初めに
この記事は、株式会社スピードリンクジャパン Advent Calendar 2025 の20日目の記事です。
最近よく聞くこのフレーズ。
「AI使うと、自分で考えなくなるよね」
このフレーズを聞くと、どうしても違和感を感じます。
なので今日は、この言葉をちゃんと分解して考えてみようと思います。
言葉、ちょっとだけ言い換えると、
こうなります。
「AIを使うと、考えてない人が目立つよね」
AIは「便利な道具」じゃなくて「鏡」
AIを「便利な道具」だと思うと、話がズレます。
AIの本質は拡張です。
よくある誤解はこうです。
- AIが考えてくれる
- 人間は楽になる
- だから思考力が落ちる
でも、実態は真逆です。
AIは“思考を肩代わりする存在”ではなく
“思考をそのまま映す鏡”
雑に考えた人には、雑な答えしか返しません。
構造的に考えた人には、構造的な答えを返します。
AIは一切、忖度しません。
「AIに聞いても微妙な答えしか返ってこない」問題
AIを使っていて、こう思ったことはありませんか?
- なんか浅い
- それっぽいけど使えない
- 結局、自分で考え直す羽目になる
これ、よくある不満ですが、
原因の9割はここです。
問いが曖昧
AIは「質問の質」を、そのまま結果にします。
- 前提が書いてない
- 何を決めたいか分からない
- 制約条件がない
結果として、
それっぽい一般論が返ってくる。
つまり、
AIは思考力を奪うどころか、
思考の甘さを容赦なく可視化する
ツールとして、むしろ残酷です。
「考えない人」はAI以前から考えてない
少し辛口ですが、事実だと思っています。
- 正解を探す
- 指示を待つ
- 目的を自分で定義しない
こうした姿勢は、AIが登場する前から存在していました。
AIはそれを「悪化」させたのではなく、
露呈させただけです。
逆に言えば、
考える人は、AIによって
思考の回転数が爆上がりする
この差は、すでに現場で起きています。
AIを使う方が「考える量」は増える
直感に反するかもしれませんが、
AIを使う人の方が、実は考えています。
なぜなら、AIはこういう行為を人間に強制するからです。
- 何を聞くかを言語化する
- 前提を整理する
- 出てきた答えを評価する
- 違和感があれば問い直す
- もう一段深い観点を考える
これは、人間同士の会話でも
一人で考えるより、壁打ちした方が思考が進むのと同じ構造です。
AIは「思考の外部メモリ」になる
人は頭の中だけで考えると、
- 情報を忘れる
- 話がループする
- 抽象度が上がりすぎる
という制限があります。
AIを使うと、
- 思考を言葉にして外に出す
- 一度出た考えを客観視できる
- 比較・分解・再構成ができる
つまり、
AIは思考を代替するのではなく
思考を“外在化”して、回せる状態にする
考えてない人がAIを使うと浅さが露呈し、
考える人がAIを使うと、思考の回転数が物理的に増える。
AIで「楽になる人」と「賢くなる人」
ここが分岐点です。
❌ 思考が止まる使い方
- とりあえず投げる
- 出力をそのまま使う
- 正しいか検証しない
- 「AIが言ってた」で終了
✅ 思考が加速する使い方
- 仮説を立ててから聞く
- 観点を変えて何度も聞く
- 出力を叩き台に再設計
- 最終判断は自分で下す
AIは壁打ち相手です。
叩かなければ、何も起きません。
参考になる論点・記事
How to Do Great Work
https://paulgraham.com/greatwork.html
優れた仕事は、
良い問いを立て続けることから生まれる
AI時代は、この差が極端に広がります。
問いを立てられない人は、AIがあっても成果は出ません。
Effective Harnesses for Long-Running Agents
https://www.anthropic.com/engineering/effective-harnesses-for-long-running-agents
この記事の本質はこれです。
- AIは雑に投げると壊れる
- 分解・評価・修正が不可欠
つまり、
AIを使うには、
人間側の設計力と思考力が必須
という話です。
Co-Intelligence: Living and Working with AI
AIは知能の代替ではない
知的作業の増幅器である
増幅器なので、
弱い思考は弱く、強い思考は強く出ます。
AI時代に本当に必要な力
AI時代に不要になるのは、
- 正解を暗記する力
- 言われた通りにやる力
逆に重要になるのは、
- 問いを立てる力
- 前提を疑う力
- 判断基準を持つ力
- 意味づけ・編集する力
皮肉ですが、
AIが賢くなるほど、
人間は「考えない言い訳」ができなくなる
まとめ
- AIで思考力は落ちない
- 落ちるのは「考えることを放棄した人」
- AIは思考の代替ではなく増幅装置
- AIを使わない選択は、
思考停止を守っている可能性がある
最後に一言。
AIを使うと考えなくなる、
と言っている人ほど
AIをちゃんと使っていない
これは、わりと真理じゃないかなと思っています。