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はじめに

社内のデータ基盤構築に携わる機会があり、そのためのインプットとして「データエンジニアリングの基礎」という本を読みました。
この本を通してDataOpsという概念に初めて出会い、その重要性に強く惹かれました。
本記事では、このDataOpsについてご紹介します。

DataOpsとは何か

DataOpsは、「データ(Data)」と「運用(Operations)」を組み合わせた造語で、ソフトウェア開発で広く知られるDevOpsの文化やプラクティスをデータ領域に応用したものです。その最大の目的は、組織全体のデータフローを自動化・高速化し、データから最大限のビジネス価値を生み出すことにあります。これは、データ管理者とデータ利用者の間のコミュニケーション、統合、自動化を改善する共同的なデータ管理戦略と言えるでしょう。

The DataOps Manifest

DataOpsは、アジャイル、DevOps、リーン生産方式、統計的プロセス制御といった複数の思想から影響を受けており、その核心をなすのが「DataOpsマニフェスト」に示された18の原則です。これらの原則は、組織、ツール、業界を超えたデータ活用を推進し、データ分析の開発と提供におけるより良い働き方を定義します。  

以下にDataOpsの18原則の概要を示します。

1. 継続的にお客様を満足させる

数分から数週間で価値ある分析的洞察を早期かつ継続的に提供することで、顧客を満足させることを最優先とする。

2. 価値あるアナリティクス

洞察に富んだ分析が、正確なデータと堅牢なフレームワーク・システムに基づいてどの程度提供されているかを、データ分析のパフォーマンスの主要な尺度とする。

3. 変化を受け入れる

変化する顧客のニーズを歓迎し、競争優位性を生み出す。顧客との最も効率的で効果的なコミュニケーション方法は対面での会話である。

4. それはチームスポーツだ

分析チームには、常にさまざまな役割、スキル、お気に入りのツール、肩書きがある。多様な背景や意見を持つことで、イノベーションと生産性が向上する。

5. 日々の交流

顧客、分析チーム、オペレーションは、プロジェクトを通じて日々協力し合わなければならない。

6. 自己組織化

最高の分析的洞察、アルゴリズム、アーキテクチャ、要件、設計は、自己組織化されたチームから生まれる。

7. ヒロイズムを減らす

分析的洞察の必要性のペースと幅が増すにつれて、分析チームは属人化を減らし、持続可能でスケーラブルなデータ分析チームとプロセスを構築するよう努めるべきである。

8. 振り返る

分析チームは、定期的に、顧客、自分自身、および業務統計から提供されるフィードバックを自己反省することによって、業務パフォーマンスを微調整する必要がある。

9. アナリティクスはコードである

分析チームは、データへのアクセス、統合、モデル化、可視化のために、さまざまな個別のツールを使用している。基本的に、これらのツールはそれぞれコードとコンフィギュレーションを生成し、データに対するアクションを記述してインサイトを提供する。

10. オーケストレーション

データ、ツール、コード、環境、そして分析チームの作業を最初から最後までオーケストレーションすることが、分析を成功に導く重要な原動力となる。

11. 再現性を持たせる

再現可能な結果が求められるため、データ、低レベルのハードウェアとソフトウェアの設定、ツールチェーン内の各ツールに固有のコードと設定など、すべてをバージョンアップする。

12. 使い捨ての環境:

分析チームのメンバーが実験するためのコストを最小限に抑えるため、本番環境を反映した、簡単に作成でき、隔離され、安全で、使い捨ての技術環境を提供することが重要である。

13. シンプルさ

技術的卓越性と優れた設計への継続的な注意はアジリティを高める。同様に、シンプルさ、すなわち行われない作業の量を最大化する技術は不可欠である。

14. アナリティクスは製造業である

分析パイプラインはリーン生産ラインに類似している。DataOpsの基本的な概念は、分析的洞察の製造における継続的な効率性を達成することを目的としたプロセス思考に焦点を当てることである。

15. 品質が最も重要である

分析パイプラインは、コード、構成、データにおける異常(jidoka)とセキュリティ問題を自動検出できる基盤で構築されるべきであり、エラー回避(poka yoke)のためにオペレータに継続的なフィードバックを提供すべきである。

16. 品質とパフォーマンスの監視

予期せぬ変動を検出し、運用統計を生成するために、パフォーマンス、セキュリティ、品質の測定値を継続的に監視することを目標とする。

17. 再利用

分析的洞察の製造効率の基本的な側面は、個人またはチームによる以前の作業の繰り返しを避けることである。

18. サイクルタイムの改善

顧客のニーズを分析的アイデアに変え、開発でそれを生み出し、再現可能な生産プロセスとしてリリースし、最終的にその製品をリファクタリングして再利用するまでの時間と労力を最小限に抑えるよう努力すべきである。

DataOpsの技術的要素

「データエンジニアリングの基礎」は、データエンジニアリングの目的がデータの付加価値と利用性を高め、コストやリスクを抑え、ROIを最適化することにあると強調します。DataOpsは、この目的達成のための実践的アプローチであり、特に以下の3つの技術的要素に焦点を当てています。

1. 自動化

DataOpsにおいても自動化は非常に重要です。これは、DevOpsのCI/CDやIaCといった概念をデータ領域に適用することで実現されます。
DataOpsの成熟度が低い組織ではcronジョブのようなシンプルな自動化が一般的ですが、複雑なパイプラインでは問題を引き起こす可能性があります。DataOpsでは、Apache AirflowやDagsterのようなオーケストレーションフレームワークを導入し、ジョブ間の依存関係管理や自動デプロイメントパイプラインを構築することで、データパイプラインをソフトウェア製品と同様に厳密に管理します。
これにより、データエンジニアは手動作業から解放され、より戦略的な業務に集中できるようになります。

2. 観測と監視 (Observability and Monitoring)

間違ったデータが放置されてしまった時、それは静かな殺し屋としてビジネスに多大な損害を与える存在となってしまいます。
データ生成システムを継続的に観測・監視することは、データの問題を早期に発見し、ビジネスへの影響を最小限に抑える上で不可欠です。
Petrellaによって提唱されたDODDメソッド(Data Observability Driven Development)は、データの可観測性を設計段階から組み込むフレームワークを提供します。これは、データ品質の懸念を開発プロセスの初期段階から組み込み、データライフサイクル全体にわたってデータの透明性を確保することを目指します。観測と監視の強化は、データ品質管理をプロアクティブなアプローチへと移行させ、データに対する信頼性と透明性を大幅に向上させます。

3. インシデント対応

DataOpsを活用して新しいデータプロダクトを迅速に出荷する一方で、システムダウンやデータモデルの破壊といったミスは避けられません。
インシデント対応の核心は、問題発生時に影響を最小限に抑え、迅速に復旧することです。異常検知からアラート、原因特定までが自動化されていることが理想とされます。そのためには障害発生を前提とした「障害耐性設計」と迅速な対応準備が求められます。
インシデント発生後のポストモーテム(事後分析)を通じて、失敗から学び、再発防止策を講じる文化は、データパイプラインの堅牢性を継続的に向上させることにつながります。

DataOpsとステークホルダー

DataOpsは、データライフサイクル全体にわたる部門横断的なコラボレーションを促進するため、多様な専門性を持つ職務間の連携が不可欠です。
以下がステークホルダーの例です。組織の規模等によって複数の役割を担う人やさらに細分化されて1つの役割を複数人で分担しているケースも考えられます。

アプリケーションエンジニア

アプリケーションから生成されるデータの品質と構造は、下流のデータパイプラインに大きな影響を与えます。彼らはデータの「生産者」として、DataOpsチームと連携し、データの整合性と利用可能性を初期段階から確保する役割を担います。

データ管理者 (DBAdmin)

データベースシステムの設計、実装、保守、パフォーマンス、セキュリティを担う伝統的な役割です。DataOpsにおいては、多様なデータソースの統合、データ基盤の安定性と効率性の保証、適切なアクセス権限管理を通じて、データエコシステム全体の信頼性を支えます。

データエンジニア

データパイプラインとインフラストラクチャの設計、構築、保守を担当し、生データを分析可能な形式に変換します。彼らはデータ取得から価値抽出までのギャップを埋める中心的な役割を果たします。

データアナリスト

データを解釈し、可視化して実用的な洞察を提供します。彼らはデータの主要な「消費者」であり、データ品質や利用性に関するフィードバックをDataOpsチームに提供します。

データサイエンティスト

データを活用して洞察を得、モデルを構築し、予測分析や処方的分析ソリューションを開発します。データへのアクセスや準備のためにデータエンジニアと密接に協力します。

SRE (Site Reliability Engineer)

システムの信頼性向上を主な目的とし、データパイプラインの自動化、監視、インシデント対応を通じて、データプロダクトの信頼性と効率性を高めます。彼らの持つシステム運用、クラウド、ネットワーク、データベース、セキュリティに関する知識は、堅牢なデータ基盤の構築に不可欠です。  

ビジネスステークホルダー/エンドユーザー

データの最終的な利用者であり、ビジネス上の課題やニーズを定義し、データから得られる洞察を活用して意思決定を行います。彼らからのフィードバックは、DataOpsプロセスの継続的な改善に不可欠です。  

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございます!
この記事ではDataOpsの概要と18の原則、そして様々なステークホルダーとの関係性についてまとめました。
かなりのボリュームとなりましたが、少しでもDataOpsの魅力や重要性についてお伝えできていれば幸いです。

昨今の生成AIの急速な普及は、データ分析のあり方を大きく変え、これまで専門的なスキルが必要だったデータ分析を、簡単なものであれば手軽に行えるようにしています。これにより、マーケティング、人事、営業など、様々な部門の担当者が直接データ分析を行うシーンが増加しています。
今後のビジネスでは、彼らのニーズを理解し、高品質でアクセスしやすいデータを迅速に提供するための連携が不可欠となるでしょう。

私も引き続きDataOpsについて深く学び、急速なビジネスの変化に耐えられるようなデータ基盤の構築に貢献していきたいと思います。

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