Google AntigravityとGemini CLI:AIコーディングツールの新時代を理解する
2025年、Googleが立て続けにリリースした2つのAIコーディングツール「Gemini CLI」と「Google Antigravity」。名前は似ているけれど、実は全く異なるツールです。この記事では、両者の違いと使い分けについて詳しく解説します。
TL;DR(3行まとめ)
- Gemini CLI:ターミナルで使うオープンソースのAIアシスタント(Claude Code的)
- Google Antigravity:複数エージェントを管理するデスクトップIDE(Cursor/Windsurf的)
- 現時点ではGemini CLIの方が人気、Antigravityは実験的プロジェクト
まず整理:「Antigravity」には3つの意味がある
混乱しやすいのですが、「Antigravity」という言葉には複数の意味があります:
| 名称 | 種類 | Google公式 | リリース時期 |
|---|---|---|---|
| Google Antigravity IDE | AI開発プラットフォーム | ✅ | 2025年11月 |
| Google Gravity | ブラウザ物理デモ | ❌ | 2009年(非公式) |
| Python antigravity | イースターエッグ | ❌ | Python標準ライブラリ |
この記事で扱うのは、2025年11月にリリースされた公式のGoogle Antigravity IDEです。
Gemini CLI:ターミナルに住む開発者のための相棒
基本情報
リリース日:2025年7月
開発元:Google(オープンソース)
ライセンス:Apache 2.0
インストール:npm install -g @google/gemini-cli
何ができるの?
Gemini CLIは、ターミナルから直接Gemini AIモデルにアクセスできるコマンドラインツールです。Claude Codeの競合製品と考えると分かりやすいでしょう。
$ gemini
> バグを修正して、テストを実行してください
このようにターミナル上で自然言語で指示を出すだけで、AIがコードを書き、実行し、検証してくれます。
主な機能
- ReActループ:推論(Reasoning)と行動(Action)を繰り返して複雑なタスクを完了
- Google Search統合:最新情報を検索してコンテキストに追加
- MCPサポート:Model Context Protocol対応でカスタムツール連携
-
ファイル操作:
@ファイル名でファイル内容を参照 - シェルコマンド実行:自然言語からUNIXコマンドを生成・実行
- サブエージェント:最近追加された機能で、複数の専門エージェントを起動可能
料金・アクセス
無料枠がとても手厚いのが特徴です:
- 毎分60リクエスト
- 1日1,000リクエスト
- Gemini 2.5 Proへのアクセス
- 個人のGoogleアカウントでOK
使用例
# インタラクティブモード
$ gemini
> このコードベースのアーキテクチャを説明して
# ワンショット実行
$ gemini -p "テストを実行してデプロイして"
# ファイルを参照
$ gemini
> @src/main.py このファイルのバグを修正して
Google Antigravity:エージェントファーストのデスクトップIDE
基本情報
リリース日:2025年11月18日(Gemini 3と同時発表)
開発元:Google DeepMind
ベース:VS Code(Windsurf技術を$24億で買収してライセンス)
対応OS:macOS、Windows、Linux
何が違うの?
AntigravityはGemini CLIの「強化版」ではなく、全く異なるコンセプトのツールです。
最大の特徴は「Agent Manager(ミッションコントロール)」。これは複数の自律型AIエージェントを同時に管理・監視する専用インターフェースです。
主な機能
1. Agent Manager(ミッションコントロール)
- 複数エージェントの並列実行
- 各エージェントの進捗をリアルタイム監視
- エージェント間の連携・調整
2. 自律的なエージェント動作
- エディタ:コードの読み書き
- ターミナル:コマンド実行
- ブラウザ:UIテスト、ウェブ操作
エージェントは人間の指示を待たず、自分で計画を立て、実行し、検証まで行います。
3. アーティファクト生成
検証可能な成果物を自動生成:
- タスクプラン
- 実装計画書
- スクリーンショット
- 動画記録
これにより、エージェントが「何をやったか」を透明性高く確認できます。
4. マルチモデル対応
- Gemini 3 Pro(デフォルト)
- Claude Sonnet 4.5
- GPT-OSS
開発者の声
実際に使った開発者の証言が興味深いです:
「Gemini CLIでは自分がコントロールしている感覚。Antigravityは同僚が隣に座って一緒に作業しているような感覚。2つのサブエージェントを並列で動かして、1つにバグ修正を、もう1つにアーキテクチャレビューを依頼したら、両方が同時進行で思考していた。これはすごい体験だった」
料金・アクセス
- 個人利用:無料(Googleアカウント必須)
- レート制限は「寛大」だが、Gemini CLIよりは厳しめ
- Google AI Pro/Ultra契約者は優先アクセス+高レート制限
- 注意:現時点ではGoogle Workspaceアカウント未対応
徹底比較:どっちを使うべき?
哲学の違い
| 項目 | Gemini CLI | Google Antigravity |
|---|---|---|
| 設計思想 | ターミナル中心の効率化 | エージェントファーストのIDE |
| コントロール | 人間主導の対話型 | エージェント主導の自律型 |
| ワークフロー | 素早い質疑応答(vibe coding) | 複雑なタスクの並列実行 |
機能面の比較
| 機能 | Gemini CLI | Google Antigravity |
|---|---|---|
| ターミナル統合 | ✅ ネイティブ | ⚠️ 内蔵ターミナル |
| GUI環境 | ❌ | ✅ VS Codeベース |
| 複数エージェント並列実行 | ⚠️ サブエージェント(限定的) | ✅ Agent Manager |
| ブラウザ自動化 | ❌ | ✅ Chrome統合 |
| オープンソース | ✅ Apache 2.0 | ❌ プロプライエタリ |
| 拡張性 | ✅ MCP、カスタムコマンド | ⚠️ Open VSX(VS Code非互換) |
パフォーマンスとコスト
Gemini CLI:
- 無料枠が非常に手厚い
- レスポンスが速い(ターミナルベース)
- リソース消費が少ない
Antigravity:
- 無料だが制限あり(5時間ごとにクォータ更新)
- IDEなのでリソース消費が大きい
- 容量制限に達しやすいという報告あり
コミュニティの反応
現時点(2025年12月)では、Gemini CLIの方が明確に人気です。
GitHub、Hacker News、X(旧Twitter)での評価を見ると:
- Gemini CLI:「実用的」「毎日使っている」
- Antigravity:「実験的」「まだ荒削り」「Windsurfに似すぎ」
使い分けガイド:あなたに向いているのは?
Gemini CLIがおすすめな人
✅ ターミナルを主戦場にしている
✅ サクッとAIに質問したい
✅ スクリプト自動化に組み込みたい
✅ オープンソースを重視
✅ 無料枠を最大限活用したい
✅ Claude Codeユーザーで代替を探している
典型的な使用例:
# デバッグ
$ gemini > このエラーメッセージを解析して修正方法を提案して
# ドキュメント生成
$ gemini > @src/ 全ファイルを読んでREADME.mdを生成
# 複雑なシェルコマンド
$ gemini > 昨日変更されたPythonファイルで未使用のimportを削除
Google Antigravityがおすすめな人
✅ IDE環境で開発している
✅ 複数のタスクを並列で進めたい
✅ エージェントに大きな裁量を与えたい
✅ フロントエンド開発やUIテストが多い
✅ 最新技術を試すのが好き
典型的な使用例:
- エージェント1:既存コードのリファクタリング
- エージェント2:新機能の実装
- エージェント3:ドキュメント更新
- エージェント4:E2Eテストの作成
全て並列で進行し、相互に連携。
エンタープライズ利用について
共通の課題
どちらも現時点ではエンタープライズ対応が不十分です:
- Google Workspaceアカウント未対応(個人Gmailのみ)
- エンタープライズ専用プランは「近日公開予定」
- Gemini Code Assist(企業向け製品)との統合は部分的
企業で使うには?
現状の推奨アプローチ:
-
Google Cloud経由でアクセス
- Vertex AI:Gemini 3 Proへの企業向けアクセス
- Gemini Enterprise:ビジネスチーム向けプラットフォーム
-
パイロットプロジェクトで検証
- 小規模チームで試験導入
- セキュリティリスクの評価
- ROI測定
-
エンタープライズプラン待ち
- SOC 2 Type II、ISO 27001認証済み
- FedRAMP Moderate対応
- 専用プランの発表を待つ
技術的な裏側:どう動いているのか?
Gemini CLIのアーキテクチャ
ユーザー入力
↓
[Gemini CLI]
↓
ReActループ(推論→行動→観察の繰り返し)
↓
├─ Google Search(グラウンディング)
├─ ファイル操作ツール
├─ シェル実行ツール
└─ MCPサーバー(カスタムツール)
↓
結果をターミナルに出力
Antigravityのアーキテクチャ
ユーザー入力(自然言語タスク)
↓
[Agent Manager]
↓
複数のサブエージェントを起動
↓
┌─────────┬─────────┬─────────┐
│エージェントA│エージェントB│エージェントC│
│ (編集) │ (検証) │(ブラウザ) │
└─────────┴─────────┴─────────┘
↓
各エージェントが並列で作業
- エディタ操作
- ターミナルコマンド実行
- Chrome DevTools経由のブラウザ自動化
↓
アーティファクト生成(検証可能な成果物)
↓
結果をAgent Manager UIに表示
よくある質問(FAQ)
Q1: どっちが「賢い」の?
A: 両方とも同じGemini 3 Proモデルを使用可能です。賢さは同等ですが、使い方が違うのが本質です。
- Gemini CLI:対話的に人間がコントロール
- Antigravity:エージェントが自律的に判断
Q2: Claude Codeと比べてどう?
A: Gemini CLIはClaude Codeの直接的な競合です。
- Claude Code:Anthropic製、Claudeモデル、ターミナルベース
- Gemini CLI:Google製、Geminiモデル、ターミナルベース
機能的にはほぼ同等ですが、Gemini CLIの方が無料枠が手厚いです。
Q3: CursorやWindsurfとの違いは?
A: Google AntigravityはCursor/Windsurfの競合です。
実際、AntigravityはWindsurfチームを$24億で買収して技術をライセンスしています。そのため見た目や操作感が似ています。
差別化ポイント:
- Agent Managerによる複数エージェント管理
- アーティファクトベースの透明性
- マルチモデル対応(Gemini/Claude/GPT)
Q4: 両方使える?
A: はい!実際、多くの開発者が併用しています。
典型的なパターン:
- 日常的なタスク:Gemini CLI(サクッと質問、コード生成)
- 大規模リファクタリング:Antigravity(複数エージェントで並列作業)
Q5: 日本語対応は?
A: 両方とも日本語で会話できます。ただし:
- UIは英語のみ
- ドキュメントは主に英語
- コードコメントやドキュメント生成は日本語OK
今後の展望:どうなる?
短期的な予測(2025年内)
Gemini CLI:
- サブエージェント機能の強化
- より多くのMCPサーバー対応
- パフォーマンス改善
Antigravity:
- エンタープライズプランのリリース
- 安定性の向上
- Windsurf技術の更なる統合
長期的な予測(2026年以降)
GoogleのAIコーディングツール戦略は複雑です:
- Gemini CLI
- Google Antigravity
- Jules(別のコーディングエージェント)
- Gemini Code Assist
統合される可能性があります。特に:
- Antigravity ← Windsurf技術
- Gemini CLI ← コマンドラインツール
として、それぞれが明確なポジションを確立するか、統合されて単一プラットフォームになるか。
まとめ:2025年、AI開発ツールの選択肢
Google AntigravityとGemini CLI、どちらも素晴らしいツールですが、目的が全く違います。
迷ったら、まずGemini CLIから始めることをおすすめします。理由:
- 無料枠が手厚い
- 学習曲線が緩やか
- 既存ワークフローに統合しやすい
- コミュニティが活発
そして、複雑なプロジェクトで複数エージェントの並列実行が必要になったら、Antigravityを試してみる。これが2025年12月時点での現実的なアプローチです。
AIコーディングツールの進化は目覚ましく、半年後には状況が大きく変わっているかもしれません。両方のツールをウォッチリストに入れておくことをおすすめします!
参考リンク
Gemini CLI:
- 公式サイト: https://geminicli.com/
- GitHub: https://github.com/google-gemini/gemini-cli
- ドキュメント: https://geminicli.com/docs/
Google Antigravity:
- 公式サイト: https://antigravity.google/
- 発表ブログ: https://blog.google/technology/developers/gemini-3-developers/
その他:
- Gemini 3発表: https://blog.google/products/gemini/gemini-3/
- Claude Code: https://claude.ai/code
この記事は2025年12月7日時点の情報に基づいています。AI開発ツールの状況は急速に変化するため、最新情報は公式ドキュメントをご確認ください。
