そしてもう今やqiitaなどの技術記事を見ても分からないって話です。うへ。
AIの台頭で力を失った、知識と対話
システムエンジニアとしての能力は大別すると三つに分けることができます。
1. 知識の保持と抽出
2. 説明・交渉・対話
3. コンテキストの理解
わーおシンプル〜。
覚えておくことと、話をすること、そして実態の裏にある「文脈」を理解しておくこと、の三つです。
まぁこれは勿論、「タイピング能力」みたいな粒度のものは全て取り除いたモデルでの話ですが!
早速ですが、今、知識は人の手から離れました。
そもそも人間の持つ知識記憶は、パソコンさんに比べると大したことなかった。
人間の記憶層は弱いので、外部データベースがどうしても必要です。アナログだろうとそう。
ただし、かつてはデータベースからの情報抽出のため、人間が『どこに何の記載があるのか』を知っている必要がありました。自然言語ドキュメントは目次で構造的に表現できる範囲を超えて曖昧ですから、知識の保持と抽出だけで一定の内容の理解が必要だったわけです。
今は違う。自然言語モデルが生成するパターンはアメーバのようにドキュメントと人間を繋ぎます。しかも高速に。知識の保持と抽出は円滑に外注できるようになり、エンジニア個人に能力は不要となりました。
そして順当に、説明や交渉・対話の力もまた、その力を半分抜き取られつつあります。
そりゃそうだ。前提となる知識ベースが膨大な他者ソースになっているのだからね。
対話とは異なり立場・異なる目的・異なる知識の人間同士が、『同じ観点を共有する』ための試みです。
でも、知識の抽出が外注できる様になったのは、そもそもAIの『対話能力』が高くなったからです。本来的に対話・交渉の基本は、相手の知識モデリングに合わせた知識の抽出でした。
ただでさえ齟齬が起きやすい分野で、取り出せる知識量が多くなり、基本の対話はAIに外注できる。
ここでは対話はむしろ、曖昧な知識理解を誤魔化す方向に働きます。
コンテキストの理解とそれを活かす力だけが残った
はい。残るのはこれだけです。
コンテキストとは何か。誤解を恐れず言えば、それは時系列知識データです。
それは背景と言ったり文脈と言ったりします。瞬間瞬間ではそれが正しかった時間がある。流れを考えると、ある地点からは知識がそのように見える。
実際、この世に『正しい認識』も『真実』も存在しません。結局のところ、全ては主観でできています。そしてその背景情報を込みで知識や対話を見直し、より良い状態に磨き上げていくことが、エンジニアの能力なのです。
AIはあらゆるコンテキストを保持し続けることができない。これは、別に能力的に無理なわけではないです。
AIに求められているのは短期的にいかようにも個別のコンテキストに適応できることです。
私の前では知的に。
僕の前では元気づけるように。
振る舞いが人間のように不自由なコンテキストを持つAIなど、不便で仕方がありません。
コンテキストはAIに委託されず、しかしその力を『不要』だという声だけ飛び交います。
承認欲求の化け物〜人間〜
人間は承認欲求の化け物です。
それは知識を火種に花火を作り、インタアネット空間(笑)に文字列を吐き出して鳴き声を上げます。
おれーーすごいんだぁーー
これからのーー未来のことーーわかってるんだあーー
複雑なコンテキストを理解することは、そもそも人の手にも余ります。それに比べ、知識と対話はAIによって簡略化される。
知識と対話がゴーストライターの手により簡素化され、『自己成果を誇りたい心』は爆発します。
もちろんネットだけじゃない。面接、プレゼン、プロジェクト打ち合わせの1時間。
よしなに抽象化した部分しか説明できないその短時間は、AIと相性抜群です。
パッと見える成果!
それっぽい中身!
承認欲求大炸裂事業において、AIの作業の完全性が弱いのは問題になりません。そもそも短時間で伝わるのは、70点の豪華さでしかないからです。
ビバ発展!ビバ技術!
今、この世の言葉は最適化されました。
SNSに。プレゼンに。短時間の自己拡張に。
もちろんそれは、保守性にも拡張性にも富んではいない。
なぜ今、AI時代に未来予測的な言葉を話す人が多いのでしょう?
もちろん、未来予測とは、外れても文句を言われない上に、なんかめっちゃ頭よく見える最高の嘘だからです。
多くの人間の成果は正しさではなく稼いだ金です。金を吸い出せば責任などない。
大体の場合、たかだか数年のプロジェクトを乗り越えれば十分なのだから。
間違った発言は問題ではない
人間は間違います。
質問をした時、一つ曖昧だったり間違ったことを言っていることそのものは大した問題じゃないんです。だって自然言語における正解はそもそも曖昧なことが多いから。
そうでなくとも、その昔から人類は間違ったものを量産しながら発展させてきました。たくさんのプログラミング言語が栄枯盛衰、インターネットのメイン利用環境はスマホに、無数のアダプタは大体USBに。これは本質の変遷です。
正しさはいつも後からついてくる。たくさんの人がなんとなくそれに乗っかったり離れたりしてきた。
でも、これから先僕たちが迎えるのは、正しさを確認する人間の容量を、短絡的な成果が物量で押し潰していく時代です。
〜その人が本当にシステムエンジニアとして優秀か、SNSの発言や短時間の交渉ではもう分からない〜 そして最後に人の手に残るもの
拝啓、人間様へ。
斜陽の中お顔立ちもよく見えなくなっていますが、いかがお過ごしでしょうか。
これから、正解が定義できるありとあらゆることが自動化されます。
インプレッションを稼いだり、手続きの時間を短くしたり、そういうあらゆることが暗闇の中へと隠れます。
夜は電気の時間です。すなわち、プログラムの、AIの時間です。
それでもあなた方の仕事はあるのか?
人類は変遷するコンテキストを持ちます。経済予測のモデルがいまだに予想を外すのは、机上の条件は固定されているが、現実は複雑怪奇な無数の条件が変動し続けるからです。
幸福だという主観でいる人間の、脳内物質や脳の活性化状態は人それぞれ違うという話をご存知でしょうか。
人類は、正解データを定義できておりません。
すなわち幸福の定義です。
これは哲学ではなく、目の前の仕事の話です。
人間が何に幸福を感じるのか?人間が何に不幸や不満を感じるのか?
これはごく単純な意味では明快であり、本質的には不明です。
ですから、あなた方の仕事はごく単純な意味ではなくなり、
至極複雑な意味では結局なくならないでしょう。
残るのは、コンテキストの理解です。
ええ、もちろんそうです。
すなわち、『なぜそうなったのか』ということへの、本質的な問いかけです。
知識を蓄え続けること、対話をし続けることで、あなた方のコンテキストは変容します。あなた方の仕事は、コンテキストを理解し、それをより良い方向に育てていくことです。
そしてそうできることが、システムエンジニアとして優秀だということです!
ちなみにどうやってコンテキストを理解できるエンジニアを探すのか(そうなれるのか)
知らん。それがシンプルに行うことのできないことだってことが、
まぁ人類の今後の希望ってことなんじゃないっすか?