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【2025年 AI元年】初心者から始めるAIエージェント構築について

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はじめに

生成AIは「答える」だけでなく、APIやアプリを呼び出して仕事を進めるAIエージェントの時代に入りました。本記事は、設計→実装→運用の土台作りを最短距離で学べる実務ガイドです。RAGやツール連携、ガードレール(安全策)を“手戻りしない順番”で解説し、言語選定(Python/TypeScript中心) や最小サンプルまでまとめます。
読み終えると、明日からMVP(最小実用)エージェントを作れる地図とテンプレを手にできます。

想定読者:初心者〜中級(プロトタイプ経験がある人はよりスムーズ)。

目次

全体像:AIエージェントとは

AIエージェントは、目標を受け取り、計画を立て、ツール/APIやUI操作を通じて実行し、結果を観測して次の行動に反映する仕組みです(Plan–Act–Observe のループ)。
重要な構成要素は次の3つ。

  • ツール利用(Tool/Function Calling):LLMが事前定義した関数・APIを安全に呼ぶ。2025年ではMCP(Model Context Protocol)という標準プロトコルにより、ツールの検出可能性と実行が標準化されつつあります。
  • メモリ:短期(会話コンテキスト)と長期(ユーザープロファイル/履歴)
  • HITL(Human-in-the-Loop):高リスク操作は人間の承認を挟む

プラットフォーム/フレームワークの選び方

  • マネージドサービス(例:OpenAI Assistants API、Google Vertex AI Agents、AWS Bedrockなど)
    可観測性や権限管理、スケールが取りやすく、企業導入に向く。まずはプレイグラウンドでプロンプト・ツール呼びを確認→コード化が楽

  • OSSフレームワーク(LangGraph / AutoGen / CrewAI / OpenAI Agents SDK など)

    • LangGraph:グラフベースの状態管理に優れ、複雑なワークフローの可視化に強い
    • AutoGen:会話駆動型のマルチエージェント協調に適している
    • CrewAI:ロールベースのタスク委譲で、チーム構造の表現が直感的
    • OpenAI Agents SDK:軽量で初心者に優しく、迅速なプロトタイピングに最適

    制御フロー(状態遷移や分岐)を見える化しやすく、複雑化しても落ち着いて保守できるのが強み。一部はマネージドプラットフォーム版(例:LangGraph Platform)も提供。

指針:急ぐPoCはクラウドPaaS、制御したい本番はOSS+必要最小限のマネージド機能、のハイブリッドが現実的

設計の要点:目的・道具・ガードレール

  1. タスク境界:自動化の範囲を限定(例:FAQ回答、経費登録、在庫照会)
  2. ツール定義:呼べるAPIの引数・戻り値・エラーをスキーマ化し、LLMから関数呼び出しで実行。MCPに準拠したツール定義を採用すると、異なるエージェント間での相互運用性が向上します。UIしかない場合はブラウザ操作で補完。UIしかない場合はブラウザ操作で補完
  3. ガードレール:ステップ数・実行時間・トークン・費用の上限、扱うデータ境界(PII等)、危険操作前の人間承認

システム構成:MVPから本番へ

MVP(最小構成)

  • LLM(会話+ツール呼び出し)
  • RAG:ベクトルDBで社内文書にアクセス。最新のベストプラクティスでは、ベクトル検索(意味的類似性)とフルテキスト検索(キーワード精度)を組み合わせたハイブリッド検索が推奨されます。
  • ツール層:SaaS/自社APIを関数化
  • ログ&トレース:入力・出力・ツール結果・コストを保存(後述の運用に効く)

本番化の拡張

  • メモリ:短期/長期/エピソード(失敗学習)
  • 状態遷移設計:計画フェーズと実行フェーズを明確に分離し、グラフベースのワークフローで管理
  • ストリーミングRAG:リアルタイムデータ(Kafkaなど)から継続的にベクトルDBを更新し、常に最新情報を提供
  • キュー/リトライ、サーキットブレーカ、Webhook連携、監査ログ恒久化

言語選定の実務:Python/TypeScriptを主軸に

  • Python(主用途:エージェント制御・RAG・評価・MLOps連携)
    主要OSSのエコシステムが最も厚い。FastAPIでツール群を薄く立てやすく、Pydanticでスキーマ安全
  • TypeScript/JavaScript(主用途:UI付きエージェント・社内SaaS連携・ブラウザ自動化)
    Next.js/Nodeでフロント〜API一体開発。Playwrightや各SaaS SDKが豊富
  • Go(主用途:高速・安全なマイクロツール)
    静的バイナリで配布・権限管理がしやすく、ネットワークI/Oも得意
  • Java/C#(主用途:既存業務基盤との統合)
    認証/監査/ESBなどレガシー資産との接続で安定
  • Rust(主用途:サンドボックス化した高信頼処理)
    外部コマンド/ファイル操作などリスクの高い処理を安全に包む

実務ではPythonが圧倒的主流(エージェントフレームワークの大半がPython製)、次いでTypeScript(フロントエンド統合・SaaS連携)が続きます。Go/Rust/Java/C#は特殊用途での採用となります。

実装パターン3選(RAG/業務プロセス/UI操作)

1) エージェントRAG(社内FAQ・規程案内)

  • 入力正規化 → ハイブリッド検索(ベクトル+フルテキスト) → 再ランキング → 引用付き回答
  • ベクトル検索は意味的類似性に強く、フルテキスト検索は正確なキーワードマッチに強いため、両者を組み合わせることで検索精度が大幅に向上します。
  • 「不確実」や「規程抵触の恐れ」は自動で人間エスカレーション
  • 期待値:検索精度・引用率・一次回答率

2) 業務プロセス・エージェント(経費・発注)

  • 入力検証 → 会計SaaS API登録 → しきい値で承認フロー → 監査ログ
  • 期待値:処理件数/時間、承認待ち率、エラー再実行成功率

3) UI操作エージェント(RPA代替/補完)

  • 画面を解析してクリック・入力・添付
  • APIがない旧システムや一時的自動化に有効(権限と監査は厳格に

セキュリティ/ガバナンスの勘所

  • 最小権限:外部SaaS・社内APIのスコープを絞る
  • 危険操作の承認:送金・削除・公開などは多段承認+記録。RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)により、人間の修正をエージェントの学習に反映させる継続的改善ループを構築。
  • データ境界:PIIや機密の入出力をレイヤで分離し、マスキングや匿名化を適用
  • 監査ログ:入力・出力・ツール引数/結果・モデルID・バージョンを保存
  • ネットワーク:外向き通信のドメイン制限、プロキシ越しの可視化

導入チェックリスト(段階移行の型)

  1. KPI定義:成功率・TTR(解決時間)・コスト/件・承認率
  2. データ整備:RAGコーパスの構造化(PDF/表の分割、タグ付け)、更新運用。ストリーミングデータ源がある場合は、リアルタイム更新パイプラインの設計も検討。
  3. ツール設計:APIスキーマ、タイムアウト/リトライ、サーキットブレーカ、失敗時ロールバック。可能な場合はMCP準拠のスキーマ定義を採用。
  4. アーキテクチャ:単一エージェント → プランナー分離 → マルチ/階層化
  5. 運用設計:SLO、アラート、デプロイ戦略(フェーズドリリース、フラグ制御)

よくある落とし穴と回避策

  • “何でもできる”病 → ユースケースを極小に切る(例:FAQの中でも“社内ITヘルプ”だけ)
  • データ未整備 → RAGは前処理と更新運用が9割。構造化・重複排除・要約を標準手順化
  • 無制限実行 → ステップ数/時間/トークン/費用の上限を先に設ける
  • ブラックボックス化 → ログ/トレース/監査を最初から入れる(後付けは高コスト)
  • UI操作の暴走 → 権限を最小化し、HITLで高リスクは人が承認

まとめ

エージェントは“魔法”ではなく、限定された目的・明確なツール・安全弁で初めて価値を出します。
まずは Python/TypeScriptを軸に、RAG+ツール呼び出しのMVPを動かし、運用しながらGo/Java/C#/Rustを道具箱として追加。
プランナー分離監査ログまで押さえれば、PoC止まりを卒業し、現場で回るエージェントに育てられます。


免責事項: 本記事は当社が確認した時点の情報に基づく参考情報であり、正確性・完全性・最新性を保証せず、利用により生じたいかなる損害についても弊社は責任を負いません。

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