はじめに
「隙間時間を有効活用すれば社会人でも勉強できる!」
という類の話をたまに聞く。
この考え方自体は至極尤もらしいし筆者も大賛成なのだが、
- じゃあ隙間時間で実際に何をすればいいの?
- 隙間時間をMAXまで使うと、自分はどの程度成長できるの?
と、自分の話に落とし込めずにずっとモヤモヤしていたので、
今回TOEICを学習題材に選び、約2か月間、仕事に追われながら隙間学習を実践した。
学習題材の候補として、TOEICの他に統計学や機械学習も挙がったのだが、
理論屋の自分は数学的な話が絡むと、時間を忘れて最後まで疑問をつぶしたくなり、
直観的に細切れの隙間時間と相性が悪いと考えたため、今回は除外した。
(1話完結型のアニメは続きが気にならない分、すぐにやめられるのと同じ)
また、筆者はTOEICのSCORE自体に拘った。
高いSCOREを取得するとそれを足掛かりに仕事の機会も増やせるし、
同時にその実績が自身へのプレッシャーにもなるため、結果的に英語力向上に繋がる。
「TOEICに特化した学習だと英語力が偏る」というのであれば、
まずはTOEICの分野からしっかり押さえ、その後必要に応じて補完すればいい、と考えた。
仕事が繁忙期の中完全に見切り発車だったが、何とか学習時間を捻出し、
結果として2か月間でTOEIC SCOREを775->950まで伸ばすことに成功した。
本記事はこの隙間時間を使ったTOEIC学習の一部始終の記録であり、
- 隙間時間を有効活用したい!
- TOEICのSCOREを伸ばしたい!
と考える方々にとって、1つのサンプルとして手助けになればと思う。
サマリ
どんなスケジュールだったの?
日付 | 項目 |
---|---|
2021/1/9 | 1. TOEIC受験申込 事前戦略立て |
2021/1/22 | 2. TOEIC当選 試験対策開始 |
2021/2/28 | 3. TOEIC受験(1回目) SCORE 880取得 |
2021/3/21 | 4. TOEIC受験(2回目) SCORE 950取得 |
どの教材を使ったの?
- 公式TOEIC Listening & Reading 問題集 -> 休日に120分測って解く
- TOEIC(R)テスト 新形式精選模試 リーディング -> 平日小分けにして解く その1
- TOEIC(R)テスト 新形式精選模試 リスニング -> 平日小分けにして解く その2
- 世界一わかりやすい TOEICテストの英単語 -> 毎日120語ずつ繰返し読む
いつ勉強したの?
-
平日:
- 朝30分間、昼休み30分間の学習時間枠を死守する
- 通勤中は常にリスニング問題を聞く
- 就寝の90分前までに、湯船に15分つかって単語帳を読む(睡眠の質を上げる時間設計)
-
休日:
- 公式問題集を120分測って毎週1回分解き、解答を読みこむ
- 解き終わった問題集の次巻を買い足す
平日のスケジュール設計例 (仕事が忙しい人を想定)
時刻 | 場所/タイミング | 学習内容 |
---|---|---|
7:00 | 起床 | |
7:30~8:15 | 通勤時間 | 既に解いたリスニング問題(Part3/4)を何回も聞く |
8:15~8:30 | カフェ | 単語帳を60単語読む |
8:30~8:45 | カフェ | 新形式精選模試を10~20問解く |
9:00~12:00 | 仕事 | |
12:15~12:45 | カフェ | 新形式精選模試を20~30問解く |
13:00~21:00 | 仕事 | |
21:00~21:45 | 通勤時間 | 既に解いたリスニング問題(Part3/4)を何回も聞く |
21:45~22:00 | 食事 | |
22:00~22:30 | 入浴 | 単語帳を60単語読む |
24:00 | 就寝 |
1.TOEIC受験申込 事前戦略立て 2021/1/9
動機付け
筆者は大学時代にもTOEICを受験した経験があり、その学習のしんどさは既に知っていた。
そこで、今回TOEIC学習の最初の一歩を踏み出すことに加え、
途中でガス欠になった際にモチベーションを維持するための作戦を考えた。
- まずは何も考えずにTOEIC受験を申し込み、退路を断つ
- 目的/ゴールを文章化する: 「TOEIC 900を取得して、周りのSEと差別化をとれる箔を付けたい!」
- 集中が切れた時/モチベーションが下がった時に自分を奮い立たせる手段をストックする:
- 受験期に流行った曲や勉強中によく聞いていた曲を聞く
- 大学在学中よく勉強に使っていたカフェへ足を運ぶ
- ビジネス系Youtuberの動画を見て対抗心を燃やす
書店にて教材選び
公式TOEIC Listening & Reading 問題集はSCOREに直結するため即採用したが、
これらは分割して解くのではなく、120分測って本番形式で解きたかった。
そこで平日の隙間学習用に別途選んだのが、The Japan Times出版の下記シリーズである:
新形式精選模試は本当に良書なので周りにも薦めているが、主な魅力は下記だと考える:
- 正答数に応じた予想スコア表が記載されており、その精度も高い
- 設問毎に正答率が記載されており、「みんな間違えてるなら仕方ない」と開き直れる
- 出題難易度が本番にかなり近い(若干難しい印象)
- 第3巻まで出版されており、習慣を維持したまま合計5回×3冊=15回分解ける(拡張性◎)
また、筆者はTOEIC向けの英単語力(faucetやbrochure等)が不足している自覚があったため、
問題集と並行してTOEIC用の単語帳を読む方針とした。
問題集だけだと点数が伸び悩んだ際に成長実感が感じられないし、
かといって単語帳だけだと単調で思考停止に陥りやすい。
そこで、単語帳でより多くの単語に触れながら、
演習中にその単語を読めた瞬間の嬉しさで記憶を定着させるという作戦を立てた。
書店でいくつか単語帳を読み漁った結果、筆者が尊敬している関正生先生の
世界一わかりやすい TOEICテストの英単語が一番読みやすい気がしたのでこちらを購入。
(ただの権威効果かもしれないが...継続して読むためには自身の納得感も大事)
試験本番中における作戦を固定
試験本番中に場当たり的にあれこれ試すと、それだけで消耗してしまうため、
予め試験本番中の作戦をある程度定めた。
その後、日々の学習の中で検証&微調整しながら最終的な作戦を固定した:
- Listeningの作戦:
- Introductionの読み上げ中にPart3/Part4の図表問題とその設問を先読みする
- Part3/4は会話文が読まれる前に設問だけ先読みする
- Part3/4は設問2つ目の読み上げが終わったら無条件で次の設問の先読みに移る
- Readingの作戦:
- 時間配分は Q101~Q146:15分、Q147~Q174:30分、Q175~Q200:30分
- Part5はスピード重視(2問ミスしてでも時間を節約し、Part7で落ち着いて3問正答すべき)
- Part6は本文を空欄後の1文まで読んだ時点で空欄の設問を読む
- Part7は設問1つだけ読む → 本文を1/3程度読む → 設問に戻る の繰り返し
- その他の作戦:
- 腕時計はアナログのものを使用する
- マーク時間を少しでも節約するために、芯が太めの鉛筆型シャーペンを使用する
- 試験中に眠くならないように薄着で臨む
2.TOEIC当選 試験対策開始 2021/1/22
まず公式問題集を120分測って解く
現時点の実力を把握するために、一切事前準備をせずにひとまず1回分解いた。
案の定、時間が足りずに15問くらい解けずに終わったが、
最初にひどい点数を取ったほうが後の達成感に繋がると開き直った。
(振り返ると、この時がダントツで一番キツかった)
公式問題集を解く際には下記ルールを課した:
- 試験本番と同等の時刻(15:00~17:00)で解くか、腕時計を一時的にずらす
- 途中で聞き逃したり、集中が途切れても必ず時間を厳守する(キツイ)
- 時間切れで解けなかった問題は、引き続き時間を計測して解いた後で採点する
次に英単語帳を1周読む
先ほど紹介した単語帳は読み物としても面白く、丸暗記が大嫌いな自分でも
ストレスフリーで読めた。1回読んだだけだと単語をあまり覚えられなかったが、
単語は反復しないと覚えられないものだと開き直って気にせず1周読んだ。
隙間学習の習慣化
上記初動をかけた後は、英単語帳を毎日120語程度繰り返し読むのと並行して、
平日は新形式精選模試をListening/Reading交互に小分けで解き、
休日は公式問題集1回分を120分測って一括で解く、というスタイルに落ち着いた。
当時公式問題集は1~7巻まで出版されていたが、新しいものほどTOEIC本番の傾向に近い。
本番直前に最新巻を解くように、祝日等も活用して筆者は最終的に1->2->3->7の順に解いた。
(全巻解くつもりで1巻から解いたものの、結果的に 4->5->6->7 の順に解いてもよかった)
また、TOEICは定期的にリスニングのナレーターが変更されるため、
試験直前には最新版の公式問題集を解き、本番と同じナレーターの声で耳を慣らしておくとよい。
あとは決めたルーティン通りに学習を継続させる。
徐々に単語力がついている成長実感がモチベーションになった:
- 学習1~2週間くらいで「最近見たけど思い出せない単語」が出てくる
- 学習3~4週間くらいで「時間をかければ思い出せる単語」が徐々に増えてくる
- 学習5~6週間以降は「瞬発的に意味が分かる単語」が増えてくる
また、途中で翌月分のTOEICも受験を申し込み、
2月のTOEICでSCORE860、3月にSCORE900の取得を目標とした。
3.TOEIC受験(1回目) 880取得 2021/2/28
久しぶりの試験の感触
雑に解いた問題もいくつかあったが、時間内に全問解けて達成感が得られた。
また、試験本番中の作戦もおおよそうまく機能した。
手応えは「860は突破したが900は超えていない」というレベルで、
実際のスコアも880と想定通りだった。(Listening:455/Reading:425)
スコアとは裏腹に、リスニングはもう少し伸ばせるような気がした。
答え合わせのやり方を少し変える
リスニングの学習効率を上げるために、演習で間違えた問題は
解説を読む前にもう1~2回設問を聞き、下記誤答の原因を切り分けた。
聞き取りレベル | 誤答の原因 | 割合 |
---|---|---|
1回で書き取りできるレベルで聞き取れる場合 | 話を忘れている or 聞き逃している | 20% |
2回以上聞いて何となく聞き取れる場合 | 英文の構造把握に時間がかかりすぎている or 発音を正しく理解していない | 30% |
2回以上聞いても分からない場合 | そもそも英文を理解できていない(≒知らない単語が読まれている) | 50% |
結果として、誤答の50%は単語を知らないことが原因だった。
改めて単語力の重要性を認識し、引き続き学習を継続した。
4.TOEIC受験(2回目) 950取得 2021/3/21
2回目の試験の感触
今回も制限時間ギリギリになってしまったが、何とか全問解いた。
手応えは「ついに900を超えたかも?」といった感じだったが、
結果はまさかの950だった。(Listening:490/Reading:460)
リスニングについては4~5問は間違えた気がするので、実際の正答率より
SCOREが高く出ているのだとは思うが、何はともあれ目標の900を達成した。
TOEIC全体の振り返り
筆者は特にリスニングに対する苦手意識が強かったが、
「英文を2回聞けばわかるのに...」「集中が切れて聞き逃しただけだし...」
と思い込んでいた。しかし、自分の誤答を真面目に分析してみると、
実際には上記原因の誤答はたかだか20%程度だった。
リスニングで疲れるのも間違えるのも、
突き詰めると単語力が不足していたからだったように思う。
無事に目標スコアを達成したが、この英語力をどう広げるかが次の課題である。
また、近いうちにTOEIC Speaking & WritingやKaggleコンペのDiscussion等を起点に、
英語のアウトプット力を高める取り組みにも手を出したい。
--- 2 年後 ---
TOEIC 950 の称号は見事に失効してしまったものの、
その後 AWS を英語で勉強し続け、AWS 認定 12 冠を達成した。
またその取り組みを通じて、英語の公式ドキュメントをスラスラ読めるようになった。
本気で学んだことは将来思いもよらぬ場面で役に立つと身をもって体感した。
引き続き、わらしべ長者のごとく様々なスキルを極めていけるよう精進したい。
併せて以下の記事もご参照いただきたい。