ファインディでバックエンドエンジニアをしている watame です。
この記事は 🎄ファインディエンジニア #3 Advent Calendar 2025 10日目の投稿です。
私は普段フルリモートで働いています。
基本的には自宅での勤務ですが、3ヶ月に1度(四半期に1度)のペースで、意識的に出社する日を設けています。
フルリモートは開発に集中できる反面、現場の空気感や、実際のオペレーションでシステムがどう扱われているかは見えづらいと感じています。
そのため、この定期的な出社のタイミングを「自身の手がけたシステムがどのように利用されているかを対面で確認する日」と位置づけ、ヒアリングに取り組んでいます。
なぜ対面でヒアリングするのか、その理由や具体的な進め方を共有します。
誰に、何を聞くか
私は事業部に向けたシステム開発を担当することが多いため、ヒアリング対象は事業部の方々です。
全員に聞く時間は取れないため、以下の観点で対象者をピックアップしています。
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職位
- メンバー
- マネージャー
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利用状況
- システムをよく使っている方
- システムに対して要望を多く出してくださっている方
メンバーとマネージャー視点の違い
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メンバーの場合
- 「個人の業務フロー」にいかに最適化するか、という観点で意見をもらうことが多いです
- 具体的な業務手順の中で、どの機能をどう使っているか(あるいは使っていないか)を深掘りします
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マネージャーの場合
- 「組織全体の管理・数値確認」という観点で意見をもらうことが多いです
- メンバーの状況確認や、1on1のフィードバックにどう活用しているかなど、管理職ならではの利用方法を聞きます
多角的に把握することで、メンバーの要望とマネージャーの要望が重なる「共通の課題」が見え、優先して解決すべきポイントを知ることができます。
ヒアリングの準備
限られた時間を有効に利用するため、下記の情報を事前に準備しています。
- 事前アポイントメント
- ヒアリング対象者が過去に行った「問い合わせ」や「要望」の整理
特に「問い合わせ」「要望」については、「以前、〇〇のご要望をいただいていましたが、その後いかがですか?」と切り出すことで、会話のフックとなり、潜在的な困りごとを引き出しやすくなります。
事前に背景情報を集めておくことで、短時間でも密度の高いヒアリングができるようになります。
ヒアリングの実践
当日の進め方としては、以下を意識しています。
- 目的の共有: 開始時に「何のためにこの時間を設けているか」を伝える
- 操作の観察: 口頭で聞くだけでなく、実際のオペレーションの中でシステムを操作してもらう
- 深堀り: 2の中で気になった挙動や発言を深堀りする
特に重要なのは「2. 操作の観察」だと考えています。
オンライン会議でも画面共有を使ったヒアリングはできますが、対面だと相手のちょっとした表情の変化や迷いも含めて観察しやすく、「なんとなくやりづらそうにしている」瞬間を拾いやすいと感じています。
過去のヒアリングでは、機能の「認知不足」に気づく場面がありました。
業務効率化のために「一覧画面からのステータス更新機能(詳細画面を開かずに直接更新できる機能)」をリリースしていましたが、実際の操作を見ると、ユーザーは1件ずつ詳細画面を開いて更新する作業を繰り返していました。
気になって「一覧から直接更新できること、ご存知ないですか?」と尋ねると、「えっ、そんなことできるんですか? 知りませんでした」という反応があり、その場で改めて利用方法をご案内しました。
これは、アクセスログを見ているだけでは気づけない、対面で実際のオペレーションを見たからこそ拾えた改善ポイントでした。
操作を観察することで、想定外の動きや冗長な手順が見えてくるため、機能が本当にオペレーションにフィットしているかを正しく判断できると考えています。
ヒアリング情報の蓄積と活用
ヒアリングした内容は社内の情報管理ツール(Notion等)に記録し、機能の優先度付けの際に役立てています。
実際の利用シーンとその背景を知ることで、施策の優先度が変わることもあります。
対面で得られた細かなニュアンスも、テキストとして残しておくことで、後からプロダクトの方向性を議論する際に「共通の前提」として活用しやすくなります。
ヒアリングをして得られた効果
これらのヒアリングを通して得られた効果は、大きく4つあります。
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モチベーションの向上
- 開発した機能が現場で役に立っている事実を、肌で感じられます
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ギャップへの気付き
- 先ほどの例のように、「機能はあるが届いていない」といった事実に気づくことができました。これはログを見ているだけでは分からない発見です
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事業部のオペレーション上の課題の把握
- 背景を理解することで、施策へ取り掛かる際に「どのような状態が理想なのか」を具体的にイメージして実装できるようになりました
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単純接触効果と信頼関係
- 対面で会話して面識ができることで、リモートに戻ってからも「あの人に相談すればいい」と想起してもらえる関係性が築けます
おわりに
少ない出社機会であっても、利用者の生の声を聞き、プロダクトをより良くするための情報を得ることは十分に可能です。
物理的な距離があるフルリモートだからこそ、勇気を出して意識的に「現場を見る」機会を作っていくことが大事だと改めて感じています。
まずは「次に出社する日に、1〜2人だけでも対面でヒアリングしてみる」といった小さな一歩からでも、得られる学びは大きいはずです。