全国でクマによる被害が相次いでいます。報道によると、森の中で遭遇しているだけでなく、人の生活圏に近づくクマも多いそうです。
そこで、人がたくさん住んでいる場所や学校の近くでどれだけクマの出没報告があるのか、地理情報解析ソフト「QGIS」で分析する方法を紹介したいと思います。
1.データの準備
自治体によっては、クマの出没情報を緯度経度付きでオープンデータとして公開しています。今回は秋田県のデータを使います。
また、人口集中地区と小中学校のデータは国土数値情報のデータを活用します(今回は秋田県を分析対象とするので、秋田のデータのみをダウンロードしてください)。
2.データの読み込みと可視化
QGISを開いて、まずは地図を表示します。ここではOpenStreetMapを開いています。
「OpenStreetMap」をダブルクリックすると、地図が表示されます。
次に、クマの出没データをマッピングします。「データソースマネージャー」を開いて、秋田県のサイトからダウンロードしたkumadas.csvを読み込みます。
読み込み後、緯度と経度を設定します。
続いて人口集中地区と学校のデータを読み込みます。それぞれダウンロードしたフォルダーの中にあるgeojsonファイルをQGISの「レイヤー」にドラッグ&ドロップしてください。
それぞれのデータがマップ上にマッピングされている状態になればOKです。必要に応じて、レイヤー名を分かりやすい名称に変えてください(ここでは、「クマ出没情報」「人口集中地区」「学校」としました)。
3.人口集中地区内での出没状況は?
人口集中地区とクマの出没の位置が重なっている場所を探します。QGISの「ベクタ」>「空間演算ツール」>「交差」機能を使います。
入力レイヤーに「クマ出没情報」、オーバーレイレイヤに「人口集中地区」を選び、実行します。
すると、「交差」というレイヤーが新たに作られます。このレイヤーで絞り込んだデータを見てみると、人口集中地区内の出没情報だけにデータが絞り込まれていることが分かります。
見分けがつきやすいように、このレイヤの名称を「人口集中地区に出没したクマ情報」としておきます。
※ちなみに「交差」ではなく、解析ツールの「ポリゴン内の点の数」という機能を使うと「人口集中地区」内に出没したクマの情報を数えることができます。
4.学校の近くの出没状況は?
学校の半径100メートル以内に出没したクマの情報を探したいと思います。正確な距離を測れるように、学校のデータの座標系を平面直角座標系にまず変換します。
「学校」レイヤーを一旦エクスポートして、座標系を秋田県が含まれる座標系に設定してから「OK」(ここでは新しいレイヤーを「学校_edit」としました)。
次に、「ベクタ」>「空間演算ツール」>「バッファ」を選択。
距離を「100メートル」に設定して、実行します。
新たに作られた「出力レイヤ」を見てみると、学校のそばに半径100メートルの円が出来ていることが分かります。
この「出力レイヤ」と「クマ出没情報」を先ほど「人口集中地区」で行ったのと同じように「交差」を実行してみます。
このレイヤーで絞り込んだデータを見てみると、学校の近くの出没情報だけにデータが絞り込まれていることが分かります。このレイヤーを「学校の近くのクマ出没地点」としました。
5.結果
「人口集中地区に出没したクマ情報」、「学校の近くのクマ出没地点」、「クマ出没情報」をまとめて表示してみました。分析した時点で、黄色の「人口集中地区に出没したクマ情報」が304件、青色の「学校の近くのクマ出没地点」が98件見つかりました。
6.まとめ
生活圏のそばやその中でクマが出没したデータをQGISで見つける方法をまとめました。秋田県以外でも出没情報をオープンデータとして公開している自治体もあるので、自分の住んでいる地域のデータでもクマ出没マップを作る際の助力になれば幸いです!
















