ふりかえり(レトロスペクティブ)は定期的に、頻繁にやるのが効果的です。いっぽう、大きな区切り、プロジェクトが終わったときとか、期の切り替わりとかで、長期間を対象にしたおおきなふりかえりをやりたいときもあります。
ビッグふりかえりをやるときは、普段のふりかえりに加えて気をつけるべき点があります。また事前の準備をしておくとより効果的になります。そうした注意点を盛り込んで準備するやり方を紹介します。
1. 目的をハッキリさせる
一般にふりかえりの目的は改善ですが、__今回__やりたい__その__ふりかえりの目的は、もう少し具体的になるはずです。どういうタイミングのふりかえりなのか?ふりかえり対象の期間には、どんな特徴があったか?特に議論したい問題はあったのか?
またふりかえりは、次の一歩をよりよく踏み出すためにおこないます。次の一歩とはどんなものになりそうでしょうか。次の一歩に特に役立つ目的を設定しましょう。
目的や、(次で考える)テーマは、事前に関係者にも見てもらい、コメントやフィードバックを得ておきましょう。自分だけでは見落としている重要な問題点やテーマが見つかるかもしれません。また、参加者が心の準備をする役にも立ちます。
2. テーマを選ぶ(オプション)
ビッグふりかえりでは議論するテーマを事前に絞り込んでおくとうまくいく場合があります。対象範囲が大きく、人数も多いと話が発散しやすく、ファシリテーターの手に負えなくなるかもしれません。
いっぽう、テーマを狭めてしまうとふりかえりから得られる学びが限定されてしまうきらいもあります。テーマをどこまで絞るのか、どういう見せ方をするのか(事前に提示するのか、様子を見ながら誘導するのか、など)も検討しておくとよいでしょう。
3. 対象範囲を決める
ビッグふりかえりでは長い期間を対象にすることになります。そうすると、関係者も多くなるかもしれません。ビッグふりかえりで取り上げる期間と、参加してほしい関係者を決めましょう。
関係者が増えるとスケジュールや場所の調整も手間が増えます。その調整にかかる時間や手間も準備として見込んでおきます。また、ふりかえりの場に参加してもらうのが難しい人もいるかもしれません。そうした人からのインプットを事前に得るとか、あるいはリモートで参加してもらうなどの方法も検討します。
4. 日時と場所を調整する
参加者が定まったら、実施する日時と場所を決めます。ビッグふりかえりは普段使わない場所を利用すると、参加者の気分が切り替わり、また割り込みも発生しにくいというメリットもあります。泊まりがけの合宿形式にする手もあります。
5. ふりかえりの進行を設計する
長時間のふりかえりをアドリブだけで進めるのは困難です。また普段のふりかえりと同じ進め方では、扱いきれないかもしれません。人数が多ければグループ分けや共有方法なども工夫が要ります。あらかじめ、どんな進行にするか検討しておく必要があります。
ふりかえりの時間全体を45分~90分に分割し、1つの枠で1つのテーマを取り上げるように設計するとやりやすいです。1つの枠に『アジャイルレトロスペクティブズ』にある5つのフェーズを入れ、小さな達成と成功を迎えられるようにします。
個々の枠では普段のふりかえりなどでも使っている、いろいろな手法の選択肢があります。キーワードだけ紹介します。
- 『アジャイルレトロスペクティブズ』
- KPT
- YWT
- ワールドカフェ
- フレームゲーム グループグロープ、汎用ボードゲームなど
- Envelope
- OST
- タイムライン
- チェックイン
- Retromatにもたくさんの手法が紹介されています
規模ややることに応じて、ファシリテーターが何名必要になるかも決めておきます。外部からファシリテーターを呼ぶならその調整も必要です。
6. データを収集整理する
取り上げるテーマによっては、事前にデータを収集しておいて、参加者に提示できると効果的なものがあります。対象期間が長いとどうしても記憶が薄れたり、最近の出来事に意識が向きやすくなります。先に時間をかけてデータを集めておくと、参加者の記憶を喚起したり、立場によって見え方が違っていた状況を多面的に議論しやすくなります。
- 公式なイベント ―― タイムライン上に提示すると、時期について認識を合わせやすくなり、思い出しやすくなります
- ある出来事の時系列に沿った詳細な記録 ―― ビッグふりかえりで取り上げたい出来事や事件については、その経緯を客観的に把握できる範囲で記録を集めて提示しましょう。人によって認識が違っていることが明らかになることもあります
- 写真や記録、会話ログなど ―― どんなことをしていたか、どんな話をしていたか、情報としても役立ちますし、思い出すトリガーにもなります。まとめではなく、当時参加者が実際に目にしていたものをそのまま提示します
こうしたデータを集めておき、必要に応じてすぐ提示できるよう整理して準備しておきます。
7. 告知する
参加者が忘れたりしないよう、別の予定を入れてしまったりしないよう、告知をしましょう。ふりかえりの主催者として、「参加者が当然参加する」という態度を取らず「面白くてためになるイベントだからぜひ参加してほしい」というメッセージを発信しましょう。内容についてもあるていど触れておき、参加者が心の準備をしたり先に考えておいたりできるように配慮しましょう。メールなどのアナウンスだけでなく、重要な参加者には個別に話をして、なぜ参加してほしいのかよく納得してもらいましょう。