公開決算資料からChatGPT Plusの月20ドルを追う:集計スクリプトと出典の突き合わせ
私はAIに「ChatGPT Plusの月20ドルがどこへ流れるのか、公開資料で確認できる範囲を調べてほしい」と依頼しました。あわせて、根拠のない補完をせず、数字ごとに出典と確度を分けるよう指定しました。この記事は、その依頼に対する回答を私が資料と照合し、確認できたことと確認できなかったことに分けてまとめたものです。
AIに渡した問いと確認方針
私が知りたかったのは、個々の利用者が払った20ドルの行き先を特定することではありません。公開決算や公式価格表、報道、第三者推計をつなぎ、サブスクリプション収入から計算資源まで、どこまで数字で説明できるかです。
AIには、出典の種類を明示し、報道や推計を公式発表のように書かず、公開情報がない箇所は「確認できない」と残すよう求めました。以下では、AIが組み立てた計算も前提と式を載せ、読者が追試できる形にしています。
カバー図は出典欄に挙げた公開データから集計スクリプトで描画(確認日2026年10月22日)。
背景:対象はChatGPT Plusの月20ドル
対象はOpenAIのChatGPT Plus、月額20ドルです。比較としてAnthropicのClaude Proを並べます。Claude Proも月額20ドルで、金額は公式価格ページにあり、ConsoleのAPI利用分は含まないと明記されています(公式、確認日2026年10月22日)。
確度には差があります。今回、OpenAIの公式価格ページは403を返したため、ChatGPT Plusの20ドルは第三者集計として扱います。2026年6月15日付で24ドルに改定されたという報道もありますが、情報源が対立するため採用していません。Claude Proの20ドルは公式の記載です。見出しの数字が、この確度差を越えて断定できるわけではありません。
まず、AIに公開資料から資金経路を組み直させ、集計スクリプトで月額を再計算させました。私は前提条件と出典の位置づけを確認し、確かめられない箇所を断定から外しています。
環境と出典(取得日と口径)
| 項目 | 値 | 口径 | 取得日 |
|---|---|---|---|
| Python | 3.12.14(標準ライブラリのみ) | 実行環境 | 2026-10-22 |
| 為替 | 1 USD = 7.1 CNY | 仮定値 | 2026-10-22 設定 |
| OpenAI 2025年 収入 | 130.7億ドル | 監査済み資料(媒体が取得) | 2026-10-22 |
| OpenAI 2025年 費用 | 340億ドル | 監査済み資料(媒体が取得) | 2026-10-22 |
| OpenAI 2025年 損失 | 営業209.2億・帰属純385.3億ドル | 監査済み資料(媒体が取得) | 2026-10-22 |
| 消費者サブスクの比率 | 年化収入の約70% | 報道(2025年10月)。20ドル枠単独の比率は未開示 | 2026-10-22 |
| 消費者サブスク比率(2024年10月) | 約75%(20ドル枠と200ドル枠を含む) | 報道(当時のCFO発言) | 2026-10-22 |
| 設備と減価償却 | 4339億・1490億ドル | 第三者集計(4社合算) | 2026-10-22 |
| チップ単価 | H100 3,320/B200 5,700〜7,300/GB200 14,200ドル | 第三者集計(分解估算) | 2026-10-22 |
| ASML 売上 | FY2025 327億ユーロ、最高四半期はQ4 97億ユーロ | 公式 | 2026-10-22 |
手順:集計スクリプトで月額を再構成する
再計算では、AIに公開単価を辞書にまとめさせ、想定ワークロード(1日200回、入力4,000トークンと出力800トークン、30日)を定数に置かせました。通貨換算とキャッシュ割引は1つの関数にまとめています。数値はこの前提から出た試算であり、実際の利用履歴や請求額を示すものではありません。
# 月額コストの再計算(標準ライブラリのみ)
# 想定ワークロード: 1日200回 × (入力4,000 + 出力800)トークン × 30日
# 為替: 1 USD = 7.1 CNY(仮定値。当日の権威レートではない)
CNY_PER_USD = 7.1
CALLS_PER_DAY = 200
IN_TOKENS = 4000
OUT_TOKENS = 800
DAYS = 30
# モデル名: (入力USD/100万, 出力USD/100万, 通貨, 口径)
PRICES = {
"GPT-6 Luna": (0.10, 0.50, "USD", "第三者集計"),
"DeepSeek Flash(アイドル時間)": (1.0, 4.0, "CNY", "公式"),
"DeepSeek Flash(ピーク時間)": (2.0, 8.0, "CNY", "公式"),
"DeepSeek V4-Pro(アイドル時間)": (4.5, 13.5, "CNY", "公式"),
"Gemini 3.6 Flash": (0.75, 3.75, "USD", "公式"),
"Claude Sonnet 5.5": (2.00, 10.00, "USD", "公式"),
"Claude Opus 5.5": (4.00, 20.00, "USD", "公式"),
"GPT-6 Astra": (10.00, 50.00, "USD", "第三者集計"),
}
def to_usd(in_price, out_price, unit):
if unit == "CNY":
return in_price / CNY_PER_USD, out_price / CNY_PER_USD
return in_price, out_price
def monthly_cost(calls_per_day, in_tokens, out_tokens, price,
days=30, cache_hit=0.0, cache_rate=0.05):
"""キャッシュ命中分は標準入力価格の cache_rate 倍で課金される前提。"""
in_price, out_price, unit, _ = price
in_price, out_price = to_usd(in_price, out_price, unit)
effective_in = in_price * (1 - cache_hit) + in_price * cache_rate * cache_hit
per_call = (in_tokens * effective_in + out_tokens * out_price) / 1_000_000
return per_call * calls_per_day * days
if __name__ == "__main__":
for name, price in PRICES.items():
cost = monthly_cost(CALLS_PER_DAY, IN_TOKENS, OUT_TOKENS, price)
print(f"{name}: {cost:.2f} ドル/月 [{price[3]}]")
print("--- キャッシュ命中率50%(キャッシュ単価 = 標準入力価格の5%) ---")
for name in ("Claude Sonnet 5.5", "GPT-6 Astra"):
base = monthly_cost(CALLS_PER_DAY, IN_TOKENS, OUT_TOKENS, PRICES[name])
hit = monthly_cost(CALLS_PER_DAY, IN_TOKENS, OUT_TOKENS, PRICES[name], cache_hit=0.5)
print(f"{name}: {hit:.2f} ドル/月(削減 {base - hit:.2f} ドル、-{(1 - hit / base) * 100:.2f}%)")
実行結果(Python 3.12.14):
GPT-6 Luna: 4.80 ドル/月 [第三者集計]
DeepSeek Flash(アイドル時間): 6.08 ドル/月 [公式]
DeepSeek Flash(ピーク時間): 12.17 ドル/月 [公式]
DeepSeek V4-Pro(アイドル時間): 24.34 ドル/月 [公式]
Gemini 3.6 Flash: 36.00 ドル/月 [公式]
Claude Sonnet 5.5: 96.00 ドル/月 [公式]
Claude Opus 5.5: 192.00 ドル/月 [公式]
GPT-6 Astra: 480.00 ドル/月 [第三者集計]
--- キャッシュ命中率50%(キャッシュ単価 = 標準入力価格の5%) ---
Claude Sonnet 5.5: 73.20 ドル/月(削減 22.80 ドル、-23.75%)
GPT-6 Astra: 366.00 ドル/月(削減 114.00 ドル、-23.75%)
検証結果1:2025年の収入・費用と三つの「損失」
OpenAIは2025年通期の財務諸表を公表していません。値は媒体が取得した監査済み資料にもとづく報道です(確認日2026年10月22日)。収入130.7億ドルに対し、費用・損失の合計は340億ドルでした。
| 損失の口径 | 2025年 |
|---|---|
| 営業損失(事業そのもの) | 209.2億ドル |
| 帰属純損失(一回性の約415.5億ドルを含む) | 385.3億ドル |
| 現金消費 | 約80億ドル(報道) |
帰属純損失の一回性項目は、非営利から営利への移行に伴う可転換権とワラント負債の公正価値変動です。現金が出ていった額ではなく、三つの口径は相互に換算できません。
2025年10月の報道では、年化約130億ドルの収入に占める消費者サブスクの割合が約70%とされています。20ドル枠だけの割合は公開資料にありません。2024年10月に当時のCFOが示した約75%も、20ドル枠と200ドル枠を含む消費者サブスク全体の数字です。サブスクはOpenAIの収入の主柱ですが、費用の量には届いていません。
検証結果2:資金経路を6層で再構成する
図は出典欄に挙げた公開データから集計スクリプトで描画(確認日2026年10月22日)。
- 利用者→OpenAI:ChatGPT Plus 月20ドル(第三者集計。公式ページは403)。
- OpenAI→クラウド:2025年にOpenAIがMicrosoftへ支払った約172億ドル(監査済み資料)。逆方向に、MicrosoftのFY2026年次報告書はOpenAIとの商業安排による収入241億ドル、売掛金60億ドルを記載しています(公式)。
- クラウド→設備:第三者推計では、4社合計で2026年3月までの4四半期の有形固定資産取得は約4339億ドル、同期の減価償却は約1490億ドル。取得額は減価償却の約3倍ですが、統一基準の会社開示ではなく、当期現金支出とも同じではありません。
- チップ:H100の1枚あたり可変費は約3,320ドル、B200は5,700〜7,300ドル、GB200は約14,200ドル(第三者集計の分解估算)。
- 製造とメモリ:2026年第2四半期のHBM売上シェアはSKハイニックス50%、サムスン33%、マイクロン18%(第三者集計)。
- 設備:ASMLのFY2025通期売上は327億ユーロ、最高四半期はQ4の97億ユーロ(公式)。
償却年数には議論があります。AIチップの償却を5〜6年とする設定に対し、実際の経済的耐用年数は2〜3年という指摘があります(投資家の主張)。監査上の結論はありません。
検証結果3:公開単価から月額を再計算する
前提は1日200回、入力4,000トークンと出力800トークン、30日です。月間では入力24,000,000、出力4,800,000トークンになります。予算を組む前に単価を公開ページで確認しておくと、表の見出し額と実際の請求額のずれを説明しやすくなります。複数モデルを同じ手順で呼ぶ場合は、CrazyrouterのDeepSeek V4-Proページのようにモデル別の単価を並べて確認できる入口が起点になります。
| モデル | 月額 | 口径 |
|---|---|---|
| GPT-6 Luna | 4.80ドル | 第三者集計 |
| DeepSeek Flash(アイドル時間) | 6.08ドル | 公式(1 USD = 7.1元で換算) |
| DeepSeek Flash(ピーク時間) | 12.17ドル | 公式 |
| DeepSeek V4-Pro(アイドル時間) | 24.34ドル | 公式 |
| Gemini 3.6 Flash | 36.00ドル | 公式 |
| Claude Sonnet 5.5 | 96.00ドル | 公式 |
| Claude Opus 5.5 | 192.00ドル | 公式 |
| GPT-6 Astra | 480.00ドル | 第三者集計 |
DeepSeekのピーク時間は平日9:00〜12:00と14:00〜18:00です(北京時間、公式)。Gemini 3.6 Flashは紹介価格で2026年12月31日までの提示です(公式)。ChatGPT PlusとClaude Proの20ドルは定額で、API単価とは別の勘定です。Claude ProはConsoleのAPI利用分を含みません(公式)。
図は出典欄に挙げた公開データから集計スクリプトで描画(確認日2026年10月22日)。
キャッシュも同じスクリプトで扱えます。入力の半分がキャッシュに当たり、キャッシュ単価を標準入力価格の5%と仮定すると、入力費用はほぼ半分になり、月額は約4分の1減ります(Claude Sonnet 5.5は96.00→73.20ドル、GPT-6 Astraは480.00→366.00ドル)。
つまずきやすい点
- 金額が正しくても年と四半期が入れ替わる。 「ASMLの四半期売上116.6億ユーロ」は2026年第3四半期の値です(公式)。2025年の最高四半期はQ4の97億ユーロ、通期は327億ユーロです(公式)。
- 「損失」の口径を混ぜる。 営業損失209.2億ドル、帰属純損失385.3億ドル(一回性の約415.5億ドルを含む)、現金消費約80億ドルは別の数字です。
- 価格ページを取得できない前提で書く。 OpenAIの公式価格ページは403を返しました。ChatGPT Plusの20ドルとGPT-6系の単価は第三者集計として扱い、24ドル改定報道は採用していません。
- 前提を明示せずに単価を比べる。 通貨(1 USD = 7.1元は仮定)、入力と出力の比、キャッシュ単価(標準入力価格の5%と仮定)、ピーク時間の有無で月額は動きます。
- 同じ1ドルを2回足す。 ある層の収入は別の層の費用です。Microsoftの241億ドルはMicrosoftの収入であり、OpenAIの収入ではありません(公式)。
公開資料で確認できる範囲と、確認できない範囲
確認できないものは次のとおりです。
- 消費者サブスクの内訳。2024年10月の説明は20ドル枠と200ドル枠を合わせた「約75%」で、比率を分けた一次資料は公開されていません。
- チップ単価。H100約3,320ドル、B200 5,700〜7,300ドル、GB200約14,200ドルはすべて第三者集計の分解估算で、公式の部品表も調達価格も公開されていません。
- 減価償却の年数。5〜6年という設定と2〜3年という指摘はどちらも主張で、監査上の結論はありません。
- 層をまたいだ合算。同じ1ドルが上流では収入、下流では費用として現れるため、層ごとの金額を足した総額は作れません。
- OpenAI 2025年通期の財務諸表そのもの。OpenAIは公表しておらず、値は媒体が取得した監査済み資料にもとづく報道です。
私がAIに求めたのは、もっともらしい結論ではなく、前提を変えれば読者自身が再計算できる形です。スクリプトの CALLS_PER_DAY、IN_TOKENS、OUT_TOKENS を実測値に置き換えて再実行すれば、月額を自分の使い方に合わせて試算できます。置き換えるのは呼び出し回数とトークン数で、単価の辞書はそのまま使えます。
公式ページで確認できたのはClaude、Gemini、DeepSeek、ASML、Microsoftの各項目です。OpenAIの2025年損益、ChatGPT Plusの20ドル、GPT-6系の単価、チップ単価は第三者集計または報道にもとづく値で、前者はページを開けば再確認できますが、後者は取得時点の記録としてしか残りません。確認日は2026年10月22日です。
タグ: #AI #ChatGPT #コスト管理 #API


