この記事は Qiita Advent Calendar 2025 - 時系列データ の1日目の記事です。
はじめに
「年のせいか疲れやすくなった」「今日はなんだかいつもより疲れている気がする」と思うことはありませんか?また、自覚はなくても既に疲労が蓄積して、気づいたらヘロヘロになってしまっていることもあったりします。
疲労度を客観的に測る指標があればいいなと思い調べたところ、PERCLOS(Percentage of Eye Closure)というのを見つけました。この記事ではPCのカメラで定期的に自分の顔を撮影し、疲労度を自動計測するシステムを作った記録を紹介します。PCを起動している時間しか計測しない不規則なデータですが、こんなデータからも分析ができるか複数記事のシリーズにして書いてみます。
PERCLOSとは
疲労度の指標として使用したPERCLOS(Percentage of Eye Closure)について説明します。
定義
PERCLOSは、一定時間内に目が80%以上閉じている時間の割合
もともとは自動車運転中の眠気検出のために研究された指標で、複数の論文で有効性が確認されています。
閾値
研究(Dasgupta et al., 2015)によると:
| PERCLOS値 | 状態 |
|---|---|
| < 15% | 覚醒(正常) |
| ≥ 15% | 眠気警告 |
この 15% という閾値が、眠気による危険を検出するための基準として広く使われています。
計測方法
私のシステムでは:
- 3分間の動画を撮影(15分ごと、毎時4回)
- 顔のランドマーク検出でEAR(Eye Aspect Ratio)を算出
- EAR < 0.2 のフレームを「目が閉じている」と判定
- 閉眼フレーム数 / 総フレーム数 = PERCLOS
※ 1時間に4回、3分間の自撮り動画を撮りました
計測結果:欠損だらけの時系列
収集期間と記録数
- 期間: 2025年10月21日〜11月30日(約40日間)
- 記録数: 734レコード
- 理想の記録数: 96回/日 × 40日 = 3,840回
- 実際のカバレッジ: 約19%
つまり、8割以上が欠損しているデータです。
欠損の原因
当然PCを起動している時間、しかもPCの対面カメラに映っている時間しか記録できません。
- 睡眠時間
- 離席中 (会議や打ち合わせ)
- ポーズや顔の向きで顔が認識できないとき
可視化の工夫
欠損だらけのデータを意味のある形で可視化するために、少し工夫をしました。
1. 1時間単位での集計
生データをそのままプロットすると、記録のない時間帯が空白になり傾向が見づらくなります。そこで1時間単位の平均値で集計しました。
2. 閾値ベースの色分け
- 赤: PERCLOS ≥ 15%(眠気警告)
- 緑: PERCLOS < 15%(覚醒)
色分けすることで「危険な状態かどうか」を視覚的に把握できます。
3. 可視化結果
なんと、ほとんどの記録時間帯で15%を超えていました
※ PROMPT-X の RealBoard で可視化しています。
なぜこんな結果になったのか
あまりにも疲労度の割合が高いのですが、次のような可能性が考えられます。
カメラ位置の影響
MacBook Proの内蔵カメラ(画面上部)で撮影しているため、PC作業中は自然と目線が下向きになります。これにより:
- EAR(Eye Aspect Ratio)が実際より低く計測される可能性
- 結果としてPERCLOSが高めに出ている可能性
が考えられます。
もともと眠そうな顔をしている
😪
まとめ
- PERCLOSは眠気検出の研究で確立された疲労度指標
- 閾値ベースの色分けで傾向を把握
- カメラ位置や作業姿勢に影響されるので参考程度に
次回予告
今回はPERCLOSの概要と可視化に焦点を当てました。今回のアドベントカレンダーで:
- 欠損率80%以上のデータから意味のある分析ができるか?
- EAR・MARの詳細分析と計測システムの実装
など、「不完全な時系列データでも無駄じゃない!」を掘り下げていきたいと思います。
明日の時系列データ Advent Calendar 2025 2日目は、私の「こんなところにも時系列データ(仮)」です!
参考文献
- Dasgupta, A., et al. (2015). A Vision Based System for Monitoring the Loss of Attention in Automotive Drivers. arXiv:1505.03352
- Soukupová, T., & Čech, J. (2016). Real-Time Eye Blink Detection Using Facial Landmarks. CVWW 2016
- SLEEP Advances (2023). PERCLOS-based technologies for detecting drowsiness: current evidence and future directions

