案件ごとに使うクラウドが違って、AWSの次はAzure、さらにGoogle Cloud、という状況になることがある。クラウドごとにセキュリティの用語や設定の作法が違うので、片方の感覚で触ると抜けが出やすい。全体を貫く考え方がないまま個別の設定を覚えていくと、どこまで揃っていれば安心なのかが分からなくなる。『マルチクラウドセキュリティの教科書 クラウド横断で実現する堅牢なセキュリティ基盤』は、AWS、Azure、Google Cloud、OCIの4つを対象に、セキュリティの設計と運用をまとめた本だ。
4つのクラウドを、同じ枠組みで見比べられる
各クラウドに詳しい複数の著者が書いていて、4大クラウドのセキュリティ設計と運用を横断して扱っている。多層防御やゼロトラストといった設計の考え方に始まり、IAMとアクセス管理、ネットワーク、データ保護、アプリケーションとIaCのセキュリティへと進む。章立ても、クラウドの概念と設計、プラットフォームとインフラ、アプリケーション、データ、オペレーションと順番に並んでいて、層ごとに整理しやすい。
運用・監査・法規制まで、実務で触れる範囲が広い
セキュリティオペレーションの章では、ログ管理、脅威インテリジェンス、SIEM、インシデント対応といった運用の話が出てくる。さらに、法規制、監査、リスク、コンプライアンスにも1章が割かれている。設定を作る場面だけでなく、運用して説明する場面まで視野に入っているのが特徴だ。
生成AIのセキュリティにも1章ある
第8章はクラウドにおける生成AIセキュリティで、AIのリスクやガードレール機能、最新の動向を扱う。クラウド上でAIを動かす案件が増えている今、基盤側の守りとあわせて読めるのは便利だ。
読んでおきたい理由
- 複数のクラウドに共通する考え方を先に持てるので、新しいクラウドでも設定の見る場所が分かる
- IAM、ネットワーク、データ、アプリケーションの各層を順に押さえて、抜けの確認に使える
- ログ管理やSIEM、インシデント対応まで、運用側の視点が手に入る
- 法規制や監査の章があり、セキュリティの説明を求められたときの材料になる
- 生成AIのセキュリティも同じ本で確認できる
まとめ
約540ページある大きな本なので、最初から通読しなくていい。まずは自分が今触っているクラウドの層(IAMかネットワークか)の章を開いて、別のクラウドではどう書かれているかを見比べるところから読んでみてほしい。