こんにちは、座禅いぬです。
この記事はマナビDX Quest で得たもの Advent Calendar 2025 シリーズ2の14日目の記事です。今回は、僕が最近話題だからと「Physical AI」に挑戦し、見事に撃沈した体験談をお話しします。
Physical AIとは何なのか
2025年のCESでNVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏が、AIの進化を4段階で説明していました。知覚AI → 生成AI → AIエージェント → Physical AI。僕たちがChatGPTで衝撃を受けた生成AIは、実はまだ「第2段階」に過ぎないというのです。そして現在AIエージェントの時代に突入しています。Physical AIは、AIが文章や画像を生み出すだけでなく、ロボットなどの「身体」を通じて現実世界で行動・学習する知能のこと。製造業や物流、介護など、人手不足が深刻な現場での活用が期待されています。
僕の本業は現段階ではロボットとは関係ないのですが、DXの仕事をしていると「次に来るもの」は常に気になります。また、いつか自分の領域でこの技術が猛威を振るうだろうと想像していおり、Physical AIが実用化されたら、現場のオペレーションは根本から変わるかもしれないと思っています。そこで、何もわからないながらチャレンジしてみることにしました。何事も体験してみないとわからないですからね。
Lerobot SO-101を買ってみた
Xでよく話題になっているのがHugging FaceのLeRobotプロジェクトという、オープンソースのロボティクスプラットフォームです。その中で紹介されているSO-101というロボットアームは、低価格ながら実際に模倣学習をさせたりいろいろ勉強出来てよさそうでした。3Dプリントパーツとサーボモーターで構成されていて、自分で組み立てるキットになっています。「これなら手が出せる」と思い、勢いで購入しました。
最初は「なんとかなるだろう」と思っていました。しかし現実は甘くなかった。組み立ての段階でいきなり挫折してしまったのです。そもそも3Dプリンタを持っていないので、通販で買ってみたところ謎のモーターがいくつか詰まっただけの箱が届きました。終わった。何から何までわからないことだらけでした。
幸い3Dプリンタでパーツを作成代行してくれるところを見つけたので、そこで注文しました。届いたパーツを見て、だいぶイメージができてきたものの、改めてモーターが複数種類あったりさっぱりわからん。やはり挫折しました。勢いダメ絶対。
仲間と秋葉原のメーカースペースへ
一人で悶々としていても仕方ないので、ネットで色々地道に調べていきます。すると「秋葉原にロボ☆スタディオンというメーカースペースがあって、そこで勉強会とかもやっている」という情報が。これは行くしかない、というかよく見たら3Dプリンタ出力代行してくれたところじゃん。ということで、東京に行く機会があれば行きたいなと虎視眈々と機会をうかがっていました。
するとちょうど東京に行く予定が。マナビDXクエストで知り合った人ともちょうど会えそうだったので、一緒に行ってきました。ロボ☆スタディオンは末広町駅から徒歩1分の場所にある、ロボットや電子工作のための作業スペースとのこと。3Dプリンタやオシロスコープ、はんだごてなど様々な機材が揃っていて、ワンデイドロップインが1,800円で利用できます。行ってみるとまさかの、組み立て済みのSO-101が置いてありました。
想定外、リアル脱出ゲームのような試行錯誤
実機を目の前にして、大興奮。触ってみてもいいか聞いたところ、OKとのこと。テレオペレートならすぐできるから試してみたら?ということだったので、ありがたく試してみます。しかしここからが本当の戦いでした。
LeRobotを動かすには、まずPythonの仮想環境を作成して、必要なライブラリをインストールして、キャリブレーションを行う必要があります。セットアップ済みと思いきや、なぜか一通りやり直さないと動かない気配。仮想環境に入らなきゃいけないことに気付かなかったり、どの仮想環境で何が準備できているのかわからずLinuxコマンドで必死に調べたり。ドキュメントは英語で、細かいところは自分で解読していく必要があります。
一緒に行った人はみんなエンジニアリングの素養があり、Linux、Pythonの環境構築などわかる人ばかりだったんですが、やっぱり突発だとなかなか難しい。でも、一人では詰むところを、生成AIを活用しながらみんなで解決していく。「このエラーメッセージ、何だろう」「ChatGPTに聞いてみよう」「あ、パスが通ってないみたい」。なんかこれ、リアル脱出ゲームみたいで楽しい...と思い始めていました。
結論:タイムオーバーで撃沈
結論から言うと、動くところまで行きませんでした。キャリブレーションの途中で、次の予定の時間が来てしまったのです。ロボットアームは微動だにせず、僕たちはスタディオンを後にしました。
でも不思議なことに、まったく落ち込んではいませんでした。むしろめちゃくちゃ楽しかったのです。Physical AIの世界に一歩踏み入れて、何がわからないのかがわかった。組み立ての完成形、キャリブレーションの手順。これらは一人で家でドキュメントを読んでも素人にはハードルが高いです。仲間と一緒に試行錯誤したからこそ、チャレンジするハードルがぐっと下がったと感じています。
まとめ
Physical AIは、生成AIの次に来ると言われている大きな波です。おそらくDXの文脈でも非常に大きなトピックとなっていくと思います。でも、実際に手を動かしてみると、まだまだ敷居は高い。
自宅にはまだ組み立て途中のSO-101が眠っています。年末年始、今度は今回の経験を活かして、リベンジするつもりです。