はじめに
この記事は、NTTテクノクロス Advent Calendar 2025 シリーズ2の16日目の記事になります。
皆さんはじめまして、NTTテクノクロスの吉田です。
普段は、業務効率化やAI活用に興味があり、業務の中で使えそうな方法を日々模索しています。
今回は、Microsoft 365 Copilotは何ができるのか? に着目し、実際に試した事例も交えて紹介します。
この記事でわかること:
- Microsoft 365 Copilotの概要
- 業務で便利な機能一覧
- 実際の活用事例
- 実践事例①:WordからPowerPoint資料を自動生成してみた
- 実践事例②:試験項目書の進捗確認を効率化してみた
Microsoft 365 Copilotとは?
Microsoft 365 Copilot(以降は、Copilot と称す) は、Word、Excel、PowerPoint、Teams、OutlookなどのアプリでAIが支援してくれる機能です。
特徴:
- Microsoft 365とシームレスに連携
- GPTベースの生成AIで文章作成・要約・分析が可能
Copilotのプラン別特徴
Copilotには、Microsoft 365 Copilot Chat(無料版) と Microsoft 365 Copilot(有料版) があります。
| プラン | Microsoft 365 Copilot Chat | Microsoft 365 Copilot |
|---|---|---|
| 特徴 | 企業向けの無料AIチャット。対象ライセンスのユーザーは追加費用なく利用可能。 | 企業向けの本格版(有料アドオン)。Microsoft 365 アプリへ深く統合し、社内データで“作業グラウンディング” した支援を提供。 |
| Officeアプリ | Chat 体験が中心。一部アプリの“横並び”UIでオープン中のコンテンツ認識/ファイルアップロードに対応 | Word/Excel/PowerPoint/Outlook/Teams に深く統合。要約、草案生成、分析、会議メモ化などをアプリ内でシームレスに実行できる |
アプリ別の便利ポイント(有料版)
| アプリ | できること例(有料版) |
|---|---|
| Word | 要約、文章改善、翻訳、提案書のたたき台作成 |
| Excel | データ分析、グラフ作成、トレンド予測 |
| PowerPoint | スライド構成提案、デザイン補助 |
| Teams | 会議要約、アクションアイテム抽出 |
| Outlook | メール返信の下書き、トーン調整 |
無料版と有料版の違い(ざっくり)
- Microsoft 365 Copilot Chat(無料版):Web検索ベース、ファイルアップロードで簡易要約のみ
- Microsoft 365 Copilot(有料版):Officeアプリに統合、社内データを横断参照
エンタープライズ データ保護(EDP)
業務でCopilotを使う際に気になるのが「入力した情報は安全なのか?」という点です。
Microsoft 365 Copilotでは、エンタープライズ データ保護(EDP) により、プロンプトや応答も含めてお客様データとして保護されます。
✅ 保護マークが表示される条件
- Entra ID(Azure AD)でサインインしていること
- Microsoft 365 商用サブスクリプション(Business、E3/E5など)を契約済み
この条件を満たすと、Copilot画面に「保護マーク」が表示され、企業レベルのセキュリティが適用されます。
なぜCopilotを試そうと思ったのか?
業務効率化やAI活用を検討する中で、次のような課題がありました。
-
Officeドキュメントの作成に時間がかかる
- バージョンリリース時には、リリースノート(Word)をもとに社内説明会用の資料(PowerPoint)を作成しています。
- Wordの内容を見ながらPowerPointを作る作業は、毎回かなりの時間と手間がかかります
- 「この作業はAIで自動化できるのでは?」と思ったことが、Copilotを試すきっかけでした。
-
試験項目書の進捗管理が煩雑
- 機能ごとに試験項目書をExcelで作成していますが、ファイルが分かれているため進捗確認が大変です。
- 総件数やOK/NGの件数、進捗率を確認するには複数ファイルをまたいで集計する必要があります。
- OneDriveやSharePoint上のファイルを横断して比較・要約できるCopilotの機能を活用できないか試してみました。
導入手順:Copilotを使うための準備
Copilotを利用するには、いくつかの前提条件と設定が必要です。
この場では、実際に社内で導入してみた手順を紹介します。
1. 前提条件の確認
対象プラン:Business Standard / Premium または Enterprise E3/E5
追加ライセンス:Microsoft 365 Copilot(有料版) ライセンスの購入が必要
2. ライセンスの購入
当社の場合は以下の通りです:
- 販売代理店に見積依頼
- 社内購買申請 → 発注
- 代理店からライセンス情報通知
- Microsoft 365管理センターでライセンスを割り当て
3. 利用開始
ライセンスを割り当てた後、およそ数分~数時間で有効化されます。
私の場合は、担当の方から連絡をいただいてから1~2時間ほど利用可能になりました。
有効化後、各アプリで Copilot アイコンが表示されることを確認します。
実践事例①:WordからPowerPoint資料を自動生成してみた
リリースノート(Word)の内容をもとに、社内説明会用のスライド(PowerPoint)を作成する業務があります。
これまではWordを見ながら手作業でスライド構成を考え、コピペしていましたが、この作業をCopilotで自動化できるか検証しました。
1. 元となるWordファイルの準備(ダミーデータの作成)
実際の製品データを使うわけにはいかないため、まずはWordのCopilotを使って架空のアプリ「ローカル旅ナビ」のリリースノートを作成させました。
題材にした「ローカル旅ナビ」について
今回検証に使用した「ローカル旅ナビ」は、私が最近 スクラムマスター研修で1日PO(プロダクトオーナー) を体験した際に企画した架空のアプリです。
私自身の「旅行好きゆえの悩み」を解決するために考案しました。
-
私の旅行スタイルと課題:
- 事前にプランをガチガチに練るため、プラン外の突発的な行動が苦手
- せっかく遠出しても、一度宿に入ると満足してしまい、夜の散策などに出られない
- 有名な観光地は探せるが、地元の人しか知らないようなディープな情報のキャッチアップが苦手
こうした「旅行を充実させるためのプラスアルファの行動が起こせない」という課題を、AIによるルート提案や通知機能で解決したい!という想いが込められています。
使用したプロンプト:
このテンプレートを維持しながら、以下の条件でリリースノートを作成してください:
- 製品名:「ローカル旅ナビ」
- バージョン:v2.0.0
- リリース日:2025年12月9日
- 概要:旅行体験を充実させるための新機能追加と改善、不具合修正を含むこと
- 新機能:イベント通知機能、ルート提案、オフラインモード
- 機能改善:通知精度向上、UI改善、バッテリー消費最適化
- 不具合修正:通知遅延、スポット情報表示不具合、クラッシュ問題
見出しは既存のスタイルを使用し、本文は箇条書きで簡潔に記載してください。
さらに、各セクションに関連する画像を挿入してください。
作成時のポイント:
使用したプロンプトからの作成は、内容自体はそのまま使えましたが、フォーマットがかなり崩れてしまったため、見出しスタイル(H1, H2など)は手動で整えました。
WordからPowerPointの資料化において、公式ドキュメントでも 「ドキュメント内の見出しは、スライド見出しになる」とされている通り、ので、フォーマットの整理はPowerPoint化させる際のポイントになりそうです。
整えた新機能のスライドの一部(出力内容はCopilotが生成):

2. PowerPointでCopilotを実行
まずは、PowerPointの標準機能でそのまま変換してみます。
PowerPointを開き、Copilotに「ファイルからプレゼンテーションを作成」と指示し、先ほどのWordファイルを選択しました。
結果:
数秒でトピック(スライド構成案)が提示され、1分もしないうちにスライドが生成されました。
3. 社内フォーマットでの作成に挑戦
業務で使うには社内テンプレート(フォーマット)の適用が必須です。
ですが、プロンプトで「別のPowerPointファイル(過去の資料など)のデザインを真似して」と指示したくても、現時点では 他のPPTファイルへの参照はサポートされていないようでした。(PDF化して参照させてみましたが、デザインへの反映は見られず…)

そこで、「社内テンプレートファイル(.potx)」 でCopilotを実行する方法をとりました。


構成の調整(プロンプトの工夫)
最初の生成では「新機能」の項目が2つのトピックに分割されてしまいました。
スライドを生成する前は、何度でもプロンプトを修正することができるので、以下の一文を追加してみます。
結果:
指定通りの構成で、かつ社内フォーマットが適用されたスライドが生成されました!
4. よかった点と気づいたこと
検証を通して、いくつかの「よかった点」「気づいたこと」が見えてきました。
✅ 良かった点
-
たたき台としては十分
ゼロから作るより圧倒的に早いです。文字サイズが小さかったり、不要なアニメーションが入っていたりしますが、調整レベルで済みます。 -
スピーカーノート(発表者用メモ)が自動生成される
これが地味に一番感動しました。スライド内の箇条書きだけでなく、説明用の文章がノート欄に入っているため、発表準備が楽になりますね。
💡 気づいたこと
-
画像の扱い
Wordに貼り付けていた画像はそのままスライドには採用されず、AIが選定したストック画像やアイコンに置き換わりました。
ただし、生成時の設定に 「組織のブランド ライブラリからの画像」 という項目があったため、ここを整備すれば社内素材を活用できる可能性があります。
※今回は元となるWord内の画像がAI生成画像だったため認識されなかった可能性もあります。次回は実際の製品キャプチャが含まれるリリースノートで、画像が引き継がれるか再検証したいです。 -
参照ファイルの制限
PowerPointのCopilotは、プロンプトで 「別のPowerPointファイル」を参照元として直接指定できないため、「過去資料と同じデザインで作って」という指示は通らないです。
一方で、ブラウザ等で利用する Copilot Chat(無料版含む) やTeams上のM365 Chatでは、PowerPointファイルを添付して内容を読み込ませることが可能ですので、そちらの機能で作成してみるのも手かもしれません。
結論
- 「完成品」が一発で出てくるわけではありませんが、「構成案+テキスト入力+ノート作成」までの工数は大幅に削減できます。
- 「とりあえずCopilotで作って、あとは人間が微調整」というフローが定着しそうです。
実践事例②:試験項目書の進捗確認を効率化してみた
Copilot in OneDriveでできること
- 最大5個のファイルを開かずに要約・比較可能
- オーディオの概要生成
- Teams会議から分析情報の取得
複数のExcelファイルを横断して比較・要約し、試験件数や進捗率(OK/NG件数)を一括で取得できるか試してみました。
試したこと
Copilotが自動的にファイルを読み込み、概要を表示してくれます。
ここで、「質問する」をクリックして詳細を聞いてみます。
この時点で既にAIの比較結果を自動的に返してくれてます。
試験項目数はすでに把握できましたね。

- 質問してみる
試験の進捗も確認したいので、質問してみます。
結果は1分ほどで返ってきましたが、今の質問の仕方では、試験消化が0件のはずがOK/NG件数が入ってしまうなど、誤りも見られました。

セル指定で比較を試しましたが結果は変わらず
「試験項目数と未実施、進捗率で比較してください」と質問したところ、正しく取得できました。

考察
- 日常確認には最適: ファイルをいちいち開いてフィルタをかける手間がなくなるのは革命的です。
-
精度の課題: 参照セルがズレたり、勝手に数値を補完したりすることがあるので、日々の確認には使えて、報告する際にはちゃんと確認するなど使い分けが必要そうですね。
まとめ
今回試した内容から、Copilotは以下のような特徴があると感じました。
- Word→PowerPoint変換では、「たたき台作成」の工数を大幅に削減できる(微調整は必要)
- OneDrive上のファイル比較・要約で進捗確認がスピーディ
- 一方で、フォーマット依存や参照セルの誤りなど、精度面の課題もありそう
今後試したいこと:
- Copilot Studioとの連携
- Microsoft Edgeの「Copilot mode」活用(※個人アカウント限定機能)
- ブラウザ操作やWebページ比較が可能
- 現在は無料提供中ですが、将来的に有料化の可能性あり
おわり
Copilotは「AIが業務を支援する」という言葉以上に、実際の作業時間を短縮できるポテンシャルを感じました。
今後も業務の中で活用できる場面を探しながら、検証を続けていきたいと思います。














