はじめに
本記事は、データサイエンス関連のPoC案件で発生した炎上を、体制の再構築と運用改善で鎮火し、最終的に成功させた記録です。
最初に結論を示すと、炎上の主因は 「アサインのミスマッチ」 でした。特に、PM と データサイエンティスト に期待した役割と実力の乖離が大きく、プロジェクトは一時的に機能不全に陥りました。
しかし、早期の体制再編と運用の標準化により、成果達成と信頼向上に至っています。
本記事では以下の観点で整理します。
- どのように炎上が起きたのか(アサインのミスマッチ)
- どのように立て直したのか(体制・運用の再設計)
- 鎮火後の成果と評価
- 振り返りと改善点(未然防止の観点)
1. どのように炎上が起きたのか(アサインのミスマッチ)
PMのスキルギャップ
今回参画いただいたPMには、進行管理やクライアント対応を期待していました。
しかし実際には、タスク管理やスケジュール管理をほとんど行わず、会議に出て「もっとこんなこともした方がいい」とタスクを増やすばかりでした。
結果として、本来必要な進行が滞り、チーム全体の負荷が増す形になってしまいました。
データサイエンティストのアサインのミスマッチ
本案件でよりクリティカルだったのは、データサイエンティストの即戦力アサインがミスマッチだった点です。
PoC特有の不確実性とスピード感の中で、次の課題が顕在化しました。
技術力不足(データサイエンス/実装面)
- 分析設計の深度が足りず、検証計画が不十分
- コーディングの設計が甘く、そのため変更対応が遅い
- 仕様・要件を数式/ロジックへ適切に落とし込めていないケースが多い
上記原因から、そもそもタスクが終らない、終わったつもりが中身は不十分、といった状況が多発しました。
共通の課題:アラート共有と交代判断の遅れ
さらに問題を拡大させたのは、マネージャー陣へのアラート共有が遅れ、メンバーの交代判断も後手に回ったことです。
当初から両名のスキルに違和感はあったものの、それなりにキャリアを積まれた方々だったので「なんとかなるだろう」という楽観が、体制見直しの機会を逸し、後工程のコスト増につながりました。
いずれも「兆候が出ていたのに、早期に問題提起・共有できなかった」ことが炎上の規模を拡大させた要因といえます。
2. 立て直しのために実施したこと(体制・運用の再設計)
その後本件について社内でも課題として認識されるようになり、
またクライアントからも懸念を示されたことで、遅ればせながら本格的にプロジェクトを立て直すことになりました。
体制の立て直し
- エースのデータサイエンティストを新たにアサインし、陣頭指揮を任せた
- エースが抱えていた他案件の比較的簡易なタスクを準エースへ引き継ぎ、工数を確保
- PMを交代し、進行管理とクライアント対応の責任点を明確化
- もともと担当していたデータサイエンティストについては、責めることなくプロジェクトに残し、役割を見直した結果、その後はメンバーとして無事に活躍できた
体制再編のイメージ
| メンバー区分 | Before(炎上時) | After(立て直し時) |
|---|---|---|
| エースのデータサイエンティスト | 複数案件並行/高難度+簡易タスク混在 | 炎上案件にフルコミット |
| 準エースメンバー | 自案件対応のみ | エースの簡易タスクを引き継ぎ、サポート稼働 |
| 従来担当のDS | ミスマッチ | メンバーとして参画を継続し、エースのレビューの元実装・分析で貢献 |
要件の再定義(PoC前提での再構造化)
- 主要メンバーで丸1日かけて集中セッション
- PoCの目的・仮説・評価指標・制約をExcelで構造化
- クライアントへの追加確認事項を事前に整備し、合意形成を高速化
進捗とタスクの見える化(PoC運用)
- WBSを2〜3日粒度に再分解し、依存関係を明示
- タスク管理ツールで進捗を日次更新
- 決定事項・ToDo・責任者・期日を明確にし、クライアントに週次で報告
品質の底上げとタスク管理
- エースのデータサイエンティストが全コードレビューを担当
- 同エースがDaily MTGで全タスクを徹底管理
3. 鎮火から成功へ(成果と評価)
上記の立て直しにより、予定した成果を達成し、本開発に進むことができました。
クライアントからは次の評価をいただきました。
「炎上したものの、その時の対応が的確だったので、現在は安心して任せられている」
炎上そのものより、炎上時の対応品質が信頼の基盤になることを再確認しました。
4. 振り返りと改善点(未然防止の観点)
良かった点
- 既存メンバーの責任追及をするのではなく、体制立て直し・役割の再配置によって活躍の場を提供できた
- エースのデータサイエンティストのレビュー徹底/Daily運用で短期に進捗を回復
- 準エースへのタスク移管でエースの工数を確保
- PMの交代によってスケジュール管理・クライアントへの報告が適切に行われるようになり、データサイエンティストは実装時間を確保できた
改善すべき点
- アサインのミスマッチを早期に検知・共有し、交代や補強を迅速に実施
- 採用・アサインの際は、その案件でPM/DSに必要なスキル を、課題を解いてもらうなどして確実に見極める(これが極めて重要)
- 炎上後は説明・調整コストが極めて大きいため、少しでも不安を感じた段階で即手当てする(炎上はなんとしても避ける)
まとめ
今回の炎上は、PMとデータサイエンティストのアサインミスマッチが引き金でした。
しかし、体制再編・運用の改善・エースのデータサイエンティストの集中的な関与に加え、DSを責めずに残した判断によって短期間で立て直し、成果達成と信頼向上につながりました。
今回の教訓が何かしら参考になれば幸いです。