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【要件定義、基本設計編】StateとEventを分離して堅牢なUIエラー通知を実装する

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はじめに

ChatGPT Image 2025年10月1日 13_57_40.png

こんにちは!

先日、メモの追加・削除・永続化機能を実装し、僕のメモアプリも一通りのCRUD操作ができるようになりました。

しかし、今のアプリには致命的な欠陥があります。それは、もしデータベースへの保存や削除に失敗した時、アプリがユーザーに何も伝えず、ただ沈黙してしまうことです。これは、ユーザーに「あれ、保存されたのかな?」という不安を与え、最悪の場合データが消えているのに気づかせない、非常に不親切な設計です。

そこで今回は、この「沈黙のエラー」を解決し、ユーザーにフィードバックを返す、堅牢なエラー通知機能を実装するための要件定義基本設計をまとめていきます。

この設計の過程で、Compose開発における超重要概念、「State」と「Event」の分離についても深く掘り下げてみます。


1. なぜ、エラー通知が必要なのか?(要件定義)

1.1. なぜやるのか? (Why)

  • 現状の課題: 現在の実装では、RepositoryでDB操作が失敗しても、ViewModelprintlnで開発者向けのログを出力するだけです。ユーザーは、自分の操作が成功したのか失敗したのかを知る術がありません。

  • 目指す姿: アプリに**「対話能力」**を持たせること。操作が失敗したという「悪い知らせ」であっても、それを正直にユーザーに伝えることで、信頼関係を築きたい。これが今回の機能追加の根本的な動機です。

1.2. 何をやるのか? (What)

上記の「Why」を実現するために、以下の機能要件を定義します。

  1. エラー通知: メモの追加または削除に失敗した場合、ユーザーに対して「保存に失敗しました」などのエラーメッセージを画面上に表示すること。

  2. 一時的な表示: エラーメッセージは、数秒間表示された後、自動的に消えること。ユーザーの操作を妨げ続けないようにします。


2. 「どう作るか」の骨格を決める(基本設計)

2.1. UI/UXの選定:「Snackbar」が最適解

エラー通知の方法はいくつか(Toast, AlertDialogなど)ありますが、今回は**Snackbar**を採用します。

  • 理由:
    • 画面の下部に表示され、ユーザーの操作を完全に妨げることがない(非侵入的)。
    • 数秒で自動的に消えるため、要件に合致している。
    • Material Designの標準コンポーネントであり、Composeで簡単に実装できる。

2.2. アーキテクチャ設計と思考プロセス

ここが今回の設計の肝です。

「エラーメッセージをどうやってViewModelからUIに伝えるか?」と考えた時、多くの初学者が陥る罠があります。

❌ ありがちな失敗例:UiStateにエラーメッセージを入れる

// やってしまいがちな悪い例

data class Success(
 val memos: List,
 val errorMessage: String? = null // ← ここにエラーメッセージを追加
 ) : MemoUiState

一見良さそうですが、これには大きな問題があります。UiStateは**「画面の状態」**を表すものです。ここに一時的なエラーメッセージを入れてしまうと、画面回転(再コンポーズ)が起きた時に、同じエラーメッセージが何度も表示されてしまうのです。

🤔 思考プロセス:StateEventを分離せよ

ここで、我々は2つの概念を明確に区別する必要があります。

  • State(状態):
    • メモのリストなど、画面に永続的に表示され続けるべきデータ。
    • 例えるなら: 天気予報の「今日の天気は晴れです」という情報。
  • Event(イベント):
    • 「保存に失敗しました」という通知など、一度だけ処理されればよい出来事。
    • 例えるなら: 「ただいま、ゲリラ豪雨が発生しました」という一回限りの緊急速報。

この「緊急速報(Event)」を、「今日の天気(State)」に混ぜて管理してはいけないのです。

✅ 解決策:イベント通知専用のパイプラインを作る

そこで、ViewModelの中に、UiStateとは別の、イベント通知専用のパイプラインを用意します。このパイプラインには**SharedFlow**という道具が最適です。

  • StateFlowとの違い:
    • StateFlow: 最新の「状態」を一つだけ保持する。UIが接続した瞬間に、現在の状態を必ず受け取れる。
    • SharedFlow: イベントを次々と流すことができる。UIは、自分が接続した後に流れてきたイベントだけを受け取る(過去のイベントは受け取らない)。まさに、一度きりの通知に最適です。

2.3. コンポーネント間の連携

この設計思想に基づき、各コンポーネントの役割と連携を以下のように定義します。

  1. ViewModelの改造:

    • UiStateとは別に、イベントを流すためのSharedFlowprivateで定義する (_eventFlow)。
    • UIには、publicFlowとして公開する (eventFlow)。
    • addMemodeleteMemoonFailureブロックで、_eventFlow.emit(...)を呼び出し、エラーイベントをパイプラインに流す。
  2. MemoScreenの改造:

    • Snackbarを表示・管理するためのSnackbarHostStateを用意する。
    • LaunchedEffectという特別なComposableを使い、ViewModeleventFlow一度だけ監視(collect)する。
    • eventFlowから新しいイベントが流れてきたら、snackbarHostState.showSnackbar(...)を呼び出して、Snackbarを表示する。

【情報の流れのイメージ】

[ DB操作失敗! in Repository ]

↓ Result.failure

[ ViewModel ] -- emits event --> [ SharedFlow (イベント用パイプライン) ]

↓ ↓ collects

[ UiState (データ用パイプライン) ] [ LaunchedEffect in MemoScreen ]

↓ ↓ shows

[ UI (リスト表示など) ] [ Snackbar (エラー表示) ]

このように、**「画面の状態」「一回きりの通知」**の通り道を分けることで、クリーンで予測可能なUIを構築できます。


まとめ

というわけで、今回は「UIへのエラー通知」を実装するための設計を行いました。

  • Snackbarを使って、ユーザーに分かりやすくエラーを通知する
  • State(状態)とEvent(イベント)を明確に分離する
  • イベント通知にはSharedFlowを使い、UI側はLaunchedEffectで監視する

この設計は、単にエラーを表示するだけでなく、Jetpack Composeにおける、より高度で堅牢なUIアーキテクチャを学ぶための、最高の練習問題になります。

次回は、この設計書をもとにした実装編に進んでいこうと思います!

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