ワークの場合、個人や少人数でやっていることが多いと思いますので、モチベーションの維持がキーとなります。しかし、自分が欲しくないもののためにモチベーションを維持するのはなかなか大変なことです。
もちろん他人のために役に立つことであっても、身近に困っている人がいれば、モチベーションを維持することはできます。しかし、目に見えないし、存在するかも分からない人のために、役に立つかどうかも分からないものを作るというのは難しいことでしょう。
自分が欲しいものか、身近な人がどうしても欲しいものを作ることで、現実に存在する課題を解決し、モチベーションを維持し、継続的に発展できるようにしましょう。
効果を明確にし、効果を出すための具体策を考える
その製品を使うとどのような効果があるのか、狙っている効果を明確にしましょう。コンセプトだけではダメで、具体的にどうやってその効果を出すのかを明確にします。キーとなるアイディアが見つかるまで、実験とアイディア出しを続けましょう。
例えば、世界的に有名になったビジネスチャットツールのslackでは、少し前まで「忙しさを減らす」というようなコンセプトを打ち出していたと思います。「忙しさを減らす」ために、まずはgithubやjenkinsやtrelloなど様々なシステムと連携できるAPIを充実させて、チームで作業する際の雑務を自動化できる状態にしました。そして、自動化するプログラムを作ってくれるエンジニアをターゲットに普及させることで、多くのシステムと簡単に連携できるようになりました。現在では、エンジニアでなくてもいろいろとシステムをつなぎ合わせて作業を効率化できるようになっています。(slackの内部事情はよく知りませんが、外から使っているとそのように見えました。)
このように効果を出すための具体的な道筋を作ることで、ユーザに価値を届けることができます。
類似品・代替を調査し、それと何が違うのかを明確にする
ここまでいくと、製品のアウトラインはおおよそイメージできるようになっているはずです。では、その自分がイメージする製品の類似品や代替品が世の中にないかを調査しておきましょう。
Googleで検索するだけでもよいですが、他人に自分がつくりたいものを説明してみると、相手は「○○みたいなもの?」と質問してくるでしょう。人間は自分が知らないものを創造するときに、自分が既に知っているものから類推することしかできないからです。その「○○」は、ときに的外れですが、たまに自分が気づきもしなかったような類似品や代替品を教えてくれることがあります。
たいてい類似品・代替品が見つかります。その場合は、類似品・代替品と何が違うのかを明確にしておきましょう。もし類似品・代替品が一切見つからない場合は、世紀の大発見か、世の中に需要がないクソアイディアかのどちらかでしょう。
少しだけ新鮮味を加える
世の中には似たような製品が溢れかえっています。中には絶対にパクったとしか思えないような類似機能や見た目の製品もよく目にします。
そのような状況を目の当たりにすると、既存の成功した製品をそのままパクって作れば、高確率で成功できるのではないかという考えがよぎります。
確かに市場のトッププレーヤーが下位の競合製品の機能をパクることはよくありますが、それは下位の競合製品の特徴を消すためで、パクったら売れそうだからというバカな理由でやっている訳ではないと思います(そう信じたい)。
週末在宅ワークは一般的な企業と比べて超ローコストで開発ができるため、そのローコストを活かして既存製品をパクって低価格で売るという戦略もありえます。しかし、それで万一成功して事業を拡大しようとすると、オペレーションコストも増大するため、優位な価格が維持できなくなります。成功したら破綻するという賢くない戦略でしょう。
また、既に世の中にあるものを、そのままパクって作っても意味がありません。新たに製品を作るのだから、最低限一つは何か新しいもの(新鮮味)がなければなりません。
プライベートな時間を使ってわざわざ世の中に製品を出すのだから、泥棒のような姑息な戦略はとらず、エンジニアとして誇りを持てるような製品を作っていきましょう。
馴染みのある見た目にする
デザイナーというと、奇抜でカッコイイ絵を描く人のように思うかもしれません。しかし、プロのデザイナーの作品をよく観察して見ると、現代アートのような奇抜な作品はほとんどなく、どこかで見たことがあるような分かりやすくて安心感のある見た目が多いのではないでしょうか。
見た目は、購買などの意思決定をする際には重要な要素です。例えば、見るからにパン屋さんという見た目のお店であれば、初めてのところでも何の店か分かりやすく気兼ねなく入って買い物をすることができますが、民家に「パン工房」という看板だけ出ているような店構えだと、入っていいのかもわからないし、一般人にパンを売っているのかさえわからず躊躇してしまいます。
Webサイトや製品の見た目も同じことが言えて、ユーザーに安心をして使ってもらうためには、ある程度目的に応じた馴染みのなる見た目にする必要があります。
常識を壊すような新しい製品であっても、ユーザーが理解できるような見た目でなければなりません。
プロトタイプを素早く作って、実際に使ってもらう
作るものが決まったら、時間をかけて作り込む前に、製品のコンセプトとなる部分を最低限作ってみて、想定ユーザーに実際に使ってもらいましょう。
この時点では、品質は不十分でしょうから、理解のある身近な人に協力してもらうのがよいでしょう。
実際に使い始めると、いろんなことが見えてきます。不便な点、足りない点、思った以上に受けが良い点などが多数挙がると思います。それらを改善しながら、当初想定していた価値があるか否かを検証します。
ある程度価値がありそうだという段階まで来たら、今度は想定顧客に使ってもらいます。ここでは人数を増やすことよりも、少人数の人に実際の利用環境でヘビーに使ってもらって、意図した効果が存分に発揮できるようになるまで改善することに集中しましょう。
このフェーズでは、とにかく時間とお金をあまりかけずに素早く試すことがポイントです。ただし、乱暴な顧客実験は顧客の信頼を失うことにつながるため、事前・事後の十分な説明を心がけて、勝手過ぎるサービス変更や停止は避けましょう。
適度に品質を高める
あるマーケティング会社の調査によると、顧客が製品を支持・推奨するかどうかに最も重要な影響を及ぼすのは、顧客の目から見た品質だった13そうです。
日本の企業の多くがこれまで過剰品質によって生産性を下げてきたという意見もありますが、結局あたり前レベルの品質はいずれにしろ求められることになります。
「顧客の目から見た品質」というのが曲者で、顧客にもいろんな人がいるため、様々な使い方において、かなり多角的に品質を評価する必要があります。製品の仕様をよく知っている人が、多角的に評価をするのにも限りがあるため、「顧客の目」を借りられるような仕組みづくりが重要です。
具体的には、パイロットユーザ(この時点では数百名程度を想定)に、実際に使ってもらいながら、アンケートを実施したり、顧客の実際に取った行動を計測していきます。例えば、一度製品を使ってみたユーザがどのくらい使い続けているかとか、製品を使った人がTwitter等のSNSでどのくらい拡散してくれているかといった行動を計測し、評価します。
あまり継続率が低いようだと、ユーザの期待に答えていない可能性が高く、機能性や品質に問題があるかもしれません。他方でSNSによる拡散が多いと、人に進めたいくらいすばらしいと感じていると推定できます。拡散された情報を受け取る人の数×情報を受けた人が使い始める確率が1を超えれば、その製品は自動的に広まっていくため、そこまでいけば拡販に向けた準備にシフトできます。
効果的にユーザに届ける道をつくる
製品がある程度できたら、一気に広告や営業をかけて拡販路線に舵を切りたくなりますが、焦りは禁物です。
初期段階においては、まずは顧客がその製品をどのように使用するのかを学習し、製品そのものと戦略の完成度を高めることに集中するのがよいでしょう。その内容に応じて、製品・ポジショニング・宣伝活動・販促資料などに微調整をかけていきます14。
マーケティング・営業プロセスの微調整の際は、顧客に会いに行って話を聞いたり観察をしたりするのが基本です。その上で、カスタマージャーニーマップなどを用いて、想定顧客がどのようにしてその製品を知り、使い始め、使い続けるのかを整理し、各段階での問題点を洗い出してみます。その中で重要なものについては、実際に顧客の行動を計測してみましょう。システマチックに計測できない場合は、人力で聞いて回るのでも構いません。
もちろん、準備が整うまで営業をするなという意味ではありません。すべての問題が解消するまで何もしないというのは最悪なパターンです。焦らず改善を続けて、拡販して効果が出る状態になってから拡販に予算をつぎ込むのがよいという意味です。
協力者が参加しやすいよう、ビジョンと受け口をつくる
製品・サービスの立ち上げ時期は、とにかくやることが多く、一人では手に負えないこともあるでしょう。しかし、まだ資金が潤沢にある訳ではないため、ほとんど手弁当で協力をしてもらうことが多々あると思います。
そんな際は、手弁当でも協力する価値があることを示すために、きちんと事業のビジョンは明確にしておきましょう。
また、githubやslackやgoogle appsなどのコラボレーションツールを準備して、協力者が貢献をしやすいような仕組みを揃えておきましょう。
長くなりましたが、これまで試してきた在宅ワークの生産性を上げる工夫は以上です。全部やると大変ですが、部分的に試すにはそれほど大変ではないものばかりです。生産性改善に興味がある方はぜひご自身でお試しください。
あとちょっと追加したいものがありますが、今すぐには書けないため、また後ほど追記したいと思います。
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参考文献
-
堀忠雄、『快適睡眠のすすめ (岩波新書)』、岩波新書、2000年7月。 ↩
-
一川誠、『時間の使い方を科学する 思考は10時から14時、記憶は16時から20時』、2016年7月、PHP新書。 ↩ ↩2
-
池谷裕二、『記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス) 新書』、2001年1月、講談社。 ↩
-
ハーバート・ベンソン、『ストレスの効果を最大限に生かす ブレークアウト原則の科学』、2006年12月、Diamond Harvard Business Review。 ↩
-
Eric Almquist, John Senior, Nicolas Bloch、『すべての商品・サービスに通用する 顧客がほしいと思う30の価値要素』、2017年3月、Diamond Harvard Business Review 顧客は何にお金を払うのか。 ↩
-
Mark Leslie, Charles A. Holloway、『組織学習を加速させる 営業学習曲線のマネジメント』、2006年10月、Diamond Harvard Business Review 最強の営業力。 ↩