「AIを使ってもっと仕事を楽にしたいけど、プログラミングの環境設定で挫折した…」
そんな経験はありませんか?
AIが実用的なコードを書いてくれる今、プログラミング自体を理解しなくても、その活用の壁は驚くほど低くなっています。まるで、いつでも隣に大ベテランのプログラマーがいてくれるようなものです。
ですが、単純なエクセルのデータ集計や、ちょっとした日々のルーティンワークを自動化したいと思っても、環境構築が壁でつまずいてしまう方は少なくありません。
この記事では、プログラミング初心者や非エンジニアの方でも、迷わずにPythonの実行環境を整えられるよう、代表的な手順を整理し、説明します。
すんなり行って約1時間の道のりです。
この壁を越えれば、あなたもAIと共に業務を効率化する第一歩を踏み出せます。
ステップ1:Pythonをインストールする
まずは、プログラミング言語であるPythonをPCにインストールします。
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公式サイトからインストーラーをダウンロードします。
- Python公式サイトのダウンロードページにアクセスします。
- 特別な理由がなければ、Stable Releases(安定版) の中から最新版の「Download Python X.X.X」ボタンをクリックしてください。64bit版が自動で選択されます。(NotesDBのCOM APIを使うなど、特別な理由がなければ、対応しているライブラリが多い64bit版だけで良いと思います)
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インストーラーを実行し、設定を行います。
- ダウンロードした
.exe
ファイルを開きます。 - 【最重要】 最初の画面の下部にある 「Add python.exe to PATH」に必ずチェックを入れてください。 これを忘れると、後々の設定が非常に面倒になります。
- 次に、「Customize installation」 をクリックします。
- ダウンロードした
-
オプション機能を選択します。
- 次の画面では、すべてのチェックボックスがオンになっていることを確認し、「Next」をクリックします。
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インストール先をカスタマイズします。
- 「Customize install location」の欄に、
C:\Python\PythonXX
と入力します(XXはバージョン番号。例:C:\Python\Python313
)。 - なぜCドライブ直下付近?:PCによってはフォルダ名に日本語(ユーザー名など)が含まれていると、予期せぬエラーの原因になることがあります。これを避けるため、短いシンプルなパスにインストールするのがお勧めです。
- 入力したら「Install」をクリックします。
- 「Customize install location」の欄に、
-
インストールを完了します。
- インストールが完了したら、最後の画面で「Disable path length limit」という表示が出ることがあります。これはWindowsのファイル名文字数制限を解除するもので、管理者権限が必要ですが、クリックしておくと長いファイルパスでのエラーを防げます。
- 「Close」を押して完了です。
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環境変数PathとPyランチャーの確認
- コマンドプロンプトを起動し、以下のコマンドで確認できます。
環境変数Pathの確認:最上段に示されるパスがデフォルト環境
where python
Pyランチャーの確認 :*(アスタリスク)の印がついているものがデフォルト環境
py --list
ステップ2:MS C++ Build Tools をインストールする
次に、Pythonがより高度な処理(特に機械学習系のライブラリなど)を行う際に必要となる部品をインストールします。これを入れておくと、後々のライブラリインストール時のエラーを大幅に減らせます。
- Visual Studio Toolsのダウンロードページにアクセスします。
- 「Build Tools for Visual Studio」の「ダウンロード」ボタンをクリックします。
- ダウンロードしたインストーラーを開き、「C++によるデスクトップ開発」を選択し、右下の「インストール」ボタンをクリックします。
- ※この作業には管理者権限が必要です。
ステップ3:VSCode (Visual Studio Code) をインストールする
VSCodeは、Microsoftが提供する高機能なテキストエディタです。ここで実際にコードを書いたり、AI(Copilot)に指示を出したりします。
- VSCode公式サイトから、お使いのOS版を選んでダウンロードします。
- インストーラーを起動し、ライセンス契約に同意して進みます。
- 「追加タスクの選択」画面で、以下の2つにチェックを入れます。
- エクスプローラーのファイルコンテキストメニューに [Code で開く] アクションを追加する
- エクスプローラーのディレクトリコンテキストメニューに [Code で開く] アクションを追加する
- これらにチェックを入れると、フォルダを右クリックして直接VSCodeで開けるようになり、非常に便利です。
- 「インストール」をクリックし、完了したらVSCodeを起動します。
3-1 VSCodeのプロキシ設定(会社などのネットワーク環境の場合)
ご自宅のインターネット環境では通常不要ですが、会社のセキュリティで保護されたネットワーク内からVSCodeを利用する場合、外部のインターネットへ接続するためにプロキシサーバーの設定が必要になることがあります。
この設定を行わないと、通信絡みの「エラー」が発生し、「思わぬ躓き」となる場合があります。
プロキシは、社内と社外のネットワークの橋渡しのような役目をしており、外部のネットワークとの通信の際に、この設定が正しくないと「通信エラー」を起こします。厄介なことに、プロキシの設定は
- ①Windowsのシステム全体の設定
- ②環境変数
- ③各ソフトの設定ファイル
というように各所に存在し、ソフトによってどれを使うかが異なるという、非常に分かりにくいものです。
「ブラウザではインターネットに繋がっているのに、なぜ通信エラーが起きるの??」ということが起きます。
ソフトによっては設定する場所が見つけにくく、私もこれで半日悩んだことも。。
①正しいプロキシ設定を先ずは確認
Windowsでは、主に「コマンドプロンプト」または「PowerShell」を使用します。
以下の3つの手順のどこかで見つかれば、このプロセスは終了です。優先度の高い順に紹介します。
1. netsh
コマンドを使用する方法
netsh winhttp show proxy
システム全体に設定されているプロキシを確認する最も一般的な方法です。
- コマンドプロンプトまたはPowerShellを起動します。
- 上記のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
-
結果の確認:
-
現在の WinHTTP プロキシ設定:
Direct access (no proxy server).
と表示された場合、プロキシは設定されていません。 - プロキシが設定されている場合は、以下のようにサーバーのアドレスとポート番号が表示されます。
Proxy Server(s): proxy.example.com:8080
-
2. レジストリを照会する方法
reg query "HKCU\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Internet Settings"
ユーザーアカウントに紐づくプロキシ設定を確認します。
- コマンドプロンプトまたはPowerShellを起動します。
- 上記のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
-
結果の確認:
-
ProxyEnable
の値を確認します。0x1
なら有効、0x0
なら無効です。 -
ProxyEnable
が0x1
の場合、ProxyServer
の行に記載されている値がプロキシサーバーのアドレスとポートです。
-
3. 環境変数を表示する方法
echo %HTTP_PROXY%
echo %HTTPS_PROXY%
一部のアプリケーションは環境変数を使ってプロキシを認識します。
- コマンドプロンプトまたはPowerShellを起動します。
- 上記のコマンドをそれぞれ入力し、Enterキーを押します。
-
結果の確認:
- プロキシが設定されていれば、そのアドレスが表示されます。何も表示されなければ、環境変数は設定されていません。
②正しいプロキシ設定をVSCodeに設定する
-
VSCodeを開き、設定画面を開きます。
- 画面左下の 歯車アイコン をクリックし、表示されたメニューから 「設定」 を選択します。
- または、キーボードショートカット
Ctrl + ,
(カンマ)でも開けます。
-
プロキシ設定を検索します。
- 上部に表示される検索バーに「
proxy
」と入力します。 - 関連する設定項目が一覧で表示されます。
- 上部に表示される検索バーに「
-
プロキシサーバーのアドレスを入力します。
-
Http: Proxy
という項目を見つけ、テキストボックスに社内ネットワークのプロキシサーバーアドレスを入力します。 - 入力形式は通常、
http://<サーバー名>:<ポート番号>
やhttp://<ユーザー名>:<パスワード>@<サーバー名>:<ポート番号>
となります。 - 「設定されていない場合は、'http_proxy' および 'https_proxy' の環境変数から継承されます。」と説明があり、環境変数での設定でもOKです。
-
-
(オプション) SSL証明書のエラーが出る場合の設定
- プロキシ経由で通信する際にSSL証明書関連のエラーが発生し、拡張機能のインストールなどがうまくいかない場合があります。
- その際は、同じ検索結果画面にある
Http: Proxy Strict SSL
の項目の チェックを外す ことで解決することがあります。 - ※これはセキュリティ設定を緩和する操作のため、この設定の変更が可能かどうかも、事前にIT部門に確認することをお勧めします。
設定が完了したら、VSCodeを一度再起動してください。
以上でプロキシ設定は完了です。これにより、VSCodeが社内ネットワークを通じて外部と通信できるようになります。
3-2 VSCodeの初期設定(拡張機能の追加)
VSCodeをより使いやすくするために、いくつか拡張機能(アドオン)を入れましょう。
左側の四角いアイコン(Extensions) をクリックし、検索窓に以下の名前を入力してインストールします。
- Japanese Language Pack for Visual Studio Code:メニューなどを日本語化します。
- Python:Pythonを書くための必須ツールセットです。
- 他(代表的なもの):autoDocstring , autopep8 , isort , Error Lens , IntelliCode , Path Intellisense など
- GitHub Copilot:AIプログラミング支援ツールです。GitHubアカウントでサインアップが必要です。Googleアカウントがあると手続きが若干短縮できます。他にも、Gemini code assistなどがあります。
ステップ4:PowerShellのセキュリティポリシーを変更
これから使うPythonのスクリプトをPC上でスムーズに実行できるように、PowerShellの設定を少し変更します。
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
- Windowsの検索バーで「PowerShell」と入力し、「Windows PowerShell」を起動します。
- 上記のコマンドをコピーして、PowerShellの画面に貼り付け、Enterキーを押します。
- 「実行ポリシーを変更しますか?」と聞かれたら、「Y」を入力してEnterキーを押します。
- なぜこの設定が必要?:デフォルト設定では、PC上で自作のスクリプトファイルを実行することが禁止されています。このコマンドは、「インターネットからダウンロードした信頼できないスクリプトは実行しないが、自分が作成したスクリプトは実行を許可する」という、セキュリティと利便性のバランスが取れた設定に変更するものです。
ステップ5:プロジェクト用フォルダの準備と仮想環境の構築
コードの作成、編集、実行などを行う「作業用のフォルダ」を作り、その中に「仮想環境」というものを作成します。
1. 作業用フォルダを作成する
まず、Pythonプロジェクトをまとめておく親フォルダを作成します。場所はどこでも良いですが、分かりやすいように C:\MyPythonProjects
やドキュメントフォルダ内などが良いでしょう。
次に、その中に今回のプロジェクト用のフォルダ(例:excel-automation
)を作成します。
コマンドラインの場合:
mkdir C:\MyPythonProjects\excel-automation
2. VSCodeでプロジェクトフォルダを開く
作成したプロジェクト用フォルダ(excel-automation
)を右クリックし、「Code で開く」を選択します。
コマンドラインの場合:
code C:\MyPythonProjects\excel-automation
3. 仮想環境(venv)を作成する
ここが一番の山場であり、最も重要な概念です。
仮想環境とは?:プロジェクトごとに独立したPythonの作業部屋を作るようなものです。Aのプロジェクトで使ったライブラリ(プログラムの部品)と、Bのプロジェクトで使ったライブラリが混ざらないように隔離することで、PC全体のPython環境を汚さずに済みます。
-
VSCodeの上部メニューから「ターミナル」→「新しいターミナル」を選択します。
-
画面下にターミナル(コマンド入力画面)が開くので、以下のコマンド (いずれかでOK) を入力してEnterキーを押します。
Case1: 通常:環境変数のpathに設定されている一番上のpython環境が選択される
python -m venv .venv
Case2: プルパスで指定する場合
C:\Python\Python313\python.exe -m venv .venv
Case3: pyランチャーを使った場合
->py --listで*(アスタリスク)の付いた環境が選択されるpy -m venv .venv
Case4: pyランチャーを使い、バージョンを指定する場合
->以下は3.13-32bit版での例py -3.13-32 -m venv .venv
-
左側のファイル一覧に
.venv
というフォルダが作成されたことを確認します。 -
次に、作成した仮想環境を有効にするため、以下のコマンドを入力します。
.venv\Scripts\activate
-
コマンドラインの先頭に
(.venv)
と表示されれば、仮想環境が有効になった合図です。
4. 必要なライブラリをインストールする
仮想環境の中で、これから使いたいツール(ライブラリ)をインストールします。ここでは代表的なものをいくつか入れてみましょう。
ターミナルに以下のコマンドを入力します。
pip install pywin32 python-dotenv openpyxl selenium
公開されているプログラムなどを使う際、ライブラリの設定ファイルも用意されていれば、以下のコマンドを入力します。
必要なパッケージを指定のバージョンで一括インストールが可能です。
pip install -r requirements.txt
5. 秘匿情報を管理する環境変数ファイル .env
を作成する
WebサイトのIDやパスワード、AIのAPIキーなどをコードに直接書き込む(ベタ打ち)のは、情報漏洩のリスクがあり非常に危険です。
python-dotenv ライブラリを使い、これらの情報を安全に管理しましょう。
- VSCodeのファイル一覧で、何もないところを右クリックし、「新しいファイル」を選択します。
- ファイル名を
.env
として作成します。 - このファイルの中に、以下のように秘密にしたい情報を記述します。
USER = "your_login_id"
PASSWORD = "your_password"
API_KEY = "your_api_key"
ずっと固定のもの -> win環境変数
変えてテストしたいもの ->.envファイル
と使い分けるといいかもしれません。
win環境変数に同じ名前がある場合、dotenvの値を優先するoverride=True
設定が安心です。
gitを使う場合は、.gitignore
に.env
を追加し、バージョン管理から除外しましょう。
その場合は、相対パスを設定することも忘れずに。
load_dotenv(dotenv_path='.gitignore\.env', override=True)
使い方の例:
import os
from dotenv import load_dotenv
# win環境変数からユーザーIDとパスワードを取得
user_id_sys = os.getenv('USER')
password_sys = os.getenv('PASSWORD')
# .envファイルから環境変数を読み込む。
# ★win環境変数に同じ名前がある場合、dotenvの値を優先する設定が安心★
load_dotenv(dotenv_path='.gitignore\.env', override=True)
user_id_app = os.getenv('USER')
password_app = os.getenv('PASSWORD')
# 取得した値を表示
print(f"win環境変数 USER: {user_id_sys}, PASSWORD: {password_sys}")
print(f".envファイル USER: {user_id_app}, PASSWORD: {password_app}")
【注意】設定を反映させる
- win環境変数を設定・変更した後は、その設定が反映されるために、実行環境(コマンドプロンプト、VSCodeなどのIDE)を必ず再起動してください。 開きっぱなしのターミナルには新しい環境変数が読み込まれません。
これで、Pythonコードから安全にこれらの情報を呼び出す準備ができました。
ステップ6:Obsidianをインストールする(推奨)
これは必須ではありませんが、AIへの指示(プロンプト)を管理するために非常に便利なツールです。
- Obsidian公式サイトからダウンロードしてインストールします。
Obsidianはマークダウン形式でメモを管理でき、見出しや表を使って複雑な指示を簡潔に、分かりやすく整理できます。AIはマークダウン形式を読み取るのが得意なため、精度の高い指示を出しやすくなります。
保管庫の場所を最初に指定するか、作成する必要があります。
お疲れ様でした!以上で、PythonとAIを使って業務を効率化するための環境構築はすべて完了です。
ちょっと長いですよね。だからこそ差が生まれる壁だと思います。
この「自分だけの開発環境」を手に入れたことで、あなたはいつでもAIという最強の相棒と共に、面倒な作業を自動化するコードを生み出せるようになりました。
次の記事では、いよいよこの環境を使って、Copilotに指示を出し、簡単な業務改善ツールを作成する実践編をお届けします。
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