はじめに
Oracle Analytics Server(OAS)は、Oracle Analytics Cloud(OAC)とほぼ同等の機能を提供する総合的なアナリティクス・スイートです。
OACとの違いは、オンプレミス用のソフトウェアであるということです。
ソフトウェアの構成を顧客が管理するのと引き換えに、オラクル管理であるOACでは不可能な一部のカスタマイズが可能になります。
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)では、IaaS環境を提供していますので、OASもそこで動作可能なのです。
マーケットプレイスという仕組みを使用すればOCIのIaaS環境へのデプロイが簡単にできるという利点があります。
構成
今回想定しているのは、同一のプライベート・サブネットにDatabase CloudのインスタンスとOASのコンピュート・インスタンスを作成する極めてシンプルなものです。
Database Cloudには、OASの管理情報が格納されます。
使用するユーザ
ユーザ | 目的 | どこで管理するか |
---|---|---|
OCIセキュリティ管理者 | ユーザ、グループ、ポリシー、コンパートメントの作成・管理 | OCI管理コンソール |
OASインスタンス管理者 | マーケットプレイスからOASインスタンスをデプロイ・管理 | OCI管理コンソール |
DBインスタンス管理者 | OASが管理用途で使用するDBインスタンスのデプロイ・管理、OASインスタンス管理者と共通でも可 | OCI管理コンソール |
1. 管理用のユーザの作成
OCIセキュリティ管理者として、OCI管理コンソールにログインします。
アイデンティディ・ドメインに必要なユーザを作成します。
グループも作成し、ユーザをマップします。
今回の例では、「OAS_Admins」というグループをOASインスタンス管理者グループとして使用します。
2. ポリシーの設定
アイデンティティの「ポリシー」に移動します。
ルートコンパートメントで「ポリシーの作成」をクリックします。
任意の名前を入力します。
「手動エディタの表示」をオンにして、ポリシーを設定します。
allow group OAS_Admins to read compartments in tenancy
allow group OAS_Admins to manage instance-family in compartment demo
allow group OAS_Admins to use virtual-network-family in compartment demo
allow group OAS_Admins to manage orm-family in compartment demo
「作成」をクリックしてポリシーを作成します。
3. PDBの接続文字列の取得
DBインスタンス管理者として、OCI管理コンソールにログインします。
作成済みのDBシステムの「データベース詳細」画面に移動します。
まだ作成していない場合は、ここで作成します。
プラガブル・データベースの接続文字列を確認しメモします。
4. マーケットプレイスでAnalytics Serverをデプロイ
OASインスタンス管理者として、OCI管理コンソールにログインします。
4.1 スタックの起動
マーケットプレイスの「すべてのアプリケーション」をクリックします。
「Analytics Server」で検索します。
課金タイプに合わせて、BYOLかUCMを選択します。ここではUCMを選択したものとします。
バージョン、コンパートメントを選び「スタックの起動」をクリックします。
この記事を書いている時点の最新版である「OAS 2022 (6.4)」を選択しました。
4.2 スタックの作成
名前と説明を入力して「次」をクリックします。
コンピュート・インスタンスの設定値を入力し、下にスクロールします。
ネットワークの情報を入力し、下にスクロールします。
作成するドメインの構成情報を入力し、「次」をクリックします。
「Analytics Administrator Username」は、WebLogicコンソールにログインする管理者であり、OASの最初の管理者でもあります。
DBの接続文字列は、書式に注意してください。(「ホスト名:ポート番号:サービス名」です)
Database Schema Prefixは、RCUによって作成されるスキーマの接頭辞です。
ここまでの内容を確認し「作成」をクリックします。
4.3 スタック・ジョブの実行
ジョブの実行にはそれほど時間はかかりません。
完了後、ジョブ・リソースで作成したリソースが確認できます。
同様に、出力でコンピュート・インスタンスに割り当てられたプライベートIPが確認できます。
4.4 ログの確認
OASのコンピュートインスタンスにログインして、ログを確認できます。
確認するべきログファイル
- /var/log/oas_cloudinit.log
- /var/log/oas_create_domain.log
ドメインの作成が完了するまでに、30分くらいかかります。
最終的に oas_create_domain.log には、このような情報が出力されました。
[CONFIG] SUCCESS:Collect logs
Configuration:Oracle_Analytics_Configuration completed successfully
The configuration of Oracle Distribution completed successfully.
また、
/u01/app/oas-scripts/oas_install.finish
という長さ0のファイルが出力されます。
4.5 追加のライブラリをインストール
OASのコンピュート・インスタンスにopcユーザでログインし、次のコマンドを実行します。
sudo yum install -y libgfortran
これで完了です。
5. Analytics Serverにログインして動作確認
実際にログインして動作を確認してみます。
5.1 主要なポート番号
WebLogic Serverコンポーネント | デフォルトポート |
---|---|
管理サーバ (http) | 9500 |
管理サーバ (https) | 9501 |
管理対象サーバ bi_server1 (http) | 9502 |
管理対象サーバ bi_server1 (https) | 9503 |
参考情報
5.2 ログインしてみる
6. Analytics Serverの起動と停止
ブラウザ上からAnalytics Serverのサービスを起動・停止することはできません。
コンピュート・インスタンスにログインしたあとoracleユーザにスイッチし、スクリプトで起動・停止します。
スクリプトの場所:/u01/data/domain/bi/bitools/bin
スクリプト | 機能 |
---|---|
start.sh | OASコンポーネントの起動 |
stop.sh | OASコンポーネントの停止 |
status.sh | OASコンポーネントのステータス確認 |
7. 削除
OASインスタンス管理者としてOCI管理コンソールにログインします。
「開発者サービス」の「スタック」をクリックします。
Analytics Serverを作成したときのスタックをクリックします。
「破棄」ボタンをクリックします。
確認画面が表示されるので、「破棄」ボタンをクリックします。
しばらく待ちます。
破棄が成功したら、スタック自体を削除します。
8. ドキュメント
公式ドキュメントです。