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CTOというお仕事 〜2021年 LITALICO CTOの場合〜

Last updated at Posted at 2021-12-24

こんにちわ、LITALICOのCTOをやっている@yuyaichihashiです。

この記事は『LITALICO Engineers Advent Calendar 2021』のカレンダー1最終日の記事です。
今年も弊社のエンジニア/デザイナー系の様々な職種の人たちがバラエティに富んだ記事を書いていますので、ぜひ他の記事も覗いてみてください。
あなたの興味がある記事がきっと見つかるはず!

はじめに

さてさて今年のアドベントカレンダーは何書こうかなー、とネタ探しに一年のGoogleカレンダーやらタスク管理ツールを眺めていて、ふと、自分が何をやっていたのかの全体像自体を紹介してみてもおもしろいかもなーと思い立ちました。

CTOの役割って会社によって様々。
業態や組織設計にもよりますし、スタートアップでもステージによって違ったり、上場企業でも企業規模や事業数やビジネスモデル数などによって違います。
成長している企業であれば、半年や一年という時間軸で力点の置き方は変わっていったりもします。(それを見極め自分の動き方を変えていったり、時には自分の役割を変え、より適した人間にCTOを引き継ぐのもまた、CTOの仕事の一つでしょう)
もちろん、ある程度は抽象化共通化して定義できることもありますが、抽象化した分、どのような仕事なのか具体的なイメージが湧きにくかったりします。
なので、サンプルの一例として、ふむふむ:thinking:と見ていただくことにも少しは意味があるかなと思いました。

環境や状況

CTOの役割って多様だよ、というからには、まずはどういう企業のどういうフェーズで、組織の状態はこうで、などのシチュエーションを簡単に整理しましょう。

  • 創業17年目の東証一部上場企業
  • 事業ドメインは、障害福祉中心に成長してきており、介護福祉や教育等にも拡大していくフェーズ
  • ビジネスモデルは、元々、福祉事業所を通じた対人サービス中心だったところから、近年はtoCのWebサービスやtoBのSaaS等の事業群を2つ目の柱として拡大中。
  • 親会社+子会社x3のグループ企業
  • 従業員数は約3000人、うちWeb/SaaS系事業400人弱、うちエンジニア/デザイナー約100人
  • PdM、エンジニア、デザイナー等プロダクト開発力となる組織の強化は重要な経営方針の一つ
  • 本質的な業界の変革や社会変革を目指しているので、R&D能力の強化も注力していく必要がある
  • 毎期連続成長を続けている中でも、近年、特に成長が加速している

ちなみに私個人とそこにまつわる状況を少し
* 入社5年
* 入社当時は前任のCTOがいらっしゃったが3年前にご退職
* しばらくCTO不在期間があり、私が正式にCTOに就任し丸一年、就任以前から段階的に近い役割にはなっていっていた
* 役職としては執行役員CTO (取締役ではない)
* 現在は役職設置していないため、実質、CIOやCISO的な役割も担う (いきなりCTO以外の仕事入ってるじゃないかってツッコミもありそうですが、こういうスコープで仕事をしているCTOは多いはず)
* 非常に頼りになるVPoEがいる

一年のお仕事

chart (3).png

今年一年のおおまかなリソース配分はこんな感じでした。
(精緻に記録/分析しているわけではないので、ある程度の記録からサンプリング分析+感覚値とすり合わせて補正って感じです)

「採用」「組織作り/本部マネジメント」
エンジニア/デザイナーは現在、全員がエンジニアリング本部という組織に所属しているのですが、その組織作りやマネジメントと採用で40%くらい使っていました。
現在のLITALICOでは、経営計画/事業計画をより成長性の高いものにアップデートする上で、エンジニアリング本部をより強く大きくする必要があるため、ここに大きくリソースを割り振っています。
もっと割り振っても良いくらいなのですが、今年一年、私がリソースを割き切れない分を、特に採用においてVPoEの@kamesenninが大活躍してくれました。
組織作りについては、@sayaka_hashiを中心にエンジニアリング本部のHRグループの活躍で前進している一方、私自身が推進することを想定していた施策を思うように進められていないものもあり、反省ポイントです。

「部/グループマネジメント」
まだ私自身が部長やグループマネージャーを兼務しているケースもあるため、それら組織単位のマネジメントに25%のリソースが使われています。
これは、CTOの役割を果たす上では縮小すべきリソースですし、部やグループのマネジメントの役割を十分に果たすという意味では全く足りません。
後進を育成し委譲するという営みがビハインドしているという恥ずかしい状態が可視化されています。
一応、言い訳的ですが、常に今の自分の役割を委譲していくことは意識しており、特に直近2年くらいはだいぶ計画的に採用や育成を進め、すでに委譲した組織もあれば、段階的に権限を委譲している組織もあります。
(そういった状況があるので、25%というリソース配分でそれらの組織単位のマネジメントが成立しているということでもあります。)

「技術戦略」
グラフを見てアレ?CTOでしょ?と思う方も多かろう点が、技術戦略に10%しかリソースを割けなかった点で、これは大いに反省しないといけないところです。
いかにここのリソース配分を増やすかが課題であり、この状況が続くと近い将来全社的に悪影響が顕在化してしまいます。
すでにちらほらとこの影響による問題が顕在化しつつあるとも感じています。

それでは、グラフの分類ごとに、もう少し具体的にどのようなことをしていたのか見ていきましょう。

採用

先述した通り、エンジニア/デザイナー組織を拡大することが、経営課題の一つです。

これまでは、かなり明確に必要なポジションが発生した時点で、都度、ピンポイントで採用プロセスを開始するというスタイルであり、同時に動かすポジション人数も少数だったのですが、継続的に大きく投資していく方針としたため、今の組織規模に対しては、かなりの人数を常時積極的に採用活動して採用していくというスタイルに移行する年でした。

そのため、認知を得るところから、内定を承諾いただき入社に至るまでのフロー全般について、研究し、候補者の体験を設計し、プロセスを組み上げ、効果測定しては磨き、ということをVPoEの@kamesenninとエンジニア採用担当を中心に推進しました。
私自身はそれぞれの施策についてのレビュアー的な関わりをしたに過ぎません。
あとは、採用広報の施策として、(苦手ながら)イベントに登壇したり、インタビューを受けるといったことをしました。
@kamesenninの記事:採用プロセスのDX化で採用力の10Xを成し遂げられそうな話

私が使った時間の多くは、面接やその準備などです。

組織作り/本部マネジメント

今年は、採用と並行して、組織作りには注力ポイントを強く置いています。
組織のサイズや複雑度が、私やVPoE等が属人的にマネジメントできるサイズぎりぎりになって来ているところに、採用/組織拡大に踏み込むということもあり、権限委譲と言語化/仕組み化が重要な局面を迎えました。(後手に回ってるきらいもあるくらいで、会社の急成長に先回りし切れておらず、踏ん張りどころです。)

組織設計
5月に大きなエンジニア/デザイナーの組織再編成をしました。
既存機能の再編成だけでなく、それまでなかったHR機能とデータサイエンス系のR&D機能を作りました。
その後、人材の充実や成長を踏まえて、部分的な追加変更も行いました。
@k_kamonの記事:成功できる組織にする為、考えた5つの取り組み(チームビルディング)

ある程度以上の規模になると、組織設計は重要性を増します。
ソフトウェアの設計と似ているかもしれません。
大きな組織は、その構造を適切に設計し可視化しないと、想定した働きができません、同じ人たちの集まりにも関わらず、です。
暗黙的な機能を内包した組織単位があると、その機能は全体から見て存在しないように思われたり混乱を生んだりします。
適切な分割や定義が必要だと思います。
(行動を制限したいのではなく、それによりコラボレーションが活性化されたり、助け合いが行われることを目指しています。なので、そのための仕組みやカルチャーも重要です。)

また、成長企業においては、設計する時点で最適な設計というだけではなく、先々の拡張性の考慮も必要です。
これもまたソフトウェア設計と同じく、何をどこまで想定するのかというさじ加減はありますが。

一方、組織は、そこに存在する人に合わせて設計する側面もあります。
これは、特に権限の委譲しやすさに繋がります。
実際にこの点を意識して再設計したことにより、権限委譲が進み始めた組織単位もあります。

HR機能
先述の通り、LITALICOではエンジニア/デザイナー組織への投資、組織拡大について、明らかにギアチェンジが行われました。
急激に組織の人数を増やすというのは、非常にリスクの高い行為でもあります。
なので、採用を強化する一方、組織が壊れないようにしないといけません。

  • みんながチャレンジを楽しみ、気持ちよく仕事をし、成長ができること
  • チームのパフォーマンスが(一時的な波はあれど)落ちず、向上していくこと

を規律として持って採用を加速させることとし、その一貫として、HRグループを作りました。

仮のエンプロイージャーニーマップを作成し、ありたい状態と現状のギャップから課題を洗い出す一方、HRスタッフによる全員1on1により、マネジメントの偏った認識ではなく、肌感のある正しい課題整理をするということと、採用を加速している等の状況から短期的に顕在化しやすい課題の優先度に重み付けをし、結果として、ここまでの約半年の間に以下のような施策を進めました。
(じっくり計画にばかり時間を費やしているという状態を避けるため、ラフに仮組みしたエンプロイージャーニーマップと短期計画で施策は推進し、別途、中期計画策定に向けたタスクを進めるという選択をしています。)

  • 入社オンボーディングプログラムの作成とブラッシュアップ(入社3ヶ月間をオンボーディング期間として定義)
    • 2日間のオリエンテーション
    • HRスタッフ+入社同期の相談チャット
    • HRスタッフによる1ヶ月後1on1
    • ななメンター(ななめ上の先輩がメンターになる)
    • etc (随時、既存施策のブラッシュアップや追加施策)
  • 相談窓口の設置(上司に相談しにくいことや、どこに相談してよいかわからない時に、気軽に相談できる場所)
  • エンジニアリング本部全体会の企画/運営
    • 他のチームの役割や仕事を知る機会として
    • どんな人たちがいるか知ったりつながりを持つ機会として
    • 会社や事業について、エンジニアリング本部の方針等を知る機会として
  • (有志をサポートする形で)社内勉強会の活性化
  • 全社HRとの連動や、細かな仕組みやプロセスの不足、不備の改善など

@sayaka_hashiの記事 エンジニア&デザイナー100人組織の「全体会」がうまくいくために人事がやったこと

また、以下のようなことに取り組む予定です。

  • 異動時のサポート
  • 復職時のサポート
  • 新卒研修のアップデート
  • マネージャーの育成やサポート

@yknoguchiの記事:エンジニア研修のメンターとして必要な要素(だと思った)4+1選

HRについては、重要な取り組み、かつ、立ち上げ期なため、私自身がマネージャーを兼務しています。
全体や施策の方針議論、原案のレビュー、一部施策は実務も関与、といった感じです。

また、こういった組織を良くしていく取り組みは、組織によるオフィシャルな取り組みだけではなく、みんなが自発的に考え行動してくれることにも非常に助けられています。
@tomoki-okeの記事:リモート下でもチームメンバーのことを知れるようカジュアルな1on1を設けている話

キャリアラダー/等級給与テーブルのアップデート
昨年10月に導入したエンジニア/デザイナーのキャリアラダーとそれに対応した給与テーブルについて、コア部分のアップデートを行いました。
各等級に求められる期待値/評価指標の内容のアップデートと、市場の変化も踏まえた、期待値と給与のバランスのチューニングを行いました。

定例ミーティングと課題管理
週次のグループ定例と課題のチケット管理をしています。
HRグループのものと、HR関連ではない組織横断課題を扱う本部HQの2つがあります。
本部HQ=CTO/VPoE/部長/横断機能グループマネージャー

予算/予実管理
本部全体の予算策定や期中の予実管理。
管下の部署やグループによっては、その組織単位で予算管理していますが、本部管理のものや、本部全体の予算について管理しています。

各種ワークフローの承認
本部長決裁となる各種申請の内容を確認し、承認を行います。

目標設定、評価/査定
部長やマネージャーとともに、部やグループの目標設定を作成します。
また、部長やマネージャー自身の目標設定も行います。基本的に部やグループの目標が部やマネージャーの目標でもありますが、スタッフやチームのコンディションや成長の観点を加えます。
評価/査定においては、部長やマネージャーから提出される全員の査定や昇格の案について、主に評価指標との整合性や、横の組織間での評価基準のブレについてチェックをし、本部としての最終決定をします。
また、取締役にそれらを説明し決裁を得ます。

1on1
部長と本部直轄グループマネージャーの定期1on1を行います。

マネジメントエラー等の解決
組織的なサポートが不足しているなどもあり、マネジメントエラーが発生することもあります。
非常に大切なことなので最優先で時間を作り丁寧に対応するように努力しています。

部/グループマネジメント

現在のエンジニア/デザイナー組織はこのような組織図になっています。
複数の部とその管下のグループ、また、本部直轄の複数のグループ(主に横断的な機能チーム)で構成されています。
無題のプレゼンテーション (1).png
CTO/エンジニアリング本部長というのが私の主務になりますが、現在、以下のようなポジションを兼務しています。
(副部長やアシスタントマネージャーもいるので、方針策定や大きめの意思決定以外はお任せしている組織もありますが)

  • プラットフォームエンジニアリング部部長
    • プラットフォームエンジニアリング部支援プロダクトグループマネージャー
  • コーポレートエンジニアリング部部長
  • ITサービス部部長
  • データサイエンスグループマネージャー
  • エンジニアリングオフィスグループマネージャー

中期計画や単年度計画の策定
各種計画作成や、それらに関連する意思決定を行います。

具体的なプロジェクトへの関与
基本的に兼務先の部長やマネージャーとしての役割を100%担うのではなく、様々な形で権限委譲しているので、関わり方もケースバイケースですが、企画や計画のフェーズでは一緒に合宿して練ることもあれば、設計のディスカッションをしたり、プロジェクトの軌道修正をしたり、といった感じです。
(事業/プロダクト/プロジェクトの項でもう少し書きます。)
また、社内IT系では、高額な調達に関するベンダーとの交渉なども行います。

予算/予実管理
予算策定や期中の予実管理をします。
特にITサービス部という社内ITのインフラ/クライアントデバイスやヘルプデスクを担う部署は、人件費以外の予算も多岐にわたり金額も大きく、予算策定も予実管理も大変な部署です。

各種ワークフローの承認
部長/マネージャー決裁となる各種申請の内容を確認し、承認を行います。

定例ミーティング
部長兼務であればマネージャー陣との、マネージャー兼務であればグループスタッフとの週次定例を行います。

目標設定、評価/査定
マネージャーとグループの目標設定を作成します。
また、マネージャー自身の目標設定を行います。
マネージャーを兼務しているグループでは、スタッフの目標設定を行います。
評価/査定においては、マネージャーから提出されるメンバーの査定や昇格の案について議論、またマネージャーの評価を行います。
マネージャーを兼務しているグループでは、スタッフの評価を行います。

1on1
部長兼務であれば副部長やマネージャーの、マネージャー兼務であればメンバーの定期1on1を行います。

事業/プロダクト/プロジェクト

CTOとして関わるものもあれば、兼務している部長/マネージャーの職務として関わるものもあります。
CTOとしては、そもそもの構想や全体計画部分で関与したり、どこの部署やグループにもアサインされる前の新しいこと/フェーズを扱うことが大半です。

CTOとして

今期着手する新事業/プロダクト/プロジェクトの整理や全体計画など
LITALICOの会計年度は4月始まりです。
12月から3月あたりは、今期(2021/4〜)から複数の新規プロダクトやプロジェクトに着手したい経営の意向に対して、それぞれの概要や依存関係の整理や、技術戦略上の構想や、体制やロードマップの作成などを行っていました。
内容も、SaaSプロダクトや、店舗事業のDX関連や、R&Dプロジェクトなどなど、バラエティに富んでいます。
経営や事業部からの事業系のwillだけでなく、社内ITやセキュリティの部門の観点から、ガバナンスやセキュリティに関連するプロジェクトの起案や構想も行います。

福祉ソフト株式会社のM&A
1/31付けで福祉ソフト株式会社が完全子会社としてLITALICOグループの仲間になりました。
障害福祉業界のSaaSベンダーで大きなシェアを持つ企業です。
検討段階から関わり、技術/ITDD(デューデリジェンス)も行いましたが、この1年という区切りでは、PMI(Post Merger Integration)という組織間の統合プロセス、福祉ソフトのプロダクトの短期/中期計画、技術戦略上の位置付けと関連プロダクト群の技術戦略の修正、などを行いました。
取締役の1人として、営業やサポートも含めたマネージャーレイヤの定例ミーティングに参加したり、福祉ソフト/LITALICO合同の開発チームが今期遂行しているプロジェクトの進捗状況の把握や、要所々々でのレビューなども行います。
また、M&Aのような話は成立する数の方が少なく、成立前には当然社内秘ですから、必然的に直接自分が動いて技術/ITDDを行うことが多くなります。
@kamesenninの記事:M&A成立後、初めの3ヶ月で使えるリバースエンジニアリングの心得

中長期戦略に基づくシステム企画
具体的な内容はここではお話できませんが、LITALICOの中長期戦略上大きな影響があるシステムの企画を作成中です。
システム全体構想、アーキテクチャ、大きな取り組みなので全体ロードマップ、初期プロジェクトの技術面以外も含めたプロジェクト計画などを作成します。

来期の新規プロダクト企画
12月になり、来期予算に向けた動きの一環で、一部の新規プロダクト企画については、プロダクト概要の議論に参加したり、概算見積もりなどを行なっています。

R&D系テーマ設計
R&D系のテーマのブレスト等を経営陣とともに行ったりしています。

セキュリティ計画
社内ITのシステム的なアプローチの中期計画は現行計画の遂行中ですが、プロダクトセキュリティやガバナンスやファシリティ面をより強化するための計画の追加作成中です。
セキュリティグループのマネージャーがいますので、ざっくりの認識合わせとマネージャーが作成した計画案のレビュを行います。

障害福祉事業書向けSaaSの品質課題解決のサポート
ローンチして3年目になるプロダクトで、大きなトラブルにはなっていないものの、本番環境で発生するべきではないバグが続きました。
顧客のコア業務を扱うプロダクトで、重要な事業課題であるため、私も自分の目で見て要因分析し、仮説を持った上でチームの議論に加わりましたが、適切な方針や解決策が取られようとしていたため、問題の重要性を同じ温度感で認識してもらったり、マネージャーと要因や対策方針のすり合わせをしたり、時々は発言しつつも基本的にはミーティングでの議論や施策の進捗を見守るに留めています。
非常に頼りになるチームです。
残念ながら当日の参加者以外へのアーカイブ公開はありませんが、こちらのイベントで@kazuisがここでの取り組みの一端をお話しさせていただきました。
インシデントを起こさないための取り組み【BtoB Startup Engineers Meetup】

LITALICOジュニアの施設運営システムでのログインエラー問題解決のサポート
LITALICOでは、自事業として多数の障害福祉事業所を運営しながら、SaaS事業として同業界の多くの福祉事業所へもサービスを提供しており、それぞれ別個のシステムを開発するのではなく、社内外両面で利用可能なように設計/開発をしています。
その社内利用側で(だけで!)、解決難易度の高く、被疑箇所がいくつものチームに跨る問題が発生し、その解決のサポートをしました。
といっても、複数のチームが一丸となって解決に取り組めるようタスクフォースを組んだ以外は、それぞれのチームのエンジニアたちの力で見事に解決してくれました。
2,3年前ではこうはいかず自身も多くの時間を費やす必要があっただろうなというトラブルでしたので、組織の成長を感じる出来事でもありました。
@tjinjinの記事:原因不明のエラーをチーム跨いで解決した話

部長/マネージャーとして

学校向け新規プロダクト開発
今はリードエンジニアもいてプロジェクトを推進していますが、プロジェクトの初期フェーズでは、複数の教育委員会の方々とのミーティングの場に参加したり、総務省の地方公共団体向けセキュリティガイドラインや文部科学省の教育委員会向けセキュリティガイドラインの調査分析を行なったり、プロダクトデザインの議論をしたり、アーキテクチャの初期設計を行なったりしていました。
また、LITALICOとしては新たなドメインでの取り組みでもあることから、要所々々でリードエンジニアをサポートする形で設計のレビューやプロジェクトリスク解消などで関与しています。

ML系R&Dプロジェクト
先行事例の転用/応用ではない、ML系のR&Dプロジェクトを推進中です。
基本的にはアサインしているMLエンジニアが進めていますが、序盤のプロジェクトの蹴り出しや、ML開発環境の方針、外部のアドバイザー的な関わりをしていただける方の調整、進捗状況の確認や時にはちょっとした軌道修正などを行なっています。

障害福祉の法改正対応
障害福祉では3年に1度大きな法改正があり、それが今年の4月に行われました。
関連するプロダクト/システムによって、ほとんど関与しないものもあれば、進捗が思わしくないタイミングでグッと介入したケースもあります。
@katzumiの記事:法改正をマイクロサービスで立ち向かう(前編)
@katzumiの記事:法改正をマイクロサービスで立ち向かう(後編)

社内インフラ+セキュリティの中期計画
作期からの3ヵ年計画(+半期くらいかかりそうですが)で、ゼロトラストネットワークへの移行+社内ネットワークのリプレースを進めています。
数回の合宿を経て構想が固まりロードマップを作成した計画ですが、大掛かりで多数のサブプロジェクトで構成されているため、要所々々で設計上の議論やレビュー、プロジェクトリスクへの対応の意思決定など行なっています。

テクニカル上場
ややこしい話ですが、LITALICOグループは4月に、テクニカル上場を伴うグループ組織再編をしました。
簡単にいうと、それまでの親会社が子会社となり、子会社の1つがテクニカル上場し親会社となるということをしました。
それに伴う社内IT部門の必要タスクの整理や実行はそれなりに大変なものでした。

社内ネットワーク連続大障害への対応サポート
先述した中期計画によるゼロトラストネットワーク化によりリプレースされる予定ですが、現在は、本社やiDC(ごく一部のシステムが残っている)、200以上の事業所をIP-VPNサービスで接続し、ゲートウェイを通じてインターネットと接続するネットワーク構成になっています。
利用しているIP-VPNキャリアで大規模障害が連続して発生し、危うく多大な事業損失を発生させるところでした。
緊急かつ重大なインシデントのため、初回障害時は自身で対応をグリップし、私自身が通信キャリアやISP経験がありネットワークに明るかったり、社内IT部門に優秀なインフラエンジニアたちがいるため、手持ちのカードで迅速に全トラフィックを迂回させるネットワークを構築し、難を逃れました。(社内にエンジニアリング能力を持つって大事)
同様の障害が発生した際には即座にそちらのネットワークに切り替えられるようになっているため、続けて発生した数回の障害においては、ごく軽微な影響で済んでいます。

監査対応
LITALICOは上場会社ですので法定監査があります。
特にIT統制は社内IT部門のタスクが多くあります。
ここ1,2年は実務レベルはだんだんと任せられることが多くなりましたが、責任者としての関わりや、時には監査法人の方々とやりとりすることもあります。

CSIRT
セキュリティグループを中心に、いくつかのチームの人が兼任する形でCSIRTが組織されています。
CSIRTとは、セキュリティインシデントの発生時の対応、事前対応、品質向上などを担う組織です。
私は社外PoC(社外組織との窓口)、コマンダー(CSIRT全体統括)、トリアージ(優先順位決定)の役割を担っています。
幸い、私の担当機能が活躍しないといけないインシデントは発生していないので、CSRITの活動状況の把握/チェックをするに止まっています。

技術戦略

最初のリソース配分のところで触れた通り、ここに時間を十分に使えなかったのが課題です。
以下に書いてあることも、本来であれば、十分な議論も重ね、正式なドキュメントとしてのレベルで作成し、広く共有すべきですし、手付かずのものも多いです。
この一年については、それぞれ何かしらの必要性があって、前段の整理として頭の中にあるものの一部をラフとして書き出し、必要な一部関係者との間で使用したにすぎません。

SaaSプロダクト群全体の戦略
先述したように、LITALICOの経営戦略や業態上、社内利用とSaaSとしてtoB提供する両面があります。
また、領域も、大人の就労分野や発達障害の児童分野、それもまた、福祉事業所での発達障害児療育も学校における特別支援教育もあります。
それぞれにおいて必要なシステムは複数あり、それらのシステムごとに機能(群)の基本構造には領域を跨いで共通性もあったりします。
それらを全体として、どのようなシステム構想であるべきかのラフな構想を描きました。
また一方で、それぞれの事業スピードを損なわないようにどういう途中経過を辿るか、などの論点についての検討も必要です。

障害福祉/介護福祉の請求機能を持つプロダクト群の戦略
障害福祉や介護福祉には、給付費の請求という複雑な業務があります。
保険診療でいうところの、医療報酬の7割を患者ではなく保険者に請求する業務と類似のものです。
SaaSプロダクト群全体の技術戦略の特定スコープの技術戦略として、複数あり、今後も増えていく、この請求業務を扱うシステム群について、先述した福祉ソフト株式会社のM&Aにより加わったプロダクトも踏まえて、システム群のラフな構想を描きました。

社内IT基幹システム/業務システム群の戦略
LITALICOでは、ソフトウェアエンジニアリングの知見や経験のあるメンバーで社内ITのアプリケーション部門を組織しています。
必要に応じて開発する能力を有しつつ、次々と新サービスが生まれ進化しているSaaS群を最大限活用するための、戦略とまではいかないですが、基本方針を言語化し部門内で共通認識を図ることを進めています。

全体構想
Web/SaaS事業群、店舗事業等の直接支援事業群全てを横断しデータを有効活用したり、空間軸でも時間軸でもシームレスなユーザー体験を実現するための、グループ全体をスコープとしたシステム全体構想のブループリントを可視化する作業に着手しています。

経営/全社関連

経営系会議
いくつかある経営会議体に参加をしています。
財務や経営状況に関すること、各事業進捗に関すること、投資に関すること、経営課題や全社的な組織課題に関することなどを扱います。

新規プロダクト社内フロー整備のサポート
企画の起案からリリースまでの一連の社内フローを経営企画系の方と整備しました。
また、そのフローにおいて、いくつかのチェックポイントで判断をする1人にもなっています。

プロダクト関連組織の設計サポート
PdM、デザイナー、エンジニア、マーケティング等、プロダクトマネジメント上関連の深い職種の組織再設計を経営企画系の方と行いました。

ソフトウェア資産管理や会計処理プロセスの再整備サポート
ソフトウェア資産や工数の管理のルールやプロセス、会計処理のルールやプロセスの再整備を経営企画系の方と行いました。

事業計画/予算策定プロセス改善のサポート
事業計画/予算策定プロセスの改善において、経営企画系の方を一部サポートしました。

人事制度、HR施策のサポート
人事制度設計や全社HR施策についての議論のメンバーとして関わることもあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか?
だいたい想像付いてたよって方もいるかもしれませんし、ええ?こんなことやってるの?って方もいるかもしれません。

繰り返しになりますが、一口にCTOの仕事といっても、ビジネスモデルやドメインによっても違いますし、企業のフェーズや組織のフェーズによっても違います。
数多ある中のほんの1サンプルに過ぎませんし、私のやっていることも、少なくとも注力ポイントはその前の1年とは様変わりしてますし、次の1年はまた変わるでしょう。

ただ共通して言えるのは、テクノロジーやエンジニアリングを駆使し、会社のビジョンを実現するために、経営や事業や組織の進化に必要なことを見極め、やるべきことを決め、やる、がCTOの仕事ではないかと思います。

ということで、私はふり返れば反省も多いものの、多くの仲間にも助けられ、充実した一年でした。
みなさまはいかがでしたでしょうか?
では、良いクリスマスをお過ごしください!

謝辞

ここでは、僕の一年の仕事として上げたものの近くにいた人や、関連する記事しか紹介できなかったけど、LITALICOのエンジニアリング本部がこの一年で成し遂げたことは本当に多岐に渡るしはるかに多くて、その全てはエンジニアリング本部のみんなのおかげです、ありがとう!!!良いクリスマスを!!!

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