TL;DR
マトリックスは全てだ。
至るところにある。
今、この部屋の中にもだ。
窓から外を見るときもテレビを付けるときもそれはそこにある
仕事中、教会、納税するときも
The Matrix
線形性とは
関数 $f(\mathbf{x})$ が持つ以下の性質を線形性といいます。
\begin{align*}
&\text{加法性} \; &f(\mathbf{a} + \mathbf{b}) \;&=\; f(\mathbf{a}) + f(\mathbf{b}) \\
&\text{斉次性} \; &f(k\mathbf{a}) \;&=\; k \; f(\mathbf{a})
\end{align*}
平行四辺形の面積は線形性を持つ
関数 $f(a,b)$ は平行四辺形の面積を求める関数だとすると、この関数は線形性を持ちます。
実際に確かめてみます。
加法性の確認
$f(a+a',; b) = f(a,;b) + f(a',;b)$
$f(a+a',; b+b') = f(a,;b) + f(a',;b) + f(a,;b') + f(a',;b')$
斉次性の確認
線形性を持つ関数は行列になる
平行四辺形の面積以外にもオームの法則やニュートンの運動方程式、波の重ね合わせなど自然現象は線形性を持ちます。
また関数が線形性を持つ場合、その関数は行列に変換することができます。
以下、具体的に線形性の持つ関数から行列を求めてみます。
線形性から行列へ
とある倉庫では、荷物を横(x),縦(y),奥(z) の3つのパラメーターで表しています。
また各パラメーターはわかりやすいように縦にして表示し、値は 50cm ものさし何個分かで記録していました。
荷物をx,y,zで管理することで以下の等式で表すことができるようにもなっています。
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix} =
x
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix} +
y
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix} +
z
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
例 横幅100cm, 縦幅150cm, 奥行き50cmの荷物の場合
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
2 \\
3 \\
1
\end{pmatrix}
しかしながら、50cmものさしから10cmものさしへと切り替えることになりました。
このとき50cmものさしから10cmものさしへの変換を表す関数$f(x, y, z)$ と置くと、この関数は線形性を持ちます。
つまりこの関数は以下のようにして行列に置き換えることが可能です。
\begin{align}
f\left(\;
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
\;\right) &=
f\left(\;
x
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix} + y
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix} + z
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
\;\right) \quad - ① \\
&= f\left(\;
x
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}
\;\right) +
f\left(\;
y
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix}
\;\right) +
f\left(\;
z
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
\;\right) \quad - ② \\
&= x\; f\left(\;
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}
\;\right) +
y\; f\left(\;
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix}
\;\right) +
z\; f\left(\;
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
\;\right) \quad - ③ \\
&=
\begin{pmatrix}
f
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix} \;
f
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix} \;
f
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix} \;
\end{pmatrix} \;
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix} \quad - ④\\
&=
\begin{pmatrix}
5 & 0 & 0 \\
0 & 5 & 0 \\
0 & 0 & 5
\end{pmatrix} \;
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix} \quad - ⑤
\end{align}
従って、
f\left(\;
\begin{pmatrix}
2 \\
3 \\
1
\end{pmatrix}
\;\right) =
\begin{pmatrix}
10 \\
15 \\
5
\end{pmatrix}
NOTE:
- ① → ② 加法性から関数を分割
- ② → ③ 斉次性から係数を関数の外へ
- ③ → ④ 係数を行列に変換
まとめ
線形代数は、関数から線形性という性質を抜き出して抽象化した学問です。
線形性を持つ関数は、加法性、斉次性という性質を用いて関数を分割し、係数を外に取り出し、行列に変換することができました。
(50cmものさしから10cmものさしへの変換は、線形代数の専門用語でいうところの基底の変換になっています。)
第2章 では線形代数における「数」と「関数」について紹介します。
Appendix
平行四辺形の面積からも行列が作れます。
これは、高さと底辺という基底から面積という基底に変換されています。
a, bは0より大きい実数とします。
\begin{align}
f
\begin{pmatrix}
a \\
b
\end{pmatrix} &=
\begin{pmatrix}
x_1 & x_2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a \\
b
\end{pmatrix} \\
&= ab
\\
\therefore ax_1 &+ bx_2 = ab \\
\end{align}
であるから、
\begin{align}
x_2 &= s \quad \text{(sは任意の実数)} \\
x_1 &= \frac{b\;(a - s)}{a}
\end{align}
ゆえに平行四辺形形の面積を表す行列は以下になります。
\begin{align}
f
\begin{pmatrix}
a \\
b
\end{pmatrix} &=
\begin{pmatrix}
\frac{b\;(a - s)}{a} & s
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a \\
b
\end{pmatrix}
\end{align} \quad \text{sは任意の実数}