6
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Spring Data RESTの要点と利用方法

Last updated at Posted at 2024-05-22

はじめに

Spring Data RESTというライブラリを仕事で利用することになりそうで、色々手を動かして調べた要点や利用方法についてまとめました。

Spring Data RESTとは

Spring Data RESTはSpring Dataのライブラリの一つであり、Spring Data RESTは、Spring Dataで作成したリポジトリをRESTfulなエンドポイントとして自動的に公開します。Spring Data RESTの機能を利用することによって、ControllerやServiceクラスの実装を省略する事ができるということです。

Spring Dataは様々なデータストアの特性や仕様を抽象化し、簡便なインターフェースを提供しています。例えば、RDBMSの場合、JPAを使用していれば、Entityクラスを定義し、そのEntityクラスを元にRepositoryクラスを作成するだけで、CRUDの処理が可能になります。

例えば、RDBMSを利用する場合、userテーブルは以下のようなJavaのオブジェクト(Entityクラス)にマッピングすることができます。

@Entity
public class User {
  @Id
  private Long id;
  private String name;
  private Integer age;
  // getter, setter
}

そして、Repositoryクラスは以下のように、JPAが提供するインターフェースを継承することで様々なCRUD操作を実現するためのメソッドを利用することができるようになります。

public interface UserRepository extends JpaRepository<User,Long> {}

このUserRepositoryには、findAllfindByIdsavedeleteByIdなどの基本的なCRUD操作を実現するメソッドが継承されており、これらのメソッドを利用することで、ユーザー情報の取得・保存・削除などの処理を行うことができます。

Spring Data RESTはこのように定義されたRepository群をRESTfulなAPIエンドポイントとして公開してくれるライブラリだということです(ControllerやServiceクラスの実装が必要なくなるということです)。

Spring Data RESTの機能紹介

Spring Data RESTは、開発者がより効率的にデータを管理し、RESTful APIを提供するための強力なツールです。以下に、Spring Data RESTの重要な機能を3つ紹介します。

  1. CRUD操作の自動生成: Spring Data RESTは、リポジトリインターフェースを定義するだけで、自動的にCRUD(Create, Read, Update, Delete)の操作をサポートするRESTfulエンドポイントを生成します。これにより、開発者はデータの管理に関する大量のコードを手動で書く必要がなくなり、開発時間を大幅に短縮できます。

具体的にはCRUD操作とエンドポイントとJPAメソッドは以下のように対応しています。

操作 HTTPメソッド エンドポイント JPAメソッド
作成(Create) POST /entities save
読み取り(Read All) GET /entities findAll
読み取り(Read One) GET /entities/{id} findById
更新(Update) PUT/PATCH /entities/{id} save
削除(Delete) DELETE /entities/{id} deleteById
  1. ページングとソート: データの量が多い場合、ページングとソート機能は非常に重要です。Spring Data RESTは、標準でページングとソートをサポートしており、クライアントからのリクエストに応じてデータを適切に分割および並べ替えることができます。これにより、大量のデータを効率的に扱うことが可能になります。

具体的にはページングやソートを利用する場合にはGETエンドポイントに対してクエリパラメータを付与します。例として以下のようなクエリパラメータを使用します。

  • ページング:
    • ?page=0&size=10 (例: 最初のページの10件を取得)
  • ソート:
    • ?sort=name,asc (例: 名前順で昇順)
    • ?sort=age,desc (例: 年齢順で降順)
  1. クエリメソッドのサポート: Spring Data RESTは、リポジトリインターフェースに定義されたメソッドを直接RESTfulエンドポイントにマッピングすることで、クエリメソッドをサポートします。これにより、複雑な検索条件や計算式をクライアントが直接指定できるようになり、データの取得がより柔軟になります。

具体的にはクエリメソッドは以下のようにエンドポイントとしてマッピングされます。

例: UserRepositoryにdefinedされるクエリメソッド、例えばfindByName/users/search/findByName?name={name}というエンドポイントにマッピングされます。

  • クエリメソッドの定義:
public interface UserRepository extends JpaRepository<User, Long> {
  List<User> findByName(String name);
}
  • エンドポイントの呼び出し例:
GET /users/search/findByName?name=John

他にも様々な機能があるのですが、今回はこの3つの機能にフォーカスして紹介したいと思います。

簡単なエンドポイントの作成

今回実装したもの

ソースコードはこちらにあります。

Spring Bootのアプリケーションを作成しています。データベースはH2DBを利用して簡単に試すことができるようになっています。
いくつかテストデータも自動で投入されるようになっているので色々触ってみてください。

コンソール上でDBを確認したり、APIのエンドポイントを確認できるようになっています。

アプリを起動している状態で以下のURLにアクセスしてください。

  • DB
    http://localhost:8080/h2-console
  • API
    http://localhost:8080/swagger-ui/index.html

DBのコンソールで入力を求められた場合は以下の内容を入力してください。

項目名 入力内容
Driver Class org.h2.Driver
JDBC URL jdbc:h2:mem:testdb
User Name sa
Password

Javaのバージョンは21を指定しています。

以下、実装のテーマ設定や要点について説明していきます。

テーマ設定

AuthorとPostというテーブルを利用するアプリケーションを考えます。Authorは複数のPostを持ちうるというリレーションを持つとします。

実装

Entityを実装する

これをJPAのEntityとして表現すると以下のようになります。

@Data
@Entity
public class Author {
    @Id
    @GeneratedValue(strategy = GenerationType.AUTO)
    private Long id;
    private String firstName;
    private String lastName;
    private String password;
    @CreatedDate
    private LocalDate createdAt;
    @LastModifiedDate
    private LocalDate updatedAt;

    @OneToMany(cascade = CascadeType.ALL)
    @JoinColumn(name = "author_id")
    private List<Post> posts = new ArrayList<>();
}
@Data
@Entity
public class Post {
    @Id
    @GeneratedValue(strategy = GenerationType.AUTO)
    private Long id;
    private String title;
    private String content;
    @ManyToOne
    @JoinColumn(name = "author_id")
    private Author author;
    @CreatedDate
    private LocalDate createdAt;
    @LastModifiedDate
    private LocalDate updatedAt;
}

Repositoryを実装する

これらのテーブルに対応するRepositoryを作成します。

public interface AuthorRepository extends JpaRepository<Author, Long> {
}
public interface PostRepository extends JpaRepository<Post, Long> {
}

自動で公開されるエンドポイント

これらの実装によって、以下のエンドポイントが作られます。

エンドポイント HTTPメソッド JPAのメソッド 対象Entity
/authors GET findAll Author
/authors/{id} GET findById Author
/authors POST save Author
/authors/{id} PUT/PATCH save Author
/authors/{id} DELETE deleteById Author
/posts GET findAll Post
/posts/{id} GET findById Post
/posts POST save Post
/posts/{id} PUT/PATCH save Post
/posts/{id} DELETE deleteById Post

また、今回のようにリレーションが定義されている場合、RESTのリソースの親子関係の形でリレーション先のリソースにアクセスするエンドポイントも自動で作られます。

エンドポイント HTTPメソッド 概要
/authors/{id}/posts GET 特定の著者に関連するすべての投稿を取得するエンドポイント
/posts/{id}/author GET 特定の投稿に関連する著者を取得するエンドポイント

この状態でアプリを起動してエンドポイントを呼び出すと以下のようなレスポンスが返却されます。

  • request
    http://localhost:8080/authors

  • response

{
  "_embedded": {
    "authors": [
      {
        "firstName": "John",
        "lastName": "Doe",
        "password": "password123",
        "createdAt": "2024-05-23",
        "updatedAt": "2024-05-23",
        "_links": {
          "self": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/1"
          },
          "author": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/1"
          },
          "posts": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/1/posts"
          }
        }
      },
      {
        "firstName": "Jane",
        "lastName": "Smith",
        "password": "password456",
        "createdAt": "2024-05-23",
        "updatedAt": "2024-05-23",
        "_links": {
          "self": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/2"
          },
          "author": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/2"
          },
          "posts": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/2/posts"
          }
        }
      },
      {
        "firstName": "Alice",
        "lastName": "Johnson",
        "password": "password789",
        "createdAt": "2024-05-23",
        "updatedAt": "2024-05-23",
        "_links": {
          "self": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/3"
          },
          "author": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/3"
          },
          "posts": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/3/posts"
          }
        }
      }
    ]
  },
  "_links": {
    "self": {
      "href": "http://localhost:8080/authors?page=0&size=20"
    },
    "profile": {
      "href": "http://localhost:8080/profile/authors"
    }
  },
  "page": {
    "size": 20,
    "totalElements": 3,
    "totalPages": 1,
    "number": 0
  }
}

このように取得したリソースやトータルの件数などが返却されていることがわかります。このレスポンスは、HATEOAS(Hypermedia as the Engine of Application State)の原則に従っています。

ページング・ソート

また、一覧を取得するエンドポイントでは、クエリパラメータにpagesizeを指定することでページングを実現したり、sortというパラメータに{param名},{asc/desc}という形で指定することでソートを実現できます。

例えば以下のようなリクエストを行うことができます。

除外項目の設定

例えばAuthorのpasswordはAPIの返却項目としたくない場合は多いでしょう。APIのレスポンス項目に含めたくないプロパティには@JsonIgnoreというアノテーションを付けることで返却しないようにする事ができます。

@Data
@Entity
public class Author {
    @Id
    @GeneratedValue(strategy = GenerationType.AUTO)
    private Long id;
    private String firstName;
    private String lastName;
    @JsonIgnore
    private String password;
    @CreatedDate
    @JsonIgnore
    private LocalDate createdAt;
    @LastModifiedDate
    @JsonIgnore
    private LocalDate updatedAt;

    @OneToMany(cascade = CascadeType.ALL)
    @JoinColumn(name = "author_id")
    private List<Post> posts = new ArrayList<>();
}

このように@JsonIgnoreをつけることで返却項目から除外することができます。実際にこの状態で呼んでみるとpasswordなどが返却されないようになります。

{
  "_embedded": {
    "authors": [
      {
        "firstName": "John",
        "lastName": "Doe",
        "_links": {
          "self": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/1"
          },
          "author": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/1"
          },
          "posts": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/1/posts"
          }
        }
      },
      {
        "firstName": "Jane",
        "lastName": "Smith",
        "_links": {
          "self": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/2"
          },
          "author": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/2"
          },
          "posts": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/2/posts"
          }
        }
      },
      {
        "firstName": "Alice",
        "lastName": "Johnson",
        "_links": {
          "self": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/3"
          },
          "author": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/3"
          },
          "posts": {
            "href": "http://localhost:8080/authors/3/posts"
          }
        }
      }
    ]
  },
  "_links": {
    "self": {
      "href": "http://localhost:8080/authors?page=0&size=20"
    },
    "profile": {
      "href": "http://localhost:8080/profile/authors"
    }
  },
  "page": {
    "size": 20,
    "totalElements": 3,
    "totalPages": 1,
    "number": 0
  }
}

エンドポイントのカスタマイズ

公開しないエンドポイントの設定

例えば、論理削除する設計のため、deleteのエンドポイントを作らないという場合、物理削除するDELETEエンドポイントは公開したくありません。このように公開したくないエンドポイントに対しては@RestResourceというアノテーションを利用して設定します。

public interface AuthorRepository extends JpaRepository<Author, Long> {
    @Override
    @RestResource(exported = false)
    void deleteById(Long id);
}

Repositoryのメソッドベースでエンドポイントを自動で実装してくれるというライブラリですので、対応するメソッドに対してアノテーションを設定することで公開しないようにすることができます。
また、Repository全体の公開を設定することや、デフォルトの公開設定を設定することもできます。

クエリメソッドのエンドポイントの実装

JPAにはメソッド名や@Queryというアノテーションによって、細かくクエリの内容を制御する機能があります。そして、Spring Data RESTもこの機能に対応しています。

例えば、Postのタイトルに特定の文字列が含まれているものだけを抽出するというクエリを実装する場合は以下のようにクエリメソッドを設定します。

public interface PostRepository extends JpaRepository<Post, Long> {
    public List<Post> findByTitleContaining(String word);
}

Spring Data RESTはこの内容をエンドポイントとして公開します。具体的には以下のようなエンドポイントが生えてきます。

エンドポイント HTTPメソッド 必須パラメータ 概要
/posts/search/findByTitleContaining GET word タイトルに特定の文字列が含まれている投稿を検索するエンドポイント

このようにして具体的なエンドポイントを設定することができます。

その他の機能について

Repositoryクラスの公開設定について

デフォルトの公開設定は、RepositoryRestConfigurationで設定を行う方法が公式リファレンスでは提示されていますが、Spring Bootを利用している場合は、application.propertiesでも設定可能です。

spring.data.rest.detection-strategy=ANNOTATED

公開戦略は以下の4種類から選択することができます。

公開戦略 説明
ALL Javaの可視性やアノテーションの構成に関係なく、すべてのSpring Dataリポジトリを公開します。
DEFAULT パブリックSpring Dataリポジトリ、または@RepositoryRestResourceとそのexported属性がfalseに設定されていないことで明示的にアノテーションが付けられたリポジトリを公開します。
VISIBILITY アノテーションの構成に関係なく、パブリックSpring Dataリポジトリのみを公開します。
ANNOTATED @RepositoryRestResourceで明示的にアノテーションが付けられたSpring Dataリポジトリと、falseに設定されていないそのexported属性のみを公開します。

各メソッドの公開設定について

各メソッドの公開設定は@RestResourceのexportedによって制御できますが、最もRepositoryの公開が狭いANNOTATEDでも、「falseに設定されていないそのexported属性のみを公開します。」となっており、Repositoryを公開する時点で基本的には公開されてしまいます。
例えば、

public interface AuthorRepository extends JpaRepository<Author, Long> {
}

としたとき、JpaRepositoryなどから継承されるsavefindByIdなど各種メソッドによってCRUD操作の全てが基本的には公開されてしまいます。

基本的には非公開にして一部だけ公開したいというユースケースが大半の場合、いちいち全てのメソッドにexported=falseを設定していくのはかなり煩雑になるため、Defaultが全て非公開になっているRepositoryインターフェースを作成するのが良いのではないかと思います。

package com.example.demo.repository;

import java.io.Serializable;
import java.util.List;

import org.springframework.data.domain.Page;
import org.springframework.data.domain.Pageable;
import org.springframework.data.repository.NoRepositoryBean;
import org.springframework.data.repository.Repository;
import org.springframework.data.rest.core.annotation.RepositoryRestResource;
import org.springframework.data.rest.core.annotation.RestResource;

@RepositoryRestResource
@NoRepositoryBean
public interface DefaultFalseRepository<T, ID extends Serializable> extends Repository<T, ID> {
    @RestResource(exported = false)
    <S extends T> List<S> findAll();

    @RestResource(exported = false)
    <S extends T> Page<S> findAll(Pageable p);

    @RestResource(exported = false)
    <S extends T> S findById(ID id);

    @RestResource(exported = false)
    <S extends T> S save(S s);

    void deleteById(ID id);
}

このようにカスタムでRepositoryを用意してこれを継承する形にするのがいいと今のところ考えています。

公式リファレンス

利用頻度の多そうな内容を抜粋してリンクを置いておきます。

6
2
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
6
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?