#はじめに
この記事は、進捗管理を完全に理解して、なにもわからなくなった時に、スコシワカルための道しるべです。
まだ完全に理解できていない方は、やさしい進捗管理から読まれることをオススメします。
やさしい進捗管理では、記事の中で明記している訳では無かったのですが、基本的に自分自身1人分の進捗を管理する位置付けで書いたものでした。
今回は、複数人の進捗管理を扱います。
チームリーダーやプロジェクトマネジメントに興味があったり、スキルを身に付けたい方、もっとうまくチームメンバとして成果をあげたい方にとって参考になるかと思います。
#管理するムズカシさの違い
進捗管理する対象が自分1人だけだった時と比べ複数人になると、1人の時に必要なことに加えて以下のような事柄にも気を配る必要が出てきます。
- 同じ情報が届き、理解されているか
- 作業が重複していないか、モレが無いか
- 誰がやるか明確か
- 分担に偏りがないか
- 受け渡すタイミングと方法
- 個々人の進捗と全体の進捗
また、複数人が関わるということは、それだけ扱う規模(作業の総量)も大きくなるということなので、計画したペースをどうやって維持するか、計画した時の見込みとのズレにどうやって気づくかなど、考慮すべきことは様々あるのですが、今回はスコシに留めるため上記の6点を見ていきましょう。
以降は、1つのことに取り組む複数人を、ひとまとめの単位としてチームと表現します。
また、取り組む対象を、便宜上プロジェクトと表現します。
#スコシワカルための6つのポイント
##①同じ情報が届き、理解されているか
チームメンバそれぞれの、向かう方向がバラバラだと、チームとして目的地に辿りつけません。
目的地に辿りつくためには、目的地を全員が知り、理解していることが重要です。
仮に、現在地が東京で、目的地が屋久島だったとします。
目的地を聞かれて、答えられないのなら、それは情報が届いていない状態です。
目的地を聞かれて「屋久島」と答えられるが、どこにあるのか分からないのが、知っているけど理解していない状態です。
理解していないと、どれくらい大変で、どれくらいのお金や時間がかかって、どんな工程や作業が必要かを考える際に、的外れになります。
これは自分1人だけの時にも重要ですが、自分が理解しているかどうかはまだ分かりやすいと思います。
自分以外の他者が理解できているかは、何らかの形で確認しないと分かりません。
「資料を作ったから大丈夫」や「1度説明したから大丈夫」のように考えていませんか?
最重要な点として外すことの出来ない「目的地(ゴール)」を例に挙げましたが、この「同じ情報が届き、理解されているか」は、ゴールに至るまでの全ての情報に対して言えることです。
<確認方法の参考>
キックオフミーティング、進捗定例、デイリースタンドアップ、朝会、夕会、1on1
##②作業が重複していないか、モレが無いか
アイデア出しやダブルチェックなど、完全に同じ作業を複数のチームメンバがやることも中にはあるかと思いますが、プロジェクトとしての作業の多くは分担して実施するはずです。
また、ゴールに至るまでの手段・方法は、複数あることがほとんどだと思います。
なのでまずは、どんな作業をやろうと考えているのかをチームメンバ間で分かるようにしないと、重複やモレが発生する可能性が高くなります。
重複が発生すると、本来1人だけの時間を使うはずが、余計な時間を使っていることになるので、ペース配分が乱れ、遅れる原因につながります。
モレが発生すると、最悪の場合プロジェクトが完了しないこともあり危険です。
モレがあることが発覚する度に、その分の遅れが発生し、他作業のインプットにしないといけなかったことが後から発覚すると既に実施した作業をやり直すことになるかも知れません。
やり直しが発生すると大きな手戻りとなり、何度もやり直しが発生すると終わりが見えなくなるので、炎上プロジェクトやデスマーチと表現されることに繋がってしまいます。
<手法の参考>
WBS、MECE、ロジックツリー、要件定義
##③誰がやるか明確か
作業の洗い出しが終わると、作業が開始可能になりますが、全ての作業に対して誰がやるかを初期段階では決め切れないことがほとんどだと思います。
エンジニア、デザイナーなど、特定の職種でないと出来ない作業は、ある程度この職種がやるだろうと目星はつくでしょうが、誰がやっても良い作業はお見合いになる(誰かがやってくれるだろうと考えたり、誰かが取るまで待つ)ことが往々にして起こります。
作業をアサインする(割り振る)権限を持っている人が明確に居る場合は、その人がしっかり「このタスクは○○さんお願いします」のように、作業担当を明確にしていくことが必要です。
作業割り振り者が明確に居ない場合においては、各作業をいつまでにやり終えたいかの仮の期限(目標)をチームで決めることで、どの順番にやることが望ましいかの優先順位が付けられるので、手が空いた人は次の優先作業を取るというようなルールを設けられるようになり、スムーズにいくことが多いです。
ここでは「いつまでにやり終えたいか」という希望・意思が重要なポイントです。
いつまでに終わらせなければいけないか、というチーム以外の第三者視点で考えてしまうと、明確な期限が無いものは全ていつやっても良いとなってしまい、結局優先順位が決められないことになります。
「自発性に任せたい」と、チームメンバの意思を尊重する姿勢は良いのですが、最低限のルールが無い状態だと、ただの丸投げになってしまうので要注意です。
<関連するキーワード>
スクラム、カンバン、アイゼンハワー・マトリクス、チケット管理
※これらは万能薬では無く、ただの道具です。
何に役立つのか、メリットデメリットを理解した上で使わないと意味がありません。
また、良い効果を得られなかった場合においても、道具が悪いのでは無く
選んだあなたと使い方に問題があります。
使い始めた場合、すぐ辞めるのは得策ではありません、熟練度によって効果が変わるからです。
##④分担に偏りがないか
時間は有限です。1人当たりが使える時間も有限で、事情によって多い少ないはあることでしょう。
決められた業務時間内において、ある人が10時間働いて、別の人が5時間しか働いていないのであれば、もしかすると何らかの偏りが発生しているかも知れません。
必ずしも全ての作業が分割可能ではないのも、分かります。
短期間だけ見るとアンバランスだと感じた状態が、1ヶ月の間でみるとバランスがとれていることもあるでしょう。
職種によっても繁忙期が分かれることもあります。
企画内容が定まらないと、制作が動けないこともあるでしょう。
より重要なのは、チームとして偏りを分かった上で許容するのであれば良く、偏らせたい意図が無いのに結果的に偏っている状態があるとマズイということです。
常に偏っているかどうかが判別可能な状態にすることです。
予定に対して実際は、常に違いが出ることが多いため、計測可能・把握可能な状態にしましょう。
<関連するキーワード>
ボトルネック、クリティカルパス、予実管理
##⑤受け渡すタイミングと方法
インタフェースを決めることは、分担において凄く重要です。
スマートフォンはデジタルデトックスを意識している人以外は、毎日触っていると思いますが、アプリやブラウザのUI(ユーザーインタフェース)という言葉は、有り触れた言葉で、人間からコンピューターデバイスへ仕事を委譲(分担)する接続点になっています。
人と人との仕事の分担においても、誰かのアウトプットは、誰かのインプットになることが多いでしょう。
人と人との仕事の分担とスマホアプリのUIとの大きな違いは、事前の取り決めの有無です。
スマホアプリのUIは、言わなくても分かるか、親切なチュートリアルが用意されていることが多いですが、人と人との仕事の分担では、常に同じ人同士が同じ仕事をすることの方が少ないため、その都度ルールや期待していることを明確にする必要があります。
「コミュニケーションがうまくいかなかった」と表現される場合、原因をしっかり深掘ることで、「今後注意します」のような精神論では無く、仕組み(システム)として改善が可能になります。
<関連するキーワード>
振り返り、システム思考
##⑥個々人の進捗と全体の進捗
チーム全員が同時に作業が終わることは無いので、個々人の進捗にはバラツキがあるはずです。
プロジェクトが大きくなってくると、ここまで終わっていないと次に進めないというような、工程やフェーズの区切りを設けていることもあると思います。
1つの機能の開発を分担している場合、結合が終わらないとリリースが出来ないことにもなります。
全体の進捗をみる際、個々人の進捗を平均してしまうと、問題に気づくのが遅れるので要注意です。
待ちが発生してしまう箇所には、チームメンバの手が空いた時の作業も計画できているとより良いです。
進め方を1本道だけにせず、並列で進められるところは柔軟にアサインできると全体の進捗が安定します。
また、進捗がどこまで進んでいるかを表現する際に、事前にチームとして分量や計測方法を定義せず担当者がそれぞれで「進捗50%です」のように割合だけ報告するようなことがあると要注意です。
進捗が80%や90%までは順調にいっていたのに、突然進まなくなるといったことが起こるのは、これまでの進捗を正確に測っていなかったからに他なりません。
<関連するキーワード>
レビュー、ガントチャート、マイルストーン、ボトルネック、クリティカルパス
#おわりに
関わる人数が多くなるほど、複雑度が高くなるほど、進捗管理の難易度は上がっていきます。
ここに挙げた6つのポイントを常に意識されている方は、もうチームリーダーとして十分に活躍できる下地が整っていると自信を持って頂いて大丈夫だと思います。
後は、参考手法や関連キーワードの習熟度を上げていき、必要な時にいつでも使える選択肢として持っておくことが出来ると、様々な規模に対応できてくると思います。
関連キーワードの一部は、プロジェクトマネジメントの勘所〜補講編〜でも紹介していますので、更に学習を進めたい方はご参考ください。