本記事は、IBMが後援をしました、株式会社MONO-X主催のセミナー、 ”製造業・物流業向け 基幹システム × API 連携セミナー ~生成AI連携から受発注効率化・在庫最適化まで 事例・ユースケースのご紹介~” の要約記事となります。当日のセミナーのアーカイブに関しましては株式会社MONO-XのWebページからご覧いただけます。
目次
- APIとは
- 基幹システムにおけるAPI連携の活用パターン
- 基幹システムにおけるAPI連携を実現する二つの方法
- APIを安全に外部公開する
- まとめ
APIとは
API (Application Programming Interface) は、異なるソフトウェアやシステム間でデータを連携させるためのインターフェースです。APIを利用することでシステムが持つ機能やデータに対して外部のプログラムからアクセスができるようになります。
Webアプリケーションやクラウドサービスにおけるデータ連携手法として広く普及していたAPIですが、近年では基幹システムとWebアプリケーション等との連携においても利用されるようになってきました。
当セミナーでは、APIの中でも最も標準的な仕様である、REST APIを用いた基幹システム連携についての解説を行いました。
基幹システムにおけるAPI連携の活用パターン
1. 基幹ロジック活用
基幹システム上で構築している業務処理のロジックをWebアプリケーション等からAPI経由で呼び出す際に利用されます。既に構築済みのロジックをWebアプリケーションから利用できるため、Webアプリケーションの開発の簡素化や負荷の軽減が期待できます。また、Webアプリケーション側の技術者と基幹ロジックを作成する技術者を分離して専任化させることで、効率的な技術者育成を行うこともできるようになります。
活用例) 基幹システム上に構築されている納期計算ロジックに対して、WebアプリケーションからAPI経由で顧客ID、製品ID、発注日等を入力すると、基幹システム側でロジックに沿った処理が行われて納品日の情報が出力される。
2. 基幹データ取込
基幹システムで抱えているデータを外部のシステムやサービスにおいて活用したい場合に利用されます。ビジネスを行う上で価値のあるデータは基幹システム上にあることが多く、それらのデータに対して他のシステムからアクセスできるようになります。
活用例) 生成AIから基幹システム上の売り上げデータに対してAPI経由でアクセスを行い、取得した情報をもとに売れ筋製品のバナーを自動で生成する。
3. 取引先間API連携
昨今、受発注を API で行う企業も増えてきています。特に欧米の製造業を中心に、取引先に対してAPIを準備する企業が増えており、とりわけ半導体の受発注において、APIの採用が増えています。日本の製造業のお客様でも、半導体を仕入れている企業様では、基幹システムから直接半導体メーカーのAPIを実行する仕組みを作られる企業様も出てきています。その他、欧米メーカーの精密機械のパーツを仕入れるために、API連携に対応する企業も増えてきています。現在、欧米メーカー主導で進む企業間の基幹システム連携化の波は、今後、日本でも到来すると考えています。
このように、様々な形でAPI連携は増えてきていますが、基幹システムでは多くの場合、データがAPIで呼び出せる状態にはなっていません。 当セミナーでは、基幹システムにおけるAPI連携を実現するための方法としまして次の二つをご紹介しました。
基幹システムにおけるAPI連携を実現する二つの方法
1. 基幹システムをAPIサーバー化/APIクライアント化する
APIには、データや機能を提供するAPIサーバーと、それを利用するAPIクライアントの二つの立場があります。基幹システム上でAPIサーバー、APIクライアントそれぞれの機能を構築するシステムを導入することで、基幹システムでのAPI利用を実現することができるようになります。
基幹システムのAPIサーバー化、APIクライアント化を実現するシステムとしては、MONO-X社が提供する”API-Bridge” が挙げられます。
API-Bridgeを用いて基幹システムをAPIサーバー化すると、外部からのリクエストに対してあらかじめ定められた基幹システム上のロジックが実行される仕組みを構築することができます。また、API-Bridgeを用いて基幹システムをAPIクライアント化すると、基幹システムから外部のAPIに対してアクセスを行うことができ、その応答をJSON形式で保存できるようになります。
※ IBM iは、IBMが提供するサーバー上で稼働するOSの一つです。
2. アプリケーション統合基盤を利用する
アプリケーション統合基盤は、社内で利用している様々なアプリケーションを接続してシームレスに連携させるためのプラットフォームです。
アプリケーション統合基盤には、接続されたアプリケーションから入力されたデータを別のデータ形式に変換し、接続されている他のアプリケーションに対して出力する機能が備わっています。そのため、各システム同士の通信はこの基盤を通して行うことで、データ形式やプロトコルの差異を気にせずにデータのやり取りを行うことができるようになります。
アプリケーション統合基盤導入のメリット
- 異なるデータ形式やプロトコルを利用するシステム同士で通信が可能になる
- 重複したデータ管理を防ぎ、データの一貫性を確保できる
- システム同士を疎結合にし、新システムの導入や負荷増大等による拡張を容易にする
アプリケーション統合基盤は、基幹システムで利用されている様々なデータ形式に対応しており、システム同士の円滑な連携を実現できます。また、REST APIとのデータ変換にも対応しているため、基幹システムのデータをREST APIとして公開することができるようになります。
IBMでは、アプリケーション統合基盤として”App Connect Enterprise”を提供しております。
以上、ご紹介しました二つの方法を用いることで、基幹システムのデータをAPI経由でやり取りできるようになります。しかし、取引先などの社外向けにAPIを公開して活用したい場合は、これらのAPIに対して適切なセキュリティー対策を施す必要があります。当セミナーでは、APIの外部公開を前提としたAPI管理の方法についてもご紹介しました。
APIを安全に外部公開する
APIを社外に公開することで、社外からもAPIで公開しているデータやロジックにアクセスすることができるようになります。取引先間でAPIへのアクセスを許可することで在庫情報の連携などをより円滑に行うことができます。しかし、近年ではAPIがサイバー攻撃の踏み台とされることも増えていますので、外部に公開しているAPIは適切に保護する必要があります。
また、セキュリティ対策の他にも、APIの開発保守、APIのユーザー管理といった外部公開をする上で必要な様々な要件を満たす必要があります。
APIを外部公開するための要件
- APIを安全に公開する
- API利用可否や利用量を制御する
- APIの開発・保守を低コストかつ短期間で行う
- APIの利用状況を可視化する
- API利用者向けのガイドを適切に行う
以上のような、APIを外部公開するための要件を企業独自で全て満たすのは困難です。そこで、APIを外部公開する際は、多くの場合、API管理基盤をご利用いただくことになります。API管理基盤は、既存のAPIのプロキシーとなるAPIを作成して、保護、管理するといったAPIライフサイクル全体を包括的にカバーするためにご利用いただく基盤です。
IBMで提供しているAPI管理基盤である、”API Connect”には強力なセキュリティを誇るDataPower Gatewayが採用されており、ユーザーごとの利用認証や流量制御によって基幹システムのAPIを保護することができます。
API利用者向けには、APIの仕様の確認や利用申請を行うことができるWebベースのポータルも用意されており、取引先間でのAPIを利用するユーザーの管理を簡素化できます。
また、アナリティクス機能によってAPIへのアクセス情報を可視化し、分析に役立てることができます。
API管理基盤を用いることで、セキュリティやユーザー管理、流量制御といった、複雑な処理を簡素化し、APIの外部公開を簡単に実現することができます。
まとめ
当セミナーでは、基幹システムでAPIを活用する際のユースケースとその方法について解説しました。
基幹システムでAPIを活用することでWebアプリケーションや外部のサービス、他社とのデータ連携が容易になります。
現在ご利用中の基幹システムでAPIを活用したデータ連携を行うことで、業務の効率化を実現してみてはいかがでしょうか。
当セミナーの録画に関しましては、株式会社MONO-XのWebページからご覧いただけます。本ブログでは扱っていない製品の詳細や事例を交えて解説をしておりますのでぜひご覧ください。
また、当セミナー、API-Bridgeに関するお問い合わせは株式会社MONO-Xまでお願いいたします。
講演者プロフィール
・株式会社MONO-X 下野 皓平 氏
・日本アイ・ビー・エム株式会社 櫻谷 智貴
参考資料
【出版のお知らせ】IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る
今回のセミナーを主催された株式会社MONO-Xの下野氏が執筆された書籍です。基幹システムにIBM iを利用しているユーザー向けに、API連携に関して、様々なユースケースを掲載しています。IBM i ユーザー以外にも、自社で基幹システムを開発・運用される企業様にとっても、参考になる一冊です。
書籍:『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』(出版社:グローヴィス)2024年7月5日