米田の補題は、圏論でもっとも重要な定理です(繰り返し)
圏論は、数学の基礎理論です。いままで、万物の理論
といわれていましたが、数理科学 11月号では、なんと 万物・万事・万人のための数学理論とまでいわれるようになりました
このAdventCalendar は、体験的に圏論の最も重要な定理である米田の補題を体験的に理解してもらうためにかいています
参考にしているのは、圏論の道案内です
関手の例 反変関手
前回は、対象が2つしかないとしかも射の方向性が一方通行にして、射をひとつに限定して合成も無視しましたが、今度は、逆方向も考慮します。すると射は2つになるので、射の合成も考慮できます
少しづつ、米田の補題に近づけて理解するようにします。関係の矢印は、向きが逆のこともありますね。Aは、Bが好き とBは、Aが好きでは、向きが逆です。圏Cについて、矢印を全部反転させた圏を考えましょう。これも圏になります。ある圏を想定すると、構造の似た圏をどんな圏に対しても想定できるのです。
C にop(反対の意味のoppositの略op)をつけて書きましょう。
$$
{\LARGE C^{\small op}}
$$
関手の定義では、合成が移ります。移るときに、順番がひっくりかえるF(f∘g) = F(g)∘F(f)場合はこの定義によく似ています。でも残念ながら、これでは、関手の定義からはずれてしまいます。説明をしませんが、関手の定義を満たしていると、いろんな定理が証明できます。それで、これも関手だとしたいのです。
$$
{\Large 圏Cのかわりに}
{\Large 圏C^{\small op}を使えば、通常の関手になります}
$$
このようになっている関手を反変関手といいます。通常の関手と区別するために、反変関手と呼ぶのです。通常の関手は、区別するために共変関手と呼ぶこともあります。
圏で、矢印の向きが逆の射を個別にひとつひとつ導入するのはもちろんできます。でも一括で全部ひっくりかえして、関手で考えると簡単になります。圏の内部構造を意識しないすみます。内容はよくわからないけど、矢印は全部逆になっていることがわかれば、関手として扱えるのです。関係は内容よりも重要だの米田の補題川柳がなんとなくわかってきませんか?
米田の補題川柳 逆むきは一括ならば簡単だ
内部構造を細かく意識しないでも、全部反転しているとすれば、便利なことがあります。作業工程のチェック一つ前まで全部検証する場合です。圏と考えることができます。矢印が逆ですが、反変関手にして、対象や、射を減らせます。つまり検査項目の省略を図式にするとき役立ちそうな気がしませんか