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Windowsクライアントを使って、クラウド上のLinuxサーバでGUIアプリを実行したい(2)

Last updated at Posted at 2019-05-29

1. 今回は設定編

前回は代表的な実現方法と、それぞれの特徴について説明した。今回はXサーバ「VcXsrv」での設定方法や使い方を説明する。

1-2. 作業の流れ

設定手順は以下の通り。1から2がLinuxサーバでの手順で、3から6がWindowsクライアントの手順である。今回はPuTTYを使用するが、Tera Termでも同じことができる。

Linuxサーバで実施:
 1. X11フォワーディングに必要なライブラリをLinuxにインストールする
 2. X11フォワーディングするようにsshdを設定する
Windowsクライアントで実施:
 3. VcXsrvをWindowsクライアントにインストールする
 4. VcXsrvを起動する
 5. sshクライアント(PuTTY)をX11フォワーディング用に設定する
 6. sshクライアント(PuTTY)でLinuxサーバに接続する

1-3. 使用環境

今回は以下の環境を使用している。またOracle Cloud Infrastructureを使用しているが、他のクラウドでもほとんど同じはずだ。

  • RHEL9および互換ディストリビューション
  • RHEL8および互換ディストリビューション
  • RHEL7および互換ディストリビューション
  • RHEL6および互換ディストリビューション
  • PuTTY 0.71(他のバージョンやごった煮版などでも同じ)

1-4. 前提条件

  • WindowsクライアントにPuTTYがインストール済みで、Linuxサーバに接続可能な状態になっていること。Tera Termについては説明しないので、他の記事を参考にしてほしい。

2. Linuxサーバにライブラリをインストールする

X11フォワーディング(画面転送)を使用するときは、Linuxサーバに完全なデスクトップ環境は不要である。しかし必要最小限のライブラリ群は必要になる。

2-1. Linuxサーバに必要なライブラリ

X11フォワーディングに必要なライブラリは以下の通り。一般にはxorg-x11-xauthだけで十分だ。しかし以前使ったGUIツール(WebLogicのインストーラ)ではライブラリが不足していて起動できないことがあった。

  • xorg-x11-xauthxauth
  • libXtst
  • libXrender

たいした大きさでもないし、不足していたときのトラブルシュートが意外と大変なので、念のためlibXtstlibXrenderを追加している。

2-2. ライブラリをインストールする

以下のコマンドでインストールする。

注目して欲しいのが、末尾のInstalled sizeである。GNOMEデスクトップのインストールには数百MBytesのパッケージが必要になるが、今回のライブラリは5MBytesにも満たない。

#  yum install xauth libXtst libXrender -y
---以下コマンドの実行結果---
★中略★
================================================================================
 Package              Arch         Version               Repository        Size
================================================================================
Installing:
 libXrender           x86_64       0.9.10-1.el7          ol7_latest        25 k
 libXtst              x86_64       1.2.3-1.el7           ol7_latest        20 k
 xorg-x11-xauth       x86_64       1:1.0.9-1.el7         ol7_latest        29 k
Installing for dependencies:
 libICE               x86_64       1.0.9-9.el7           ol7_latest        66 k
 libSM                x86_64       1.2.2-2.el7           ol7_latest        39 k
 libX11               x86_64       1.6.5-2.el7           ol7_latest       606 k
 libX11-common        noarch       1.6.5-2.el7           ol7_latest       163 k
 libXau               x86_64       1.0.8-2.1.el7         ol7_latest        28 k
 libXext              x86_64       1.3.3-3.el7           ol7_latest        38 k
 libXi                x86_64       1.7.9-1.el7           ol7_latest        40 k
 libXmu               x86_64       1.1.2-2.el7           ol7_latest        70 k
 libXt                x86_64       1.1.5-3.el7           ol7_latest       172 k
 libxcb               x86_64       1.13-1.el7            ol7_latest       213 k

Transaction Summary
================================================================================
Install  3 Packages (+10 Dependent packages)
Total download size: 1.5 M
Installed size: 4.6 M ★とてもサイズが小さい
★以下省略

2-3. 動作確認用のGUIアプリケーションをインストールする

動作確認用のGUIアプリケーションにはxeyesを使用するが、Linuxディストリビューションのバージョンによって状況が異なっている。そのため利用しているバージョンによってインストール方法が異なる。

  • RHEL6/RHEL7系ではxeyesは標準リポジトリに含まれている
  • RHEL8系ではxeyescodeready_builderリポジトリに含まれている
  • RHEL9系ではxeyesは廃止されているので、xtermなどを使用する

2-3-1. RHEL6/RHEL7系の場合

動作確認用のGUIアプリケーションxeyesをインストールする。xeyesxorg-x11-appsに含まれるプログラムなので次のように実行する。

# yum install xorg-x11-apps -y

2-3-2. RHEL8系の場合

xeyescodeready_builderリポジトリに含まれているので次のように実行する。ただし、リポジトリ名はディストリビューションによって異なるので、適切なリポジトリに変更すること。

# yum --enablerepo=codeready_builder install xorg-x11-apps -y
ディストリビューション リポジトリ名
RHEL8 codeready_builder
Oracle Linux 8 ol8_codeready_builder
AlmaLinux 8/ RockyLinux 8 / CentOS Stream 8 powertools

2-3-3. RHEL9系の場合

RHEL9系ではxeyesは廃止されているのでxtermなどを使用する。

# yum install xterm -y

3. Linuxサーバのsshdを設定する

X11フォワーディングできるようにsshdを設定する。設定値を確認して、設定が不足していれば変更する。

3-1. X11フォワーディングで設定するパラメータ

確認するパラメータは以下の通り。

  • X11Forwarding yesであること
  • X11UseLocalhostはコメントアウトされているかnoであること
  • AddressFamily inetであること(IPv6が無効化されている環境のみ)。それ以外はデフォルトのanyでも問題ない

それぞれのパラメータの意味はman sshd_configで確認できる。

3-2. 現在のsshdパラメータを確認する

sshdの設定ファイル/etc/ssh/sshd_configに設定されている値を確認する。

# grep -e X11UseLocalhost -e X11Forwarding -e AddressFamily /etc/ssh/sshd_config
---以下コマンドの実行結果---
#AddressFamily any
#X11Forwarding no
X11Forwarding yes
#X11UseLocalhost yes
#       X11Forwarding no

3-3. sshdのパラメータを変更する

どの値を変更するかは各自の状況に応じて判断して欲しい。当然エディタで変更してもかまわない。今回はAddressFamilyanyからinetに変更する。

# sed -i -e "s/^\#AddressFamily any/AddressFamily inet/" /etc/ssh/sshd_config

今回一番ハマったのがAddressFamilyの値である。デフォルトのanyでも問題ないはずだが、Oracle Cloud Infrastructure Computeの2019年5月OSイメージでは、これが原因で接続できなかった。

半年以上前に以下のホワイトペーパー通りに試したときには問題なかった気がするのだが…。Oracle Cloud Infrastructureを使用していなくても、IPv6が無効化されているときは変更した方がいいかもしれない。

今回は↓のエントリを参考にさせていただきました。ora_gonsuke777さん、ありがとうございます。

IPv6が無効化の確認方法:
IPv6が無効化されていることはipコマンドで判別できる。以下のようにinetで始まる行だけで、inet6で始まる行がないときはIPv6が無効化されている可能性がある。

$ ip a
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN group default qlen 1000
    link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
    inet 127.0.0.1/8 scope host lo
       valid_lft forever preferred_lft forever
2: ens3: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 9000 qdisc mq state UP group default qlen 1000
    link/ether 02:00:17:00:13:0c brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 10.5.0.2/24 brd 10.5.0.255 scope global dynamic ens3
       valid_lft 81375sec preferred_lft 81375sec

3-4. パラメータが正しく設定されていることを確認する

最後にもう一度、正しく設定されていることを確認する。

# grep -e X11UseLocalhost -e X11Forwarding -e AddressFamily /etc/ssh/sshd_config
---以下コマンドの実行結果---
AddressFamily inet
X11Forwarding yes
#X11UseLocalhost yes
#       X11Forwarding no

3-5. sshdのパラメータを有効化する

パラメータを有効にするためにsshdを再起動する。

 RHEL7/8/9系の場合

# systemctl restart sshd

 RHEL6系の場合

# service sshd restart

これでLinuxサーバ側の作業はおわりだ。次にWindowsクライアント側で設定する。

3-6. まとめ版(7/8/9系Linux OS用)

コピペ用のまとめ版。使用環境よって/etc/ssh/sshd_configの内容は異なるので、grepの結果を確認すること。

# 必要ライブラリのインストール
yum install xauth libXtst libXrender -y

# GUIツールのインストール(使用ディストリビューションに応じて選択)
# ---
# RHEL6/7系
yum install xorg-x11-apps -y
# ---
# AlmaLinux8/RockyLinux8/CentOS Stream8
yum --enablerepo=powertools install xorg-x11-apps -y
# Oracle Linux 8
yum --enablerepo=ol8_codeready_builder install xorg-x11-apps -y
# RHEL8
yum --enablerepo=codeready_builder install xorg-x11-apps -y
# ---
# RHEL9系
yum install xterm

# AddressFamilyの変更(環境に応じて)
sed -i -e "s/^\#AddressFamily any/AddressFamily inet/" /etc/ssh/sshd_config

# 設定値の確認。X11UseLocalhostが
grep -e X11UseLocalhost -e X11Forwarding -e AddressFamily /etc/ssh/sshd_config

# sshd再起動
systemctl restart sshd

4. VcXsrvをインストールする

ここからはWindowsクライアントでの作業になる。

  1. VcXsrv公式サイト(SourceForge)からインストーラをダウンロードして実行する。これ以降は基本的にデフォルトのままでよい。
    SnapCrab_VcXsrv Setup Installation Options_2019-5-23_17-57-28_No-00.png

  2. インストール先フォルダが表示されるので、このままでよいときは [Install] をクリックする。
    SnapCrab_VcXsrv Setup Installation Folder_2019-5-23_17-57-41_No-00.png

  3. Completedと表示されたら、 [Close] をクリックしてインストーラを終了する。
    SnapCrab_VcXsrv Setup Completed_2019-5-23_17-58-4_No-00.png

5. VcXsrvを起動する

X11フォワーディングで画面を転送できるようにVcXsrvを起動する。

  1. WindowsデスクトップのXLaunchアイコンをクリックしてVcXsrvを起動する。
    SnapCrab_NoName_2019-5-23_17-59-38_No-00.png
    なおVcXsrvとXmingの両方をインストールしているときは、アイコンも名前も同じで区別しづらい。名前を変えたほうがいいだろう。

  2. どれを選んでもよいが、デフォルトのまま [次へ] をクリックする
    SnapCrab_Display settings_2019-5-23_18-1-46_No-00.png

  3. まだPuTTYを起動していないので、 [start no client] を選択してから [次へ] をクリックする。
    SnapCrab_Client startup_2019-5-23_18-59-33_No-00.png

  4. [Disable access control] をチェックしてから [次へ] をクリックする。今回の検証環境では必須ではないが、チェックが必要な環境もある。
    VcXsrv05.PNG

  5. これで設定は終了である。今後も同じ設定を利用するときは [Save configuration] をクリックする。
    SnapCrab_Finish configuration_2019-5-23_18-3-24_No-00.png

  6. 起動に成功するとデスクトップ右下のタスクバーにアイコンが表示される。これ以降、Windowsをシャットダウンしたり、VcXsrvを明示的に停止したりしない限り、起動したままになっている。
    xserver03.PNG

6. PuTTYを設定する

PuTTYはLinuxサーバに接続する設定があることを前提に、それをカスタマイズする。

  1. PuTTYを起動して、使用する接続情報をロードする。

  2. 左側のツリーから[Connection]-[SSH]-[X11]を選択し、X11フォワーディングを有効化する。
    SnapCrab_PuTTY Configuration_2019-5-23_18-8-42_No-00.png

  3. 必須項目でないが圧縮を有効化する。
    SnapCrab_PuTTY Configuration_2019-5-23_18-21-24_No-00.png

  4. 最後に左側ツリーの[Session]に戻り、変更した設定を保存する。これを忘れると変更が消えるので注意すること。

  5. これで設定は終了である。次から実際にLinuxサーバに接続する。

7. Linuxサーバに接続する(基本編)

まずは基本編として、踏み台なしでLinuxサーバに接続する。

  1. 右下のタスクバーで、VcXsrvが起動していることを確認する。アイコンが無いときは起動する。
    xserver03.PNG

  2. 前のステップで保存した設定を利用し、PuTTYでLinuxサーバに接続する。

  3. DISPLAY環境変数が設定されていることを確認する。sshdとPuTTYを正しく設定していれば、自動的に設定されているはずである。

$ echo $DISPLAY
localhost:10.0

4.動作確認のためxeyesを起動する。デスクトップに以下の目玉が表示されれば成功している。

$ xeyes &

xeyes.PNG

注意:ログイン後にsuするときは追加作業が必要

SSHログイン後にsuしてからGUIアプリを起動すると、次のエラーが出て実行できない。

X11 connection rejected because of wrong authentication.
Error: Can't open display: localhost:10.0

これは~/.Xauthorityの認証クッキーが他のユーザーに無いことが原因だ。対応方法は以下のとおり。

  1. SSHログインしたユーザーでクッキーを確認する(今回の場合はopc)。複数表示されたときは自ホスト名でディスプレイ番号:10が該当のクッキーである。
$ xauth list
<hostname2>:1  MIT-MAGIC-COOKIE-1  XXXXXXXXXXXXXXXXXX(32桁の英数字)
<hostname1>/unix:1  MIT-MAGIC-COOKIE-1  XXXXXXXXXXXXXXXXXX(32桁の英数字)
<hostname1>/unix:10  MIT-MAGIC-COOKIE-1  XXXXXXXXXXXXXXXXXX(32桁の英数字)★これ

2.目的のユーザーにsuする。-iは、suしたユーザーの.bashrcや.bash_profileを読み込むオプション。

$ sudo -i su - oracle

3.xauth addコマンドでクッキーを追加する。このとき先頭部分からすべて指定する。

$ xauth add <hostname1>/unix:10  MIT-MAGIC-COOKIE-1  XXXXXXXXXXXXXXXXXX(32桁の英数字)

4.ディスプレイ番号を設定したら準備完了。

$ export DISPLAY=localhost:10.0

5.目的のGUIアプリケーションを実行する。

$ xeyes &

こちらのブログに教えてもらいました。

8. 次回は?

事前にsshで接続できていれば、驚くほど簡単な作業だったかもしれない。次回は踏み台経由の接続方法を説明する。

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