はじめに
本記事では、ドブルの派生版について、思いつきのアイデアを並べてみます。
以下はこれまでの記事です。
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ドブルデッキの構築
- 任意の 2 枚のカードを選んだ時に、必ず共通するシンボルが 1 つだけ存在するような組み合わせを決定する
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カード内でのシンボルのレイアウト
- シンボル間の重なり無く、程よくランダムに配置する
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生成ツールの紹介
- 画像ファイルから印刷用 PDF まで生成するツールの紹介
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2 枚に 2 つのシンボルが共通するデッキ
- 通常ドブルとは異なる特性を持ったデッキを作ります
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3 枚に 1 つのシンボルが共通するデッキ
- また別の特性を持つデッキです
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派生版のアイデア帖
- デッキの解釈を変えて新しいデッキについて考えてみます
アイデア1: シンボルIDを属性IDと考える
概要
例えば以下のデッキがあるとします。各行が各カードに対応します。
\begin{matrix}
1 & 2 & 3 & 10 \\
1 & 5 & 9 & 11 \\
1 & 8 & 6 & 12 \\
1 & 4 & 7 & 13 \\
... & ... & ... & ...
\end{matrix}
通常は、各シンボルIDが同じ場合、同じ絵を使います。上記の例で示したカードは4枚ともシンボルID: 1 を共有し、それらはすべて同じ絵、ということです。
これを、同じ属性を持つ異なる絵、に変えてみます。これによって、同じ絵を探す、のではなく同じ属性を持つ絵を探す、になります。
属性の例
- 色を表す言葉
- シンボルID: 1 は「黒を表す文字」
- カード 1 のシンボルID 1 は、「くろ」
- カード 2 のシンボルID 1 は、「クロ」
- カード 3 のシンボルID 1 は、「黒」
- カード 4 のシンボルID 1 は、「black」
- シンボルID: 1 は「黒を表す文字」
- ポケモンのタイプ
- シンボルID: 1 は「ほのおタイプのポケモン」
- カード 1 のシンボルID 1 は、ヒトカゲ
- カード 2 のシンボルID 1 は、ロコン
- カード 3 のシンボルID 1 は、ガーディ
- カード 4 のシンボルID 1 は、ファイヤー
- シンボルID: 1 は「ほのおタイプのポケモン」
- 計算結果が同じになる数式1
- シンボルID: 1 は「計算結果が5」
- カード 1 のシンボルID 1 は、$3 + 2$
- カード 2 のシンボルID 1 は、$10 \div 2$
- カード 3 のシンボルID 1 は、$5 \times 1$
- カード 4 のシンボルID 1 は、$8 - 3$
- シンボルID: 1 は「計算結果が5」
- 直交基底(いずれの組み合わせも内積が $0$ になるベクトル群)
- シンボルID: 1 は「 GF(7) における 5 次元空間中の 4 次元部分空間の直交基底」
- カード 1 のシンボルID 1 は、$\left( 5 \quad 5 \quad 0 \quad 0 \quad 1 \right)_{GF(7)}$
- カード 2 のシンボルID 1 は、$\left( 6 \quad 1 \quad 6 \quad 6 \quad 0 \right)_{GF(7)}$
- カード 3 のシンボルID 1 は、$\left( 0 \quad 1 \quad 1 \quad 0 \quad 2 \right)_{GF(7)}$
- カード 4 のシンボルID 1 は、$\left( 1 \quad 3 \quad 2 \quad 0 \quad 1 \right)_{GF(7)}$
- これはほかのパターンと違って「 1 つずつのシンボル(絵)を見ても属性はわからず、 2 つのシンボルを比較して初めて明らかになる属性」なので、(ゲーム性はさておき)おもしろいパターンかと思います
- シンボルID: 1 は「 GF(7) における 5 次元空間中の 4 次元部分空間の直交基底」
実例
以下はカードあたりのシンボル数 $3$ で、「 2 枚のカードに『同じ色を表す言葉』が共通」するデッキです。文字色は適当に付けたお邪魔虫です。
昔、こういう脳トレのゲームがあったような……
アイデア2: 各シンボルに二重の属性を持たせる
1 つのシンボルに複数の属性を与える、という派生形です。デッキはガッチャンコ方式で作ります。
作り方
まず 2 つのデッキを作って並べます。
\begin{array}{ccc|ccc}
0 & 1 & 4 & A & B & E \\
2 & 3 & 4 & C & D & E \\
0 & 3 & 5 & A & D & F \\
2 & 1 & 5 & C & B & F \\
0 & 2 & 6 & A & C & G \\
1 & 3 & 6 & B & D & G \\
4 & 5 & 6 & E & F & G \\
\end{array}
両デッキにおいて、例えば数字のデッキを「『形』デッキ」、アルファベットのデッキを「『色』デッキ」とします。「『形』デッキ」では、 0 は丸、 1 は三角、などを属性として与えて、「『色』デッキ」では、 A を赤、 B を青、などの属性を与えます。
次に、片方のデッキを 1 列左にシフトさせます。
\begin{array}{ccc|ccc}
0 & 1 & 4 & B & E & A \\
2 & 3 & 4 & D & E & C \\
0 & 3 & 5 & D & F & A \\
2 & 1 & 5 & B & F & C \\
0 & 2 & 6 & C & G & A \\
1 & 3 & 6 & D & G & B \\
4 & 5 & 6 & F & G & E \\
\end{array}
両デッキを結合します。
\begin{matrix}
0B & 1E & 4A \\
2D & 3E & 4C \\
0D & 3F & 5A \\
2B & 1F & 5C \\
0C & 2G & 6A \\
1D & 3G & 6B \\
4F & 5G & 6E \\
\end{matrix}
各属性は以下の対応であるとします。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
丸 | 三角 | 四角 | 星 | クラブ | ハート | スペード |
A | B | C | D | E | F | G |
---|---|---|---|---|---|---|
赤 | 青 | 緑 | 黄 | 橙 | 白 | 黒 |
とすると、各カードは以下のような画像になります(枠の色はいったん無視)。
これで「任意の 2 枚のカードは必ず『色』が共通するシンボル、及び『形』が共通するシンボルを 1 つずつ持つ」デッキができました。
遊び方
遊び方はいろいろあると思うのですが、想定しているのは「 2 枚のカードを開くタイミングで 2 つの属性のどちらを答えるかを決める」遊び方です。
例えば上図のように枠に色を付けて「選択した 2 枚のカードの枠の色が同じだったら、共通する『色』を答える。枠の色が異なるなら、共通する『形』を答える」とか。
あるいは『色』か『形』かを書いたサイコロや別のカードを用意しておいて、うまいこと使うとか……
さらなる派生
当然、『色』と『形』以外の 2 属性でも良いし、 3 属性以上を持たせても良いかなと思います。
アイデア1 と組み合わせて、『形』を『色を表す言葉』にしても良いかも。「クロ」と書いてあるけど黄色の文字で、しかも文字を答えるべきか色を答えるべきかが変わる、みたいな。
『色』と『形』で共通するものを答えるって、おばけキャッチみたいですね?何か全然別のコンポーネントを持ってくる、はあり?
この拡張は結構広がりがありそうで、何か面白いのができるかもしれません。
おわり
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数式を使うのは知育系でありそうだな、と思ったら 知育玩具 SUZY’s の提案とその数理構造 (2023/3/14) というレポート、及びこちらの ポスト (2022/8/7) で提案されていました ↩