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コイン渡しゲームで学ぶ、スクラムにおけるフロー効率と小さな単位の価値

Last updated at Posted at 2025-12-02

コイン渡しゲームで学ぶ、スクラムにおけるフロー効率と小さな単位の価値

はじめに

こんにちは。KDDIアジャイル開発センター株式会社(KAG)の金子です。

この記事では、私たちのチームで実施した「コイン渡しゲーム」を通して、スクラムにおける フロー効率小さな単位で価値を流す重要性 を振り返ります。

ゲームの元ネタは、以下の書籍を参考にしています:

コイン渡しゲームとは?

ゲームの内容

  • コイン(または代替のもの)をバケツリレーのように、次々に渡し、完了までの時間を測る
  • 20枚 → 5枚 → 1枚 と、一度に渡す量(バッチサイズ)を変えて比較する

観察できるポイント

  • バッチサイズが大きいほどリードタイムが長くなる
  • 最初の1枚(=価値)が相手に届くまでの時間が遅くなる

学べる本質

  • 「小さく流すほうが速い・詰まらない・早く気づける」

なぜチームでこのゲームをやるのか

  • 「なぜ大きい作業が遅くなるのか」を体感で理解するため
  • 理屈ではなく「腹落ち」した状態でエピック / PBI の分割に取り組むため
  • スクラムの「小さく価値を届ける」という原則を、体験として理解するため

コイン渡しゲームのやり方

1. 準備するもの

  • ホワイトボード
  • コインまたは代替のもの
  • タイマー
  • 付箋とペン

*今回はリモートで実施しましたが、オフラインでも同様にできます。
 このようなホワイトボードとコインを用意しました:

image.png

2. ゲームの進行(3ラウンド)

  1. 20枚まとめて渡す
  2. 5枚まとめて渡す
  3. 1枚ずつ渡す

※ オンラインホワイトボードでは「複数コインの同時選択はNG」と事前に共有しました(笑)

各ラウンドで以下を記録します:

  • 全部のコインが届いた時間
  • 1枚目のコインが届いた時間
  • 各担当者が作業していた時間

コイン渡しゲーム結果

以下は今回の測定結果です。

項目 20枚まとめ 5枚まとめ 1枚ずつ
全部のコインが届いた時間(秒) 148 60 51
1枚目のコインが届いた時間(秒) 122 27 17
A さん 42 39 43
B さん 27 36 41
C さん 37 36 38
D さん 27 34 33

チームの気づき

以下の問いをもとに、チームメンバーに気づきを書き出してもらいました。

投げかけた問い

  1. なぜ20枚(大きいバッチ)は遅くなったと思いますか?
  2. なぜ1枚ずつ(小さいバッチ)は速くなったと思いますか?
  3. 私たちの開発フローの中で、このゲームと“同じ構造”はどこにありますか?

メンバーの気付き(代表的なもの)

  1. 大きなバッチは、前の人が終わるまで次の人が動けず「待ち」が多発した
  2. 実装やレビューが重くなり、着手できない時間が増えた
  3. 一度に大量の作業を抱えると、どこで詰まっているか気づきにくかった
  4. 小さいバッチは常に誰かが動いていて、流れが止まらなかった
  5. 小さい単位だと問題にすぐ気づけ、手戻りの影響が小さくなった
  6. 大きく作りすぎるとレビュー開始が遅れ、レビュー時間も長くなった
  7. 進捗が見えない時間が増え、心理的にも「遅れている感」が強くなった
  8. 小さい単位のほうが、周囲への影響が小さく全体がスムーズだった
  9. 設計 → 実装 → レビューの流れの中にも同じ「詰まり」があると気づいた
  10. サブタスクレベルへの細分化がフローを良くし、全体を軽くすると感じた

image.png

さいごに

コイン渡しゲームを通して、ソフトウェア開発における 「バッチサイズの大きさ」と「流れの良さ(フロー効率)」 が密接に関係していることがあらためて確認できました。

大きな作業は

  • 完了が遅れやすく
  • 問題が見えにくく
  • レビューが重くなり
  • チーム全体の進みが鈍る

という状態を引き起こします。

これはスクラムが重視する透明性(見える化)・検査(早期フィードバック)・適応(小さく改善) が働きにくい状態です。

一方で、小さく分けて作業を流すと

  • 最初の価値が早く届き
  • フィードバックの返りが早く
  • 問題がすぐに見え
  • レビューも軽くなる

といった “フローの良さ” が生まれます。

今回扱ったコイン渡しゲームは、こうしたスクラムの原則を「体験として理解する」ための学習ツールだと感じています。小さく価値を流し、問題を早く見つけて改善していく。その本質の一端を、このゲームが教えてくれます。

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