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「AIを使うと考える力が落ちる」説、たぶん逆

Last updated at Posted at 2025-12-20

初めに

この記事は、株式会社スピードリンクジャパン Advent Calendar 2025 の20日目の記事です。

最近よく聞くこのフレーズ。

「AI使うと、自分で考えなくなるよね」

このフレーズを聞くと、どうしても違和感を感じます。
なので今日は、この言葉をちゃんと分解して考えてみようと思います。

言葉、ちょっとだけ言い換えると、
こうなります。

「AIを使うと、考えてない人が目立つよね」

AIは「便利な道具」じゃなくて「鏡」

AIを「便利な道具」だと思うと、話がズレます。
AIの本質は拡張です。

よくある誤解はこうです。

  • AIが考えてくれる
  • 人間は楽になる
  • だから思考力が落ちる

でも、実態は真逆です。

AIは“思考を肩代わりする存在”ではなく
“思考をそのまま映す鏡”

雑に考えた人には、雑な答えしか返しません。
構造的に考えた人には、構造的な答えを返します。

AIは一切、忖度しません。

「AIに聞いても微妙な答えしか返ってこない」問題

AIを使っていて、こう思ったことはありませんか?

  • なんか浅い
  • それっぽいけど使えない
  • 結局、自分で考え直す羽目になる

これ、よくある不満ですが、
原因の9割はここです。

問いが曖昧

AIは「質問の質」を、そのまま結果にします。

  • 前提が書いてない
  • 何を決めたいか分からない
  • 制約条件がない

結果として、
それっぽい一般論が返ってくる。

つまり、

AIは思考力を奪うどころか、
思考の甘さを容赦なく可視化する

ツールとして、むしろ残酷です。

「考えない人」はAI以前から考えてない

少し辛口ですが、事実だと思っています。

  • 正解を探す
  • 指示を待つ
  • 目的を自分で定義しない

こうした姿勢は、AIが登場する前から存在していました。

AIはそれを「悪化」させたのではなく、
露呈させただけです。

逆に言えば、

考える人は、AIによって
思考の回転数が爆上がりする

この差は、すでに現場で起きています。

AIを使う方が「考える量」は増える

直感に反するかもしれませんが、
AIを使う人の方が、実は考えています。

なぜなら、AIはこういう行為を人間に強制するからです。

  • 何を聞くかを言語化する
  • 前提を整理する
  • 出てきた答えを評価する
  • 違和感があれば問い直す
  • もう一段深い観点を考える

これは、人間同士の会話でも
一人で考えるより、壁打ちした方が思考が進むのと同じ構造です。

AIは「思考の外部メモリ」になる

人は頭の中だけで考えると、

  • 情報を忘れる
  • 話がループする
  • 抽象度が上がりすぎる

という制限があります。

AIを使うと、

  • 思考を言葉にして外に出す
  • 一度出た考えを客観視できる
  • 比較・分解・再構成ができる

つまり、

AIは思考を代替するのではなく
思考を“外在化”して、回せる状態にする

考えてない人がAIを使うと浅さが露呈し、
考える人がAIを使うと、思考の回転数が物理的に増える


AIで「楽になる人」と「賢くなる人」

ここが分岐点です。

❌ 思考が止まる使い方

  • とりあえず投げる
  • 出力をそのまま使う
  • 正しいか検証しない
  • 「AIが言ってた」で終了

✅ 思考が加速する使い方

  • 仮説を立ててから聞く
  • 観点を変えて何度も聞く
  • 出力を叩き台に再設計
  • 最終判断は自分で下す

AIは壁打ち相手です。
叩かなければ、何も起きません。

参考になる論点・記事

How to Do Great Work
https://paulgraham.com/greatwork.html

優れた仕事は、
良い問いを立て続けることから生まれる

AI時代は、この差が極端に広がります。
問いを立てられない人は、AIがあっても成果は出ません。


Effective Harnesses for Long-Running Agents
https://www.anthropic.com/engineering/effective-harnesses-for-long-running-agents

この記事の本質はこれです。

  • AIは雑に投げると壊れる
  • 分解・評価・修正が不可欠

つまり、

AIを使うには、
人間側の設計力と思考力が必須

という話です。


Co-Intelligence: Living and Working with AI

AIは知能の代替ではない
知的作業の増幅器である

増幅器なので、
弱い思考は弱く、強い思考は強く出ます。

AI時代に本当に必要な力

AI時代に不要になるのは、

  • 正解を暗記する力
  • 言われた通りにやる力

逆に重要になるのは、

  • 問いを立てる力
  • 前提を疑う力
  • 判断基準を持つ力
  • 意味づけ・編集する力

皮肉ですが、

AIが賢くなるほど、
人間は「考えない言い訳」ができなくなる


まとめ

  • AIで思考力は落ちない
  • 落ちるのは「考えることを放棄した人」
  • AIは思考の代替ではなく増幅装置
  • AIを使わない選択は、
    思考停止を守っている可能性がある

最後に一言。

AIを使うと考えなくなる、
と言っている人ほど
AIをちゃんと使っていない

これは、わりと真理じゃないかなと思っています。

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