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【徹底比較】ファイルサーバーはどれを選ぶ?オンプレミス vs EC2/EBS vs S3中心構成

Last updated at Posted at 2025-10-09

ファイルサーバーの構築・移行を考えるとき、「オンプレミスが安い」「クラウド移行でBCPを強化したい」といった様々な声が飛び交います。

以前、営業から「結局、オンプレとクラウドどっちが安いんだ?」と聞かれ、見積もりをした経験と、最近のAWS学習で得た知見を元に、主要な3つの構成(オンプレミス、EC2+EBS、S3中心)を徹底的に比較し、最適な選択肢を考察します。

比較検討のきっかけ:営業の一言から始まった見積もり

私が以前、ファイルサーバーの更新時期に見積もりをした際、結論は「初期費用はオンプレミスが圧倒的に安いが、BCP(事業継続計画)や運用負荷を考えるとクラウドが優れる」というものでした。これは多くの企業が直面する典型的なトレードオフです。

しかし、AWSを学び始めると、この「クラウド」の選択肢がさらに二分化されることに気づきました。

  • 従来のサーバー型クラウド: EC2 (仮想サーバー) + EBS (仮想ディスク)
  • サーバーレスなクラウド: S3 (オブジェクトストレージ) + 連携サービス

簡単なファイル共有システムであれば、この 「S3中心の構成」こそが、コストと安全性の両面で最強ではないか と確信しました。

3つの構成を徹底比較

以下のシナリオに基づき、各構成のメリット、デメリット、そしてコスト構造を比較します。

項目 設定値
データ容量 5 TB
ユーザー数 50名程度
アクセス頻度 標準的(一部低頻度データあり)
外部転送量 500 GB / 月

1. オンプレミス構成 (従来のサーバー)

メリット デメリット
初期費用が最も安い (特に小規模) BCP/DR対策が困難で高額 (遠隔地バックアップなど)
ネットワーク遅延が少ない (社内LAN) 運用負荷が高い (ハードウェア保守、OSパッチ、空調管理)
データアクセスに制限がない スケールアウト(容量拡張)に時間がかかる
コスト構造 固定資産。初期投資(HW、SW)と、毎月の電気代・保守費用。

【コスト考察】
初期費用は安いものの、5年間の総所有コスト(TCO)で見ると、サーバーのリプレイス費用や人件費が積み重なり、クラウドを上回るケースも少なくありません。特にBCPを考慮した二重化構成にすると、一気にコストが跳ね上がります。

2. EC2 + EBS構成 (従来のクラウドファイルサーバー)

メリット デメリット
オンプレミスからの移行が容易 (OSや操作感が変わらない) サーバー稼働コストが常時発生(アクセス頻度に関わらず)
スケーラブル (CPU/メモリ増強、EBS容量拡張が容易) 極めて高い耐久性は自前で設計が必要(S3には劣る)
BCP対策が容易 (AMIによるリージョン間DRなど) 運用負荷が残る (OSのパッチ管理、サーバー監視は必要)
コスト構造 従量課金。EC2の稼働時間、EBSのプロビジョニング容量、データ転送量で決まる。

【コスト考察】
サーバーを常時稼働させるため、データアクセスが少ない場合でもEC2とEBSの基本料金が固定費として発生します。5TBのデータ量だと、サーバー費用と合わせ約 $115/月程度のコストがかかります。([前述の概算より])

3. S3中心のサーバーレス構成 (オブジェクトストレージを活用)

メリット デメリット
極めて高い耐久性 (99.999999999%) と可用性(BCPの究極解) SMB/NFSアクセスには追加のサービスが必要 (Storage Gatewayなど)
容量無制限。スケールを意識する必要がない リクエスト数やデータ取り出し(Egress)に課金が発生
運用負荷が最小 (OS管理、パッチ適用が不要なサーバーレス) 高いアクセス頻度の場合、リクエスト課金が膨らむ可能性
コスト構造 従量課金。ストレージ単価、リクエスト数、データ転送量で決まる。

【コスト考察】
S3のストレージ単価はEC2/EBSよりも安価ですが、S3 Standardだけで計算すると、約 $165/月とEC2/EBSを上回ってしまうことがあります。

しかし、ここが最大のポイントです。

S3構成が「安価で安全」になる理由

S3の真の強みは、データアクセス頻度に応じてストレージクラスを使い分けられる点です。

コストを逆転させる秘策:ストレージクラスの最適化

ファイルサーバーのデータは、すべてが毎日アクセスされる「ホットデータ」ではありません。多くは数ヶ月に一度しか使われない「コールドデータ」です。

S3ストレージクラス 5TBの概算コスト(月額) 特徴
S3 Standard (高頻度) 約 $115.00 高いアクセス性能。
S3 Standard-IA (低頻度) 約 $62.50 ストレージ単価が約半分。アクセス回数が増えると割高に。
S3 Intelligent-Tiering 約 $70.00〜$80.00 アクセス頻度に応じてIAに自動で移動し、コスト最適化。

EC2/EBSの固定費(約 $115/月)に対し、S3でStandard-IAやIntelligent-Tieringを適用すれば、ストレージ費用を大幅に削減できます。

構成 特徴 概算費用(月額)
EC2 + EBS サーバー固定費込み 約 $115.00
S3 (IA) ベース 耐久性◎、サーバーレス運用 約 $112.50

この結果、「サーバーレスなS3ベースの構成は、従来のサーバー型クラウドよりも安価に、かつ極めて安全にファイル共有を実現できる」という結論に至るのです。

S3アクセスを実現するソリューション

SMB/NFSアクセスが必要な場合は、AWS Storage Gateway (File Gateway) を利用することで、オンプレミスのサーバーやクライアントPCからS3をあたかもネットワークドライブのように利用できます。

サービス 用途
Amazon WorkDocs コラボレーション重視。Webや専用アプリで利用したい場合。
AWS Storage Gateway 既存のオンプレミス環境から、SMB/NFSでS3をファイルサーバーとして利用したい場合。

結論:最適な選択はS3中心の「サーバーレス」構成

構成 コスト優位性 安全性(BCP/DR) 運用負荷 最適な企業
オンプレミス 初期費用が安い 低い 高い 初期費用を抑えたい小規模企業
EC2 + EBS 中程度 中程度 中程度 既存資産をそのままクラウド移行したい企業
S3中心 高 (IA/Tiering活用時) 極めて高い 最小 (サーバーレス) TCO、BCP、運用負荷を最重視する企業

あなたの新しい知見の通り、ファイル共有システムは「サーバーレス」にすることで、サーバー稼働コストや運用負荷から解放され、同時に最高レベルの耐久性・安全性を得ることができます。

今後は、単に「クラウド vs オンプレミス」ではなく、「サーバーレス vs サーバー型」という視点でファイルサーバーの最適な構成を検討することをお勧めします。

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