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WindowsのRDPを使ってクラウド上のLinuxインスタンスに接続する

Last updated at Posted at 2019-08-24

1. はじめに

以前のエントリーでは、VcXsrv(Xming)やVNCなどを使い、WindowsクライアントでLinuxサーバーのGUIアプリを起動する方法を説明した。

ポートフォワーディングや踏み台利用なども含めて出し尽くしたと思っていたが、xrdpは本文中で紹介したのに詳細は説明していなかった。

そこで今回はxrdpについて説明する。なお前提知識として「Windowsクライアントを使って…(1)」 と「クラウドでVNCサーバ&クライアントを構成する Part 1 」は読んでいるものとする。

1-1. 前提条件

  • RHEL系Linux OS(6/7/8/9)
  • パブリック・クラウド・サービスを利用(ただし本文中ではOracle Cloud Infrastructureを利用)

※「Amazon Linux=6系」「Amazon Linux 2=7系」として読み替えてほしい。

2. xrdpとは

xrdpとは、LinuxにRDP(Microsoft Remote Desktop Protocol)を提供するサーバー・プログラムである。xrdpをインストールすることで、Windowsクライアントからリモート・デスクトップを使ってグラフィカル・リモート・ログインできる。

おもな特徴は以下のとおり。

  • Windowsクライアントのリモート・デスクトップから接続できるので、クライアント側はインストール不要
  • フル・デスクトップ環境を利用できる
  • VNCとは違い、通信内容は暗号化される

このなかで「Windowsクライアントに何もインストールする必要が無い」のが一番のメリットだろう。企業ユースでは踏み台サーバーの権限が制限されていることが多く、一般ユーザーがプログラムをインストールできないことがあるからだ。

そして注意することが一つある。暗号化されていても、VPNなどを使わずに素のインターネットを使用するときは必ずポートフォワーディングすることだ。

なぜならば、リモートデスクトップのポート番号は3389であり、攻撃対象になりやすい。そのため、ファイアウォールでアクセス元IPを制限してないと、誰でもログイン画面を表示できてしまう。

2-1. xrdpとVNCの比較

次の表はxrdpとVNCを比較したものだ。セキュリティ方式に違いがあるが、どちらも基本的にはポートフォワーディングと併用した方がいいだろう。VNCは使用するユーザー分のポートが必要なので、マルチユーザーアクセスが必要なシステムでは注意したい。

クライアント側に追加のソフトウェア OSユーザーのパスワード設定 接続セキュリティ 伝送路 利用するポート
xrdp 不要 必須 OSのユーザー名/パスワード 暗号化される 3389のみ
VNC 必要 オプション VNCパスワード 暗号化されない 5901から利用する人数分

2-2. 設定手順

設定手順は以下のとおり。xrdpは、VNCのアドオン的な実装のため、設定方法はほとんど同じになっている。

1.xrdpを設定する
 - デスクトップ環境をインストールする
 - VNCサーバーをインストールする
 - xrdpをインストールする
 - xrdpを起動する
2.Linuxユーザーのパスワードを設定する
3.ファイアウォールを設定する
 - クラウドのファイアウォールを設定する
 - サーバーのファイアウォールを設定する
4.ポートフォワーディングする
5.Windowsクライアントからリモートデスクトップ接続する

3. xrdpを設定する

VNCと、ほとんど同じ手順なので簡潔に説明する。

3-1. デスクトップ環境をインストールする

7/8/9系Linux OS

yum groupinstall graphical-server-environment -y

6系Linux OS

yum groupinstall basic-desktop general-desktop japanese-support -y

3-2. VNCサーバーをインストールする

Linux OS共通

yum install tigervnc-server -y

3-3. EPELリポジトリを有効化する

xrdpはEPELから提供されている。そのため先にEPELリポジトリを有効にする。ただしAWSやOracle CloudではEPELを有効にする方法が異なるので注意すること。EPELの詳細は「あらためてEPELリポジトリの使い方をまとめてみた」を参照のこと。

9系Linux OS

yum install https://dl.fedoraproject.org/pub/epel/epel-release-latest-9.noarch.rpm -y

8系Linux OS

yum install https://dl.fedoraproject.org/pub/epel/epel-release-latest-8.noarch.rpm -y

7系Linux OS

yum install https://dl.fedoraproject.org/pub/epel/epel-release-latest-7.noarch.rpm -y

6系Linux OS

yum install https://dl.fedoraproject.org/pub/epel/epel-release-latest-6.noarch.rpm -y

Amazon Linux 2
Amazon Linux 2ではEPELを有効にするコマンドが提供されている。

sudo amazon-linux-extras install epel

3-4. xrdpをインストールする

コマンドは同じだが、7系と6系ではインストールされるパッケージは異なる。

7/8/9系Linux OS

# yum install xrdp -y
================================================================================
 Package              Arch           Version                 Repository    Size
================================================================================
Installing:
 xrdp                 x86_64         1:0.9.10-1.el7          epel         422 k
Installing for dependencies:
 xorgxrdp             x86_64         0.2.10-4.el7            epel          63 k
 xrdp-selinux         x86_64         1:0.9.10-1.el7          epel          17 k

Transaction Summary
================================================================================
Installed:
  xrdp.x86_64 1:0.9.10-1.el7

Dependency Installed:
  xorgxrdp.x86_64 0:0.2.10-4.el7       xrdp-selinux.x86_64 1:0.9.10-1.el7

Complete!

6系Linux OS

# yum install xrdp -y
Dependencies Resolved

================================================================================
 Package         Arch              Version                Repository       Size
================================================================================
Installing:
 xrdp            x86_64            0.6.1-4.el6            epel            244 k

Transaction Summary
================================================================================
Installed:
  xrdp.x86_64 0:0.6.1-4.el6

Complete!

3-5. xrdpを起動する

7/8/9系Linux OS

xrdpのサービスを起動する。

# systemctl start xrdp
# systemctl enable xrdp

次のように3389がリスニングされていれば正常に動作している。

# netstat -antup | grep xrdp
tcp        0      0 127.0.0.1:3350          0.0.0.0:*               LISTEN      12222/xrdp-sesman
tcp        0      0 0.0.0.0:3389            0.0.0.0:*               LISTEN      12223/xrdp

6系Linux OS

# service xrdp start
# chkconfig xrdp on

4. Linuxユーザーのパスワードを設定する

xrdpで接続するときは、sshログインではなくコンソール・ログインになる。そのためxrdpでログインするLinux OSユーザーにパスワードを設定する必要がある。

なお、ここでパスワードを設定しても、sshでパスワード・ログインが有効にはならないので安心してほしい。sshのパスワード・ログインの可否は/etc/ssh/sshd_configで設定できる。次のようにnoになっていれば、パスワードログインできない。

# grep ^Password /etc/ssh/sshd_config
PasswordAuthentication no

4-1. パスワードポリシーを理解する

LinuxではOSパスワードのポリシーを指定できる。ISOイメージからインストールしたときは何も設定されていないが、クラウド・サービスの提供イメージでは設定されていることがある。そのときにはパスワード・ポリシーに従ったパスワードの設定が必要だ。

なおパスワード・ポリシーの設定はLinuxディストリビューションによって異なる。RHEL7系とRHEL6系について説明する。

  • RHEL7系以降(Amazon Linux 2含む)
  • RHEL6系(Amazon Linux含む)
  • Ubuntu

このあたりの詳細は以下の記事を参照のこと。

4-1-1. RHEL7/8/9系

現在のパスワード・ポリシーは以下のコマンドで確認できる。表示されないときには設定されていない。

$ grep -v -e '^\s*#' /etc/security/pwquality.conf
$ grep -v -e '^\s*#' /etc/security/pwquality.conf.d/*.conf

Amazon EC2のAmazon Linux 2では何も設定されていなかった。Oracle Cloud Infrastructure ComputeのOracle Linux 7/8/9ではoci.confが追加され、次のように設定されていた。

/etc/security/pwquality.conf.d/oci.conf
difok = 3       # 過去3回のパスワードは利用不可
minlen = 8      # パスワードが8文字以上
dcredit = -1    # 数字が1文字以上
ucredit = -1    # 大文字アルファベットが1文字以上
lcredit = -1    # 小文字アルファベットが1文字以上
ocredit = -1    # 記号が1文字以上
gecoscheck = 1  # /etc/passwdエントリのGECOSフィールドの単語が含まれていない
minclass=4      # 文字種別の数。4は数値、大文字、小文字、記号が必須
maxrepeat=3     # 連続した文字の最大数

4-1-2. RHEL6系

RHEL6系のパスワード・ポリシーはpam_pwqualityではなくpam_pam_cracklibで管理している。設定値は次のコマンドで確認できる。

$ grep -v -e '^\s*#' /etc/pam.d/system-auth | grep ^password

何も表示されなければ設定されていない。先ほどと同様にOracle Cloud Infrastructure ComputeのOracle Linux 6では次のように設定されている。

password    requisite     pam_cracklib.so retry=3 minlen=8 difok=3 gecoscheck ocredit=-1 dcredit=-1 ucredit=-1 lcredit=-1 enforce_for_root
password    requisite     pam_pwhistory.so use_authtok enforce_for_root remember=4
password    sufficient    pam_unix.so sha512 shadow try_first_pass use_authtok remember=4
password    required      pam_deny.so

どのように設定されているかは、クラウド・サービスやLinux OSによって異なる。以下のファイルやヘルプを調べてほしい。

man pam_pwquality
/etc/security/pwquality.conf
/etc/pam.d/system-auth

4-2. パスワードを設定する

パスワードポリシーを理解したところで、必要なユーザー数分のパスワードを設定する。強度の高いパスワードを使用するにはpwmakeやpwgenで生成してもいいだろう。

# passwd <OSユーザー名>
Changing password for user XXX.
New password: ★新しいパスワードを入力
Retype new password: ★確認のため同じパスワードを入力
passwd: all authentication tokens updated successfully.

5. ファイアウォールを設定する

Windowsクライアントから、どのようにLinuxサーバーに接続するかで、必要なファイアウォール設定は異なる。クラウドでは、次の3通りの接続方法が考えられる。

xrdp-portforword01.png

ファイアウォールの設定は、以前「クラウドでVNCサーバ&クライアントを構成する Part 1」の「5. ファイアウォールを設定する」説明している。前回はVNCの5901番ポートだったのに対し、今回は3389番ポートになっただけだ。したがって具体的な説明は省略する。

5-1. クラウドのファイアウォールを設定する

「2.インターネット経由(踏み台あり)」と「3.専用線/インターネットVPN」のときは、Linuxサーバーに疎通できるように、クラウドのファイアウォールを設定する。

5-2. サーバーのファイアウォールを設定する

「2.インターネット経由(踏み台あり)」と「3.専用線/インターネットVPN」のときは、サーバーのファイアウォール(iptables/firewalld)でポートを開ける必要がある。具体的なコマンドは「ソフトウェアファイアウォールの設定」を見てほしい。

6. ポートフォワーディングする

接続方式の中で「1.インターネット経由(踏み台なし)」と「2.インターネット経由(踏み台あり)」のときはポートフォワーディングが必要になる。こちらも以前「6. ポートフォワーディングを設定する」でPutty/Tera Termのそれぞれについて説明しているので、そちらを読んでほしい。

今回は以下のように設定しているものとする。
xrdp02-1.PNG

7. Windowsクライアントからリモートデスクトップ接続する

すべての準備が整ったので、WindowsクライアントからLinuxサーバーに接続しよう。

  1. 「リモートデスクトップ接続」を起動する。入力する文字はポートフォワーディングの有無によって異なる。ポートフォワーディングなしのときは**「IPアドレス」を入力する。ありのときは「localhost:<転送元ポート>」もしくは「127.0.0.1:<転送元ポート>」**を入力する。
     
    localhostで失敗するときは127.0.0.1を試すこと。
     
    ポートフォワーディングなしのとき
    xrdp03.PNG
    ポートフォワーディングありのとき
    xrdp04.PNG

  2. 次のように警告が出ても**[接続]**をクリックする。
    xrdp05.PNG

  3. ここでも**[はい]**をクリックする。
    xrdp06.PNG

  4. xrdpのログイン画面が表示されたら、Linuxユーザーのユーザー名とパスワードを入力する。
    xrdp07.PNG

  5. Linuxのデスクトップ画面が表示できた。あとは言語などを設定すれば終了だ。
    xrdp08.PNG

8. まとめ

  • Windowsのリモート・デスクトップから接続できるので、クライアント側はインストール不要。管理者権限を持っていないWindowsクライアントでも利用できる

  • xrdpを使うと、WindowsクライアントでLinuxのフルデスクトップ環境を利用できる

  • ポートフォワーディングを併用すると、踏み台やクラウドのようなネットワークにも対応できる

9. 参考

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