概要
記事 自宅に自営PHSを構築して2000年代のPDA通信を蘇らせる を書く上で調べていた Aterm IWX70 の各種仕様について書き残します。
ファームウェアアップデート
ファームウェアアップデートには Windows XP が必要です。
IWX70
IWX70 のファームウェアアップデートについて、基本的には NEC が配布している IWX70&RS20らくらくアシスタント とファームウェアファイルを使うだけなのですが、当初アップデートを Windows 11 + USB-RS232C 変換ケーブル経由で実行したところ、途中でアップデートに失敗し、本体液晶には ローダモードA などと表示され半ば文鎮化しました。
この状態でもファームウェアアップデートの再実行だけは可能なので、 Windows XP の入った当時モノの実機を用意し、Aterm モードの USB ドライバをインストールした上で再度ファームウェアアップデートを行うことで、無事にファームウェアが復旧しました。
RS20
IWX70 に付属の子機 RS20 の場合はさらに困難で、 NEC 公式にすら
※Windows® XP/2000のUSB接続では、ファームウェアのバージョンアップはできません。お手数ですが、バージョンアップの際は必ずシリアルポートへの接続にて行ってください。
などと書かれている始末でした。かといって、 Windows XP であっても USB-RS232C 変換ケーブルを使用するとアップデートに失敗します。
が、 RS20 本体の DIP スイッチ 1 を OFF → ON にして USB 接続することで、 Windows XP でも USB 経由のファームウェアアップデートが可能でした。
USB CDC モード
IWX70 と RS20 は、ファームウェアを更新することで、 Aterm モード (独自 USB ドライバ) に加えて USB CDC モードによる接続をサポートするようになります。 CDC モードは USB 標準に沿った通信規格なので、 Linux でも USB によるドライバレスな認識が可能になります。
CDC モードにして接続した場合、 Linux に /dev/ttyACM0 が出現しますので、
sudo screen /dev/ttyACM0 115200
とするだけでシリアルコンソールが可能になります。
この機能を有効にするには、 IWX70 では DIP スイッチの 8 を ON に、 RS20 では DIP スイッチの 1 を ON にします。
AT コマンドによる内線データ通信
PIAFS 通信のデバッグのために、それぞれの端末からシリアルコンソール越しに発信する際の AT コマンド一覧です。
なお、内線A (91) に RS20 、内線B (92) に P-in m@ster を子機登録している状態とします。
子機から親機へ発信
PC を IWX70 の USB ポートに繋ぐか RS-232C ポートに繋ぐかによって、内線番号が異なります。
| 接続元 | 接続先 | AT コマンド |
|---|---|---|
| RS20 | IWX70 (USB) | ATD#/71 |
| RS20 | IWX70 (RS-232C) | ATD#/81 |
| P-in m@ster | IWX70 (USB) | ATD#*71 |
| P-in m@ster | IWX70 (RS-232C) | ATD#*81 |
親機から子機へ発信
もちろん親機側から発信することも可能です。
| 接続元 | 接続先 | AT コマンド |
|---|---|---|
| IWX70 | RS20 | ATD#/91 |
| IWX70 | P-in m@ster | ATD#/92 |
子機から子機へ発信
ポイントは RS20 の P7 と P-in m@ster の #32 です。
子機間通信では、親機の帯域の都合上 32kbps による発信を強制する必要があります。末尾のオプションを付けずに 64kbps で繋ごうとすると BUSY と返されます。
| 接続元 | 接続先 | AT コマンド |
|---|---|---|
| RS20 | P-in m@ster | ATD#/92P7 |
| P-in m@ster | RS20 | ATD#*91#32 |
接続の検証
発信に成功すると、接続先のシリアルコンソールに RING が表示されます。このタイミングで接続先のシリアルコンソールに ATA と入力することで通信が開始し、
CONNECT 64000 PROTOCOL:PIAFS COMPRESSION:NONE
と表示されます。この状態でコンソールに文字を入力すると、接続元ではなく接続相手のターミナルへ文字が表示されるようになります。
切断は +++ を素早く入力してからの ATH です。