どうも ネクストスケープ 安田正 です。
AIを常日頃から使っている身として、どのようにAIに相談しているのかという実例を書いてみます。知らない事を調べる時、どういう所に気をつけるべきなのかという参考になればと思いました。
今回は私の専門外である経済について相談してみます。
はじめに
使用するAI
Claude CodeをVSCodeから使います。画像生成などは行えないのでグラフの作成はpythonでやることになります。
調査する期間
可能な限り2000年以降、現在までの指数を調べます。2000年を区切りにしたのは単に区切りがいいからです。
質問と回答は要点のみ記載
質問とAIの回答は簡潔にまとめます。長すぎて全部は載せられないので。なので同じ質問をしても異なる結果が得られるはずです。
質問のコツ
以下を心がけます
- 指数や比較可能な値を相談すること
- 私が自分で調べられるソースが存在すること
- 調査に責任を持つのは自分です
やってみた感想
- e-statを業務で使っている人達は凄いと思いました。国を支える人達はこれを使いこなしているのですね
- もっと色々やりたかったのですが、時間がかかりすぎて断念しました。スキルが足りずに申し訳ありません
生産性はどの程度上がったか
みんな大好きな生産性を調べて見ます。
私が勤め始めたのは1999年、その後すぐにITバブルが崩壊しました。個人的にはまるで実感がないバブルだったと記憶しています。その頃から比較して、IT業界や経済全体はどれくらい効率化し、生産性が上がったのでしょうか。AIに相談してみました。
質問: 日本の2000年以降で、IT業界は極めて業務が効率化していると思っています。生産性や業務効率を表す指数はありますか?
回答:
指数の種類
- 労働生産性(従業員1人あたり付加価値額)
- 情報通信業: 1,413.1万円/人(2019年)
- 2010-2018年: ほぼ横ばい
- TFP(全要素生産性)
- 資本・労働以外の質的成長要因(技術進歩・効率化)を示す
- 日本は米国の半分弱、ドイツの4分の1程度
- 情報サービス業売上高
- 2023年: 16.9兆円(前年比6.2%増)
- 2011-2023年: 継続的な上昇傾向
発見: 効率化の実態
売上は増加しているが、労働生産性は横ばい。IT投資は「業務効率化・コスト削減」に位置づけられるが、システム更新時に業務慣行を変えず、IT資産を十分活用できていない。
2000年からのデータでもないし、これではAIの感想文になっています。使えそうなものを抽出しましょう。「労働生産性」「TFP(全要素生産性)」は使えそうな指数です。売上高は却下します。
まずは労働生産性について調べて見ましょう。
質問: 「労働生産性」について、2000年から現代を調査したいです。公式な情報で調査する方法を教えてください。IT業界と国全体で比較したいです。3つ以内の方法論で、手順を教えてください。ExcelやCSVで取得したいです。可能な限りURLを提示してください。
回答:
方法1: 日本生産性本部(JPC)
- 労働生産性の国際比較: https://www.jpc-net.jp/research/productivity.html
- 産業別生産性統計: https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html
- Excel形式のデータ提供あり、情報通信業を含む産業別データが入手可能
方法2: 総務省統計局「e-Stat」
- 政府統計の総合窓口: https://www.e-stat.go.jp/
- 「国民経済計算」「経済センサス」「労働力調査」を組み合わせて利用
- CSV/Excel形式で一括ダウンロード可能
- 計算式: GDP(産業別)÷ 就業者数 = 労働生産性
方法3: OECD統計データベース
- OECD.Stat: https://stats.oecd.org/
- "Productivity and ULC by main economic activity"を選択
- 全産業と情報通信業を比較可能
- Excel/CSV形式でダウンロード、国際標準の計算方法を採用
日本生産性本部(JPC)のURLは間違えています。さらに「労働生産性の国際比較2024」を見ても、ExcelやCSVのダウンロードはできません。
https://www.jpc-net.jp/research/detail/007158.html
総務省統計局は、計算すれば出てきそうですが、ちょっと面倒そうです。
ここはOECD統計データベースを見てみましょう。URLはリダイレクトされて https://data-explorer.oecd.org/ に移動します。

"Productivity" が生産性です。開いてみましょう。

困りました…。海外の情報によくある事ですが、何を選べばいいか解りません。
こんな時はAIに相談してみましょう。動的なページなので、URLをそのまま調べてもらう事はできません。こういう時は、開発ツールで選択肢をコピーしてみます。

選択肢のHTMLを保存してAIに内容を質問したら答えがでてきました。
このHTMLファイルは、OECDデータベースのMeasure(測定指標)選択メニューの一部です。生産性に関する様々な統計指標をチェックボックス形式で選択できるインターフェースです。
主な内容
基本情報
全126項目の中から選択可能
検索機能付き(行43-45)
階層構造で整理されており、展開/折りたたみが可能
表示されている主要な測定指標
- 労働時間と生産性の寄与度
Contribution of hours worked to GVA growth (HRSTO_PCCONG) - 労働時間のGVA成長への寄与- 全要素生産性(MFP)関連
Contribution of MFP to GVA growth (employment based/hour based) - MFPのGVA成長への寄与
Contribution of MFP to labour productivity growth - MFPの労働生産性成長への寄与
(後略)
指標を選択するもののようです。何度か相談して以下の指数を使う事にしました。
- GVAEMP: Gross value added per person employed(就業者1人あたり粗付加価値額)
- MFPE: Multifactor productivity (employment based)(多要素生産性)
同じように他も選択します。年度単位でまとめて日本を対象にしたところ、該当するデータは1つになりました。

クリックしてみましょう。ダウンロードする条件を指定する画面になります。

同じようにAIに相談しながら抽出条件を指定します。細かい所は省略します。
- 数値の基準を "Chain linked volume (rebased)" (連鎖価格方式)
- 2000年から現在まで選択
- 業種を "Information and communication" (情報通信業)
"Download"をクリックして、CSVファイルをダウンロードしましょう。フィルタを有効にしてダウンロードします。以下のようなファイルが取得できるはずです。

これだと解りづらいのでAIに整形してもらいます。
質問: 以下は労働生産性についてのファイルです。日本_情報通信業_労働生産性とMFP_2000-2023_LR基準.csv 日本の情報通信業である事は解っているので、グラフ作成に必要なデータを抽出して、他のファイルに解りやすく作り直してください。目的はグラフにまとめて、今後他のデータと比較することです。
- 目的を書いている理由は、データの整形した結果を安定させるためです。他のデータとの比較を想定しないと勝手に一部のデータを省略する事があります。データの形式なんて無数にあるのでAIの気持ちも解る気がします
回答:
このように整形されました。非常に解りやすくなったと思います。

これをグラフにしてもらいました。
詳細は省きますが、pythonのソースを生成して足りないライブラリをインストールしてくれて実行して画像を生成してくれました。これ最初に見たときは本当に驚きました。

非常に残念な結果が得られました。モチベーションが下がりそうなグラフです。しかしながら、これが必ずしも悪い結果とはなりません。そもそも業界全体の経済規模は成長しているのです。
ありがたい事に、AI君はちゃんとヒントをくれています。
- 計算式: GDP(産業別)÷ 就業者数 = 労働生産性
労働人口を調べれば、それっぽい値が調査できると思います。
これまでの手順を生かして、OECDデータベースとe-statの労働力調査から労働人口を取得しました。
- e-statの調査手順は省略します。細かく言わないのですが、力尽きました

素晴らしい成果です。解りやすく逆相関しています。要するに人数が増えたために労働生産性が下がったのです。善し悪しは解りませんが、労働生産性が下がる理由は一つ解りました。
もう少し違う確度から、ポジティブな情報が欲しいところです。
質問: IT産業の労働生産性、従業員数を以下のCSVにまとめました。私としては、ここ10年くらい順調に世の中が良くなっていると思っていたのですが、どうも生産性は下がっているし、労働者が増えただけで、あんまりいい情報が見えないです。もう少しポジティブな情報ってどこかにないのでしょうか?可能な限り一般的に使われる指数で分析してみてください。
回答:
たったこれだけの情報で何かわかるのだろうかと、半ば投げやりに質問してみたのですが。驚いた事にちゃんと別の表を作ってくれました。「雇用者率」が私の目を引きました。

「雇用者率」は、就業者のうち雇用者の割合を示します。どれくらいが正社員なのかの目安となります。これが下がっているという事は、IT産業はフリーランスや派遣社員に依存する割合が増えているという事です。個人的には良いことのように思えます。多くの人がIT産業に入りやすくなったという事です。
こうなるともう少し調べてみたいですが、それはまたの機会にしましょう。最後に関連する経済指標を提案してもらいました。
今後取得すると有用な経済指標(提案)
(A) 産業規模・構造
- 名目GDP(情報通信業)
- 実質GDP(情報通信業)
- 中間投入額
- 産出額
(B) 労働市場
- 平均給与額: 生産性が下がっても給与が上がっていればポジティブ
- 労働時間: 長時間労働が減っていれば働き方改善
- 労働分配率: 企業が利益を従業員に還元している度合い
- 正規・非正規雇用比率: 雇用の質を評価
(C) 資本・投資
- 資本ストック額: IT投資の蓄積状況
- 設備投資額: 将来への投資姿勢
- 資本生産性: 投資効率
(D) 国際比較
- 対GDP比率
- 諸外国との労働生産性比較
(E) イノベーション
- 研究開発費: R&D投資額が増えていれば将来性あり
- 特許出願数: 技術革新の活発度
おわりに
いかがでしたでしょうか。私のようなものがどのようにAIと対話して、どのように調べ物をするのか。その一例を述べてみました。AIを使った調べ物をする時の参考になれば幸いです。
繰り返しになりますが、もう少し色々やってみたかったです。エンゲル係数とか投資とか、もっと身近な物はあったような気がします。e-statの使い方に習熟して、来年リベンジしたいと思います。
皆様良いお年を。