月末の消込は、請求台帳と入金明細の完全一致で9割が消えて、残りが残ります。残った行の正体は、振込名義の表記ゆれ(略称・㈱・カナと漢字)、入金日のずれ(振込手続きで数日遅れる)、そして端数(振込手数料が引かれた金額)です。この残を1行ずつ目で探すと2時間かかります。AIに任せるのは、残った行に対応する候補を「3点照合」で候補化するところまでです。消込の確定と、金額が合わないまま紐付けるかどうかの判断は人の仕事です。
全体の型: 候補の列挙はAI、消込の確定は人間
AIに任せるのは「残った請求行 × 入金行の組み合わせで、金額・日付・名義の3点で近い候補を最大3件挙げる」までです。推測で紐付けてもらわないことが、依頼文の中で最初に書いておくべきルールです。
- 任せる: 残行の相手候補の列挙、一致度(A/B/C)の仮評価、名義表記ゆれの対比表
- 残す: 候補への消込確定、端数の扱い(消込しない・手数料列に落とす)、同姓同名による誤消込の排除
手順1: 残った行だけを貼る
完全一致で消えていない請求行(残リスト)と、その時点でまだ使えない入金行をあわせて貼ります。列は「請求先・金額・請求日・備考」と「振込名義・金額・入金日」の最小限で足ります。
| 請求先 | 金額 | 請求日 | 振込名義(入金側) | 入金額 | 入金日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 株式会社青柳工業 | 356,400 | 10/15 | (株)青柳工業 | 356,400 | 10/18 |
| 東海設備サービス | 82,500 | 10/17 | 東海設備サービス | 82,435 | 10/20 |
手順2: 依頼文を貼る
以下は、請求台帳と入金明細を金額の完全一致で突合したときに消せなかった残行です。
残った請求行と入金行の組み合わせで、次の3点照合候補を表形式で挙げてください。
①金額:完全一致、または振込手数料として815円程度の差を含む一致
②日付:請求日と入金日の差が3営業日以内
③名義:社名の先頭10文字が一致、または「(株)」「株式会社」の表記ゆれ相当
一致度をA/B/Cで仮評価し、Aでも「社名の全文が一致しない」ものは確認必須と出してください。
推測による紐付けは禁止です。どこにも該当しない行は「不明」と1行で出力してください。
消込の実行はしないでください。候補化のみです。
(ここに残リストを貼り付けます)
手順3: 返ってくる候補表の形
| 請求行 | 候補の入金行 | 一致度 | 根拠 | 人の確認 |
|---|---|---|---|---|
| 青柳工業 356,400 | (株)青柳工業 356,400 | A | 名義表記ゆれ・日付3日差 | 社名全文で確認 |
| 東海設備 82,500 | 東海設備 82,435 | B | 815円差(手数料相当) | 端数処理の判断 |
「不明」と出た行だけが、目玉検索の対象になります。
やって起きた失敗: 同じ金額の別会社を消した
候補表のA判定をそのまま消込に通した月がありました。金額は一致、日付も近く、名義の先頭も同じ。しかし振込名義の全文は別でした。同業の別会社です。翌月、入金の未着から訂正仕訳が回ってきました。この失敗から、A判定であっても振込名義の全文を確認するのを消込手順の最初に置いています。AIが「先頭10文字が一致しました」と正しく報告しても、社名は全文で人が見る。推測ではなく事実で消すのが消込です。
検算の4点
- 残件数。消込前後で「消せなかった残」の件数が一致すること。候補化の段階で残が減ってはいけません
- 推測禁止。依頼文に「推測による紐付けは禁止」を毎回固定で書く。書かないと候補にC判定の推測が混じります
- 社名全文。A判定でも振込名義の全文を銀行側表記との対比で確認します。略称同士の一致は根拠になりません
- 端数。手数料差は消込せず、手数料列を設けて記録する。残差0円にするための強引な突合をしない
まとめ
- 消込の遅れは残行を探す時間から生まれる。完全一致で9割を落とし、残だけを3点照合(金額・日付・名義)で候補化する
- AIに任せるのは候補化と一致度の仮評価まで。消込の確定と端数の処理は人が行う
- A判定でも社名は全文確認。同額同姓は実在する。推測禁止を依頼文に固定するのが最重要の1行
この連載では、Excelしか開けない現場で、生成AIに何を任せて何を残すかを、経理・事務の作業ごとに書いていきます。プロンプトは毎回コピーして使える形で載せます。書籍2冊(vol.1/vol.2)はKindle Unlimited(読み放題)で読めます(vol.2)。テンプレート集はyoshito.yuenreach.comにまとめています。