【導入文】
こんにちは。社内システムのクラウド化を支援している「僕」です。
半導体エンジニアの「妻」にAWSの仕組みを語り、ハードウェア目線で鋭いツッコミをもらうこのシリーズ。今回は、複数のアカウントやリージョン(地域)にまたがるAWS環境の「見えない無駄遣い」を暴く新機能について話した日の会話をお届けします。
1. 【プロローグ】クラウドの海で迷子になったサーバーたち
僕: 「うーん、おかしいな……。確かに『キャパシティ予約(確実にサーバーを起動するための枠の確保)』をしたはずなんだけど、どのアカウントの、どのリージョンで予約したか忘れちゃったぞ……」
妻: 「は? 自分が手配したサーバーがどこにあるか分からないってどういうこと? うちの工場で何十億円もする露光装置の納入場所が分からなくなったら、即クビよ。」
僕: 「物理の機械なら目で見て探せるけど、クラウドの世界だと、アカウントやリージョン(データセンターの場所)を切り替えないと画面に表示されないんだよ。見つからないまま放置したら大変なことになる!」
妻: 「見えないからって管理をサボるからそうなるのよ。複数の工場(リージョン)の稼働状況を統合管理するMES(製造実行システム)みたいなダッシュボードはないの?」
僕: 「それが……ついに最近出たんだよ! 今日紹介する新機能を使えば、迷子のサーバーが一発で見つかるんだ!」
2. 【Tipsのタネ明かし】新ダッシュボード「EC2 Capacity Manager」
僕: 「新しく登場した『EC2 Capacity Manager』を使えば、オンデマンドインスタンス、スポットインスタンス、そしてキャパシティ予約の状況を、単一の画面から一元的に監視・管理できるようになったんだ。」
妻: 「へえ、別々のアカウントでも統合して見れるのね。どういう仕組みなの?」
僕: 「実は『AWS Organizations』っていう、組織全体のアカウントを束ねる管理機能と連携してるんだ。大元で許可を出すことで、すべての子会社アカウントのデータをかき集めてダッシュボードに集約してくれるんだよ。」
妻: 「なるほど、本社のERP(統合基幹業務システム)から、各拠点ファブの在庫データを直接吸い上げるようなものね。それなら迷子にはならないわ。」
3. 【実践Tips】点在する無駄遣いをあぶり出す手順
僕: 「では、この便利なダッシュボードを使って、クラウドの海に消えた迷子のリソースを探してみるよ。」
-
AWS Organizationsで有効化する(※重要)
大元のアカウントでCapacity Managerの「信頼されたアクセス」を有効化し、組織全体のデータを収集できるように設定する。 -
Capacity Managerを開く
EC2ダッシュボードから「Capacity Manager」のメニューを開く。 -
複数環境をまとめて確認
設定画面で、見たいリージョン(東京、大阪、バージニア北部など)を選択。すると、組織全体の「現在使用中のサーバー」の状況がグラフで可視化される。 -
無駄な「キャパシティ予約」の発見(罠の発動)
画面をスクロールして「未使用のキャパシティ予約」の項目を見ると……過去の検証で確保したまま放置されていたリソースが赤裸々に表示される!
4. 【解説と解決策】「見えないコスト」の可視化
僕: 「うわっ! バージニア北部リージョンに、全く使ってない検証用の『キャパシティ予約』が残ってた! しかも別のアカウントに!」
妻: 「未使用? でも、実際にサーバー(EC2)を動かしてないなら、電気代もかからないし別にいいんじゃないの? 第1回で『使った分だけ払う』って言ってたじゃない。」
僕: 「それがこの機能の恐ろしい罠なんだよ……。キャパシティ予約っていうのは、Amazonに対して『いつでも起動できるように物理ハードウェアの場所をキープしといて!』ってお願いする機能だから、サーバーを1台も動かしてなくても、枠を確保しているだけで通常のサーバーと同額の料金が発生し続けるんだ。」
妻: 「はああ!? それってつまり、クラス100の超クリーンルームのラインを貸し切って、高価な窒素も純水も通しっぱなしにしているのに、1枚もウェハーを流してないのと同じじゃない! ただの特大赤字よ!」
僕: 「おっしゃる通りです……。今までなら、各リージョンとアカウントを一つ一つログインし直して確認しないと気づけなかったから、この一覧画面は本当に助かるよ。」
僕: 「ちなみに、2026年のアップデートで、スポットインスタンス(余剰在庫の格安サーバー)が『AWS側の都合で強制終了(中断)させられた割合や回数』も、この画面で見れるようになったんだ。」
妻: 「処理途中で強制終了される割合……つまり、クラウド上の『歩留まり(良品率)』のダッシュボードってわけね。それを見ながら、どこのリージョンのラインが安定して稼働するか分析できるなら、機能としては悪くないわね。」
5. 【お片付け】見つけた無駄は即キャンセル!
僕: 「いやー、新機能のおかげで無駄なコスト(クラウドの幽霊)を退治できたし、最新のメトリクスも試せて大満足だよ。」
妻: 「満足するのは、その画面から対象のアカウントに飛んで、不要な予約を『キャンセル』してからにしなさい。ダッシュボードで異常アラームを見つけておきながら、お茶飲んで放置してるエンジニアは工場には要らないわよ!」
僕: 「はーい! すぐに該当の画面へ飛んで、不要なキャパシティ予約を解除してきます!」
【結びの文】
AWS Organizationsと連携することで、複数環境の運用が劇的に楽になる「EC2 Capacity Manager」。しかし、ダッシュボードを見て満足するだけでなく、発見した「未使用リソース」の確実なお片付け(キャンセル)をお忘れなく!