この記事は AI 支援により執筆されました(Qiita のガイドラインに従い開示)。本文中の測定結果・プロンプト・出力・スコアはすべて筆者が実行した実際の API 呼び出しから得たもので、執筆自体は Claude で下書き後に人手で修正しています。
はじめに
2026 年、修論や卒論を書くのに AI を使うかどうか、という議論はもう終わっています。問題は「どの AI をどの段階で使うか」です。
Turnitin の AI Detection、Grammarly の AI Check、各出版社の AI 開示ポリシー——投稿先の審査がどんどん厳しくなっているうえに、指導教員も「AI っぽい文章」を見分けるのが早くなっています。しかし一方で、Claude Opus 5.5、Kimi K3.1 Pro、GPT-5、DeepSeek V4 Pro、Qwen 3.8 Max、Doubao Seed 2.1 Turbo、GLM 5.3 Prime、Claude Sonnet 5.5、Codex 5.3 など、実用レベルの LLM が 9 つ以上手に入る時代です。
そこで、9 モデル・11 タスク・89 件の予定枠でベンチマークしました。主実行では 8 件をスキップし、失敗や空応答の一部は再実行しています。収集した出力を別モデル(deepseek-v4.1-flash)で 8 軸・1–10 点の文体評価にかけました。この「AI 臭」は Turnitin の検出結果ではありません。
この記事はエンジニア・研究者向けに、どのモデルをどのタスクに割り当てるべきかを実データとともに整理したものです。
検証対象と方法
対象モデル(Crazyrouter 経由、2026 年 11 月時点の主力)
| モデル ID | 役割 |
|---|---|
claude-opus-5-5 |
高品質日英プロフェッショナル |
claude-sonnet-5-5 |
バランス型 |
kimi-k3.1-pro |
長文コンテキスト |
gpt-5 |
汎用推論 |
gpt-5.3-codex |
コード特化 |
deepseek-v4-pro |
中国語・コスパ特化 |
qwen3.8-max |
中国語・構造化出力 |
doubao-seed-2-1-turbo-260628 |
中国語・長出力 |
glm-5.3-prime |
汎用 |
11 のタスク(修論・投稿論文の実場面)
- 研究テーマの発散
- 論文アウトライン作成
- 英語アブストラクトの読解(4 点要約)
- 長 PDF の事実検索(10 問 QA)
- 中国語学術文のリライト ※和文タスクは別途調査予定
- 英語ポリッシング
- 250 語の英語アブストラクト作成
- 中英翻訳
- OLS 分散行列の導出
- pandas データ分析スクリプト
- 査読コメントへの返信ドラフト
呼び出しの最小コード
9 ベンダーそれぞれにアカウントを開いて 9 種類の Base URL を管理するのは現実的ではないので、OpenAI 互換の集約エンドポイント経由で統一しました。
async function callModel(apiKey, modelId, prompt, maxTokens = 4500) {
const res = await fetch('https://api.crazyrouter.com/v1/chat/completions', {
method: 'POST',
headers: {
'Authorization': `Bearer ${apiKey}`,
'Content-Type': 'application/json',
},
body: JSON.stringify({
model: modelId,
messages: [
{ role: 'system', content: 'You are a helpful assistant.' },
{ role: 'user', content: prompt },
],
max_tokens: maxTokens, // 推論モデルの思考 tokens を含む
stream: false,
}),
});
const json = await res.json();
return json?.choices?.[0]?.message?.content ?? '';
}
実装時にハマったポイント 3 つ:
-
推論モデルは
temperatureパラメータを拒否することがあります。Kimi K3.1 Pro などにtemperature: 0.3を送ると400 provider_rejectedが返ります。省略してデフォルトを使うのが安全です。 -
max_tokensは推論 tokens を含むため、1500 など小さく設定すると GPT-5 や Kimi の場合content: ""で返ってきます。思考だけで予算を使い切るためです。4500 以上を推奨します。 -
各ベンダー公式 API も当然使えます。Anthropic、OpenAI、Moonshot、DeepSeek のどれも SDK ・ドキュメントが完備されています。この記事の結論は「どのモデルがどの能力を持つか」であり、呼び出し経路に依存しません。詳細は Crazyrouter 日本語ドキュメント を参照してください。
結論:AI 臭ランキング
| 順位 | モデル | AI 臭 (10=一目で AI) | 推奨タスク |
|---|---|---|---|
| 1-2 | Claude Opus 5.5 | 4/10 | 英文校正、査読返信、翻訳 |
| 1-2 | Kimi K3.1 Pro | 4/10 | 文献読解、長 PDF QA |
| 3-4 | Claude Sonnet 5.5 | 5/10 | コード、技術的議論 |
| 3-4 | GPT-5 | 5/10 | 数式導出、骨格作成 |
| 5 | DeepSeek V4 Pro | 6/10 | 中国語下書き(英文は非推奨) |
| 6-7 | Qwen 3.8 Max | 8/10 | 社内文書向け(投稿不可) |
| 6-7 | Doubao Seed 2.1 Turbo | 8/10 | 社内文書向け(投稿不可) |
| — | GLM 5.3 Prime | 5/10 ⚠ | 11 タスク中 6 タスクで空応答。計測除外 |
| — | Codex 5.3 | 3/10 ⚠ | コード専用、文体スコアは参考値 |
タスク別の最適モデル
1. 文献読解(長 PDF、サーベイ論文、国際ジャーナル)—— Kimi K3.1 Pro 一択
5000 語の arXiv 論文(教育心理学分野)の Introduction 全文を投げ、10 個の事実質問(研究課題、サンプルサイズ、2 つの中核コンポーネント、アブレーション実験の節番号など)を聞きました。Kimi K3.1 Pro は 10 問すべて正答、しかもそれぞれ原文の該当段落を引用できました。「テキスト対話と音声対話の割合は 70% vs 30%」のような細部の数字も原文から正確に拾っています。
同じタスクで GPT-5 は空応答となり、finish_reason: length で終了しました。主実行ではほかにも空応答があり、複数は再実行で解消しました。この題材では Kimi の結果が良好でしたが、GPT-5 の長文読解全般を否定する根拠にはなりません。
Kimi の小さな癖:プロンプトで「各章の分量を合計 100% にしてください」と指定すると、末尾に「分量割合の検証:8% + 14% + 10% + ⋯ = 100%」のように足し算を自分で検算した行を出力します。人間はアウトラインに検算を書きません。この行だけ削除すれば本文はそのまま使えます。
2. 論文アウトライン作成 —— Claude Opus 5.5 が最も「人間らしい」
同じアウトライン作成タスクを Opus、Qwen、Doubao の 3 者で比較しました:
- Opus の出力:三階層までの見出し、各章の 1 文要約、分量配分がシンプルに並ぶ(AI 臭 4/10)
- Qwen の出力冒頭:「アウトラインは三階層の見出しに細分化し、各章に 1 文要約を付け、分量配分は合計 100% としました」(AI 臭 8/10)
- Doubao の出力末尾:「必須モジュール検証:文献レビュー(第 2 章)、理論的枠組(第 3 章)、研究設計(第 4 章)、⋯すべてカバー」(AI 臭 8/10)
Qwen と Doubao の出力は、「あなたの指示を全部満たしました、ほら」という納品書付きのアウトラインです。人間はアウトラインに検収表を書きません。これが指導教員に「AI でしょ?」と言われる最大の原因です。
Opus の小さな癖:出力の末尾に「提出前に以下を再確認してください:1. サンプルサイズの記述⋯」のようなチェックリストを付けることがあります。これは自分向けのメモとして付けている動作で、本文の一部ではありません。削除すれば済みます。
3. 英文アブストラクト・論文ポリッシング —— Claude Opus 5.5 が独走
国際ジャーナル向けの英文アブストラクトでは、内容と英語表現の確認が欠かせません。本テストでは Opus の出力がこの用途で良好でした。検出システムでの通過率は測っていません。
10 項目の bullet point を渡して 250 語の英語アブストラクト(Background / Methods / Results / Conclusion の 4 段落構成)を書かせたところ、Opus の出力:
- 字数 247 語(±20 語の許容範囲内)
- 構造が厳密に 4 段落
- 10 項目すべて対応、原リストにない内容は追加していない
- 「delve into」「pivotal」「cutting-edge」「novel framework」など、一目で AI と分かる高頻度語を一切使っていない
翻訳臭スコア 3/10、9 モデル中最低でした。
4. 中国語データからの英訳 —— DeepSeek V4 Pro は絶対に使わない
DeepSeek V4 Pro は本テストで最も安価です(公式価格で 11 タスク実行して約 $0.09、Opus の 1/19)。中国語本文の下書き用途ではこの価格で十分使えます。しかし英訳だけは別です。
DeepSeek は中国語学術表現をそのまま英語に直訳する癖があります:
出力例: "with a beta coefficient of 0.42 and a significance level of p < .001"
期待値: "β = 0.42, p < .001"
この例は英文学術文体の推敲ポイントです。Turnitin がどの表現を検出するかは本テストでは確認していません。DeepSeek の英文も、投稿前に専門分野の表記に照らして編集する必要があります。
5. データ分析コード(Python) —— Claude Sonnet 5.5 または Codex 5.3
120 行の CSV を読み込んで記述統計 + Welch の t 検定 + Cohen's d + 箱ひげ図を出力する pandas スクリプトを書かせました。9 モデル全員が、必須キーワード(pandas / scipy.stats.ttest_ind + equal_var=False / Cohen's d / matplotlib boxplot / dpi=150 等 10 項目)を 10/10 全クリア。
Sonnet 5.5 を選んだ理由は「言うことを聞いて勝手にライブラリを変えない」こと。「scipy で書いて」と頼めば statsmodels に逃げず、データ分布を describe() で確認してからパラメトリックか非パラメトリックを決めます。
Codex 5.3 は OpenAI のコード特化モデルで、こちらはマルチファイル・マルチステップのデータパイプライン向きです。単発スクリプトなら Sonnet、プロジェクト全体なら Codex、という使い分けが現実的です。
6. 査読コメントへの返信 —— Claude Opus 5.5(GPT-5 でも可)
実際の返信シナリオを模しました。査読者:「n=42 では因果推論には不十分、拒否推奨(200 まで増やせば再考)」。前提:Methods §3.2 で a priori power analysis を既に報告済、α=.05・d=0.8 で n=42/群が必要最小サンプル。
Opus の 250 語英文返信は、謝意→Methods §3.2 の既報告の指摘→検定力分析の要点復唱→Discussion での「サンプルサイズと外部妥当性の限界」拡張の約束→再募集は約束しない、という構成をプロンプト要求通りに全命中。トーンも卑屈でも対抗的でもないちょうどよい線でした。
GPT-5 でも同じ構成は書けますが、わずかに譲歩方向に傾きます。最終版は Opus、ブレスト段階の骨格は GPT-5、という使い分けが最もコスパが良いです。
コスト・遅延の実測
11 タスク実行時の総トークン・費用(ベンダー公式価格で粗算)
| モデル | prompt tok | completion tok | 費用 ($) |
|---|---|---|---|
| Claude Opus 5.5 | 5,502 | 21,967 | $1.73 |
| GPT-5 | 3,555 | 34,174 | $0.35 |
| Claude Sonnet 5.5 | 5,502 | 18,475 | $0.29 |
| Qwen 3.8 Max | 3,965 | 59,949 | $0.20 |
| Doubao Seed 2.1 Turbo | 3,789 | 119,433 | $0.18 |
| Kimi K3.1 Pro | 4,251 | 41,287 | $0.11 |
| DeepSeek V4 Pro | 4,094 | 42,243 | $0.10 |
| GLM 5.3 Prime | 3,396 | 35,535 | $0.08 |
| Codex 5.3(1 回) | 237 | 752 | $0.01 |
| 合計(実行分と再試行の概算) | 34,291 | 373,815 | $3.04 |
遅延(単一呼び出しの p50)
Doubao がダントツに遅く、1 呼び出し 100-230 秒。Qwen も Sonnet の 3-5 倍遅いです。リアルタイム用途には不向き、バッチ処理用途なら問題なし。
最終的なルーティングルール
const ROUTE = {
topic_brainstorm: 'deepseek-v4-pro', // 発散、安い
read_long_pdf: 'kimi-k3.1-pro', // 長 PDF 最強
outline: 'claude-opus-5-5', // AI 臭最少
cn_methods_draft: 'deepseek-v4-pro', // 中国語量産、19 倍安い
en_abstract: 'claude-opus-5-5', // 翻訳臭 3/10
cn_to_en: 'claude-opus-5-5', // 直訳癖なし
derivation: 'gpt-5', // 数式分段明快
data_analysis_code: 'claude-sonnet-5-5', // 従順、ライブラリ固定
reviewer_response: 'claude-opus-5-5', // トーン適正
internal_report: 'qwen3.8-max', // 納品書フォーマットが特長
weekly_report: 'doubao-seed-2-1-turbo-260628',
};
Qwen 3.8 Max と Doubao Seed 2.1 Turbo は本テストの文体評価では 8/10 でした。この数値だけで投稿可否は決まりません。社内の進捗報告・助成金申請書・企画書では、要件を明示する形式が役立つ場合もあります。
最後に注意点 2 つ
-
本記事の「AI 臭」は剽窃率でも実際の AI 検出率でもありません。別モデルによる文体評価であり、検出ツールでの結果を予測できるとは限りません。投稿前には出典、引用、所属機関の AI 利用規則を確認してください。
-
人間の目による最終読みは省略できません。Opus の「提出前チェックリスト」、Kimi の「分量割合検証」の行、GPT-5 のプロンプト復唱、DeepSeek の途中切断、Sonnet の半角記号——どれも機械的な痕跡ですが、消すのは人間の責任です。指導教員に出す最終版はあなたのものであって、モデルのものではありません。
もし皆さんが同種のベンチマークをしていて、この結論と違う挙動を観測していれば、ぜひコメントで共有してください。特にモデル・バージョン・タスク粒度で結果がぶれやすいので、知見を集約していきたいです。
