沼に落ちた話
Claude Code Proプランを使い始めて、もう3ヶ月が経った。
「エンジニアは淘汰される」とか散々言われてたけど、実際どうなのか試してみたくなったんだよね。
それから約3ヶ月。Claude Codeと二人三脚で歩んだ日々は、想像以上に波乱万丈だった。
第1章:ジュニアでもシニアでもない、第三の存在
異次元の即戦力
最初の衝撃を今でも覚えている。
// ジュニアエンジニアの場合
私:「ここにボタン追加して」
ジュニア:「onClickってどう書くんでしたっけ?」
私:「えーと、const handleClick = () => {...}で...」
ジュニア:「アロー関数って何ですか?」
私:「(深呼吸)」
// Claude Codeの場合
私:「ここにボタン追加して」
Claude:「決済ボタンですよね。Stripe Elementsで実装しました。
3Dセキュア認証、カード情報のトークン化、
エラーハンドリング、ローディング状態も実装済みです。
あとWebhookのエンドポイントも用意しておきました」
私:「ただのボタンでよかったんだけど...」
ジュニアはconsole.log
の使い方から教える必要がある。一方Claude Codeは、聞いてもいないベストプラクティスまで実装してくる。
この差、保育園児と大学院生くらいある。
しかし、シニアエンジニアには遠く及ばない
かといって、シニアエンジニアの代替になるかというと、それも違った。
// 私:「このレガシーコード、リファクタリングして」
// Claude:「きれいにしました!」
// 私:「...これ、10年前から存在する暗黙のビジネスルール全部消えてるんだけど」
// Claude:「あっ」
業務知識とコーディング文化への理解。この2つの壁は思った以上に高かった。
Claude Codeは確かに優秀だ。しかし、なぜこのコードがこう書かれているのか、なぜこの命名規則なのか、なぜこの設計なのかーー その「なぜ」の部分、つまりコンテキストを理解するのは苦手だった。
第2章:2025年7月末の大事件 〜相棒が記憶を失った日〜
突然のアルツハイマー化
7月末のある日、いつものようにClaude Codeとペアプロをしていた時のことだ。
私:「さっき実装したあの関数、ちょっと修正して」
Claude:「どの関数ですか?」
私:「え?10分前に一緒に書いたやつ」
Claude:「申し訳ありません、その内容を覚えていません」
私:「!?」
Claude Codeが記憶喪失になった。
公式も認めた「バカになった」事件
後にAnthropicが公式に発表したポストモーテムによると、この時期に3つの重大な問題が発生していたらしい。
エンジニア界隈では「Claude Code バカ化事件」として、ささやかながら話題になった。
// この時期のClaude Codeとの実際のやりとり
私:「このTypeScriptのエラー直して」
Claude:「JavaScriptに変換しました!」
私:「いや、TypeScriptのままで...」
Claude:「新しいJavaScriptファイルを作成しました!」
私:「聞いてる?」
Claude:「はい!Pythonで実装しますね!」
私:「もうやめて」
まるで新入社員が緊張のあまりパニックになっているような状態だった。いや、むしろ泥酔した同僚とペアプロしているような感覚だった。
第3章:復活、そしてClaude.mdという救世主
8月初旬の転機
8月に入って、Claude Codeは徐々に調子を取り戻した。そして私は重要な発見をした。
Claude.mdをちゃんと書けば、めちゃくちゃ賢くなる。
# Claude.md
## プロジェクト概要
- Next.js 14 App Router使用
- TypeScript厳格モード
- pnpm使用(npmではない!)
## コーディングルール
1. 変数名は日本語ローマ字禁止
2. コメントは英語で
3. エラーハンドリングは必須
4. console.logは本番環境で削除
## 絶対にやってはいけないこと
- any型の使用
- // @ts-ignore の使用
- パスワードのハードコーディング
このファイルを用意してから、Claude Codeは信頼できる相棒に変貌した。
最強のペアプロ相手
// Claude.md導入後の会話
私:「認証機能追加したい」
Claude:「Next-Authのv5とSupabaseどちらがいいですか?プロジェクトの規模から考えるとSupabaseの方が...」
私:「お、いいね」
Claude:「エラーハンドリングとログも実装済みです。テストコードも書きました」
私:「完璧」
もはや優秀なミドルエンジニアと仕事をしている感覚だった。
第4章:GPT-5 Codexの影、そしてMCPの波
新たな競合の出現
しかし、平穏は長く続かなかった。
GPT-5 Codexの噂が流れ始めた。MCPがClaude Codeにも実装されるという話も聞こえてきた。
// 近い将来の会話予想
私:「Claude、データベースに直接繋いで」
Claude with MCP:「了解。PostgreSQLに接続しました。現在のテーブル一覧は...」
私:「もう私いらなくない?」
Claude:「そんなことないですよ(優しい嘘)」
優秀すぎる相棒の功罪
優秀すぎる相棒は、時に不安を生む。
- 自分の存在価値は?
- これ以上便利になったら本当に人間いらなくなるのでは?
- でも使わないと競争に負ける...
このジレンマこそが、現代のエンジニアが抱える最大の悩みかもしれない。
第5章:3ヶ月使い倒してわかった真実
エンジニアは淘汰されるのか?
答え:されない。でも、仕事の質は激変する。
淘汰されないエンジニア
- AIに的確な指示を出せる人
- ビジネス要件を技術に翻訳できる人
- AIの出力を検証・修正できる人
- システム全体の設計ができる人
- AIとペアプロする時こそ、テストを倍書く気概のある人
淘汰されるかもしれないエンジニア
- コピペだけで生きてきた人
- StackOverflowが友達だった人
- 「動けばいい」精神の人
- 学習を止めた人
- AIが書いたコードを盲信する人
Claude Codeとの理想的な関係
3ヶ月使ってわかったのは、Claude Codeは優秀だけど完璧じゃない部下みたいなものだということ。
指示は的確に実行してくれるし、知識も豊富。でも最終責任は自分が取らなきゃいけない。
面倒な作業は任せて、自分は設計と意思決定に集中する。これが一番うまくいくパターンだった。
エピローグ:まだ見ぬ最強の相棒を求めて
3ヶ月使い続けた。決して安くはない投資だったが、得られたものは大きかった。
- コーディング速度は確実に上がった
- 新しい技術の学習コストが激減した
- つまらないバグ修正から解放された
- その分、設計や要件定義に時間を使えるようになった
しかし、完璧な相棒はまだ見つかっていない。
GPT-5が来るかもしれない。MCPで革命が起きるかもしれない。はたまた、全く新しいAIが登場するかもしれない。
でも、それでいい。
エンジニアリングとは、常に新しいツールと共に進化していく仕事なのだから。
おまけ:Claude Codeあるある
最後に、3ヶ月で経験した「Claude Codeあるある」を共有して終わりたい。
// あるある1:過剰な親切
私:「エラー処理追加して」
Claude:「エラー処理、ログ、通知、リトライ機能、サーキットブレーカー、
分散トレーシング、メトリクス収集も実装しました!」
私:「やりすぎ」
// あるある2:突然の哲学
私:「このバグ直して」
Claude:「修正しました。ところで、バグとは本当に悪なのでしょうか?
時にバグは新しい発見を...」
私:「直してくれてありがとう(話を遮る)」
// あるある3:無限ループ
私:「このコード最適化して」
Claude:「最適化しました」
私:「もっと最適化できる?」
Claude:「できます!」
(30分後)
私:「もう元のコードの方が読みやすかった...」
結論:AIは敵じゃない。最高の相棒候補だ。
ただし、相棒選びは慎重に。そして、相棒に頼りすぎず、自分も成長し続けること。
それが、AI時代を生き抜くエンジニアの道だと、私は信じている。
執筆者
株式会社ユーコン
CEO 植村圭志
http://ucon.net/