研究室で,学会発表や修論発表のためのスライドの作成の際に,教授に手厚く指導いただいたので,その知見を共有しようと思います.巡り巡ってわかりやすい発表を自分が聞けることを願って.以下,偉そうなこと言ってますが,自分自身最近気を付けないといけないなと思ったことばかりです.
細かいところ編
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文字のフォントサイズは3種類程度に収めましょう
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グラフの軸の数値や判例の大きさも,スライドのフォントサイズに合わせましょう(スライド作成ソフトのテキストボックスで上書き)
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グラフの軸の数値を入れた場合,数値同士の上下左右のバランスは均一にしましょう
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略語を使う前に必ず正式名称と略称の対応を示しましょう
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何かの概念や数値を示す文字は,すべての場所で字体を合わせましょう(例:ゴシックと数式が入り混じっているのは混乱を招く)
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言葉はできるだけ一行にまとめて,改行にならないようにしましょう.改行があるときは改行位置に違和感がないように
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学術的用語は往々にして長ったらしいときがありますが,一般的に使われている略語があればそれを用いることで乗り切りましょう
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全角かっこと半角かっこ:(と(,全角数字と半角数字,数式モードとそうでないモードなどをスライドを通して統一しましょう
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略語と正式名称,ビットとbitなどの複数の表記法があるものにおいてもスライドを通して表現法を統一しましょう
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文中で参考文献を示す場合は,[1]と書いて発表後に中身を示すのではなく,[DATE '23] など学会名と年が一目でわかるようにして記述しましょう
レイアウト編
まず,「スライドは自由帳ではない!!余白こそ大事!!」ということを,しっかり理解してください.余白にペタペタ情報を張り付けてはいけません.レイアウトがあまりにも悪いと,人はスライドを読んだり内容を理解することをやめてしまいます.特殊事例で,その分野に特別な興味があれば話は別ですが,たいていの学会や発表ではそういう聴衆であることを理解しましょう.一つしか解が存在しないという気持ちで,図や文章の配置や大きさを推敲しましょう.
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図や表と文章の間にはできる限り一行分程度の余白を入れましょう
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スライド内で話題が移るときも,一行分程度の余白を入れたいです
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スライドの左右や上下の余白も確保しましょう
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聴衆の視線は左から右,上から下に動くのが自然です.それと逆行するような視線誘導は行わないように,情報を配置しましょう
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研究結果でグラフを示す場合,グラフのどこを見てほしいかを明確に示しましょう.グラフだけ見せられても人はどこを見ればよいのかわかりません.図形や色,吹き出しを駆使して,研究のここがすごい!というところをわかりやすく提示しましょう.
結論:余白を常に意識しましょう
全体の流れ編
さて,ここまでのトピックを意識すれば,聴衆は,発表をしっかり聴くぞという気になってくれそうです.このトピックでは,発表者の話に聴衆がついていけるかを左右します.レイアウトがよくても,話題が飛び飛びで不適切な流れであれば,聴衆は頭の中に「?」マークが常に浮かんで,フラストレーションがたまってしまいますね.そうならないためにも,以下のことを意識してみましょう.
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まず聴衆は,発表タイトルからどんな内容なのかを想像しています.発表タイトルに含まれているキーワードの説明から発表を始めていきましょう
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言いたいこと(研究結果など)を理解してもらうための背景について,語らなければならない知識は何なのか,いったん書き出して,それらが一連の流れになるように順番を決めて,スライドにしましょう
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先行研究と,提案手法について,明確に聴衆に伝わるようにしましょう.語られていることに新規性があるのか,過去の研究の産物なのか,どちらなの!?と,聴衆は気にしています.「ここから提案手法に移ります」などと明言するとよいでしょう
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学会の発表や学位審査では20分程度の発表時間があると思います.その場合,初めの5分で,研究背景,従来手法の課題,それを解決するための提案手法,その性能評価の結果のダイジェストをはっきり示しましょう.そうすれば,聞くに値する発表なのかを判断してもらえます.文学のように,ネタを最後までもったいぶって取っておいても話を聴く気が失せて終わりです
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↑のダイジェストにおいて,難しい話をするのは禁物です.ダイジェストで理解をやめられたくないですので.難しくて詳しい,頭をよく使わないといけない話は,本編で行いましょう
質疑応答
スライドではないですが,質疑応答の基本姿勢を.(僕は質疑応答が苦手です..)
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相手は発表内容について,そこまで理解していない状態で質問してくるときがあるということを理解しておきましょう.自分が研究内容について一番理解しています.相手は研究の外のことを質問して,すごくないんじゃないの?と言ってきたとしても,自分の提案手法の範囲内に話題を引き戻して,堂々と答えましょう.へりくだっていてはいけません.
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相手の指摘に対して,ネガティブな雰囲気で終わるのはよくありません.アピールできるところはしっかりしましょう.あなたの言葉で,ネガティブにもポジティブにもなります
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応答は簡潔に.まず結論を述べ,その説明をしましょう
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僕のように言葉が達者ではない人は特にですが,想定質問に対しては補助スライドを作成しておきましょう.あなたの回答をきっと助けてくれるでしょう
まとめ
自分への戒めに書いてみました.みなさまの参考になれたら幸いです.