はじめに
機械学習(ML)エンジニアとして 7 年ほど働いた後、今年は別の技術ロールへ移りました。
データサイエンティストを目指すキャリアチェンジについてはよく語られますが、その逆の事例はあまり多くないように感じています。
この記事では、私がロールチェンジを経験する中で感じた変化や気づきをまとめています。
あくまで一つの事例ではありますが、どなたかがキャリアを考える際の材料になれば嬉しいです。
転職を考え始めたきっかけ
仕事自体が嫌になったわけではなく、環境の変化と家庭の事情が重なったことが、転職を検討し始めた大きなきっかけでした。
前職では、検索クエリを含むテキストデータを扱ったモデル改善や、レコメンド関連の開発に関わっていました。
もともとフルリモートが認められていた会社でしたが、出社回帰の流れが強まるなかで、少しずつオフィス出社が求められるようになりました。
一方で、私は家庭の都合で地方に住んでおり、すぐに引っ越すことは難しい状況です。通勤を前提にすると働き方がどうしても厳しくなってしまいます。
このあたりから「転職を考えざるを得ないかもしれない」と感じ始め、
まずは良いご縁があれば…というくらいのペースで、ゆるやかに転職活動を進めることにしました。
・ ML エンジニアとして働き続ける選択肢は?
転職を考え始めると、別の現実も見えてきました。
ML エンジニアとして働き続ける選択肢も検討しましたが、フルリモート/低出社を前提にすると、応募できる企業はそれほど多くありません。
条件に合う企業はベンチャー中心になりましたが、過去の経験や家庭の状況を考えると、変化の大きい環境への再挑戦には慎重になりました。
また、地方でスキルを活かせるポジションを探すことも考えましたが、どうしても選択肢は限られるという印象がありました。
・ 外資系という選択肢
そんな中、「いつか外資系でも働いてみたい」という思いが以前から心のどこかにありました。
ちょうどそのタイミングで、外資系企業の ML とは別ロールのポジションについて、リクルーターの方から声をかけていただきました。
話を伺う中で、
- ML エンジニアとして培った知見を活かせる場面が多い
- 働き方の条件が今の自分の状況に合っていた
という点が分かり、この機会に挑戦してみようと思いました。
新しいロールで得たこと
現在は サポートエンジニア として働いています。
ロールチェンジを通して特に大きく実感した変化は、次の 3 点です。
① 技術を「使う側」から見られるようになった
ML エンジニア時代は主に「作る側」の視点でしたが、今は「使う側」の技術理解が求められ、プロダクトを見る角度が大きく広がりました。
実際の利用者目線で技術を捉える経験は、自身の成長にも確実につながっていると感じています。
② 技術の扱う範囲が広がった
サポート業務ではインフラ寄りの知識が求められる場面も多く、システム全体を捉える力が以前より鍛えられています。
コードを書くことだけに留まらず、技術が横に広がっていく感覚を得られるようになりました。
③ 「誰かの役に立っている実感」が得やすい
お客様と直接向き合う中で、自分の知識がその場で課題解決につながる瞬間 を実感しやすくなりました。
技術とは別軸のやりがいや喜びを感じられるのは、サポートエンジニアならではの魅力だと感じています。
離れて分かった「MLエンジニアの強み」
別のロールに移ったことで、ML で培った力の価値にも改めて気づきました。
・ 仮説検証のプロセス
ML 業務は「改善点を考える → 試す → 仮説を見直す」の連続です。
このサイクルはサポートの現場でも非常に役立っています。
トラブルシューティングも突き詰めれば仮説検証の積み重ねだからです。
・ 調べる力
論文や技術情報を追っていた経験は、未知の課題に向き合う場面で強力な武器になります。
「なぜうまくいかないのか」を丁寧に探る姿勢は、ロールが変わっても活きるスキルだと実感しています。
ロールチェンジで感じたギャップ
ネガティブというより、「変化として実感した点」です。
・ MLエンジニアではなくなった
ロールチェンジしたので当たり前のことですが、これは個人的に大きな変化でした。
DS/ML の仕事にはやりがいや楽しさがあり、一定の誇りを持っていたため、離れるときには少し寂しさがありました。
LinkedIn のカジュアル面談のお声がけは以前より減りましたが(笑)、キャリアの方向性が変わった結果でもあり、今では自然に受け止めています。
・ コードを書く時間が減った
業務でコードを書く機会は少なくなりましたが、その一方でプライベートでは興味のある技術を自由に試す余力が増えました。
「好きだから書く」時間を以前より純粋に楽しめるようになった点は、自分にとって良い変化だと感じています。
今後のキャリアについて
転職して日が浅いこともあり、今はまず新しい技術領域をしっかり身につけることに注力しています。
もちろん将来のキャリアも考えますが、それ以上に 「今の環境で学べることを丁寧に積み重ねること」 を大事にしたいと思っています。
その一方で、興味のある分野についてはプライベートで小さく開発を続けているので、タイミングが合えば何かしら形にして発信していきたいです。
まとめ
私は文系出身で、専門的なコンピュータサイエンスのバックグラウンドがあったわけではありません。
それでも ML エンジニアとしての経験を積み、今はまったく別の技術領域で働いています。
キャリアには予想外の転機が訪れることもありますが、その変化のなかで気づけることも多いと感じています。
ここでお伝えした内容が、どなたかが今後の選択を考える際のヒントになれば嬉しいです。
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