はじめに
menu事業部でエンジニアをしている保田です。
今日は、エンジニアの皆さんにぜひ読んでほしい非技術書についてお話しします。
最新のフレームワーク、プログラミング言語のアップデート、アーキテクチャ設計…常に技術の波に乗り続けるのは大変なことですよね。そんな技術漬けの日々だからこそ、たまにはコードから離れて、思考の幅を広げる「非技術書」に触れてみませんか?
今回は、技術書とは異なる視点から、皆さんの創造性や問題解決能力を刺激し、そして何より「面白い!」と感じられるような珠玉の10冊をご紹介します。
SFで広がる思考の幅
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (フィリップ・K・ディック)
SF好きなら一度は耳にしたことがあるであろう古典的名作。核戦争後の荒廃した地球で、人間とアンドロイドの境界線が曖昧になる世界を描いています。
AI、ロボティクス、そして自己意識。これらのテーマは、まさに現代のエンジニアが向き合うべき倫理的・哲学的な問いと深く関連しています。技術が進化する先に何があるのか、人間とは何か、といった根源的な問いを、物語を通じて深く考察することができます。技術の進歩と倫理のバランスを考えるきっかけになるでしょう。
作中のアンドロイドを今のAIに置き換えて読んでみると、本の世界が近い将来現実になるのではないかという気持ちになります。
三体 (劉慈欣)
中国発、世界中でセンセーションを巻き起こしたSF超大作。文化大革命の時代から始まり、宇宙の存亡をかけた壮大な物語が展開されます。
想像を絶する科学的概念と、それを巡る人間ドラマが織りなす圧倒的なスケール感は、私たちの凝り固まった思考を破壊し、新たな視点を与えてくれます。複雑なシステム思考、未来予測、そして不確実性への対処など、エンジニアリングに通じる要素が随所に散りばめられています。
また、自分よりも圧倒的にすごい人を前にすると絶望してしまうこともあるかと思います。「つよつよエンジニア」を見た時に絶望するあの感覚です。最後まで読むと、そのような局面でも立ち向かっていくための勇気をもらえるのではないでしょうか。
1984年 (ジョージ・オーウェル)
全体主義国家に生きる個人の絶望的な闘いを描いたディストピア小説の金字塔。監視社会、思想統制、歴史の改ざんといったテーマが、現代にも通じる警鐘を鳴らしています。
データプライバシー、セキュリティ、アルゴリズムの倫理的利用など、現代のテクノロジーがもたらしうる負の側面を深く考えさせられます。システムが個人の自由や思想をどのように抑圧しうるのか、技術者が社会に対してどのような責任を持つべきなのか、といった問いについて真剣に向き合うきっかけになるでしょう。
魂を売ってしまうと人間終わってしまうなと感じました。誰にも負けない強い魂をもって生きていこうと思える一冊です。
プロジェクト・ヘイル・メアリー (アンディ・ウィアー)
太陽の異変から地球を救うため、たった一人で宇宙の旅に出る科学者の奮闘を描いたSFエンターテイメント超大作。科学的知識とユーモア、そして友情が詰まっています。
圧倒的な問題解決能力と、未知の状況下での試行錯誤のプロセスが克明に描かれています。エンジニアが日々の開発で直面する困難を乗り越えるためのヒントが満載で、特に制約条件下での最適化や、未知の技術への探究心を刺激されるでしょう。困難な課題に対しても、粘り強く論理的に解決していく姿勢は、全てのエンジニアにとって学びが多いはずです。
そして私の好きな一節を引用します。
計算は考えることではない。計算は手続き(プロシージャ)。記憶は考えることではない。記憶は貯蔵容量(ストレージ)。考えることは考えること。
考えることとは何かというのを考えさせられます。AIが発展した今の時代では、この一節に心を動かされる人は多いのではないでしょうか。
経済学からビジネスの本質を掴む
ヤバい経済学 (スティーブン・D・レヴィット & スティーブン・J・ダブナー)
タイトルの通り「ヤバい」本です。
「経済学」というタイトルですが、景気や株価のような経済と聞いて想像するような話は出てきません。常識を覆すようなデータ分析とユニークな視点から、社会の「なぜ?」を解き明かす一冊。
データに基づいた思考がいかに重要であるかを、面白おかしく教えてくれます。因果関係と相関関係の違い、インセンティブ設計の妙など、一見すると経済学の領域ですが、これはまさにシステム設計やプロダクト開発における「ユーザー行動の予測」や「機能改善の効果測定」に通じるものです。物事を多角的に捉え、本質を見抜く力が養われます。
人はインセンティブで動くということが書かれています。そして、そのインセンティブには三種類のものがあるといいます。(一つ目はもちろん皆さんご存知の金銭的インセンティブです。もう二つは本をチェックしてみてください!)これらのインセンティブについて知ることが、自分やチームメンバー、ユーザーなどの行動原理の理解の助けになるかもしれません。
超ヤバい経済学 (スティーブン・レヴィット & スティーブン・ダブナー)
『ヤバい経済学』の続編。さらに掘り下げた分析と、意外な真実が明らかにされます。
前作同様、データサイエンスや統計的思考の重要性を再認識させられます。特に、ランダム化比較試験の有効性や、見せかけの相関に惑わされないことの重要性は、A/Bテストや効果検証を行うエンジニアにとって、実践的な学びとなるでしょう。
そして「ヤバい経済学」、「超ヤバい経済学」ともに、「答え」ではなく「問い」がいかに重要かということを学ぶことができます。著者の立てる問いには毎度感動させられました。
国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(アダム・スミス)
経済学の古典中の古典。個人の自由な経済活動が社会全体の富を最大化するという「見えざる手」の概念を提唱し、資本主義の基礎を築いたとされる書です。
(私にとってはかなり難しい本だったため、私は上しか読めていません)
需要と供給のメカニズム、市場経済の原理、分業の重要性など、現代社会の根幹をなす経済の仕組みを理解できます。プロダクトやサービスの市場投入、価格設定、ビジネスモデルの構築などを考える上で、経済学的な視点は非常に重要です。なぜ特定の技術やサービスが「流行る」のか、その背景にある経済原理を深く洞察する力を養うことができます。
人間と組織の深層に迫る
成瀬は天下を取りに行く (宮島未奈)
滋賀県を舞台に、我が道をゆく主人公「成瀬」の日常と、彼女の周りで起こる様々な出来事を描いた、ユーモラスで心温まる物語。
技術書ばかり読んでいると忘れがちな「人間味」や「多様な価値観」に触れることができます。
論理だけでは割り切れない人間の感情や行動の機微を理解することは、チームビルディングやユーザー視点に立った開発において非常に重要です。肩の力を抜いて、人間関係の機微やコミュニケーションの奥深さを感じ取れるでしょう。
小さい頃は皆主人公の成瀬のような人になろうとしていたのではないでしょうか?私はそうでした。
成瀬に対し、一種の憧れのような気持ちを抱きながら読んでいました。
The Goal ― 企業の究極の目標とは何か (エリヤフ・ゴールドラット)
生産管理をテーマにしたビジネス小説。とある工場を舞台に、危機に瀕した工場を立て直すプロセスを通じて、制約理論(TOC)という生産管理の概念を学べます。
ソフトウェア開発におけるボトルネック、開発プロセスの改善、リードタイムの短縮など、システム全体の最適化を考える上で非常に役立ちます。技術的な問題解決だけでなく、ビジネス全体の流れを理解し、最も効果的な改善策を見つけるための思考法が学べるでしょう。
工場の生産性を上げることをメインに書かれた本ですが、この本の概念を抽象化していくと日々の業務に役立てるような思考プロセスについても学ぶことができると思います。
ディズニーCEOが大切にしている10のこと (ロバート・アイガー)
ウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOを務めたロバート・アイガーが、自身のリーダーシップ哲学とディズニーを再構築した経験を語る一冊です。
イノベーション、リスクテイク、M&A戦略、そして何よりも「物語を語る力」の重要性が学べます。技術的なリーダーシップだけでなく、組織を動かし、ビジョンを共有し、困難な状況を乗り越えるための実用的な洞察が得られます。プロダクトのアイデア出しから、チームを巻き込むコミュニケーションまで、エンジニアのキャリアを多角的に考えるヒントが満載です。
個人的には、テクニックではなく人格で引っ張っていくリーダーシップに感銘を受けました。本越しでも「この人についていきたい」と思えるようなそんなリーダーでした。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
これらの非技術書は、直接的な技術スキルアップとは異なるかもしれませんが、読書を通じて得られる多角的な視点、深い思考力、そして豊かな感受性は、きっと皆さんのエンジニアとしての視野を広げ、日々の業務に新たなインスピレーションをもたらしてくれるはずです。
たまには技術書から離れて、知的好奇心の赴くままに非技術書の世界を旅してみませんか? きっと、コードを書く手が、よりクリエイティブになることを実感できるでしょう。
読んでくださってありがとうございました!
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