1日目はHubbleでSenior Development Managerをしている井上が書かせていただいた記事となります。
はじめに
「個の裁量を尊重しながら、チームとして動くにはどうすればいいか?」
スタートアップの開発組織において、この問いは常に付きまとうテーマです。
Hubbleでは2025年度に向けて、開発体制の大幅な再設計を行いました。
その背景には、「自律」と「チームワーク」を両立させるための明確な意図があります。
本記事では、エンジニアリングマネージャー(以下EM)の視点から、組織変革におけるマネジメントの再定義について考えます。
なぜ、体制変更が必要だったのか
Hubbleの開発チームはこれまで、メンバー一人ひとりが自由に裁量を持ち、自律的に動く文化を重視してきました。このアプローチはスピードと柔軟性をもたらしましたが、組織がスケールするにつれていくつかの課題が見えてきました。
- 各メンバーの認識や目線にズレが生じやすい
- チーム単位での動きが弱く、個々の最適化に偏る
- CTOがあらゆる領域をカバーせざるを得ず、負荷が集中していた
これらの課題を放置すると、個の裁量は維持できても「チームとして成果を出す力」が失われてしまいます。だからこそ今回の体制変更では、役割・責任・目標を明確化し、チーム全体で自律的に動ける構造へとシフトしました。
エンジニアリングマネージャーの4つの領域
EMという職種は、企業ごとに定義が異なります。その上で、EMの職能は次の4領域に分類できると考えています。
- プロダクトマネジメント(何を作るか)
- プロジェクトマネジメント(どう進めるか)
- テクニカルマネジメント(どう作るか)
- ピープルマネジメント(誰とどう作るか)
Hubbleにおいては、これらの中でも特に ピープルマネジメント に重きを置き、中心に「人」を据え、チームが自律的に成果を出せるよう支援する存在として再定義しました。
ピープルマネジメントを軸にした組織設計
ピープルマネジメントというと「評価」「育成」といった定常業務を想起しがちですが、私の捉え方は少し違います。それは、「人が自律的に動ける構造をつくること」そのものがピープルマネジメントであるという考えです。
具体的には以下のようなアプローチをとりました。
- 各メンバーの Will(やりたいこと) と Can(できること) のバランスを見て業務を設計
- チーム単位での責任範囲を明確化し、成果を「個」ではなく「チーム」で捉える
- 信頼を前提とした裁量の維持と、共通目線の両立を意識
この「Will × Can × Team」という三軸を整えることが、結果的に個人のモチベーションとチームの生産性の両方を引き上げると感じています。
テックリード・CTO室との関係性
EMが「人」を中心に据える一方で、テックリード(Tech Lead)とCTO室は技術的な側面から組織を支えます。
- Tech Lead: テクニカルマネジメントを専門領域として深掘る
- CTO室: 技術戦略・横断的課題解決・イノベーション推進を担う
すべてをCTO一人で抱えるのではなく、“粒度ごとに適切なレイヤーで意思決定する”構造を整えることで、 現場と経営の間に健全なバッファが生まれました。このように「人」と「技術」のマネジメントを分けつつ連携させることで、チームの自律と技術的な深さを両立させることを狙っています。
自律に基づくチームワークという価値観
Hubbleには “Values” として
「自律に基づくチームワーク」 と 「人間性の好循環」 があります。
- 細かいルールではなく、信頼とオーナーシップで動く
- 思いやりと心理的安全性を軸に、フラットに意見を交わす
今回の体制変更は、まさにこれらの価値観を構造として体現する試みでもあります。仕組みをつくるだけでなく、仕組みが人を支え、人が仕組みを進化させる状態を目指しています。
これからのEMに求められる視点
Hubbleの開発組織は、まだ進化の途中です。技術的にはより大規模な顧客を見据え、セキュリティやコンプライアンス対応を強化するフェーズにあります。
このような環境でEMに求められるのは、技術・組織・人を横断的に理解することだと思っています。
- 技術:アルゴリズム、データ構造、AI、セキュリティなどの基礎知識
- 組織:役割と責任を明確にし、ボトルネックを構造で解消する力
- 人:メンバーが自律的に動ける環境を整え、Will/Canを伸ばす支援
「技術とマネジメントを分けない」視点こそ、これからのエンジニアリングマネージャーに求められる姿勢だと考えています。
おわりに
今回の体制変更は、まだ“完成形”ではありません。試行錯誤を繰り返しながら、チーム全体で最適な形を探っていくプロセスそのものが、私たちにとっての成長だと思っています。
自律とチームワークは、対立するものではない。
むしろ、信頼に基づく自律こそがチームワークの源泉である。
これからも、Hubbleの開発チームはこの問いを探求し続けていきます。
Next
明日は Backend Lead Engineer をされている @alstrocrack さんが担当となります!
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