本記事について
- 自身のSREにおける観点が多く含まれます(もちろんエンジニア全般に通ずる話でもあります)
- 弊社におけるケースが含まれます(こちらも必ずしも弊社に限った話ではない認識です)
SaaSとは
SaaS(Software as a Service)の説明は省略しますが、弊社では以下を利用しています(一例)。
- Datadog
- PagerDuty
- Sentry
- Splunk
SaaS運用のイメージ
アカウント作成や権限追加、利用に関するお問い合わせ対応など、地味で泥臭いイメージを持つかもしれません。もちろんそれはそれで、縁の下の力持ちとして組織に大きく貢献している大事な役割です。
ただそれだけではなく、クリエイティブでエンジニアリングのスキルを高められる取り組みがいくつもありますので、本記事を通じてぜひ興味を持ってもらえればと思います。
体制
弊社ではワーキンググループ(以降 WG)と呼ばれる参加が任意の組織として活動しており、SRE部のチームを横断したメンバーで構成されています。
全員が普段は各チームでの業務をしつつ、時間を見つけて SaaSの運用に取り組んでいます。
活動内容
主に定常業務と、それ以外(+α)に分類されます。
定常業務
マストな業務として輪番体制を組んでいます。時期によって対応件数に変動はありますが、1週間に数件程度、多い時期でも十数件です。簡単なものであれば 1件あたり数分で完了します。
- SaaSのアカウント作成、権限追加などの依頼対応
- 利用に関するお問い合わせ対応
- e.g. 〇〇の機能の××について教えて欲しい、△△という機能を試したい
- 利用状況のチェック
+αの取り組み
任意の業務として、各メンバーもしくは複数メンバーで取り組んでいます。WG全員でこれはやろうと決めたものや、個人でやりたいとアイデアを出したものなどがあり、かなり自由に取り組んでいます。
e.g.
- 運用業務の改善
- 新機能や、社内利用が無い機能の検証
- コスト最適化
- 勉強会の企画、開催
ススメる理由
1. 担当営業・エンジニアと関係値を築ける
初手からエンジニアリングではなくておいおい...と思った方もいるかもしれませんが、これから挙げていくどの理由においても担当の営業・エンジニアと関係値があることはプラスに働きます。そのため、あえて初手に持ってきました。
具体的にどのようなプラスがあるかと言うと気軽に質問・相談ができるです。
例えば、
- チーム運用に課題があってそれを解決できる手段はないか聞ける
- 新機能を試してみたいので PoCを実施したいと相談できる
- 最新のアップデート情報を受動的にインプットできる
などです。個人的にはベースとなる重要なポイントとであると認識しています。
2. 新機能や、まだ利用していない機能の検証に取り組める
新機能に触れることはエンジニアとって魅力的なポイントです。先述しましたが、WGでは自由度高くやりたいことに取り組みやすい環境にあります。業務を通じて興味があることに触れられることはエンジニア冥利に尽きます。
また組織において課題に感じていることがあれば、その課題解決に SaaSを利用することも可能です。
気軽にチャレンジができて、成果を出せることが魅力です。
最近はどの SaaS製品も AIに力を入れており、カンファレンスで発表が続いています。AIの分野はまだまだ事例が少ないため、試行錯誤しながら挑戦できるブルーオーシャンの状態です。
Datadog Bits AI
https://docs.datadoghq.com/ja/bits_ai/
PagerDuty AIOps
https://www.pagerduty.com/platform/aiops/
Splunk AI
https://www.splunk.com/en_us/solutions/splunk-artificial-intelligence.html
3. コストへの意識が強くなる
定常業務として利用状況のチェックがあります。どの機能にどれだけコストがかかっているのか把握することができます。また契約に関わることで、SaaS 全体のコスト感も掴めます。
SREにおいて(SREではなくてもエンジニアなら)コストの最適化は重要な責務です。無駄なコストを削減する施策が打てたり、適切な金額で利用するために改善策を実施することができるようになります。スコープもチーム単位ではなく組織全体の利用状況になるため、数百万から数千万円の規模感で成果を出すことができます。
これまでの事例として、
- コスト削減を目的とした別製品の PoC
- e.g. オブザーバビリティ、オンコール
- コスト最適化のための施策
- e.g. EKSの Node集約、NAT Gateway経由の通信を VPC Endpoint化
すべてが WGだけで取り組んだわけではなく、WG起点で問題提起・各所への連携を行い、組織全体で取り組んだ内容も含まれます
また予算を把握することで、現状これだけ余裕があるからこんな PoCができそうとか、この機能はこれぐらいコストがかかるから導入できそうなどといった視点を持てるようになります。
4. キャッチアップ量が増える
1.に通ずるところもありますが、カンファレンスやイベントを紹介してもらえます。もちろん個人でもアンテナを張っていれば入手できる情報はありますが、中にはクローズドのものもあります。参加することでモチベーションも上がりますし、他の企業との情報交換も有益です。担当に他社と繋げてもらうことも可能です。
また定期的に最新情報をキャッチアップできます。海外のカンファレンスで発表された最新情報について、すぐに日本語で詳細を知ることが可能で、これは 2.に繋がります。
完全に余談ですが、懇親会で美味しいご飯とお酒が堪能できることも魅力的です(たまにご褒美がないとね)。
5. 組織全体に貢献できる
最初に述べたように、SaaSは組織全員が利用するものでその運用を行うことは縁の下の力持ちとして組織に貢献しています。
運用者がいなければ SaaSを利用できませんし、管理されていなければカオスな状態になります。無駄なコストが発生し、適切な権限が設定されず環境は壊れていきます。場合によってはセキュリティリスクが高まります。
運用者のおかげで SaaSは安定稼働しています。
最後に
本記事で挙げたススメの理由は、実際に自身が SaaS運用を通じて経験したことをまとめた内容です。普段は ZOZOTOWNのカート決済機能のSREチームとして活動していますが、そこでは得られないエンジニアとしての知識と経験があります。またそれらをチームの業務に持ち帰り、還元できています。
ぜひ SaaSの運用に携わり、エンジニアのキャリアに活かしてもらいえればと思います。