レストランや食品工場など、家庭以外で食品を生産する場所では、食中毒を起こさないように、家庭内より厳しい管理が行われている。
それは、同じ食品を一度に大量に作るため、もし食中毒菌が紛れ込むと、多くの食品に広がり、多数の食中毒事故を引き起こしてしまうからである。さらに、作ってから食べるまでの時間が長いため、食品内で菌が増殖する時間も長くなり、多くの菌を摂取してしまう可能性が高まる。
レストラン厨房の食品衛生
食品衛生の基本
レストラン厨房では、調達した食材や調味料を使って料理を作るが、そこに食中毒菌が入り込むルートは多種多様である。
食材自体に紛れ込んでいるもの、食材を入れた容器に付着しているもの、料理人が持ち込むもの、料理に使う水に含まれているもの、空気中を漂う浮遊菌、ゴキブリやネズミなどが運び込むものなど、さまざまである。
衛生教育の実態
筆者の知っている施設では、年1〜2回、厨房スタッフを集めて座学による集合教育を行うところが多いが、厳しい管理を行う企業では毎月実施している。
教育の基本は手洗いであり、正しいとされる手洗い方法を実際に行ってもらい、洗い残しを薬剤で可視化して改善を指導する。そのほか、食中毒菌の種類や増殖条件、対策などについても座学で学ぶ。
害虫対策の実際
ゴキブリなどの害虫・害獣対策としては、ゴキブリホイホイのようなトラップを設置し、月1回、衛生検査業者がそのトラップをチェックする。
同時に殺虫剤を噴霧し、捕獲状況を総務課から料理長に報告して清掃の徹底を促している。また、3か月に1度、立入検査を行い、清掃が適切に行われているか、食器や食材倉庫、冷蔵庫の戸締まりが確実にされているかを確認している。
ただし、手洗いのように毎回詳細な指導を行うわけではなく、報告書に「ゴキブリ○匹発見」と記載される程度で、写真が添付されることはほとんどない。
教育ツールの提案
教育にリアリティを持たせ、ゴキブリ対策(すなわち日常的な清掃や戸締まり)を真剣に実行してもらうための工夫が必要である。しかし、本物のゴキブリを毎回授業に持ち込むわけにはいかない。
そこで、厨房の作業台の上にARマーカーを置き、スマホのカメラを向けると、作業台の上をゴキブリが動き回るAR映像を表示するシステムを作った。
普段使用している作業台の上でゴキブリが這い回る映像を見ることで、「なんとしてもこれを防ぎたい」という意識を持ってほしい。
試しに、PC上ではあるが、palanARでゴキブリアバターを出現させてみた。
以下URLです。(閲覧注意!イラストだけど)
https://youtube.com/shorts/AO7XKFdquFY
今後の改善
ARはホテルのバックヤードの通路を覚える訓練(避難訓練への活用)や、よく知らない事業所への応援勤務(実際によくある)に行く前の事前確認にも役立つ。実際に、消火・避難訓練に活用している企業もあるという。
本害虫対策教育ツールについては、今後は、同時に2〜3匹のゴキブリが動き回るAR映像に改良していきたい。