ランサムウェアの被害報道が続いても、自社で何を先に備えればいいのかは、はっきり言い切れない。侵入経路やバックアップの考え方があいまいなままだと、被害が出たあとの説明も、経営層への相談も後手に回る。『ランサムウェア攻撃対応の実務:公表情報の分析からみる傾向と対策』は、国内で公表された事例を分析して、被害の実態と対策を整理した本だ。
公表事例をもとに、被害金額と侵入経路を具体的に見る
第1章でランサムウェアとは何かを押さえたあと、第2章で被害金額を損害の種類ごとに整理し、国内の公表事例を取り上げている。第3章は侵入経路で、VPN機器やリモートデスクトップからの侵入が、公表されている事例とともに説明される。抽象論ではなく、実際に起きた話から備えを考えられる。
法律の論点と、経営の課題として捉える視点がある
本書はサイバー攻撃を受けた企業を支援する弁護士が書いていて、ログ管理やバックアップ、身代金の支払いをめぐる法律問題にも触れている。技術の問題としてだけでなく、事業継続やコーポレートガバナンスの課題として扱っているのが、担当者が経営層に話す場面で役に立つ。
読んでおきたい理由
- 被害金額の章を読むと、賠償、費用、利益の3つの損害に分けて、経営層にリスクを説明できる
- 侵入経路の章で、自社のVPN機器やリモートデスクトップの管理に抜けがないか、点検の観点が手に入る
- 公表事例が並んでいるので、他社の経過を自社の状況と見比べて、備えの優先順位を考えられる
- バックアップとログ管理の話を、被害後の調査に使える形で整えるきっかけになる
- 身代金の支払いをめぐる論点を事前に知っておくと、有事の判断を落ち着いて進めやすい
まとめ
ランサムウェアへの備えは、技術の担当者だけでは決めきれない問題になっている。まずは侵入経路の章を読んで、自社のVPN機器とリモートデスクトップが、いまどう管理されているかを棚卸しするところから始めてみてほしい。