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【設計入門】捨てやすいコードを書け!:具体的な名前で始める、変更に強いクラス設計の第一歩

Last updated at Posted at 2025-11-21

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設計入門者がまず学ぶべき「捨てる技術」

設計という言葉を聞くと、多くの人は完璧な未来を予測し、拡張性のある壮大なアーキテクチャを築く必要がある、と考えがちです。

しかし、設計入門者が目指すべき第一歩は、その逆のアプローチです。

設計とは、完璧な未来を予測することではなく、「失敗した設計や古くなったコードを、簡単に捨てられるように準備しておくこと」 です。

本記事では、この「捨てやすさ」を実現するための最も簡単で強力なテクニック、「具体的な命名」を紹介します。
これは、アーキテクチャの知恵であるモジュラーモノリスの思想を、クラス設計に取り入れる最も手軽な方法です。

1. 設計のトラップ:「汎用的」な名前がコードを捨てにくくする

なぜ、コードは捨てられない負債と化してしまうのでしょうか? その最大の原因は、抽象的な名前にあります。

  • 抽象的な名前の例:
    CommonServiceDataHandlerUtilityManager
  • 結果:
    役割が曖昧なため、無数のロジックが流れ込み、クラスの結合度が極端に高まります。

結合度が高いクラスは、システム全体と複雑に絡み合っているため、「これを削除したら、どこが壊れるかわからない」という恐怖を生みます。
これが、設計に失敗したコードを 「捨てられない負債」 に変えてしまうのです。

2. 「具体的な名前」こそが設計入門の第一歩

設計入門者がすぐに実践できる唯一のルールは、「責務を極限まで限定すること」 です。

具体的な名前は、クラスの責務に明確な 境界線(Boundary) を引きます。

悪い例(抽象的) 良い例(具体的) 設計上のメリット
UserProcessor GuestUserEmailValidator ゲストユーザーのメールアドレスの検証という単一責務が明確になり、他の処理の侵入を防ぐ。
CouponService ExpiredCouponAutoRemover 期限切れクーポンの自動削除以外のロジックは名前に合致しないため、追加にブレーキがかかる。

具体的な名前をつける行為は、クラスの責務に「防波堤」を築くこと であり、ロジックの侵入を防いで凝集度 の高い状態を維持します。


3. モジュラーモノリスの思想をクラス設計に適用する

この「具体的な命名」戦略は、アーキテクチャレベルの知恵である「モジュラーモノリス」の思想を反映しています。

モジュラーモノリスが、システム全体を独立したモジュール(境界) に分けるように、具体的なクラスは、システムにおける「最小単位のモジュール」 です。

  • モジュール境界の確保:
    クラス名が具体的なほど、そのクラスは外部からの依存が少なく、独立性が高まります
  • 部分的な改善の実現:
    独立性が高いということは、設計に問題が見つかった場合でも、他のモジュールに影響を与えずに、その小さなモジュール(クラス)だけを安全に削除・再設計できることを意味します

4. 捨てやすさこそが設計の第一歩:フルリプレイスを防ぐ戦略

抽象化に逃げず、あえて 「具体的な名前」 をつけてください。

この戦略は、「今の設計が不完全であること」を前提とし、「将来、より良い設計が見つかった時に、手軽に捨てられる状態」 を準備しておく、最も現実的で堅実な設計手法です。

完璧な設計を目指すのではなく、「捨てられるコード」 を書くこと。

このシンプルなルールこそが、システム全体をゼロから作り直す 「フルリプレイス」 という最悪の事態を回避し、コードを常に健全で新陳代謝の良い状態に保つための、設計入門の最初の一歩となるでしょう。

まとめ:今日から始める「具体的な」設計

本記事で解説したポイントをまとめます。

項目 避けるべきこと(罠) 実行すべきこと(設計入門)
設計の意識 完璧な未来を予測し、抽象化する。 失敗を許容し、「捨てられる」状態を準備する。
クラス命名 UtilityCommon のような汎用的な名前を使う。 責務を限定する具体的な名前を使う。
コードの状態 結合度を高め、ロジックをクラスに集中させる。 凝集度を高め、最小単位のモジュール境界を確保する。

設計に自信がないからこそ、具体的であることを恐れないでください。
その具体的な名前一つ一つが、あなたのコードを未来の変更から守る強固な盾となります。
今日からあなたのクラスに「具体的な名前」を与え、捨てやすいコードの作成を始めましょう。

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