目次
1.はじめに
1-1.ハイパーメディアという単語の意味
2.Webに繋がる最初の構想「Memex」
3.memexから生まれたXanadu(ざなどぅー)計画
4.Web以前に初めて実用的な成功を収めた「HyperCard」
5.最も成功を収めた「Web」
5-1.世界で初めてのブラウザ「Mosaic」
5-2.ブラウザ戦争
99.参考文献
1. はじめに
私はWebアプリの開発を行っている一方で、当然ではありますが利用者でもあります。
普段何気なくWeb、その中でも今の基盤となる構造が作られるまでに至った経緯・歴史までは知る機会が無く、今回ちょうど良い機会と思い記事を作成いたしました。
タイトルにもある通り、この記事は「Webを支える技術」を基にしております。
少々古めで初心者向けの書籍ではありますが、この根幹を成すWeb構造については基本的に大幅な変更はされていない認識ですので購入して後悔はないです(普及していない・覚えなくても良いような技術もありますが、大体は身近にある技術について載ってます)。
ちなみに、次記事は本記事の続きとして、今あるさまざまなWebの技術についての基本的な概要をまとめていく予定です。
1-1. ハイパーメディアという単語の意味
Web(WWW)というのは「World Wide Web」の略称で、現在もっとも普及しているハイパーメディアの一つである、というのは書くまででもないですが・・・。
👆️で出てきた「ハイパーメディア」という単語について皆さんご存知でしょうか?
Wiki(https://ja.wikipedia.org/wiki/ハイパーメディア)によると
ハイパーメディア(英語: hypermedia)は、ハイパーテキストを論理的に拡張し、グラフィックス、音声、動画、テキスト、ハイパーリンクなどを絡み合わせて、一般に非線形な情報媒体を形成したものを指す。
と説明されてます。
この説明じゃ分かりにくいですよね。
ざっくり説明すると、ある情報からある情報へ自由に参照することができるシステムのことです。文字に埋め込まれたリンク(ハイパーリンク)をクリックすると、今いるページとは全く別のサイトへ飛ぶことができますよね。これをハイパーテキストと呼びます。さらに画像や動画などの多様なメディアへと拡張していったのがハイパーメディアです。
ハイパーメディアの具体例にYoutubeがあります。
動画を見ていると最後に関連動画へのリンクが埋め込まれていますよね。
実は、この関連動画の仕組みのように、欲しい情報を高速で取り出せるよう、ある事柄から別の事柄を思い浮かべる「連想」という人間の脳の仕組みをシステムで実現しようとしたのが「Memex」という構想であり、今あるハイパーメディアの起源と呼ばれています。
2. Webに繋がる最初の構想「Memex」
ヴァネヴァー・ブッシュさんという人が1945年に論文を発表しました。
ここで「ハイパーメディア」や「ハイパーテキスト」という単語は生まれていないですが、先述した通りWeb(ハイパーメディア)の起源と呼ばれているものがMemexです。かなり昔なんですね。
ブッシュが想像した memex は、個人が所有する全ての本、記録、通信内容などを圧縮して格納できるデバイスであり、「高速かつ柔軟に参照できるように機械化されている」ものである。memex は「個人の記憶を拡張する個人的な補助記憶」を提供する
「Memex」(2021年2月8日 (月) 15:09 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』より

Bunyk, CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Memex_at_Das_Netz_exhibition_of_Deutsches_Technikmuseum.jpgによる引用
ブッシュさんは関連する資料を読みたいとき、ページの上から順に線形的に探していくのではなく、特定の部分だけを自由に取り出せる非線形的なシステムを考えました。しかし、ここでネタバレにはなってしまいますが、このシステムの装置をつくるための技術力が当時は無かったため、実現には至りませんでした。
当時、コンピュータは計算処理を行うことしかできませんでした。マイクロフィルムが当時最先端の技術だった時代ですから、コンピュータでシステムを実現しなかったのは当然といえば当然なのですが、コンピュータの基本原則を無視した構想になっており、つくりはかなりアナログです。
左のところに写真や本を置いて撮影し、マイクロフィルムに収めることでデータを保管。データを読み込ませるときもマイクロフィルムをそのまま投影するだけです。
実現には至りませんでしたが、今のWebのように、関連するリソースをリンクで紐づけるようなシステムはここから始まりました。
👇️memexのデモ映像 たまたま見つけました。
3. memexから生まれたXanadu(ざなどぅー)計画
memex構想に影響を受けたテッド・ネルソンさんが1960年に考案しました。memexが文書や写真だけだったものに対して、音声や動画などを相互にリンクさせることができるようにしました。
ここで初めて「ハイパーメディア」や「ハイパーテキスト」という単語が生まれました。
Xanaduの特徴として、紙媒体との発想の違いを強調しているようです。
また、現在使われているWebとは違い、単方向ではなく双方向でリンクを結んでいるため、リンク切れ(Webでいう404エラーなど)を起こすことがありません。
結論を言うと、これも高機能で複雑なため頓挫して失敗に終わりました。
・・・と思われていましたが、よく調べてみると開発に54年かけて2014年にリリースされてました!
👇️で実際に遊べます。
4. Web以前に初めて実用的な成功を収めた「HyperCard」
現Apple社のビル・アトキンソンさんによって1987年に開発されました。
「カード」と呼ばれる文書を単位に相互にリンクを貼り、HyperTalkによるプログラミング言語を実行ができます。
ユーザー独自のゲームや簡単なアプリを開発するのに利用されました。
イメージで言うと昔のFLASHみたいな感じでしょうか?
HyperTalkはプログラミング言語ではあるものの、記述をしなくても手軽にアプリを作成することができたのが流行った大きな要因の一つと言えるでしょう。
弱点として、ネットワークを通してやり取りすることはできません。
HyperCardは、Web以前に成功を収めたハイパーメディアです。
👇️ネットアーカイブに残ってました。どんな感じのものか実際に遊べます。
5. 最も成功を収めた「Web」
しつこいですが、Webは今主流となっているハイパーメディアです。
1990年11月12日、スイスのCERN(せるん)で働いていた、ティム・バーナーズ=リーさんがWebの提案書を書きました(https://www.w3.org/Proposal)。
特徴として、単方向リンクしかサポートしていないため、弱点としてリンク切れがあります。この面においてはXanaduの方が優れておりますが、全体的に見るとWebの方が基盤となる構造がシンプルです。
ユーザー/実装者側に分かりやすいシステムであるからこそ、Webは成功したと言えるでしょう。
5-1. 世界で初めてのブラウザ「Mosaic」
1993年、イリノイ大学にある米国立スーパーコンピュータ応用研究所 (NCSA) がMosaicというブラウザを公開しました。Webの技術により従来のブラウザでは文字情報だけしか扱えなかったのに対して、画像を混在させたりすることができましたが、現在のブラウザのように検索機能はついておりませんでした。
Webが普及してから一番はじめに流行ったブラウザと言われており「Internet Explorer」や「FireFox」といった現在のブラウザの源流になっています(祖先にあたります)。

Charles Severance, CC0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NCSA_Mosaic_Browser_Screenshot.pngによる引用
5-2. ブラウザ戦争
Web以前のインターネット標準は、IETF(インターネット技術特別調査委員会)が発行しているRFC(インターネット技術標準)により、1つ1つの技術について文書を公開・定義されてました。
1990年代、Webの急速な発達により各社がバラバラの実装を行ってしまったため仕様策定が追いつかず、ティム・バーナーズ=リーさんが中心となって、Web技術を標準化する団体(W3C)が設立されます。W3CではHTML、XML、HTTP、URI、CSSなどの標準化が行われました。
以前は「Internet Explorer」がWindowsの機能の一つとして標準化されていたため、ブラウザ市場のシェアは圧倒的なものでしたが、中でもこの「Internet Explorer」は独自拡張を続けた結果、他ブラウザとは互換性がなくなっていき、開発者は「ブラウザ対応」を迫られることになりました。
「Internet Explorer」はサービス終了し、ブラウザ対応も長い年月をかけて今は大分解消されていますが(各ブラウザの独自拡張のせいで多くの工数を割くような対応は少なくなったが)、今でもまだブラウザ間での完全な仕様の統一には至っていないため、差異が生じる問題は残っています。
99. 参考文献
「ハイパーメディア」(2025年8月28日 (木) 10:31 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
「Memex」(2021年2月8日 (月) 15:09 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
人間の脳は連想によって様々な思考の要素を結びつけていく。脳と同じような機能をもつ機械、「メメックス(Memex)」とは?
開発に54年間もかかったソフトウェア「Xanadu」がついにリリース、その秘めたる野望とは?
「ザナドゥ計画」(2025年6月24日 (火) 22:53 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
「HyperCard」(2025年9月28日 (日) 18:11 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
「NCSA_Mosaic」(2025年8月6日 (水) 13:00 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
「ブラウザ戦争」(2025年9月30日 (火) 18:06 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』
Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)