はじめに
先日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスで開催された AWS re:Invent に行ってきました。昨年に続き、2度目の参加です。
この記事では、現地で感じたことや学んだことを、ひとりの参加者としてまとめます。
内容はあくまで個人の見解であり、所属組織を代表するものではありませんが、海外カンファレンスに興味がある方の参考になればうれしいです。
日本国内にも魅力的なカンファレンスが多くあり、そこで得られる学びもかけがえのないものです。
そのうえで今回は、普段とは異なる異国の環境で参加したカンファレンスから得られた気づきに焦点を当ててお話ししていきます。
空気を味わうという体験
世界中からエンジニアが集まる場に身を置くと、まず感じるのは温度の違いです。
ランチの席で、隣の人から出身国や仕事の内容を自然に聞かれたり、列で何気なく話した相手が、実は有名プロダクトの中心メンバーだったりすることもあります。
特別なアクションを起こさなくても、周囲の熱量に巻き込まれていく感覚がある。
その空気にさらされるだけでも、自分の中のモチベーションがじわっと上がっていくのを感じました。
スライドに載らない話に価値がある
大きなイベントでは、発表資料や録画が後日公開されることが多いです。
それでも現地に足を運ぶ意味があると感じたのは、資料にならない部分にこそ濃い情報が詰まっているからです。
たとえばAWS re:Inventで言うと発表者と参加者がさながら大学の講義のようにインタラクティブにやりとりするChalk Talkでは、公開されるスライドは全てではありません。
会場での説明や参加者とのやりとり、セッション後、講師に直接質問した時の会話などは、その場にいないと得られません。
スライドの間にある補足などは、テキストに落とされる前に消えてしまうことが多い情報です。
自分の目と耳でそれを拾いにいけるのは、現地参加ならではの価値だと感じました。
技術そのものより、考え方を持ち帰る
自分のチームになんの味付けもせずそのまま流用できるような全く同じ構成やユースケースが紹介されることは、正直あまり多くありません。
規模・要件、文化も違うので、丸ごと真似をしても上手くいかないことがほとんどです。
それでも行く意味があるのは、技術そのもの以上に、考え方を持ち帰れるからです。
なぜ、どういう経緯で、その技術を選んだのか?解決された問題は何か?
こういった判断の軸は、自分の現場でも応用できます。
海外と国内の違いを意識しつつ、その思想を自分の環境にあわせて翻訳していくところに、海外カンファレンスならではの学びがあると感じました。
プレッシャーに押されすぎない
海外出張はコストも時間も大きく、会社から見ても決して軽い投資ではありません。
そのぶん、業務に直結する学びを持ち帰らなければというプレッシャーも強くなります。
この意識自体は当然大事ですが、そこに寄せすぎると、視野が狭くなってしまうところもあると思っています。
自分は、業務で活かしたいテーマのセッションに加えて、純粋に興味がある分野にも時間を割くようにしました。
一見すると仕事と直接関係なさそうな内容でも、考え方の引き出しを増やしてくれたり、業務内の別の場面で思わぬ形でつながる経験が実際にあったからです。
すべてを短期的な還元だけで測らず、ある程度の余白を持たせておくことも、結果的には組織への大きなリターンにつながっていると感じています。
英語が不安でも、とりあえず飛び込んでみる
海外カンファレンスと聞いて、多くの方が最初に不安に感じるのは英語かもしれません。
自分も細かいニュアンスまで自在に話したり聞き取れるとは決して言えません。
そんな中でも完璧な文法を目指すより、知っている語彙を組み合わせて、まずは口を動かす。わからないところは聞き返す。これだけでも現地での動きやすさは全く違うものになるでしょう。
今はAIの急速な発達により翻訳ツールもかなり実用レベルになっているので、困ったときは頼れば良いと考えています。言葉の正確さよりも、理解したい、伝えたいという姿勢の方が重要だと感じました。
英語への不安だけを理由に、せっかくのチャンスを見送ってしまうのはもったいないと強く感じたのが率直な実感です。
おわりに
海外カンファレンスで得られるものの多くは、資料やアーカイブ動画には残りません。
会場の熱量や、ふとした立ち話、登壇者の生の声といった部分にヒントがたくさん落ちています。
もし参加できる機会が巡ってきたとき、迷いがあっても一度は前向きに検討してみてほしいです。
そこで受けた刺激は、仕事の進め方にも、キャリアの選択にも、きっと何かしらの形で返ってくるはずです。